インシュアテックで保険業界をアップデート!3回の資金調達で確実にステップアップ

創業手帳

「保険業界をアップデートする」をミッションに保険営業のDX化に取り組む若きリーダー尾花氏にインタビュー

インシュアテック(InsurTech)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。古くからの慣習も多い保険業界に、テクノロジーを取り入れることでより便利なものにしていこうという動きです。コンサル出身の尾花氏がインシュアテックで起業したのは、保険業界の課題を把握し、マーケットの大きさや確かさを考えてのことでした。

起業に至る経緯や3度にわたる資金調達の詳細などについてお聞きしました。

尾花 政篤(おばな まさしげ)
株式会社hokan 代表取締役
東京大学経済学部卒。株式会社ベイカレント・コンサルティングにて、主に保険会社を対象としたマーケティング・IT戦略立案やIT投資管理などに従事。2017年8月に株式会社hokanを設立。保険業界でのコンサルティング経験およびIT企画経験を活かし、保険代理店向けの顧客・契約管理システムhokanを開発・提供。ミッションである”保険業界をアップデートする”を実現すべく、金融街大手町にあるFINOLABでのInsurTech Startup Meetupの共催や保険APIの普及を目指すInsurance API Organizationの共同運営など保険業界全体でのテクノロジー活用推進にも取り組んでいる。

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インシュアテックで起業した理由

ー本日はよろしくお願いします。最初に、御社のサービスはどんなものなのかをご説明いただけますか。

尾花:どうぞよろしくお願いします。例えば「保険見直し本舗」さんのような保険代理店向けに、顧客管理や営業管理の機能を提供するクラウドサービスです。複数のシステムを使うことなく、hokanのみで営業活動や事務処理を完結することを目指しています。

ーインシュアテックという言葉はあまり聞いたことがなかったのですが、海外では既に盛んなのでしょうか。

尾花:そうですね。インシュアテックというのは保険×テクノロジーのことです。海外では巨額の調達を実施したスタートアップのプレイヤーが多数存在しています。例えばアメリカの「Lemonade(レモネード)」という会社は、累計481.5百万ドルを調達しており、2020年に上場し日本でも話題になりました。Mayaと名づけられたAIとチャットすることで保険に入る作業を進めることができ、保険金の請求もチャットで行うことができます。ご覧になればわかると思いますが、ホームページなども今までの保険会社のイメージをくつがえすものです。

ー保険というのは日本人にとっては古くから変わらないイメージと言いますか、未だに紙ベースの契約書が必須という印象があるのでそれは驚きですね。尾花さんは、なぜそのインシュアテックの分野で起業しようと思われたのでしょうか?

尾花:2013年に新卒で就職し、ITのコンサルタントをしていました。そこで保険業界のプロジェクトを通して保険業界を知っていくことになるのですが、どこか後ろ向きなプロジェクトが多かったんですね。例えば、某銀行のシステム不具合は記憶に新しいと思いますが、合併が繰り返されてきた組織のシステムは脆弱になりがちなんです。保険会社も似たようなところがあり、合併が繰り返されてきた歴史があるので、合併に伴う後処理などのプロジェクトが多く、前向きに何かを進めていこうというものに時間やお金を割きづらい状態になっていました。

保険業界の方々は思いやりがある方が多くいらっしゃいましたが、でも日々接している中で、こういった業務に向き合い続けていらっしゃるけれど、果たしてモチベーションを保てているのだろうか?と疑問に思うことが増え、この業界を何とかしたいという思いが生まれてきました。その後、経営者になりたいという夢を叶えるために、事業案を練りました。迷走もしましたが、自分が取り組むべき領域はどこなのかを真剣に考えた結果、インシュアテックだということになったのです。

コンサルとして関わってきた結果、業界的な課題が何なのかということがわかっていましたし、2016年当時、海外では盛り上がり初めていましたが、日本でインシュアテックのスタートアップは1社もなかったのです。

ーなぜ分野を保険代理店に絞ったのでしょうか。

尾花:保険業界は本当に巨大かつレガシー産業なので、生半可な気持ちでは参入できないと思っていました。また、保険は商品としても非常に独自性が強いですよね。ただ、保険代理店に向けたシステム開発はあまり進化してこなかったのです。

例えば保険代理店さんにどんな保険に入ろうかと相談に行くと、保障に必要な金額を算出するために、家族関係や生活費がいくらかかっているのかなど、他業種より個人的な情報を聞かれます。こんな商品は他にないと思うんですが、それだけ繊細な情報こそ、正しく安全に扱える、きちんとしたシステムを整えたいと思ったことが大きかったですね。

ー起業でもっとも苦労された点はどこですか。

尾花起業してから最初の2年間は、ほとんど売れないままシステムの開発だけをしていたような状況でした。複数の保険会社のデータを横断して見られるようなシステムを実現するために、データを共通のプラットフォームから取ってくるような仕組みを作る必要があったのですが、保険業界は会社ごとの慣習も多く、データの規格が古かったこともあってその点が大変でした。

やはりその2年間は「自分は正しいことをしているんだろうか」という気持ちに何度となくなりました。そんな時は、広い視野で先を見据えようと自分に言い聞かせ、「マーケットはあり、競合他社も存在しているのだから、より良いシステムを作れば必ず売れるはずだ」と思うようにしていましたね。

また、海外のインシュアテックに関するニュースを翻訳して紹介したり、保険業界全体をよくしていこうという活動を並行してしていました。業界のあるべき姿を正しく見据えながら前に進んでいけば、どこかから反応があってうまくいくだろうという風に思っていました。

ーなかなかサービスが広まらない時は焦りもあると思いますが、そのように先を見据えることが大切なのですね。先ほど競合他社が存在するとおっしゃいましたが、競合との差別化というのはどのようにされていますか?

尾花:まずは使い勝手ですね。複数のシステムを並行して使うのではなく、顧客管理に関してはオールインワンで全てが完結するということをご評価いただいています。

また、保険の売り方として、昔は職場に生保レディと言われるような方が入ってきてパンフレットを置いていったり、保険の加入を勧められるという話も身近にありました。個人情報保護の高まりなどから、オフィスへの出入りが制限されるようになり、そういった状況は既に過去のものとなっています。最近では冒頭にお話した「保険見直し本舗」のような保険ショップが登場し、いろいろな商品を比較検討して購入できるようになっていますよね。

消費者の保険加入の仕方が変化するのに合わせて、消費者の権利を守るために、法制度も改正されてきています。法改正があるとシステムもそれに対応させる必要がありますが、その点弊社では年間200回ほどのアップデートを行っています。時代に即してシステムの改善を続けている点も、ユーザーの方々に選んでいただけている理由になっていると自負しています。

また、顧客管理という意味で言えば、世界的な顧客管理や業務支援のシステムも競合と言えますが、標準のものだと保険営業の管理業務で必要とする機能が備わっておらず、かといって機能面が充実したものを使うとなると価格が標準のものの3〜4倍上がってしまいます。費用対効果でも弊社を評価していただいているのかなと思います。

計3回の資金調達で得たものとは

ー創業手帳でもニュースにさせていただきましたが、計3回の資金調達を達成されましたね。起業当初から、そのような中長期的な資金調達のプランがあったのでしょうか?それとも、ひとつひとつを乗り越えて、その先に新たな手が見えてきた結果なのでしょうか。

尾花:そのどちらも正しいというのが正直なところです。我々は基本的にどんどん資金調達をして赤字のまま突っ走り、上場して一気に取り返すというビジネスモデルなんですね。SaaSはそういったモデルが多いと思いますが、やはりシステムは初期の開発が非常に資金がかかります。赤字を重ねてもいいシステムを作り、より多いユーザーの獲得を目指すというのは当初から考えていたことではあります。

ただ、徐々にステップアップしながら資金調達額をアップしてきたという側面もあります。初回の調達では、システムすら出来上がっていない状態で、メンバーのポテンシャルや将来性だけで資金を出していただきました。そこからシステムが完成し、実際にユーザー数を順調に伸ばしてきたことが2回目、3回目の資金調達では評価していただけました。

ーでは、資金調達における目的や、調達先への具体的なアピール策は、各回において変化があったのでしょうか?

尾花:徐々に解像度が上がってきたという感じでしょうか。初回ではメンバーのポテンシャルで資金を出してもらったと言いましたが、共同創業者であり、実際に外資系保険会社で保険募集人を経験した後に保険代理店を立ち上げた小坂がいたことも大きかったと思います。2回目では、システムがだいぶできてきて、売れる兆しが見えてきたというところで調達をして、3回目ではユーザ数が順調に増えてきたことを評価していただいたという流れです。

ー3回の資金調達で、会社としてどんなものを得られたと思いますか。

尾花:資金は当然なのですが、加えて「信用の獲得」という意味も大きかったと思いますね。例えば、ソニーイノベーションファンド様など、大手企業のベンチャーキャピタルから出資をいただいたことで、ソニー生命ご出身の代理店の方から、「ソニーから出資を受けているなら」ということで信頼していただけたということがありました。

また、国内の最大級SaaSスタートアップであるSansan様からはマーケティングやプロダクト開発など、様々な面でご支援をいただいてそちらも大変プラスになりました。

ー資金調達がユーザーの獲得にもいい影響を与えてくれたのですね。資金調達を重ねていくことで、会社にとってはどんな意味があったのでしょうか。

尾花:上場とは社会の公器として認められることだと思っているのですが、そこに向けて着実にステップアップができていると感じています。上場する目的のひとつとして、業界全体のシステムをよくしたいと思ってこの仕事をしています。

しかしながら、近年通信会社がガス事業に参入したり、はたまた電話回線事業を始めたりと、人口が減少していく日本において、保険業界に限らず各社がユーザーの囲い込みをしています。業界全体で業務やシステムを標準化していくなど、業界全体を良くしていく流れに向かいづらくなっているように感じます。保険業界は互いに助け合い相乗効果を生み出すような業界にしていきたいです。

また、現状、自分が加入する保険情報は保険証券で個別に確認することが一般的ですよね。理想を言えば、保険会社を横断してアプリなどで一覧で見られたらいいのにと思いませんか。今は自分で管理できるアプリは存在していますがゆくゆくは保険会社から提供してもらい個人でも自分の保障を一元で管理できるようになるといいなと思っています。

変に新しいものをやろうと意気込む必要はない

ー今後の事業展望について教えてください。

尾花:現状は主に生命保険を取り扱っている代理店に多くご利用いただいているのですが、損害保険を扱っている代理店や、企業が自社の従業員向けに保険を扱っている企業代理店と呼ばれるような会社にもご利用いただけるようにしたいと思っています。そのために、そういった方々に向けた機能や、サポート体制、営業体制を充実させていっています。

ー尾花さんは本や漫画をよく読まれているようですが、どのように読むものを決められているのでしょうか。

尾花:経営者として、最先端のものは一通り目を通しておこうという思いがありますね。流行っているものは何かしら理由があり、時代をどこかで反映していると思っています。スラムダンクやドラゴンボールが流行っていた時代と、ワンピースが流行っていた時代は違いますし、そういった時代背景や仕事のヒントを読むことで得られるかもしれない、という気持ちで漫画は読んでいます。

本については、ビジネス書のベストセラーもチェックしていますが、どちらかというと経営に関する書籍などは古く長く生き残っているもののほうが本質的で、役に立つと感じていますね。

ー今年(2021年)お子様が誕生されたとのことですね。おめでとうございます!仕事と家庭を両立されるために、工夫されていることはありますか?

尾花:ありがとうございます。弊社ではフルリモート・フルフレックスが可能ですので、この制度もうまく活用していますし、単純に妻とよく話すようになりました。やはり子どもが産まれる前は、お互いに好きに動けていたところが、産まれてからかなり状況が変わったので、仕事のことも共有するようになりましたね。ケンカもたくさんしましたが(笑)。

弊社では「パパデビュー応援休暇」というものを導入して、産前と産後に有給を使用できます。実際に、この制度を利用してリモートワークと有給で奥さんの里帰り出産に同行した社員もいます。パパやママの社員も増えてきたので、これからも子育てと両立できる環境作りには力を入れていきたいと考えています。

ー最後に、創業手帳の読者にメッセージをお願いします。

尾花経営者とサラリーマンはあまりにもやることやスキルが違うので、起業したいと考えている方はぜひ早めにされるといいのではないかと思っています。最近子どもが産まれて感じたのですが、守るべきものができると起業が難しく感じられることも人によってはあると思うんです。それぞれの人生で、状況は刻々と変わっていくものなので、起業したいと思ったらその機会を逃さずに挑戦してほしいと思いますね。

また、変に新しいものやキャッチーなものをやる必要はないと思っているんです。市場がしっかりと存在し、競合がいて、「その競合の足りない部分をちょっとよくする」と思うぐらいが成功しやすいのかなと思っています。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!累計4.5億円の資金調達は、インシュアテックで第2位ということで素晴らしいですね。今後の成長も期待しています。
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