個人事業主も必ず得する「青色申告特別控除」とは?条件などわかりやすく解説!

創業手帳

青色申告すると「青色申告特別控除」で節税できるので絶対おすすめ

個人事業主の方も法人の方も、確定申告をしようとすると必ず「青色申告」「白色申告」という言葉を聞くと思います。「何が違うかわからない…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「青色申告」には、起業する方なら知らないと損をするメリットがたくさんあります。今回はそのひとつ「青色申告特別控除」についてご紹介します。

また、「創業手帳」では「はじめてでもわかる確定申告ガイド」をご用意しました。青色申告・白色申告の違いはもちろん、所得税と消費税のどちらの確定申告でも基本となる申告・納付方法、全体の流れなども説明しています。無料ですので、ぜひお気軽にご利用ください。



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青色申告で得られる「青色申告特別控除」とは?

青色申告特別控除とは、青色申告を用いる申告者が得られる恩恵です。控除とは一定の金額を差し引ける仕組みであり、主に支払う税金額に影響します。

例えば、所得税は年間の所得がいくらあるかで決まり、所得額が大きいほど納める税金も高くなるのが基本です。控除をうまく使えば、所得額から一定金額を引くことができ、節税効果を得られます。

青色申告特別控除も、納める税金を節約するための重要な仕組みのひとつです。

青色申告の具体的なメリット

青色申告を使うと、青色申告控除を含めて次のようなメリットを享受できます。

  • 最大で65万円の青色申告特別控除が受けられる
  • 特定の条件下であれば配偶者や親族への給与を経費にできる
  • 赤字が出ても3年間は繰り越せる
  • 貸倒引当金の繰り入れによる経費計上ができる

青色申告は会計処理が複雑な一方で、節税につながるさまざまな特典が用意されています。なかでも青色申告特別控除は、最大で65万円の控除額を適用できるため、高い節税効果があるのです。白色申告にはない大きな控除額となるので、確定申告の際は青色申告を有効活用していきましょう。

最高額65万円!青色申告特別控除を受けるための各要件

青色申告特別控除は、「黒字決算の青色申告者」であれば誰もが受けることのできる控除です。控除金額には10万円と55万、65万円の3段階があり、節税効果がより大きい最高65万円の控除を受けるには、特定の条件をすべて満たさなくてはなりません。

控除額ごとに、青色申告特別控除を受けるための条件についてみていきましょう。

65万円の特別控除を受けるには

最大額となる65万円の青色申告特別控除を受けるには、以下の条件をすべて満たさなくてはなりません。

  • 事業所得がある、もしくは事業規模の不動産所得がある
  • 複式簿記など正規の簿記を用いて記帳する
  • 貸借対照表と損益計算書を作成する
  • 必要書類を揃えて期日内に確定申告する
  • 現金主義による所得計算の特例を選択していない
  • 仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存を行う、もしくはe-Taxで確定申告を行う

事業で得た所得を複式簿記で記帳するだけでなく、貸借対照表や損益計算書などの必要書類も作成しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法によるところの「優良な電子帳簿」で特定のデータを保存するか、e-Taxでの確定申告を行うことも必須要件です。

ひとつでも要件が欠けてしまうと、55万円または10万円の控除のいずれかしか受けられないため、綿密に準備しておきましょう。

青色申告の記帳方法については下記記事も参考にしてみてください。
>>単式簿記と複式簿記の違い。青色申告・白色申告はどっちで行う?

55万円の特別控除を受けるには

55万円の青色申告特別控除を受ける条件は、65万円の控除要件のうち、1から5までを満たすことです。6の「仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存を行う、もしくはe-Taxで確定申告を行う」を満たさない場合、55万円の青色申告特別控除が適用されます。

10万円の特別控除を受けるには

55万円の控除要件も満たしていなければ、青色申告特別控除の最大額は10万円になります。複式簿記での記帳も必須ではなくなり、単式簿記で帳簿付けを行っても構いません。また、必要な決算書は損益計算書のみとなります。

申告期日については、控除額に関係なく期限を守るのが鉄則です。遅れるほど延滞税などのペナルティリスクが高まるので、必ず期日内に確定申告を行ってください。

青色申告特別控除の対象になる所得の種類とは

青色申告特別控除の対象になる所得は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3つです。所得の種類によって最大控除額が異なるため、注意してください。

事業所得

農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業のうち、いずれかで発生した所得を「事業所得」といいます。厳密には、事業で得た収入から経費を差し引いた金額のことです。

青色申告特別控除の対象であり、条件を満たせば最大で65万円の控除を受けることができます。

不動産所得

「不動産所得」は、土地や建物の貸し付けなどで発生する所得のことです。借地権をはじめ不動産にまつわる権利のほか、船舶や航空機の貸し付けによる所得も該当します。

事業所得と同じく、経費を差し引いた額で申告しましょう。不動産所得も、最大65万円の青色申告特別控除の対象です。

山林所得

山林の伐採による譲渡、もしくは立木のままで譲渡した際、発生した所得は「山林所得」に分類されます。山林の取得から5年以内の譲渡で生じた所得については、事業所得または雑所得になる点に注意が必要です。

経費を差し引けるのは事業所得・不動産所得と共通しています。ただし、青色申告特別控除の最大額は10万円までで、65万円・55万円の控除の対象ではありません。

山林所得には、収入から最高50万円を差し引ける特別控除額が設けられています。青色申告特別控除とは別に用意されており、両者が同時に適用されれば合計60万円の控除が受けられる仕組みです。

青色申告特別控除はどこから引く?

実際に青色申告特別控除を適用する際は、損益計算書の作成で算出した所得金額から差し引くことになります。収入から必要経費などを引いて、決算書上で求めた所得金額に適用しましょう。控除用の会計仕訳をする必要はありません。

具体的な計算式は青色申告決算書にも記載されており、以下の式で求めることができます。

青色申告特別控除前の所得金額ー青色申告特別控除=所得金額
事業収入800万円、経費150万円、青色申告特別控除65万円の場合
800万ー150万=650万円(青色申告特別控除前の所得金額)
650万ー65万=585万円(所得金額)

青色申告特別控除を受けるための手続きとは

青色申告特別控除の特典を受けるには、納税地の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、承認を得る必要があります。青色申告を行うのに不可欠な申請で、開業届を出していれば手続き可能です。

一度承認を受ければ、不正行為などで取り消されたり、取りやめを届け出るまでは継続的に青色申告者として扱われるので、申請書を毎年提出する必要はありません。

青色申告承認申請書の提出タイミングによって、いつから青色申告が使えるかが変わってきます。特に当年度分から控除を受けたいなら、提出期限があるため気をつけましょう。

当年度・初年度分から青色申告を行う場合

青色申告承認申請書は、その年の3月15日までに提出することで、当年度分の確定申告から青色申告が使えます。例えば、2024年(令和6年)3月15日までに申請して承認されると、2025年に確定申告する2024年度(令和6年度)分から青色申告が利用可能です。

個人事業主の方で、これまで白色申告をしていて新たに青色申告を申請する場合は、その年の3月15日までに提出します。

新規に起業した方の場合は、業務を開始した日から2ヶ月以内に申請して承認されると、起業初年度分から青色申告が可能です。1月15日までに起業した方の申請期限は、通常通り3月15日となります。

法人の場合は、原則「青色申告にする事業年度開始の日の前日」が期限ですが、起業初年度なら「設立日以後3ヶ月を経過した日」または「その年度末のいずれか早い日」までに申請して承認されれば、初年度から青色申告ができます。

翌年度分から青色申告を行う場合

当年3月15日を過ぎて青色申告承認申請書を提出すると、翌年度分の確定申告から適用となります。2024年3月16日以降に提出したのであれば、2025年度分の確定申告から青色申告となるのです。そのため、2024年度分は白色申告で行います。

青色申告承認申請自体は、個人・法人を問わずに年間を通していつでもできます。3月15日を過ぎても罰則などはありませんが、当年分や起業初年度分から青色申告を使いたい場合は、期日内に提出してください。

65万円の青色申告特別控除が適用外に!どんなケース?

細かい条件まで把握しておかないと、思わぬところで65万円の控除から外れるケースがあります。次のような場合は、65万円の青色申告特別控除の要件を満たしていないことになるため、注意してください。

  • 不動産所得に事業性が認められない場合
  • 確定申告の期日に間に合わなかった場合

事業性の判断に迷う不動産所得に、建物の貸し付けにかかるものがあります。

貸間・アパート等に関しては、独立室数がおおむね10室以上あることが、事業として扱う目安です。独立家屋なら、おおよそ5棟以上を目安としましょう。

ほかの要件をすべて満たして準備していても、結果的に申告期日に間に合わなければ65万円の青色申告特別は受けられません。慌てて準備をすると適用外になる恐れがあるので、余裕を持って着手してください。

青色申告で、どのくらい納税負担額が減るの?

ここまで青色申告特別控除の概要を解説しましたが、「結局のところ白色申告と青色申告でどのくらい納税負担額が減るのか」が最も気になるポイントではないかと思います。

税額計算は、事業や個人的な状況など様々な要因が関わるため一概には言えないものですが、ここではイメージとして、青色申告特別控除と所得税だけに注目して単純化した計算をしてみましょう。

青色特別控除65万円の適用例と白色申告との比較

売り上げ500万円・経費等150万円で、65万円の青色申告特別控除が適用された場合のイメージが以下になります。同じ状況で白色申告をした場合に、納める所得税額がいくら違うかもみてみましょう。

青色申告 白色申告
売上(収入)金額 5,000,000円 5,000,000円
売上原価及び経費 1,500,000円 1,500,000円
青色申告特別控除前の所得金額 3,500,000円 —―
青色申告特別控除額 ▲650,000円 —―
所得金額 2,850,000円 3,500,000円
社会保険料等の所得控除 ▲650,000円 ▲650,000円
課税される所得金額 2,200,000円 2,850,000円
所得税率(10%)と控除額 ▲97,500円 ▲97,500円
納める所得税額 122,500円 187,500円
納める所得税の差額(白色申告-青色申告) 65,000円

※実際は復興特別所得税2.1%が加算されます。
※社会保険料も所得金額に応じて変わることがあります。

65万円の青色申告特別控除が適用されると、同じ経営状態で白色申告を行った場合より、65,000円もの節税効果があることになります。

この例では、適用される所得税率はどちらも変わりませんが、青色申告特別控除額を差し引くことで課税される所得金額が減ると、適用になる所得税率が一段階下がることもあります。また、所得金額から計算される住民税などにも影響するのです。

65万円の青色申告特別控除を差し引くことで、節税になることがご理解いただけると思います。実際には、青色申告に用意されている他の優遇も適用できれば、メリットはより大きくなるはずです。

確定申告の提出期限

65万円の青色申告特別控除を受けるには、確定申告の提出期限を順守しなくてはなりません。所得税法によると、翌年2月16日から3月15日までが確定申告の期限です。2024年度分を申告する場合、2025年3月15日までには提出しましょう。

期日を過ぎてしまうと、最高額の青色申告特別控除が受けられないだけでなく、延滞税といったペナルティリスクも高まります。控除額の要件に関わらず、基本のルールとして確定申告の期日は守るのが原則です。

まとめ・青色申告特別控除は個人事業主にとって有効な節税対策

記帳や会計処理に苦手意識がある方も多いかもしれませんが、低価格な会計ソフトやオンラインサービスの普及で、青色申告の条件を満たすことはさほど難しいものではなくなっています。税務署でも相談や指導をしていますし、各地の「青色申告会」など青色申告をサポートする団体もあります。

青色申告には、今回ご紹介した青色申告特別控除だけでなく様々な節税メリットがあるので、積極的に活用しましょう。

「創業手帳」では、初心者でも理解しやすい「確定申告ガイド」を提供しています。青色申告と白色申告の違いから、所得税と消費税の確定申告における基本的な申告手順や納税方法、プロセスの全体像などを分かりやすく解説しています。このガイドは無料で利用できますので、お気軽にお申し込みください。



法人税や確定申告に必要な青色承認申請書を提出し、メリットを最大限に享受しよう!
法人/個人の青色申告と白色申告の違い、それぞれのメリット・デメリットとは

(編集:創業手帳編集部)

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