法人税申告書の基本を知ろう!書類作成から納付方法まで解説

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作成・納付方法を知ってスムーズに提出しよう


法人では支払う必要のある税金がいくつかありますが、その中のひとつである法人税は申告書を作成し、提出しなければなりません。
法人税申告書には別表と呼ばれる書類も作成する必要があり、難しいと感じることも多いのではないでしょうか。

複雑な法人税申告書ですが、作成・納付方法などを知っておけばスムーズな提出につながります。
今回は、法人税申告書に関する基本的な部分から、書類の作成・納付方法の種類までを紹介します。

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法人税申告書とは?


法人税申告書とは、1年間で出た利益に対して企業が納める法人税を計算するのに必要な書類です。
そもそも法人は、5種類の納税申告を行わなくてはなりません。

  • 法人税
  • 消費税
  • 法人事業税
  • 法人住民税
  • 地方法人税

法人税と消費税は決算書の内容をもとに申告書を作成し、法人事業税・法人住民税・地方法人税は法人税に合わせて申告書を作成します。
そのため、法人税申告書はほかの納税申告を行うためにも欠かせない書類です。

法人税の税率はいくつ?

法人税は会社が事業によって得た利益(所得)に対してかかるもので、税率が設定されています。法人税率は企業の資本金規模や所得総額で変化するものです。
下記は、普通法人に適用される税率を示した表です。

【普通法人の場合】

資本金規模 所得総額 法人税率
資本金1億円以下の法人など 年間800万円以下 15.0%
年間800万円以上 23.2%
資本金1億円以上の法人 23.2%

資本金1億円以下の法人だと、年間800万円以上の所得総額があるかどうかで法人税率は大きく異なります。なお、所得金額がない赤字企業だと法人税率は0%です。

法人税率について、詳しくはこちらの記事を>>
法人税率はどれくらい? 法人にかかる税金と計算方法などを紹介!

法人税申告はいつまで?

ほかの税金と同様に、法人税にも納付期限があります。法人税の申告期限および納付期限は、事業年度終了日翌日から2カ月以内です。

例えば、年度末の3月31日を決算日に設定している場合、2カ月後にあたる5月31日が法人税申告書の申告期限および納付期限です。
もしも2カ月後が土日祝日だった場合、その翌日が期限になります。

万が一やむを得ない事情により納付が難しい場合、法令の要件に当てはまっていれば猶予期間を設けてもらえます。
猶予期間をもらいたい場合は、なるべく早く税務署に相談してください。

特にやむを得ない事情などもなく、期限を過ぎてから申告してしまうと期限後申告と判断され、無申告加算税・重加算税・延滞税などが課せられることもあります。
また、滞納し続けると財産の差し押さえなど滞納処分を受ける恐れもあるため、注意が必要です。

法人税の申告期限について、詳しくはこちらの記事を>>
法人税の申告期限はいつまで? 納付期限や支払時期、支払方法まとめ

法人税申告書はどこでもらえる?

法人税申告書を作成するためには申告書を入手しておく必要があり、基本的に法人税申告書は税務署内に置かれています。
しかし、将来的には、税務署から紙の様式がなくなることも予想されます。

手軽に入手するならインターネットからがおすすめです。国税庁のホームページには法人税申告書の様式が揃っており、いつでもダウンロードできます。
決算期ごとに様式が変更となるため、ダウンロードする様式を間違えないように気をつけてください。

別表の種類


法人税申告書には「別表一」〜「別表十九」の別表という書類によって構成されます。
申告書を提出するにあたり、すべての人が「別表一」から「別表十九」までを準備する必要はありません。
法人の決算内容ごとに提出しなくてはならない別表は異なるので、事前に確認しておくようおすすめします。

今回は、別表の中でも主に用いられるものを紹介します。

別表 内容
別表一 法人税の納付税額を算出
別表二 同族会社に当てはまるか判定
別表四 当期利益から所得金額を算出
別表五(一) 税務上の純資産を記録
別表五(二) 法人税・住民税・事業税など租税公課の発生および納付状況
納税充当金の積立て・取崩し状況の記載
別表六(一) 預貯金・公社債などの利息から差し引いた所得税額を記載
別表七(一) 青色欠損金・災害損失金の繰越しを行う際に作成
別表八(一) 受取配当金から益金にならない金額を算出
別表十一(一) 個別評価金銭債権に対する貸倒引当金の繰入限度額を算出
別表十一(一の二) 一括評価金銭債権に対する貸倒引当金の繰入限度額を算出
別表十四(二) 支出寄附金の損金算入限度額を算出
別表十五 支出交際費の損金算入限度額を算出
別表十六(一) 定額法を用いて償却する減価償却資産の償却限度額を算出
別表十六(二) 定率法を用いて償却する減価償却資産の償却限度額を算出
別表十六(六) 均等償却・一括償却を行う繰延資産の償却限度額を算出
別表十六(七) 取得価額30万円未満の資産で取得価額の全額を損金算入した場合に記載
別表十六(八) 取得価額20万円未満の資産を3年にわたり損金算入するために記載

なお、「別表一」・「別表二」・「別表四」・「別表五(一)」・「別表五(二)」はどの法人も必ず提出しなくてはなりません。

法人税申告書の作成方法


続いて、法人税申告書を作成する前に必要なものや作成する流れを紹介します。
たくさんの書類から構成されている法人税申告書ですが、何が必要なのか、どのように作成していけばいいのかを把握しておきましょう。

作成前に準備するもの

法人税申告書を記載していく前に、申告書と一緒に提出が必要な書類も準備します。添付が必要な書類は以下のとおりです。

  • 決算報告書
  • 勘定科目内訳明細書
  • 事業概況書
  • 適用額明細書

申告書を作成するにあたって、会計帳簿や決算報告書から転記するものが多いことから、これらの書類を正確に作成しておく必要があります。

法人税申告書を作成する流れ

必要書類がすべて揃ったら、いよいよ法人税申告書を作成します。ここからは、具体的にどのような流れで申告書を作成すれば良いのかを解説していきます。

1.財務諸表を作る

まずは、申告書の作成に取りかかる前に財務諸表(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・キャッシュフロー計算書など)を作成していきます。
会計ソフトを活用し、日々の帳簿データを記録していれば手間もそれほどかかりません。

スムーズに財務諸表を作成するためにも、あらかじめ使いやすい会計ソフトを選んでおくことをおすすめします。

2.「別表六」以降を完成させて「別表四」にまとめる

財務諸表が完成したら、まずは「別表六」の作成に取り掛かります。
「別表六」では減価償却費・交際費・繰延資産などの個別の項目を埋めていき、表を作成していきます。

「別表六」以降が完成したら、作成した表を会計上の利益と税務上の所得調整を行った旨を記載する別表四に各項目をまとめていく流れです。

3.「別表七」の項目に記載する

「別表四」に書き出したら、次に「別表七」へ記載します。「別表七」は欠損金や災害損失金など損金算入などに関する明細書です。
つまり、過去と現在にみられる損失について処理を行うための表です。

過去に損失があり、当期利益と相殺する場合は「別表七」を作成しなくてはなりません。
さらに、当期以前に損失が発生しており、青色申告の適用や災害損失に該当する場合は翌期に繰り越し、将来出た利益で相殺する旨を記載しておく必要があります。

もし「別表七」で相殺を行ったら、「別表四」で調整しなくてはならない点に注意が必要です。

4.「別表五(一)」を記載したら「別表一」を記載

次に、「別表五(一)」を記載していきます。「別表五(一)」は税務上の純資産を記録する表です。
具体的には、利益積立金額や現在資本金などを算出するための明細書といえるでしょう。

「別表五(一)」を記載するためには前回の法人税申告書から転記を行う必要があります。転記はほかにも「別表四」の当期利益・当期欠損で行います。

5.「別表四」をもとに所得金額を確定させる

「別表四」の内容から所得金額を確定させていきます。申告書上で加算・減算する際に税務上有効なものを申告調整といいます。

申告調整は、任意的申告調整事項と必要的申告調整事項の2種類です。
任意的申告調整事項は調整するかどうかは法人の任意となり、調整すれば税法上の適用を受けられます。

一方、必要的申告調整事項は調整しないと税法上の更正処分を受けてしまうものです。必要的申告調整事項に該当するのは以下の項目です。

  • 減価償却費
  • 引当金の超過額
  • 各種引当金や準備金などの超過額
  • 寄附金や交際費の損金不算入
  • 役員給与の損益不算入 など

6.各資料の情報を転記し、「別表一(確定申告書)」にまとめる

各資料で算出した金額は「別表一」の確定申告書へ転記していきます。「別表一」に記載することで法人税額・地方税額が確定します。

実際に法人税額を計算する書式は「別表一次葉」です。「別表一」と別の用紙ですが、文書中の番号(項番)は「別表一」を引き継いでいるためです。

法人税はどのように納付すれば良い?


書類をすべて作成し提出した後は、法人税を納付すれば手続きが完了します。
法人税の納付方法は6種類あり、それぞれどのように納付すればいいのかを確認してください。

現金納付

現金納付は、金融機関や所轄の税務署の窓口で行える方法です。手数料は不要で、領収証書も発行してもらえます。

現金納付は法人税以外にも様々な税金を納付する際に活用できる方法です。事前に窓口に備えつけられている納付書に必要な情報を記載しておくようおすすめします。

この方法は手数料なしで行えるなどのメリットはあるものの、わざわざ金融機関や税務署まで足を運ばなくてはいけないので面倒に感じるかもしれません。
特に、窓口は決められた曜日・時間にしか開いていないため、時間が合わないと納付期限が過ぎてしまう恐れもあります。

ダイレクト納付

ダイレクト納付とは、e-Taxを使って預貯金口座からの振替えにより納付できる方法です。
ダイレクト納付を行うには、あらかじめ金融機関または税務署に届出書を提出する必要があります。
こちらも手数料は不要ですが、領収証書は発行されない点に注意が必要です。

ダイレクト納付を利用していると、あらかじめ納付が見込まれる金額を課税期間中にダイレクト納付で登録しておくことで予納できます。
例えば、定期的に均等額を納付したり、収入が入った任意のタイミングで納付できたりします。
予納は法人税のほかにも、申告所得税および復興特別所得税・贈与税・消費税および地方消費税にも利用可能です。

クレジットカード納付

クレジットカード納付は、「国税クレジットカードお支払サイト」という専用サイトから納付する方法です。
サイトに必要事項を入力し、納付受託者へ立替払いを委託し、税務署に納付されます。そして、クレジットカード会社から立替払い額の請求が来るという仕組みです。

領収証書は発行されず、納付税額に応じて決済手数料が発生します。どうしても時間がない時、現金がなくクレジットカードで納付したい時に便利です。

クレジットカード納付で気をつけたいのは、フィッシング詐欺です。
専用サイトとそっくりなフィッシングサイトにアクセスを促し、個人情報を抜き取られてしまう危険性もあります。
納付する際は確実に専用サイトかを確認してから、入力するようにしてください。

インターネットバンキング納付

インターネットバンキング納付は、インターネットバンキング口座を開設している人に便利な方法です。
事前に税務署でe-Taxの手続きを行う必要があるものの、手数料なしで簡単に法人税の納付が行えます。

利用可能額は各金融機関によって異なるため、あらかじめ確認しておくようおすすめします。
領収証書は発行されないので、領収証書が必要な場合はほかの方法を利用するようにしてください。

コンビニ納付

法人税の納税額が30万円以下であればコンビニエンスストアから納付することも可能です。
コンビニエンスストアで納付する場合、税務署で発行したバーコード付き納付書、または自宅などで作成したQRコードを店内に設置されているキオスク端末で読み取り、納付書を出力することで納付できます。
いずれも現金で納付が可能です。

手数料はかからないものの、領収証書は発行されず、事前にQRコードやバーコード付き納付書を準備する必要があります。
バーコード付き納付書は税務署が混雑していない時期なら即時発行も可能ですが、混み始める2月中旬以降だと発行までに時間がかかってしまうので注意してください。

振替納税

振替納税は納税者自身の名義で作った預貯金口座からの引き落としで納付する方法です。
この方法を利用するためには、あらかじめ税務署か預貯金口座の金融機関に専用の依頼書を提出、またはe-Taxから依頼書を提出しなくてはなりません。

事前に手続きを済ませておく必要があるものの、一度手続きを行ってしまえば自動的に次回以降も納税が引き継がれます。
口座にきちんとお金が入っていれば延滞税などがかかる心配もありません。
ただし、自動更新は確定申告を行う税務署が変更されると行えなくなるので、引越しなどで住所が変更になったら再度手続きを行うよう注意が必要です。

まとめ

複雑な部分が多い法人税申告書ですが、記載する手順と内容を把握しておけばスムーズに書類作成が行えます。
法人税の申告・納付期限を過ぎてしまうと、延滞税などが課せられてしまうため、早めに準備しておくことが大切です。

納付方法には現金払いやインターネットバンキング納付など様々な方法があります。自分に合ったものを選び、期限までに確実に納付しましょう。

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