個人事業主とは?フリーランスとの違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説!

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個人事業主の特徴や必要な手続きなどを総まとめ

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この記事のAI要約!

●個人事業主とは: 法人化せず個人で事業を営む形態。開業届が必要。
●メリット: 開業が簡単・低コスト、経理がシンプル。
●デメリット: 社会的信用が低く、個人資産を守れない。
●必要な手続き: 開業届の提出、確定申告、健康保険や年金の変更。
●法人化の目安: 利益500万円以上で検討価値あり。

起業の形態や、働き方として「個人事業主」を検討しているあなた。
そもそも、個人事業主とはどんな存在なのか、ご存知ですか? 
法人との違いや、個人事業主がやるべき手続きについて「今ひとつ自信がない」という方もいると思います。

この記事では、これから個人事業主として開業しようか悩んでいる方や、個人事業主として事業を始めた方向けに、個人事業主についてわかりやすくご紹介します。
この記事を読めば、個人事業主として起業するメリットや、やるべき手続きがすべて分かります。
効率的に情報収集して、浮いた時間をビジネスに充ててくださいね。

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個人事業主とは?


そもそも、「個人事業主」とはどんな立場なのでしょうか。まずは定義をおさえておきましょう。

個人事業主とは、株式会社などの法人を設立せず、文字通り「個人」で「事業」を営む人のこと。税務上で区分される働き方で、個人事業主となるためには、税務署に開業届を提出する必要があります。個人とはいえ、必ずしも1人で事業を営まなければならないわけではなく、従業員を雇うこともできます。

フリーランスとの違い

「個人」で働くというと、「フリーランス」や「自営業」というワードも思い浮かぶ方もいると思います。フリーランスとは、特定の企業や団体と雇用契約を結ばず、独立して仕事を請け負う働き方。自営業は、自ら事業を経営する働き方のことです。フリーランス・自営業は、個人事業主よりも言葉の意味としては幅が広く、法人を設立することもできます。つまり、フリーランスや自営業の人のうち、会社を設立していない人が個人事業主と言えます。

会社員との違い

個人事業主と会社員との違いは、雇用主との関係性です。自分が雇用主になるのが個人事業主で、会社に雇われているのが会社員です。

雇用主になれば、働く時間も仕事内容も自分で決められます。「もっと収入が欲しい」と思えば、仕事の質を高めて収入アップを目指せるでしょう。ただし、個人事業主は会社員のように社会保険や雇用保険がなく、収入が安定しません。税金も自分で納めなければならず、手間がかかります。

社会的信用度で比べると、毎月給料が保証されている会社員に分があります。起業したばかりの個人事業主だと、ローンの審査に通りにくい点も問題です。しかし、個人事業主でも、時間はかかりますが成果を上げていけば信用を構築することができます。

会社員でも個人事業主になれる?

会社員であっても、税務署に開業届さえ出せば個人事業主になれます。開業届は、開業の1か月以内に出すことが原則ですが、開業届を出さなくても罰則はありません。

ただし、会社員が個人事業主になるのを禁止する就業規則を設ける会社もあるため、注意が必要です。会社に内緒で開業した際に、副業の収入が増えて税金の支払いが必要となれば、会社にバレるリスクがあります。

会社員が開業する場合は、会社の就業規則を確認しましょう。副業が認められているなら、副業の赤字を通算できて、給与所得控除と青色申告特別控除のダブル使いが可能となり税金面でお得です。

法人とは?

「法人」とは、「人間以外が法律上の権利義務の主体となることを認められたもの」という定義です。個人事業主とは、開業手続きや税務手続き、社会的信用の面で大きな違いがあります(詳細は後述)。

起業する方法について、詳しくはこちらの記事を>>
普通の人が起業するには。起業の成功に大切な5ステップを創業手帳の大久保が解説!

個人事業主の特徴


個人事業主にはメリットとデメリットがあります。これから個人事業主を目指す方は、両方の特徴を確認しておきましょう。ここでは、法人との違いを解説しています。
個人事業主と法人の違いを表にまとめてみました。

個人事業主 法人(株式会社の場合)
設立コスト(法定費用) なし 25万~30万
会計処理 比較的容易。個人で対応可能 煩雑。税理士へ依頼する可能性が高い
維持コスト 赤字の場合は課税なし 赤字でも毎年7万円は税金が発生
節税 経費計上できるものが少ない 経費計上できる項目が多い(経営者の給与、生命保険料など)
赤字の繰越 最長3年 最長9年
社会的信用度 低い 高い

法人と個人事業主の違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。どちらにすべきか迷っている場合などの参考にしてください。
◆法人とは?個人事業との違いや、向いているケースを解説します!

個人事業主のメリット

起業する際に悩むのが、この「個人事業主にするか」「法人として起業するか」ということではないでしょうか。個人事業主を選択することには、法人に比べて以下のようなメリットがあります。

  • 手間とコストを掛けず、すぐに起業できる
  • 経理作業がシンプルで、自分でも対応できる
  • 屋号で銀行口座を開設できる
  • 経費として計上できる接待費の上限がない

開業手続きは意外に簡単!費用も不要

個人事業主になるには、管轄の税務署、または都道府県税事務所や市町村へ開業届を提出するのみです。
手続きに費用はかからず、法人設立のようなさまざまな手続きはありません。
できれば、事業を始めてから1か月以内には開業届を提出しましょう。
開業届を出さずフリーランスとして働く場合もあり、開業届を出さないことへの罰則はありません。

経理事務などの負担も少なく自分で完結できる

個人事業を自分ひとりで行う場合、事業主は国民年金と国民健康保険へ加入するケースが多く、一般的な手続きだけで済みます。
個人事業で従業員がいなければ、給与計算やそれにまつわる事務もありません。

一方、ひとりであっても法人を設立し社長に就任した場合、健康保険や厚生年金などへの加入が必要で、保険料の半分を支払うことになります。
また、自分が給与を受け取る場合は、給与計算や所得税などの源泉徴収、年末調整も行って納付することが必要です。

屋号を用いて銀行口座を開設できる

開業届には屋号を記入する欄があり、金融機関で屋号を使った口座を開設できます。個人事業のお金は事業主のもので、税金面では事業用もプライベート用も同じ扱いです。

しかしお金の流れをはっきりさせるためにも、事業用とプライベート用は区別することをおすすめします。そのため、屋号入りの口座があると便利です。
屋号の入った口座は、確実に開業届を出して事業を行っている証明になり、融資などを受ける際にも金融機関から信頼を得やすくなります。

ただし、屋号を使った口座は必ずしも必要ではないため、行う事業に合わせて検討しましょう。

経費計上となる接待費の上限がない

個人事業主は法人ではないため、法人税の規制を受けず、法人税にある交際費等の上限の制約はありません。
法人税では交際費等といい、交際費・接待費・機密費・その他の費用をさします。
事業の得意先や取引先などへの接待や供応、慰安、贈答などの行為に使った費用がこれにあたります。

企業の規模によって計上できる交際費等の金額は異なります。例えば中小企業は800万円または、接待飲食費の50%のどちらかが上限です。

個人事業主のデメリット

一方、個人事業主を選ぶときの法人に比べた際のデメリットは、次のものが挙げられます。

  • 経営者に「給料」を支払えない
  • 社会的信用度が法人と比べると低い
  • 個人の財産を守れない

 

経営者(自分自身)に給料を払うことはできない

個人事業は、事業主の事業とプライベートのお金はどちらも同じ扱いであり、別々に分けて管理していたとしても事業主自身へ給与を支払うことはできません。
あくまで個人事業の経費は事業主から他人へ支払ったもののみで、場合によっては経費にできない可能性もあります。

法人の場合、自分自身へ給与を支払ってそこから生活費を出すケースがあります。
個人事業主は売上から経費を差し引き、残ったお金から「事業主貸」という経費ではない仕訳を使って引き出します。

社会的な信用度が株式会社などと比べると低い

開業届だけで始められる個人事業は、株式会社などの法人よりも信用度が低く、融資を受けるハードルは高くなりがちです。
日本政策金融公庫や地方自治体による補助金・助成金の方が、審査に通る可能性が高いともいわれています。

また、個人事業主は会社員と違って定期的な収入がなく、ローン契約やクレジットカードの発行は不利になりがちです。

個人の財産を守れない

有限責任・無限責任は、会社が倒産したときなどに出資者がどこまで責任を負うかという区分のことです。
個人事業の場合、出資者である個人事業主は無限責任を負うため、事業用に分けたお金が尽きたとしてもプライベートのお金で支払わなくてはなりません。
個人事業主の財産全てで負債を弁済しなくてはならず、個人の財産を守れないこととなります。

一方法人の場合は、会社によって有限責任と無限責任のどちらを負うかが変わります。
また中小企業は有限責任ですが、実際は社長が個人的に事業の借金を肩代わりするケースもあります。

個人事業主になるための手続き・準備すること


個人事業主としてビジネスを始めるには、開業や税務処理について手続きが必要になります。ここでは、個人事業主がやるべき手続きについて、見ていきましょう。

法人口座を開設する

税務署に開業届を出す前に、銀行で専用の口座開設をしておきます。口座名は、個人事業主で使う屋号や個人名です。必要であれば、専用の屋号や個人名によるクレジットカード作成もしておいてください。

法人口座について、詳しくはこちらの記事を>>
【2024年最新】法人口座開設のおすすめの銀行は? メガバンクやネット銀行口座開設の注意点、メリット・デメリットなど徹底比較!

屋号を作成する

屋号とは、個人事業主の名前のことです。法人であれば「〇〇株式会社」あるいは「株式会社〇〇」という名前を付けるでしょう。個人事業主で名前を付けたい場合は、屋号が対象です。ただし、個人事業主で必ずしも屋号が必要なわけでなく、個人名で活動するフリーランスの方もいます。

屋号で開業届を出すなら、事前に屋号を決めておいてください。

個人事業主の屋号について、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主の屋号は必要?決め方のポイントなどを徹底解説!

開業届を提出する

先述したように、個人事業主として事業を始めるときには、税務署に「開業届」を提出する必要があります。節税効果の高い「青色申告」をしたい場合は、開業届とともに「青色申告承認申請書」も提出するようにしましょう。

税務署での開業届に必要となる「個人事業の開業・廃業等届出書」は、税務署で入手可能です。用紙はパソコンを使い自分で作成することもできますが、その際は2部作成する点に注意してください。

また、任意で提出する書類は、必要に応じて用意します。

  • 所得税の青色申告承認申請書
  • 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
  • 源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書

 

詳しい開業届の書き方と提出の際の注意点については、以下の記事で確認してください。

5分で作成完了!開業届の書き方と税務署に提出する際の注意点

確定申告の準備をする

個人事業主は、1年ごとの所得(1月~12月でひと区切り)について、翌年3月15日までの間に確定申告をしなくてはなりません。この際、「白色申告」「青色申告」が選べるのですが、節税の観点から見て「青色申告」を選択するのがオススメ。青色申告を選択していくつかの条件を満たせば、65万円の控除を受けられるのです(白色控除は10万円)。

控除とは、利益(所得)とは見なされず、利益(所得)から差し引かれる金額のこと。所得税・住民税・国民健康保険税などの税金は、利益(所得)の総額に対してかかるので、実質的に支払う税金が少なくて済むことになるのでお得です。 

また、個人事業主の確定申告の際は、「節税できるもの」を上手に活用するのがポイント。例えば、

  • 家賃や水道光熱費の一部
  • 通信費の一部
  • 接待費
  • 勉強のための資料代

 

などを経費に計上することができます。経費に計上する額が増えると、それだけ利益(所得)が低くなり、この場合も納めるべき税金が少なくて済みます。

個人事業主の確定申告に関する詳細は、以下の記事を参考にしてください。
単式簿記と複式簿記の違い。青色申告・白色申告はどっちで行う?

個人事業主も必ず得する「青色申告特別控除」とは?

冊子版の創業手帳は、創業したての法人向けのノウハウを掲載していますが、確定申告の記事など、個人事業主も使えるものもあります。一度チェックしてみてください。

健康保険・年金に関する手続きをする

それまで会社員として働いており、退職して個人事業主になる場合は、国民健康保険加入または健康保険の任意継続のどちらかを選びます。
国民健康保険への加入は退職した日から14日以内、健康保険の任意継続を選んだときは退職した日の翌日から20日以内に手続きをしましょう。

厚生年金は継続加入ができないため、国民年金への加入が必要です。会社員の頃、被扶養者として厚生年金に加入していた配偶者も国民年金への加入手続きを行います。
もしひとりでも従業員を雇用した場合は、雇用保険と労災保険へ加入しましょう。業種によっては従業員数により、厚生年金などへ加入する手続きが必要です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済の加入を検討する

個人事業主が加入する国民年金は、会社員の頃の厚生年金よりも保障が薄く、将来受給できる年金額が少なくなってしまいます。
手厚い保障を受けるには、国民年金基金への加入や個人型確定拠出年金(iDeCo)の利用も選択肢のひとつです。

iDeCoとは個人で運用する年金をいい、国民年金基金との併用ができます。なお、積立金の全額が所得控除の対象になるため、節税にも役立ちます。

小規模企業共済は、個人事業主のための退職金と呼べる制度です。
掛け金を自分で設定でき、事業を廃業した場合に受け取れます。iDeCo同様、掛け金は全て所得控除の対象になります。

個人事業主のよくある疑問Q&A

こちらでは、個人事業主の方からよくある質問をまとめています。ぜひ参考になさってください。

個人事業主でも補助金・助成金は利用できる?

国や地方自治体、商工会議所などが募集する補助金や助成金は、個人事業主も対象になるものがあります。
例えば、地方自治体による創業支援金や、ITツール導入費用の補助金などです。

個人事業主が使える補助金・助成金について、詳しくはこちらの記事を>>
【2024年最新】個人事業主が使える給付金の種類を紹介

個人事業主が支払う税金の種類は?

個人事業主になったとき、納めるべき税金の種類は以下のとおりです。ただし場合によって納めずにすむ税金もあるため、基準を知っておきましょう。

税金の種類 課税の条件
所得税 所得のある人全て
住民税 一定の所得がある人に前年の所得に応じて
消費税 2年前の売上が1,000万円を越えた事業者
個人事業税 事業所得で290万円を超えた、法定業種の70種にあたるもののみ

創業手帳では税金カレンダーを無料配布しています。こちらは個人事業主や法人など全13パターンの納税スケジュールを確認できますので、ぜひご自分にあった税金カレンダーを確認してみてください。


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個人事業主の納税スケジュールについて、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主の納税スケジュールまとめ!支払う税金の種類や滞納のリスクについても解説

個人事業主でも税理士は必要なのか?

税理士が必要かは、売上げや業種などの現在の状況・会計処理に対する不安などの悩み・事業拡大を考えているなど将来への展望により、異なります。
迷う場合は、現在の状況を見直し、税理士の力が必要と感じれば顧問契約を検討しましょう。

個人事業主に税理士が必要か?について、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主に税理士は不要?税理士に依頼するメリット・デメリットも解説

個人事業主から法人に「法人成り」したいと考えたら


個人事業主として事業を始め、あるタイミングで法人化することもできます。これを「法人成り」と呼びます。

すでに、個人事業主と法人の違いを述べたとおり、法人成りの大きなメリットは、法人になると、開業や維持にコストは掛かるが「節税の幅が大きくなる」という点です。つまり、コストよりも節税メリットが大きくなる境界を見極めれば、法人成りしたほうがお得と言えるのです。

一般的には、利益が500万円を超えたくらいをめどに検討するのがよいとされています。
悩んだ場合は、税理士に相談するのもひとつの方法です。事業規模が拡大してくると、自身のリソースも圧迫されるため、会計や税務に関しては、専門家に相談することをおすすめします。融資のサポートや、経営のアドバイスなど、心強い味方としてサポートしてくれるでしょう。
法人成りの手続きについては、以下の記事をご覧ください。

個人事業主が「法人成り」をする5つのメリットと手続きについて解説!

法人成りを考えるということは、事業規模が大きくなってきたことを意味します。法人になれば、信用度が増し、融資の幅が広がります。資金調達手帳(無料)では、資金調達の方法を詳しくまとめています。さらに事業を大きくするには資金調達が必要となってきます。この先のステップを考えるにあたって、資金調達手帳を参考にしてみてください。

まとめ・個人事業主になるメリットを把握して節税対策など検討しよう

新たな事業のスタートとして、「個人事業主」という働き方を選ぶには、さまざまなメリットがあることがおわかりいただけたと思います。

ビジネスだけでなく、開業や税金についての手続きも必要になりますが、この記事をはじめとして効率的に情報収集することで、手間は大いに削減できるはずです。

冊子版の創業手帳は、創業したての法人向けのノウハウを掲載しています。この記事によって知った個人事業主のメリットと、法人のメリットを比較し、ご自身に合った働き方を選んでみるのもいいのではないでしょうか。

さらに、創業手帳では、会社起業時の「すべきこと」がわかる創業カレンダー(無料)を提供しています。業種を問わず必要な「創業準備の基本」をほぼ網羅しています。書き込める仕様になっていますので、ぜひ利用してみてください。

新たにリリースした節税の基本ポイントがわかる!税金チェックシート(無料)もおすすめです。税金の種類や、重要な法令や制度なども解説しています。ぜひあわせてご利用ください。


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(執筆:創業手帳編集部)

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