2023年版|法人税入門。申告のしかた/納税方法を徹底解説します!
納付期限を守り、正しく納めるための法人税講座
会社設立後、最初の決算が終わり、しばらくすると、税務署から法人税申告書のお知らせが…。個人の確定申告に比べ、法人税は様々な法律が絡み、提出書類も多く煩雑な作業になります。顧問税理士がいる場合は安心ですが、特に自分で申告する場合は要注意です。基礎をしっかり押さえて、漏れなく、損なく、申告しましょう。
ここでは、[令和5年度版]法人税の基本と、申告の仕方、納税方法までを詳しく、そして、やさしく解説していきます!
それでは、早速みていきましょう。
この記事の目次
法人税の仕組みと納税対象
法人税がわかると会社のお金の動き全てがわかると言われるほど、会社の活動には必ず法人税が絡んできます。経営者だけでなく、起業をしようと思っている方、さらには会社で働いている方全てに必須の知識と心得ましょう。
国がかける税金を「国税」
都道府県や市などの自治体がかける税金を「地方税」といいます。
法人税は会社が事業活動によって得た儲けに対してかかる、国税です。
また、法人税のほか、地方税である「法人住民税」と「法人事業税」を合わせて「法人税等」と呼ばれます。法人税等に関わる法律も頻繁に改正がされますので、自分が申請するときは、必ず最新情報をチェックするようにしましょう。
今回は、法人税等の中でも一番のキモとなる、「法人税」について、基本的な考え方や計算方法、申告についてマスターしていきましょう!
参考>>起業家必見!会社にかかる税金の種類と納税時期まとめ
参考>>法人税・法人住民税・法人事業税の違い?知っておきたい法人税の基本構造
参考>>地方法人税ってどんな制度?押さえておきたい基礎知識
一体いくらかかる?法人税の計算方法
それでは、法人税はどのような計算で算出するのか、税率がどのように決められているのかについてみていきましょう。
まず、法人税等(法人税、住民税、事業税)の負担率は、利益の大きさなどによっても変わりますが、おおよそ、会社の利益に対して約20%から30%程度と考えてください。黒字決算になった時、2ヶ月後には支払わなければならない税金がだいたいどのぐらいなのか、あらかじめ把握しておくことが必要です。
次に、法人税は会社の儲けに対してかかる税金と言いましたが、
正確にいうと、会社の「利益」に対して法人税がかかるわけではありません。
法人税が課せられる対象のことを、税法では「所得金額」といいます。
利益≠所得
となり、必ずしも一致するわけではないことに注意してください。
会社の利益は、株主に対して会社の経営成績や財政状態を正確に報告するため、会社法や企業会計原則などにより計算します。
一方、所得金額は課税の公平を目的に計算されるため、税法上の計算方式が取られます。
企業会計と税務会計の目的が違うので、計算方法が変わってくるのですね。
まずは所得金額を計算しよう
それでは、所得金額はどう算出すれば良いのでしょうか。
会社の利益は、収益ー費用 で計算されるのに対し、
所得金額は、
益金ー損金
という形で計算されます。
では、益金と損金はどう計算するのかというと、
基本的には、企業会計の収益と費用をベースにし、税法上の益金に参入するものとしないもの、損金に参入するものとしないものとを勘定項目ごとに振り分けて計算していきます。
特に、創業期にも関わるものには「交際費」「固定資産の減価償却」「役員報酬」などがあります。
交際費を費用として計上したものが、損金不算入となってしまい、多く税金を納めるハメに…ということもよくあること。税金で損をしないためにも、基本的な部分は頭に入れておきましょう。
参考>>接待交際費とは。経費で損金算入できるルールは絶対に知っておくべき!
参考>>知らなきゃ損する減価償却:ベンチャーが資産を経費化できる3つの特例
参考>>役員報酬とは?決め方と注意点、法人税への影響を解説します。
また、税務会計は非常に複雑です。全てを完璧に把握する必要はありませんので、経営者として、決算書の読み方だけはしっかり押さえつつ、細かい部分については、信頼のおける顧問税理士さんに任せてしまって良いでしょう。
参考>>今さら聞けない!?法人税の計算に必要な8つの決算資料
法人税率の計算
所得金額が出たら、法人税の税率を掛け合わせて、法人税額を算出しましょう。
法人税の税率は、資本金と、所得金額によって税率が変わります。
令和4年度については、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円以下の所得金額については15.0%、800万円超の所得金額については23.2%となります。
地方税である法人住民税、法人事業税については、各都道府県や市などの自治体によって税率が異なりますので、必ずそれぞれ確認し、計算しましょう。
参考>>法人税率を理解しよう!「法人税」の基礎と税率の考え方
赤字決算の場合、所得は0となるので、基本的には法人税もかかりません。
ただし、会社が赤字でも、法人住民税の均等割(7万円~)はかかりますのでご注意を。
法人税申告書の書き方
法人税額が算出できたら、いよいよ法人税申告書の作成に取り掛かります。
法人税の申告に必要なものは、以下となります。
- 法人税申告書
- 法人事業概況説明書
- 別表
- 勘定科目内訳明細書
- 貸借対照表
- 損益計算書
別表と呼ばれる明細書は20種類もあり、かなり多岐に渡ります。
もう、一目見ただけでアレルギー反応が…。そんな方のために、特に重要とされる別表をまとめましたので、以下のリンクを参考にしてください。
参考>>法人税申告書作成時に知っておこう!よく使用する明細書8種類と作成時の注意点
令和4年度 法人税関係法令の改正の概要
令和4年度 法人税関係法令の改正の概要については、国税庁のHPをご参照ください。
申告・納税方法を決めよう
法人税申告書が完成し、ホッとするのもつかの間。法人税は、決算日から2ヶ月以内に申告、納税をしなければなりません。
参考>>法人税はいつ払う?会社の税金の支払い時期と方法まとめ
提出方法は色々な方法があるので、ご都合に合わせて選択してください。
確定申告
法人の確定申告の提出方法は主に3通りです。
- 税務署の窓口で申告
- 電子データ(e-Tax)で送信
- 記入した書類を郵送で確定申告
青色申告って?
ちなみに、確定申告は青色申告をおすすめします。
青色申告の承認申請は、会社設立した日から3ヶ月を過ぎた日、もしくは、会社設立後の決算期末の日のいずれか早い日の前日までに「青色申告の承認申請書」を税務署長に提出しなければなりません。
青色申告の承認を受けた会社には、次のような特典があります。
- 欠損金の10年間繰越
- 欠損金の繰戻し還付
- 特別償却
- 試験研究費があった場合の税額控除
- 機械などを購入した場合の税額控除
- 雇用促進した場合の税額控除
- 雇用者の所得拡大を促進した場合の税額控除
ぜひ、会社設立時には、設立登記と合わせて青色申告の申請も検討してみてください。
参考>>法人/個人の青色申告と白色申告の違い、それぞれのメリット・デメリットとは
納税
法人税の納税方法は、
- 振替納付
- インターネットバンキング
- コンビニ納付
- クレジットカード納付
- 窓口納付
- ダイレクト納付
- スマホアプリ納付
などがあります。
令和4年(2022年)12月1日から、国税の納付手段にPay払いを使って納付する「スマホアプリ納付」が加わりました。納税額が30万円以下ならPay払いで国税を納付することができます。
法人税の詳しい納付方法については、国税庁のHPよりご確認ください。
また、国税と地方税で納付先が違うので、ご注意ください。(地方税の納付方法については、各自治体のHPをご確認ください。)
参考>>会社設立1ヶ月でも審査が楽に通る法人クレジットカードのおすすめを厳選!
参考>>法人/個人の青色申告と白色申告の違い、それぞれのメリット・デメリットとは
申告後、間違いに気づいたら
会社が確定申告書を提出した後に、間違えてしまっていたことに気づいた場合、誤って税額を少なく申告していた場合と、税額を多く申告していた場合によって、処理方法が変わります。
まず、誤って税額を少なく申告していた場合、「修正申告書」の提出が必要です。
修正申告書を提出した場合には、正しい税額と、それまでに納付した税額との差額を収めることに加え、延滞税などの附帯税を納めなければなりません。
一方、誤って税額を多く申告していた場合、税務署に更正の請求をする必要があります。
ここで注意したいのは、更正の請求ができるのは、申告期限から5年以内に限られているということです。それをすぎると納税者側からは税金を取り返すことができなくなってしまいます。
2年目以降の会社は注意!法人税の中間申告とは
法人税が20万円を超えた場合には、翌期に中間申告が必要となります。中間申告の期限は、期首から6ヶ月経過した日から2ヶ月以内です。
参考>>法人税の中間申告|起業2年目は気をつけろ!
法人税に備え、会社にキャッシュを残しておこう
忘れていた頃にやってくるのが、税金の恐ろしいところ。でも、法人税は忘れていた、では済まされません。黒字決算後のキャッシュ・フローは特に重要となりますので、できるだけ、会社に多くのキャッシュを残しておくということを心がけましょう。
また、法人税は、1日でも遅れると延滞税がかかりますので、ご注意ください。少しでも不明点がある場合は、必ず、税理士さんに相談するようにしましょう。
(執筆:創業手帳編集部)