法人税率はどれくらい? 法人にかかる税金と計算方法などを紹介!

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法人税納付までにしっかり理解しておこう

初めての決算が終わり、ほっとするのもつかの間。決算月の2ヶ月以内に支払わなければならないお金が経営者を待ち受けています。これが法人税です。

「法人税」は、会社の資金繰りを考えるうえで非常に重要で、知らないとキャッシュフローがマイナスになりかねません。

そもそも、国の制度として基本的には、いち会社員として生活しているより、会社を設立した方が税金は安く抑えられるようになっています。しかし、法人税は複数の税法が絡むため、やや難解で理解するのに苦労する方も。

そこで今回は、初めての法人税納付を控える経営者のために、法人税率についてわかりやすく解説していきます。

節税対策のためには、さまざまなメソッドが存在します。税金チェックシート(無料)では、専門家の声を集めた事例がチェック出来ますので、是非お役立てください。手元に残るお金が変わって来ます。

また、税金の納付のタイミングについて事前に知っておくことで、準備ができるはずです。冊子版の創業手帳(無料)では、創業期の税金イベントについてカレンダーにまとめています。納付や手続きの時期がひと目でわかるので、スケジュールを立てるのに役立つでしょう。

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法人税とは法人の所得にかかる税金

法人税とは法人の事業活動によって得られる所得に対して課される国税です。
法人の課税所得金額は益金の額から損金の額を差し引いて求めます。益金には売上や資産の売却収入が該当し、損金には売上原価や販売費などが該当します。

課税所得金額は会計上の利益と同じではありません。そのため、会計上の利益をもとに損金不算入・益金不算入・損金算入・益金算入項目の加算または減算を行って調整します。

法人税の種類

法人税には以下のような種類があります。本記事では「各事業年度の所得に対する法人税」について解説します。

各事業年度の所得に対する法人税

「各事業年度の所得に対する法人税」とは、法人の事業年度単位の所得に対して課される法人税です。一般的に「法人税」と呼ばれる税金は、この法人税を指します。

退職年金等積立金に対する法人税

退職年金等積立金に対する法人税とは、確定給付企業年金や厚生年金基金のような企業年金の年金積立金に対して課される税金です。特別法人税とも呼ばれます。2026年(令和8年)3月31日までは、特別法人税の課税は凍結されています。

法人税が課せられる法人とは

法人には株式会社や医療法人のような普通法人の他、非営利の法人もあります。法人の種類によって法人税の納税義務や課税範囲が異なります。

法人の種類 該当する法人 課税される所得の範囲
普通法人 株式会社・有限会社・合同会社・医療法人・一般社団法人・一般財団法人(ともに非営利型法人を除く)など すべての所得
協同組合等 農業協同組合・漁業協同組合・信用金庫など すべての所得
公益法人等 公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人・学校法人 収益事業による所得
人格のない社団等 マンション管理組合・PTA・同窓会など 収益事業による所得
公共法人 地方公共団体・国立大学法人・日本年金機構など なし

普通法人の法人税率は資本金額によって異なります。公益法人等と人格のない社団等には法人税がかかりませんが、物品販売のような収益事業で所得が生じた場合は課税対象となります。

法人税が課せられる所得

法人税が課せられる所得とは税法上の所得であり、益金から損金を差し引いて求めます。通常、税務上の課税所得金額は会計上の利益(収益-費用)をもとに以下のような調整を行います。

課税所得(益金-損金)= 会計上の利益 + 加算調整項目 - 減算調整項目

加算調整項目と減算調整項目とは以下のような項目です。

加算調整項目 税務上は益金に含まれるが、会計上は収益に含まれない項目(益金算入項目) 無償による資産の譲渡によって得た利益など
税務上は損金に含まれないが、会計上は費用に含まれる項目(損金不算入項目) 税金(法人税・住民税など)、交際費の損金算入限度超過額など
減算調整項目 税務上は益金に含まれないが、会計上は収益に含まれる金額(益金不算入項目) 受取配当金や資産(有価証券等)の評価益など
税務上は損金に含まれるが、会計上は費用に含まれない金額(損金算入項目) 欠損金の繰越控除など

法人税の計算方法と法人税率

法人税の計算式は以下のとおりです。

法人税額 = 課税所得 × 税率 - 税額控除額

法人税額(資本金の規模などによって異なる)は、先述した課税所得(益金-損金)に法人税率をかけ、税額控除額(源泉徴収された所得税の控除など)を差し引いた額です。
下記では、法人税額と、税額控除額などについて詳しくご説明していきます。

法人税率

上記で説明したように会社が事業を始めて出たもうけ(所得金額)に対して、国税の一つである「法人税」がかかります。その税率である「法人税率」は会社の資本金の規模や、所得総額によって異なります。

資本金1億円以下の中小法人に関しては、税制上優遇されています。
法人の場合、年800万円以下の所得金額については15.0%、800万円超の所得金額については23.2%となります。

また、赤字だった場合は、所得金額が無いのでゼロとなります。

資本金規模 所得金額 税率
1億円超 23.2%
1億円以下 800万円超 23.2%
800万円以下 15.0%
※赤字企業の場合 0 0

税額控除

法人税額は課税所得に税率を掛けて求めた税額から、税額控除額を差し引きます。

税額控除には、法人が受け取る利子・配当などについて源泉徴収された所得税の控除や、外国税額控除などがあります。

法人税のシミュレーション

法人税の計算方法を具体的な事例で確認してみましょう。ここでは、資本金1億円以下の株式会社で、年間所得が1,000万円の法人税額を計算します。

【800万円以下の課税所得についての法人税】
800万円 × 15% = 120万円

【800万円超の課税所得についての法人税】
(1,000万円 - 800万円) × 23.2% = 46万4,000円

【年間所得が1,000万円の法人税額】
120万円 + 46万4,000円 = 166万4,000円

資本金1億円以下の普通法人の場合、800万円以下の課税所得に15%の税率を掛け、800万円超の課税所得に23.2%の税率を掛けて計算します。このケースの法人税額は166万4,000円となりました。

法人税の計算時の端数について

法人税の計算の過程で課税所得の1,000円未満の端数を切り捨てます。

たとえば、課税所得が102万1,165円であれば、102万1,000円となるわけです。税率を掛けるベースとなる金額も1,000円未満を切り捨てた金額です。
102万1,165円の15%であれば15万3,174円、102万1,000円の15%であれば15万3,150円と求められる税額が違ってしまいます。(資本金1億円以下の普通法人の場合)。
切り捨て前の金額を用いて計算しないように、注意しましょう。

法人税率の推移

法人税は年度ごとに見直されます。ここ30年ほど年々減少傾向にあり、グローバル化や景気低迷の影響を受けて、平成28年度、29年度は、平成に入ってもっとも低くなっています。

例えば平成元年の基本税率は40%、中小法人のうち所得金額が年800万円以下は29%でした。平成10~11年にかけて一度引き下げられ、平成24年以降も段階的に引き下げが行われ現在に至るまで最低水準になっています。

また平成21年から、以下の通り、「中小法人の軽減税率の特例」が定められています。

中小法人の軽減税率の特例(年800万円以下)について、平成21年4月1日から平成24年3月31日の間に終了する各事業年度は18%、平成24年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度については経過措置として18%、平成24年4月1日から令和5年3月31日の間に開始する各事業年度は15%。

出典元:財務省 法人税率の推移より引用

このように、小規模な法人には税金関連の特例措置があります。たとえば、源泉所得税は毎月納付することが義務となっていますが、給与の支給人員が10人未満の場合、年2回の納付にできます。冊子版の創業手帳では、この制度の手続きについてわかりやすく解説しています。また、法人設立後に必要な税務関係の手続きも併せて解説しています。

法人税だけじゃない?法人にかかる税金の種類と税率

法人税は、「法人税法」「租税特別措置法」「国税通則法」という3つの法律によって細かく規定されています。会社員でいうところの「所得税」と「住民税」にあたるものが、法人税では「法人税」「法人事業税」「法人住民税」の3つに分かれると考えるとわかりやすいですね。

それでは、「法人事業税」と「法人住民税」についての税率も見てみましょう。

法人の税金の種類や違いについて、詳しくはこちらの記事を>>
法人税・法人住民税・法人事業税の違い?知っておきたい法人税の基本構造

法人事業税の税率

法人事業税は各都道府県に納めるものです。法人事業税は所得×法人事業税率によって算出されます。
この法人事業税は、資本金1億円を超える法人と、1億円以下の中小法人の2つに大きく分かれています。資本金1億円以下の法人の場合、所得金額を課税標準とした所得割のみが課せられます。資本金1億円超の法人の場合、この所得割に加え、外形標準課税という、所得金額ではなく資本金額などの法人の外形に基づく課税が行われます。

事業税の税率は、事業所を構えている都道府県ごとに異なりますので、各都道府県のホームページをご確認ください。東京都は、東京都主税局ホームページから確認できます。

東京都の場合、年400万円以下の所得では、所得金額の3.5%、年400~800万円の所得では所得金額の5.3%、年800万円を超えると所得金額の7%がかかります。

法人事業税の計算事例を紹介

東京都にある資本金1億円以下の普通法人で、所得が560万円だった場合を計算します。
計算式は法人事業税額=所得×法人事業税率を使い、税率は以下のとおりです。

所得 税率        
400万円以下 3.4%        
400万円超800万円以下 5.1%        
800万円超 6.7%        

表からすると税率は5.1%があてはまるので、560万円×5.1%=28.56万円が納税額になります。

地方特別法人税は2017年に廃止

都市集中型社会における地域間の税源偏在を是正するため、資本金が1億円を超える法人に課せられていた税金が地方法人特別税です。

平成20年から暫定措置として適用されていましたが、平成29年度からこの地方特別法人税は廃止され、法人事業税に組み入れられています。

法人住民税の税率

法人住民税は、法人を構えている市町村の公共サービスを受けているという観点から、国税ではなく地方税として納めます。金額は、「法人税割」と「均等割」を足したものにより算出されます。

「法人税割」は、法人税額に住民税率を乗じることにより計算します。
「均等割」は各法人の資本金などにより一律に定められています。(均等割は最低でも7万円かかります。)

また、法人住民税は、「道府県民税」と「市町村民税」を足し合わせた税金を納付します。ただし、東京23区内だけに事業所を構えている法人は、「都民税」のみの扱いとなります。

すなわち、東京都23区だけに事務所を構えている法人の「法人住民税」は、以下になり、
都民税法人税割+都民税均等割

他のエリア、例えば、福岡県福岡市だけに事務所を構えている法人の「法人住民税」は、以下になります。
福岡県民税法人税割+福岡県民税均等割+福岡市民税法人税割+福岡市民税均等割

所属する従業員数で割ることで、各地方自治体に納める法人住民税額が決まります。

各種税率は従業員数、資本金額、課税所得金額によって変わるので、とても複雑です。また、事業所が違うエリアに増えると、さらに難解になりますので、だいたいいくらぐらいになるのか、顧問税理士に相談することをおすすめします。

法人住民税の計算事例を紹介

法人税額100万円、住民税率が都道府県民税5%と市町村民税12%のあわせて17%だった場合を計算します。

法人住民税=法人税割+均等割の式のうち、法人税割をまず計算しますが、
法人住民割=法人税額×住民税率の式にあてはめると、100万円×17%=17万円で、法人税割は17万円となりここへ均等割を加えて法人住民税を求めます。

本社が東京都にある公共法人で資本金1,000万円、従業員80人の場合、均等割額は14万円です。
17万円+14万円=31万円が法人住民税になります。

法人税の実効税率とは?

法人税の実効税率とは、法人が負担する実質的な税率のことを言います。わかりやすい例をあげると、会社の利益が1,000万円で300万円の税金を支払う必要があるときの実効税率は30%です。

会社の利益額に応じて負担する税ですが、実際の利益ではなくあくまで税務上の利益の額に対して課せられます。そのためどうしても会計と税務上の利益で差が出てしまいますが、専門的な知識によって税理士などが調整しています。

正確な法人税の実効税率は、本社の所在地と資本金の額により異なります。例えば令和3年度では、東京に本社を置く大企業であれば30.62%、中小企業の標準税率なら33.58%です。中小企業に比べて、大企業には税の優遇がとられています。

また、財務省の公式サイトに掲載されている「諸外国における法人実効税率の比較」によると、令和4年1月で、日本の法人実効税率は29.74%だとされています。日本においては、成長志向の法人税改革を実施しており、平成27年度で32.11%、平成28年度・平成29年度で29.97%、平成30年で29.74%と段階的に下げられました。

これは、政府が、諸外国に比べて高いと言われている日本の法人税を引き下げ、グローバル化が進む社会において、国際競争に負けない企業を国内に根付かせようとしているのです。

実際に同じ資料で比べてみると、イギリス19.00%、イタリア24.00%、フランス25.00%、カナダ26.50%、アメリカ27.98%、ドイツ29.93%で、日本の法人実効税率は高いことがわかるでしょう。

法人税にかかる税金の計算方法を紹介

それでは、どのように実効税率が割り出されているのか、計算してみましょう。実効税率に関する計算は複雑で、表面税率の計算式ではわかりにくい特徴があります。表面税率の計算式は次のとおりです。

「表面税率 = 法人税率 + 法人税率 × 地方法人税率 + 法人税率 × 住民税率 + 事業税率」

実際には、このように単純計算にはなりません。実効税率の計算式は、「事業税+特別法人事業税」を考慮したものを活用しましょう。表面税率とのズレが生じるのは、損金算入すると課税所得が低減するためです。

どのくらい法人税がかかるかは、次の実行税率の計算法が用いられています。

「実効税率 = (法人税率 × (1+ 地方法人税率 + 住民税率)+ 事業税率+特別法人事業税率)/(1+ 事業税率+特別法人事業税率)」

資本金が1億円以上ある大企業の実効税率

東京23区に本社がある資本金が1億円の大企業で、1億円の利益がある場合を計算します。

利益額1億円から事業税113.7万円と特別法人事業税250.5万円を引くと、法人税課税対象額の9,635.8万円が出ます。

利益額1億円 – (事業税113.7万円 + 特別法人事業税250.5万円) = 法人税課税対象額9,635.8万円

ここへ23.30%をかけると、法人税額2,235.5万円が導き出され、法人税額に10.3%をかけると地方法人税230.3万円が計算できます。

法人税課税対象額9,635.8万円 × 23.30% = 法人税額2,235.5万円

法人税額2,235.5万円 × 10.3% = 地方法人税230.3万円

法人税額に10.4%をかけると住民税額232.5万円がわかり、法人税課税対象額へ1.18%かけた額が事業税113.7万円です。特別法人事業税は法人税課税対象額に2.6%をかけた250.5万円で、合計すると法人税などの合計額は3,062.5万円です。

法人税額2,235.5万円 × 10.4% = 住民税額232.5万円

法人税課税対象額9,635.8万円 × 1.18% = 事業税113.7万円

法人税課税対象額9,635.8万円 × 2.6% = 特別法人事業税250.5万円

法人税額2,235.5万円 + 地方法人税230.3万円 + 住民税額232.5万円 + 事業税113.7万円 + 特別法人事業税250.5万円 = 合計3,062.5万円

法人税率は複雑。困ったら税理士に相談しよう。


ここまで法人税についてみてきましたが、各都道府県によって数値が異なる税もあり、全部を理解するにはなかなか難しいかもしれません。

そこで、困ったときに相談すると良いのが税理士です。税務署に税理士の一覧がありますし、ネットで自分の会社規模などに合いそうな税理士を探してみるのも一つの手です。
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法人税の基本をしっかり押さえて、納付時期に備えましょう。

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(執筆:創業手帳編集部)

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