個人事業主が「法人成り」をする5つのメリットと手続きについて解説!

創業手帳

法人になる場合に知っておきたい注意点も紹介します

(2017/02/22更新)

個人事業が拡大してきたら会社を設立、つまり「法人成り」を検討している人も多いのではないでしょうか。
確かに「法人成り」には、節税など様々なメリットがあります。しかし、場合によっては「法人成り」をせず、個人事業主のまま事業を進めた方が良い場合もあります。

今回は「法人成り」を検討している人のために、「法人成り」のメリット・デメリットや手続きについて解説していきます。

本文を読む

「法人成り」とは

法人成りとは、個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立し、事業を法人に変更することを指します。

節税や、信頼性の向上、資金調達など、法人成りには多くのメリットがあります。個人事業主として開業したのち、さまざまな理由から法人成りを検討する方もいることでしょう。

しかし、そもそも法人と個人事業主は何が違うのか、その違いを明確に説明できる人も少ないのではないでしょうか。
そこで、まずは法人と個人事業主にはどのような違いがあるのか、さらに、法人への変更にはどのような手続きが必要なのかを見ていきます。

法人と個人事業主は何が違う?

法人と個人事業主では、設立の手続きの部分で大きく違いがあります。
法人を設立する際にかかる費用は、株式会社だと約21万円、設立までに約2週間がかかります。

一方、個人事業主の場合は届け出を提出するだけで事業を開始することができるので、初期費用を抑えることや、事務手続の簡単さなどの点で有利です。

しかし法人は、そういったコストを負担しているという点から、事業への本気度が高いと見られて社会的信用を得やすいと言われています。そのため、一般的には、社会的信用に伴う資金調達や採用、取引先の獲得など、事業展開・拡大に際しては法人の方が有利です。

より詳しい法人と個人事業主の違いに関しては下記からご覧ください。
>>法人とは?個人事業との違いや、向いているケースを解説します!

法人成りをする5つのメリット

1.信用度が高くなる

一般的に、個人事業主よりも法人のほうが社会的な信用があると言われています。法人は登記簿謄本により、会社の所在地や資本金、役員などの重要事項を確認できるからです。個人事業主は店舗の所在地などを登記する必要がないため、法人に比べると信用度が低くなります。

また、取引先によっては法人としか取引をしないというところもありますので、法人になることで販路は拡大する場合もあります。

2.有限責任になる

個人事業主は個人であるため、無限責任を負います。
無限責任とは、事業に失敗した場合、負債をすべて返済する必要があるということです。

対して法人である株式会社や合同会社の場合は、有限責任です。
有限責任だと、倒産などになった場合、出資した範囲内でのみ返済の責任を負います。
これにより個人事業主よりも負債の負担が減るため、再出発がしやすいと言えます。

3.節税できる

法人成りによる節税メリットには主に4つあります。

役員報酬(給与)に”給与所得控除”が適用される

社長に役員報酬を支払うと、経費として計上することができます。これにより、法人の収益から役員報酬分が経費として引かれ、残った利益に法人税がかかります。

そして、役員報酬自体にも給与所得控除というものがあり、最低65万円、最高220万円が控除されます。
この控除は、給与所得者が自身の給与から仕事に必要なものを買ったりするであろうことを考えて、概算で経費として引くものです。

つまり、役員報酬を支払うことで、経費として二度計上できるのです。
個人事業主だった時は、全体の収益から経費を引き、そこに所得税がかかっていました。経費が二度引かれている分、法人のほうが節税になります。


退職金を損金とすることができる

個人事業主の場合は、退職金を支払う時は経費に計上することができませんでした。
しかし、法人の場合は、適正額であれば損金にできます。

欠損金の繰越控除可能期間が9年になる

赤字は翌年以降に繰越し、翌年以降の事業所得と相殺することができます。個人事業主の場合は、この繰越期限が、翌年以降3年間となっています。

しかし法人の場合は、9年間、事業年度によっては10年間となっています。大きな赤字が出た場合は、3年では相殺できないこともありますので、期間が長いほうがお得です。

消費税の納付が最大2年間免除される

法人成りをすると、消費税の納税が免除されます。ただし、免除されるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。この条件を満たしていれば、法人成りした後に、最大2年間免税が適応されることになります。

条件1. 資本金1,000万円未満であること

まず、資本金が1,000万円以上で設立された法人は、設立事業年度から課税事業者となる特例規定があります。
消費税の免除を狙っているのであれば、法人成りする際の資本金は1,000万円未満とするように注意しましょう。

条件2. 設立1年目の前半6カ月で売上1,000万円を超えないようにすること

国税庁は“前年の前半6カ月の課税売上高が1,000万円を超えた場合、その事業年度から課税事業者となる”としています。
つまり、設立1年目の前半6カ月の課税売上高が1,000万円を超えなければ、2年目も納税が免除されます。

>>消費税は2年間の免税や簡易課税制度を活用しよう!起業/法人登記予定者は要チェック。

2年前の課税売上高、または前年前半の課税売上高が1,000万円を超えなければ、消費税の免税事業者となります。つまり、課税事業者になる直前のタイミングで法人成りすれば、さらに1年間は消費税の納付が免除されることになり、都合2年間、消費税が免除されることになります(詳しくは後述します)。

4.事業を継承できる

個人事業主の場合は、事業主がなんらかの理由で仕事ができなくなってしまうと廃業の恐れがあります。
もちろん事業主の子が店を継ぐといった場合もありますが、その場合でも子が新たに開業届を出す必要があります。

認可などは事業主である個人が対象になっているので、受け継ぐことはできません。新たに認可を受ける必要があります。

対して、法人の場合だと法人自体が対象となっています。そのため社長が仕事を続けられなくなったとしても、新しい社長に交代するだけで事業を継続することができるのです。

5.決算月を任意に決められる

個人事業は、毎年原則3月15日までに確定申告をすることが定められており、年始めの忙しい時期に限られた時間で確定申告の準備が必要になります。
対して、法人だと決算月を自由に決められるので、比較的忙しくない時期に決算の手続きを行うことができます。

決算月の決め方については下記を参考にしてみてください。
>>決算期を決めるときは◯◯を考慮|失敗しない決算月の決め方

法人成りをする5つのデメリット

では、法人成りをすることで考えられるデメリットとは、どのようなものでしょうか?

1.設立費用がかかる

株式会社を設立する場合は、最低約25万円(電子定款の場合は約21万円)かかります。
合同会社の場合は、最低約10万円(電子定款の場合は約6万円)かかります。
また、設立の手続きを司法書士などに依頼するのならば、さらにその分の費用が必要です。

2.社会保険に加入しなくてはならない

法人は社会保険(健康保険と厚生年金保険)への加入が義務です。そして会社は社会保険料の半分を負担しなければなりません。そのため、従業員を雇うごとに、必要経費が増えてしまいます。

また、社長ひとりの会社で考えたとしても、個人事業主だった時の国民健康保険+国民年金の保険料よりも社会保険料のほうが高額になります。
しかしその分、国民年金よりももらえる年金が多くなることや、遺族年金や障害年金なども充実するので保障は手厚くなっています。

詳しい社会保険については下記を参考にしてみてください。
>>起業家必見!知らないとヤバイ「社会保険」「労働保険」入門

3.事務の負担が増える

個人事業の時よりも提出書類が増え、なおかつ複雑になります。
そのため、自力でこなすのが難しくなった時には税理士と契約することに。税理士に支払う報酬が負担となってきます。

とはいえ、きちんとした税理士と契約できると効果的な節税を実施できるので、むしろプラスに働くこともあるかもしれません。
また、事務手続きなどから開放されることで本来やるべき仕事だけに取り掛かることができることを考えると、メリットともいえるでしょう。

4.赤字でも税金がかかる

個人事業主の場合は、赤字だと年数千円程度の個人住民税の均等割りしか生じません。
しかし法人だと、法人住民税の均等割りもあるため、最低7万円を納税しなくてはなりません。

詳しい法人住民税については下記を参考にしてみてください。
>>法人税・法人住民税・法人事業税の違い?知っておきたい法人税の基本構造

5.役員報酬(給与)が毎月同額になる

個人事業主の場合、稼いだお金は自由に使うことができました。
しかし法人だと、会社のお金と個人のお金が明確に分かれ、給料については役員報酬として会社から社長に支払う形になり、これが個人の所得となります。

この役員報酬は、決算日の翌日から3カ月以内に決定した「定期同額給与」しか経費として認められません。つまり、役員報酬を一年の間に自由に決めることはできないのです。

もし決算日から3カ月過ぎたあとに役員報酬の金額を変更してしまうと、経費として計上できなくなります。

法人成りした場合は、自身の報酬についてしっかりと計算し支払う額を決めましょう。

>>役員報酬とは?決め方と注意点、法人税への影響を解説します。

法人成りをするタイミングは消費税の課税対象事業者になる前がおすすめ

ここまで法人成りのメリット・デメリットについて解説してきましたが、有限責任により負債の負担が減ることや、消費税が免除されることは、非常に大きなメリットだと言えるでしょう。
では、法人成りをする場合、どのようなタイミングで法人成りをすればよいのでしょうか?

法人成りをするタイミングを判断する基準として、売上高があります。
2年前の課税売上高か、前年の前半6カ月の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務がある課税事業者となります。そのため売上高が1,000万円を超えてしまった個人事業主は、消費税を支払わなくてはならなくなります。

この課税事業者となる少し前が、法人成りをする時期としておすすめです。

法人成りをして新設する法人は、前の個人事業主とは別の人格という扱いになるため、個人事業主時代の売上高は関係ありません。そのため、新設法人も特例である納税義務の免除が適用されます。
つまり法人成りをすると、最大2年間は消費税の納税義務が免除されるというわけです。

法人成りに必要な手続き

法人成りの手続きを簡単に説明すると、3つの手順があります。

1.法人を設立する

法人の設立については、法人成りするからといって特別な手続きはありません。
法人成りする場合でも、一から株式会社や合同会社などを設立するのと同じです。

法人設立の手続きに関しては下記からご覧ください。

>>【保存版】株式会社設立の「全手順」と流れを詳しく解説します
>>【完全版】合同会社(LLC)設立までの手順・合同会社のメリットを解説
>>【保存版】はじめてのNPO法人設立|メリット、設立費用、期間、条件は?

2.資産を移行する

法人を設立したあと、事業に関わるすべての資産の移行が必要です。
移行には”売買契約”、”現物出資”、”賃貸”の3つの方法があります。
それぞれの方法には、手続きの難しさや、税法上の取扱いなどの違いがあります。
また、契約関係も法人名義に変更することを忘れてはいけません。

3.個人事業の廃業手続き

法人を設立し資金を移行し終えたら、つぎは個人事業の廃業手続きを行います。
所轄の税務署に提出するものは以下の書類です。

  • 個人事業の開業届出・廃業等届出書
  • 青色申告の取りやめ届出書(青色申告で確定申告をしていた場合)
  • 事業廃止届出書(消費税を支払っていた場合)
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(従業員などを雇い給与を支払っていた場合)

あわせて、都道府県税事務所へ「※事業廃止(廃止)等申告書」を提出します。
※都道府県により書類の名前が異なることがあるので注意してください。

個人事業主が法人成りをするときの注意点

1.資産の移行を事前に試算する

前述したように、資産の移行には”売買契約”、”現物出資”、”賃貸”の3つの方法があります。
これらの方法には、納税金額や手続きの違いがあります。事前に試算をして損をしないように注意しましょう。

2.最後の確定申告を忘れない

法人成りをするときは個人事業を廃業することになりますが、その際に、廃業届などの書類を提出するだけで安心していてはいけません。

個人事業主としての最後の確定申告をする必要がありますので、忘れずに行うようにしましょう。また、この確定申告では、法人への資金の移行に伴う譲渡所得なども計上することになるので注意が必要です。

3.廃業後の事業税の支払い

確定申告のほかにも、廃業後1ヶ月以内に、所得税の申告とは別に事業税の申告の必要もあります。確定申告とあわせて、忘れないようにしましょう。

この事業税は確定申告後の8月頃に通知がきて支払うことになります。つまり、廃業後の支払いになるため、事業税を経費として処理できないのです。
そこで、廃業した年の所得税の確定申告は、事業税の見込額を経費として計上できるという特例があります。該当する方は税務署や税理士などに一度相談してみると良いでしょう。

まとめ

個人事業から法人成りすることで様々なメリットが得られます。
法人化で得られるメリットを考えれば、制約が多少増えることや、設立手続きなどの処理が増えることは大きなデメリットではないと言えます。

今回ご紹介した費用や手間などのメリットやデメリットをよく鑑みて法人成りを検討してください。

(編集:創業手帳編集部)

この記事に関連するタグ

創業時に役立つサービス特集

リアルタイムPVランキングトップ3

カテゴリーから記事を探す