バニッシュ・スタンダード 小野里寧晃|負債数億円からの再起!世の中のつまらない常識を⾰めるスタッフテックサービスで描く理想の未来

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年08月に行われた取材時点のものです。

どん底から成功したテック業界の革命児が実現したい「世界中をおもしろく⽣きる⼈でいっぱいにする」


さまざまな分野でDX推進が行われるなか、店舗スタッフのDX化という新たな切り口で接客領域を改革したスタッフテックサービス「STAFF START(スタッフスタート)」が注目を集めています。

同サービスを世に送り出したのは、バニッシュ・スタンダード代表取締役CEOの小野里さん。2016年のローンチ以降、多数のメディアでも紹介され、今後の展開にも大きな期待が寄せられています。

今回は小野里さんの起業までの経緯をはじめ、事業を成功させるまでのサクセスストーリーや、スタッフテックサービスで実現したい世界観について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

小野里 寧晃(おのざと やすあき)
株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役CEO
1982年10月24日群馬県前橋市生まれ。2004年大手Web制作会社に入社、EC事業部長として主にアパレル企業などのECサイト制作に従事。2011年株式会社バニッシュ・スタンダードを設立。EC構築から運営の全てを請け負うフルフィルメント事業を提供する中で「店舗を存続するEC」を目指し、2016年に店舗スタッフをDX化させる ” スタッフテック ” サービス「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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バンドマン・ヴェルファーレDJを経て、Web制作会社での実績を活かし独立

大久保:小野里さんは群馬県前橋市のご出身で、ご実家は自営業だそうですね。

小野里親戚一同で建設業を営む一族で、経営者に囲まれて育ちました。私の実家は分家のいわゆるちょっと裕福な家庭、しかも私は次男でしたので、中学時代までは「このまま悠々自適に人生を歩んでいくのかな」とぼんやり考えていたんです。

転機となったのは、一時期、父の会社がうまくいかなくなったことでした。ちょうど高校に上がった頃だったのですが、ものすごく衝撃を受けまして。それまでの甘かった生き方を見つめ直して「きちんと自分の人生を歩まないと駄目だ」という意識を持つようになりました。

大久保:起業されるまで多彩なご経験をされていますよね。最初はバンド活動に勤しんだと伺っていますが、もともとミュージシャンへの憧れがあったのでしょうか?

小野里:いえいえ、思いつきなんですよ。「バンドをやろう!」と思い立ち、でもやるからには真剣に取り組みたくて、高校生なのにドレッドヘアと顔面ピアスだらけにして活動を始めたんですね(笑)。

ただ、本気でプロを目指したものの、バンド仲間が徐々に就職するようになり辞めることにしました。

そのタイミングで、今もなお伝説のクラブとして語り継がれているヴェルファーレを運営していたエイベックスに遊びに行かせていただく機会があり、そこでエンターテインメントの世界に触れて魅了されたんです。

その場で「バイトさせてください!」とお願いしてヴェルファーレで働くことになりました。

大久保:ヴェルファーレ勤務のご経験があったとは驚きました。華やかな世界という印象がありますが、いかがでしたか?

小野里:夜のクラブというと穿った見方をされている方々も少なくないと思うのですが、非常に厳格で、ハイレベルの接客をモットーとしていました。

接客スキルや礼儀作法、振る舞いはもちろんですが、お客様に対する想いやサービスを提供させていただく姿勢など、ホスピタリティのすべてをアルバイトの私にもとことん叩き込んでくれました。グラスの持ち方から歩き方まで、すべて厳しく指導していただく毎日でしたね。

最初はフロア担当として接客から始めて、その後はバンド経験を活かしてDJをやっていました。ものすごく楽しい日々だったのですが、ふと「自分だけが楽しんでいるだけの人生のままでは良くないな」と。

そこで少し視点を変えて「自分自身が世の中に対して伝えていきたいことはなんだろう?」と考えたんです。その答えが「エンターテインメントやヤングカルチャーの世界」でした。

いわゆるビジネスエリートではなく「裏の日本社会」というか。当時、私はその生き生きとした世界を知ることができました。そしてそのときに周囲にいた仲間や友だちの表情が輝いていて、みんな本当に楽しそうだったんです。

「この世界をもっと伝えていかないといけないんじゃないか?」という想いがあふれ、「エンターテインメントやヤングカルチャーを広めるためにはどうしたらいいだろう?」と逡巡した結果が「インターネット」でした。

大久保:それから学校に通って勉強し、大手Web制作会社にご入社されたんですね。学生時代から培ったバイタリティを活かしてがむしゃらに働いたと伺っています。

小野里:とにかく仕事に没頭する毎日でした。畑違いの領域に飛び込みましたので、スキルや経験の不足を補おうと寝る暇もないくらい働きましたね。

徐々に信頼を勝ち取っていき、EC事業部長に任命されてからは主にアパレル企業などのECサイト制作に従事しました。

その事業を引き継ぐ形で独立し、2011年にバニッシュ・スタンダードを設立しました。

数億の負債を負い、原点を思い出す。不屈の精神でマンションの一室から再出発

大久保:起業後、非常にご苦労されたと伺っています。前職から引き継いだ事業をスケールさせていくのが難しかったということでしょうか?

小野里:いえ、根本的な原因は私の驕りと覚悟の無さだと痛感しています。

前職でEC事業部長に就任し成功したあたりから、徐々に調子に乗っていたところがあるんですね。「俺は天才なんだ!」みたいな勘違いをしてしまった。振り返ってみると非常にお恥ずかしいです(苦笑)。

その勢いで起業していますので「どんな信念をもって独立するのか?」「どういうサービスを世の中に提供したいのか?」「どのような環境を構築して従業員が仕事に邁進できるようにしたいのか?」といった明確なビジョンを描き、覚悟をもって会社を設立したわけではありませんでした。

正直に申し上げると、経営者になったりチームをつくることに酔いしれてしまったんです。それらはあくまでもビジョンを実現するための手段でしかないのに、目的になっていました。

当然のことながら、そんな会社には誰もいたくないですよね。徐々に喧嘩が増え、大事なメンバーが辞めていくようになりました。

大久保:同じケースじゃないにしても、起業家は誰もが失敗しながら少しずつ成長するところがありますので、当時のご状況を含め痛いほど理解できます。それからどうやって立て直しをされたのでしょうか?

小野里:あらゆる過程を経て数億の負債を負い、従業員は全員辞めてしまい、私1人になってしまったんです。

都落ちするようにマンションの一室に戻り、自殺を考えたこともありました。「死んですべて終わりにしよう。借金は保険金でチャラにできるかもしれない」と。

でも、絶対に駄目だと思いとどまって。そこで「なぜこんな失敗を犯したのか?」という観点で、これまでの経緯を深掘りしながら紐解いていきました。

その結果、自分自身のプライドや立場を優先してしまい、中途半端にEC事業を続けてしまったという要因にたどり着いたんです。「社長になってカッコつけて、一体なにやってんだ俺は」みたいな情けなさと向き合う日々でしたね。

それから「自分はなにを実現したかったのか?」を模索していくと、世の中のつまらない常識を⾰(あらた)めたかったんだなと。社名のバニッシュ・スタンダードの由来は「VANISH(消す) STANDARD(常識)」で、「世界中をおもしろく⽣きる⼈でいっぱいにしたい」という願いが込められています。

大久保:ヴェルファーレで働いていらっしゃった当時の、エンタメやヤングカルチャーの世界にいる方々が楽しそうに生きていたという原点に立ち返られたんですね。

小野里:はい。もう一度、私の夢である「世の中のつまらない常識を⾰める」を、世の中にも社内メンバーにも約束するんだという強い決意で、再出発することにしました。

それから「その世界観を実現するための志となる事業はなんだろう?」と熟考し、紆余曲折を経て誕生したのがスタッフテックサービス「STAFF START(スタッフスタート)」です。

好きを、諦めなくていい世の中を。スタッフテックサービス「STAFF START」誕生

大久保:「STAFF START」は非常に画期的なサービスですよね。特長についてお聞かせいただけますか。

小野里「STAFF START」店舗スタッフをDX化させ、自社ECサイトでオンライン接客を可能にするスタッフテックサービスです。

コーディネート投稿や動画、レビューなどのコンテンツを通じて店舗スタッフが顧客に接客を行い、その売上や貢献を可視化することで、個人や所属する店舗の評価につなげることができます。

大久保:アパレルをはじめとするEC事業のご経験を活かしていらっしゃるんですね。店舗スタッフの方々の待遇改善にもご尽力されていると伺っています。

小野里「STAFF START」のサービスビジョン「好きを、諦めなくていい世の中を。」です。

店舗スタッフは低賃金で働いていらっしゃる方々が多く、生活の質の向上やお子さんの誕生を機に、辞めざるを得ないというケースが少なくありません。

「好き」で始めた仕事なのに、あらゆる理由で断念しないといけない。だから私は「がんばっている人ががんばった分だけ報われてほしい」という気持ちがものすごく強いんです。

その改善策のひとつとして、弊社では既存構造の改革も同時に進めてきました。店舗スタッフの皆さんには、せっかく働くのだから「好き」を諦めずに楽しく続けてほしいと心から願っています。

働く人のインフラを目指す。業態・業種・職種を問わず横展開でサービスを拡大

大久保:今後の展望についてお聞かせください。

小野里:これまでアパレルを中心に展開してきた「STAFF START」ですが、今後は業態・業種・職種を問わずご利用いただけるようにしていきたいと考えています。

すでに現在、化粧品業界や家具・インテリア業界、家電業界、メーカーなど、幅広い分野からお声がけいただき、サービスを導入いただいています。

Amazonが本から出発し、取り扱い商品カテゴリーを飛躍的に増加させたように、弊社のサービスもあらゆる領域に転用できるんですね。接客はほぼ全業界に存在しますので、その部分で横展開を狙っているところです。

また世界展開の企画も進行中で、日本だけでなく海外進出を視野に入れています。世界中に広げていけるサービスだと確信していますので、積極的に海外の販路開拓・販路拡大も実現したいです。

これからも「働く人のインフラ」を目指し、サービスを強化していきます。

再出発時に気づいた幸せを忘れずに。なにもしない馬鹿より、挑戦する馬鹿でありたい

大久保:最後に、起業家に向けてメッセージをいただけますか。

小野里:私がよく口にしている言葉は「なにもしない馬鹿より、挑戦する馬鹿でありたい」です。

先ほども申し上げましたが、がんばっている人が報われるようにしたいし、誰もが夢を諦めない世界を実現したいと思っています。

私は数億の負債を背負い、「もう駄目だ」というところからここまでやってきました。現在は全額返済を果たしましたし、おかげさまで事業も伸びていて、上場に向けた準備を進めているところです。

なぜ復活できたのか?というと「本質的な幸せ」が心から理解できたからなんですね。

独立当初の驕りやプライドをすべて捨て、マンションの一室から再出発したとき、現在弊社の取締役CXOを務める大貫と出会いました。

彼は「STAFF START」の開発責任者としてUI/UX設計から開発まで担ってくれたのですが、毎日一緒に食べるランチが美味しいことや、彼とともに前向きな気持ちで仕事に取り組めることが本当に幸せだったんです。

なにもなくなってしまったからこそ、ささやかで、だけど起業家として、人として、なにより大切なものに気づくことができました。だからこそ私は、全力で走り続けてここまで来ることができたんだと思っています。

ぜひ起業家の方々には、大切なものを見失わないでいただきたい。そしてより良い世界の実現のために、私は皆さんと共にこれからもがんばっていきたいです。

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(取材協力: 株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役CEO 小野里 寧晃
(編集: 創業手帳編集部)



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