会社設立時に顧問税理士をつけるべき理由とその役割

会社経営を成功させるために必要な税理士の存在とは

会社を設立した際、顧問税理士をつけるかどうか迷う起業家も多いのではないでしょうか。最近は便利な会計ソフトも増えたので、税理士にお願いしなくてもどうにかなると思っている方も多いかもしれません。しかし会社設立時はやらなくてはいけないことが山積みで、専門分野外の会計にまでなかなか気を配れないもの。そこで実際に会社設立時に税理士に依頼し、事業が軌道に乗った起業家の例を取り上げながら、会社設立時に税理士が必要な理由や税理士に相談するメリットを紹介します。

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この記事の目次

会社設立をした際の税理士の役割とは


まず最初に、会社設立をした際の税理士の役割について考えていきましょう。税理士の主な役割は以下の7つです。

役割1:起業のサポートをしてくれる

会社設立時、何から手をつけたら良いのか分からないという起業家も多いのではないでしょうか。そんな時、起業支援に慣れている税理士であれば、設立に必要な費用の相談や融資を受ける際に欠かせない事業計画書の作成、法人設立後の各種税務の届け出、公的補助金・助成金の申請など、幅広くサポートしてくれます。先輩経営者のような感覚で、起業における悩みも相談することができます。

役割2:資金調達に関する業務をサポートしてくれる

会社設立時、起業家が最も気になるのが資金調達ではないでしょうか。補助金や助成金、融資は自治体によってさまざまな種類があるため、どれがベストな調達方法なのか分かりづらいという人もいるかもしれません。税理士からは資金調達に関する最新情報を得られるだけでなく、事業計画書策定のアドバイスも受けることができます。融資に関して少しでも不安があれば、融資面談への同席を依頼しても良いでしょう。設立時にどのぐらい資金調達すべきかということに関しても、的確なアドバイスがもらえます。

役割3:経理や会計について指導してくれる

税理士は経理や会計の知識も教えてくれるので、より正しい経営判断ができるようになります。会計ソフトの使用方法や仕訳についても指導してくれるので、会計に関する知識がなくても心配いりません。最終的には、キャッシュフロー計算書の分析や経営戦略、適切な節税対策も行えるようになり、健全な企業経営ができます。

役割4:決算書や確定申告書類を作成してくれる

決算書や確定申告の書類作成は自分でも行えますが、税理士に依頼すれば本業に支障をきたすことなく正確かつスピーディーに行ってくれます。

役割5:経営のアドバイスをしてくれる

税理士が指導してくれるのは税務のことだけではありません。税理士は会社の税務状況を把握しているので、会計の視点から的確な経営アドバイスを受けることもできます。

役割6:年末調整を支援してくれる

1年間の給与所得にかかる所得税を算出する年に一度の年末調整。その際に必要になる源泉徴収票や法定調書の作成も税理士の支援を仰ぐことができます。雇用している従業員や外部への業務委託が多いほど煩雑になる上、年末の多忙を極める時期と重なるため、早めにお願いしておくと安心です。

税理士への依頼は会社設立時がベスト?会社設立後がベスト?〜設立時に依頼する場合〜


顧問税理士をつけるタイミングは人によってさまざまですが、会社設立時と会社設立後では、どの段階でお願いするのが良いのでしょうか。ここからは、会社設立時に依頼するした場合と設立後に依頼した場合について見てきましょう。

設立時から税理士に依頼すると「税に関する情報提供を受けられる」

資本金の金額や株主構成、納税額を左右する役員報酬の金額など、会社設立時は税に関わることを決める必要があります。その際、事前に税理士に相談することで、的確な判断をすることができます。

設立時から税理士に依頼すると「創業融資や助成金・補助金のサポートをしてくれる」

創業融資や助成金・補助金は、想像以上に複雑なもの。創業融資や助成金・補助金のサポートを行っている税理士事務所も多いので、相談しながら計画を立てることができます。創業融資を受ける際に必要になってくる事業計画書の作成サポートをしてくれる税理士事務所もあります。

設立時から税理士に依頼すると「設立手続きを代行して行ってくれる」

会社設立時の定款認証の代行は行政書士、法務局への登記申請は司法書士の業務ですが、行政書士や司法書士と提携している税理士事務所も多いため、税理士に頼めば一括で設立手続きに関するあらゆる業務を代行してくれます。多忙を極める会社設立時には嬉しいサービスです。

設立時から税理士に依頼すると「決算に関するアドバイスをくれる」

決算期は会社設立時に決めるものですが、事業の特性によってベストな決算期は変わってきます。季節に応じて売上が変動するような業種の場合、売上の高い時期を決算期にしてしまうと通年の利益予想が立てにくく、事前に納税額を予想することが難しくなります。そのため、売上が伸びる前のタイミングを決算期にすることで早い時期から利益予想が可能になり、それに応じて経費調整をして節税までできるというメリットも。決算期は一度決めると簡単には変更できないので、税理士にアドバイスをもらいながら決めることをお勧めします。

税理士への依頼は会社設立時がベスト?会社設立後がベスト?〜設立後に依頼する場合〜

国税庁が発表した税務調査の概要によると、法人税申告の税理士関与割合は87.7%にも上ります(平成24年度)。データからも分かるように、決算に必要な法人税申告書や法人地方税申告書の作成は素人が行うにはハードルが高いもの。やはり会計に精通した専門家に頼むのが得策です。

会社設立当初は税理士に依頼せず、1期目の決算のタイミングで税理士の必要性を感じて相談する方も多いかもしれません。しかしそれまでどんぶり勘定で経営していると、遡って作業するには時間と手間がかかり、何より無駄が生じます。いずれは税理士が必要になるのであれば、会社設立時に依頼することをお勧めします。

税理士に依頼し、事業が軌道に乗り出した起業家例


税務や経理はもちろん、創業時の資金調達など、税理士の支援を受けるメリットはさまざまです。では、それがTKC会員の税理士だった場合はどうなるのでしょうか。デザイン業と飲食事業を展開する合同会社oooooの菅原拓磨代表に、税理士に依頼して良かったことを伺いました。

良かったこと1:簿記の基礎を理解することで経営の判断力が身につく

───起業した経緯を教えてください。

菅原:大学でデザインやアートビジネスの勉強をしていたこともあり、卒業後はデザイン事務所でマネージメント業務に携わっていました。独立したのは2019年冬。前職で一緒だったプロダクトデザイナーとグラフィックデザイナー、それにバーテンダーの4人でデザインと飲食の事業を始めました。

デザインの仕事は、クライアントの予算、意向に沿ったものを作るのでどうしても制約があります。ですが、自分たちの資金で自分たちがデザインした店舗を作れば、これが自分たちのデザインの実力だということを見せられますよね。創業1年目で自社のデザイン力を証明できる場はなかなかないですから。

飲食店からは日銭、それにスポットでデザイン料が入れば、2軸の収益で経営が安定し、キャッシュが貯まればさらに新しい事業も展開できます。神楽坂にバーを開業したのは、創業から10カ月後の2019年12月。準備期間にデザインの仕事で貯めたキャッシュと借入れで開業しました。バーはハンガリーの蒸留酒「パーリンカ」を専門で扱う世界唯一の店ということで、独自性を持たせています。

───税務面は起業当時から税理士にお願いしていたのでしょうか。

菅原:当時使っていた会計ソフトではリーズナブルな価格で税理士をつけられるということで、最初はそこにお願いしていました。税理法人トップマネジメントの江口先生にお願いするようになったのは、1期目の確定申告直前です。

知人の紹介で先生にお会いして試算表を見せたら、「正直このままでは申告できない」と言われるほどのレベルでした。簿記の概念もなく、貸借も分からず、家計簿と同じ感覚で会社を回していたので、利益を現預金残高から推測しているようなところがあったんです。その結果、「感覚上の利益と実際の利益が一致していない」と指摘されてしまいました。会計の知識がないと、現預金が少ないと利益が出ていないという錯覚に陥りやすいですが、会計を知るにつれ、現金がないからといってマイナスではないということが分かってきました。

江口先生にお願いして良かったのは、会社をきちんと経営できるように指導してもらえたことです。簿記や資金の回収の基礎的な知識を得られたことで、経営の判断力が身につきました。リスクを踏まえた上で、どのように舵を切るべきかをTKCの会計ソフトを使って把握できるようになったのは、江口先生のおかげです。

先生にお願いするまでは、なるべく融資を受けずに、自己資金を貯めて会社を大きくしようと考えていましたが、先生からは「現状の財務状態と事業規模を考えると、新事業を展開する際には、融資を受けて事業のスピードを早めた方が良い」と言われました。

写真:税理士法人トップマネジメント横浜事務所の前で江口先生(左)、菅原代表(中央)、菅原代表に江口先生を紹介した代表社員の甲賀伸彦先生(右)

良かったこと2:このご時世ならではのTKCの助成金一覧は重宝する

───新型コロナウイルスの影響はいかがでしたか?

菅原:さすがに営業自粛中は赤字でしたが、その間にドリンクチケットやTシャツなどを販売し、営業再開後は口コミのおかげもあって月の売上が倍になりました。自粛中は仮想空間上にバーを作り、これまで手がけたCGやアニメーションなどもそこに展示するようにしたんです。

さらに2021年2月には、店で扱うパーリンカを輸入販売する酒販事業を始めました。バーという場は、バーテンダーと話すことに付加価値があり、人に依存する事業です。それゆえ、2号店を作ると失敗するリスクが高く、とはいえ1店舗では利益の限界がある。そのため、パーリンカの需要が増えた時に備えて供給元を押さえるという、持続可能かつスケーラビリティがある事業を始めたのです。パーリンカの認知度を上げて付加価値を高めるにはデザインによるブランディング力が必要で、そこが弊社ならではの事業だと考えています。

───輸入業となると外貨が絡むので資金繰りも違ってきますが、税理士の江口先生からはどのような助言をもらいましたか?

菅原:卸売を始める上では、在庫の保有資金の問題は避けて通れません。当初は、借入れせずに仕入れ資金を貯めてから大きく展開する予定でしたが、それではビジネスのスピードが落ちてしまいます。そのため、借入れである程度の足元のキャッシュを用意して、その資金で仕入れを行うことにしました。

貿易は支払いが先に来てしまうので、本来ならその分の資金は短期資金で調達した方が良いというアドバイスをいただきましたが、今回に限っては金利負担が少なく返済年数が長いコロナ融資が使えたので、タイミング的には今がベストだと。既存の借入分を一度返済し、返済期間を伸ばしたうえで安い金利で同額を借りる借換えを行いました。

───では、経営的に大変だった時期はありますか?

菅原:店の売上げが上がり始めた2020年3月頃、内装工事の追加分の支払いが出たことでキャッシュが減ってしまったんです。そのタイミングでコロナが来て、この先どうなるか分からないという不安感はありました。その直後に、持続化給付金と東京都の助成金の話が出ましたが、一刻も早く申請しないと資金がショートしてしまうため、江口先生にお手伝いいただきました。

それ以降の助成金に関しては自分で申請していますが、先生が会員になっているTKCのプログラムで補助金、助成金の一覧をまめに更新してくれるので、週に2回は確認するなど、かなり重宝しています。

良かったこと3:予算策定のシステムは経営判断とコンセプト設定に役立つ

───ほかにTKC会員ならではの支援で良かったことは?

菅原:「TKC継続MASシステム」を使った予算策定の支援を受けていますが、1年先までの売上げと経費を計算すると、どの時点でキャッシュが足りなくなるのかが見えてきます。具体的な数値は経営判断に役立ちますし、それによって年間を通した経営コンセプトを決められるのもいいですね。1期目は店を作ること、2期目は利益を出しながら資本を残すことに重きを置き、3期目の今期は酒販事業や仮想通貨を使ったクリエイティブ事業に投資しています。

それ以外に使っているのは納税予測です。納税額の予測ができるので、残しておくべき資金額を把握できますし、設備投資に関しても、このぐらいまでならキャッシュが残るということが分かる。決算前は、今後どのぐらいの目安で設備投資をしていくかという打ち合わせを先生とよくしていました。また、TKCのシステムを使っていると制度融資を使える金融機関が多いようなので、将来、制度融資が借りられそうな金融機関からコロナの融資を受けています。

───今後の展望についてもお聞かせください。

菅原:弊社で作ったデジタルアートや映像は、今後、複製不可能な1点モノのデジタル資産(クリプトアート)として販売していく予定です。酒販事業に関しては、ゆくゆくはハンガリーでオリジナルブランドを作って日本に卸したいですね。現在はバーとデザインの売上げが半々ぐらいですが、スケーラビリティな事業である酒販の売上げ比率の方をより一層高めていきたいと思っています。

───最後に江口先生から起業家に向けてアドバイスをお願いします。

江口:主な計算書類には貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)がありますが、経営者にとってはBSは非常に重要であると考えています。経営者はBSからキャッシュフローベースでの必要利益を計算し、その必要利益を目標として、現場の人たちが利益を上げていく流れが理想的ではないでしょうか。そのために、菅原社長にまずはBSの考え方をご理解していただけるようにお話をしました。

例えば、借入れをして設備投資をするような際には、その投資からいくらの利益を獲得し何年で投資分を回収するのか、何年で借入金を完済するのか等、経営計画書をベースとして事前にイメージを作っておく習慣付けが大切ではないかなと考えております。

TKC会員による創業支援内容


TKC会員による創業支援にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

1.創業計画の策定をサポート

事業を行っていると、資金繰りや人材の採用・育成、販路の開拓など、成長の段階に応じてさまざまな経営課題に直面します。その課題をクリアし、事業を成功に導くためには、しっかりとした創業計画を立てる必要があります。TKC会員事務所では、起業家の方々が困らないよう、創業計画の策定支援を行っています。

2.創業時の資金調達を支援

創業時において最も苦労するのは資金調達だと言われています。創業計画で必要な資金額を明確にした後は、どこからどのような条件でいくら調達するのかという資金計画を検討しなければなりません。TKC会員事務所では、金融機関からの融資や公的支援を受ける際に、会社の状況に応じたアドバイスを行ってくれます。

3.日々の記帳等ができるように支援

創業計画が予定通りに進んでいるかを管理するためには、毎日きちんと取引を記録しなければなりません。また、日々記帳し、タイムリーに業績を把握することが、強い財務体質の会社作りに繋がります。TKC会員事務所では、毎月顧問先を訪問し、会計ソフトの導入支援や記帳の指導、取引で発生する契約書や領収書、請求書などの書類の管理方法の指導を通じて、日々の記帳等がきちんと行えるように支援してくれます。

4.決算書の読み方・生かし方を伝授

事業に取り組む上では、その事業が儲かっているのか、儲かっている金額はどの程度なのかを自分自身で把握しなければなりません。つまり、経営者はできるだけ早く会計の知識を習得する必要があります。TKC会員事務所では、担当者が毎月顧問先を訪問し、正しい会計帳簿が作成できているかどうかを確認する月次巡回監査に取り組んでいます。これにより、月次決算を実施し、正しい会計データに基づく月次決算書を作成します。さらに月次決算書に基づいて、最新の経営成績や財政状態を分かりやすく報告してくれるとともに、決算書の読み方や活かし方についても丁寧に指導してくれます。TKC会員事務所のサポートによって、経営者は正しい意思決定ができるようになります。

税理士を検討するならTKC会員事務所へ

会社設立の際は、本業に集中するためにも早めに税理士に相談することをお勧めします。起業にあたって税理士をお探しの方は、TKC会員事務所所属の税理士を検討してみてはいかがでしょうか。詳しい資料は、創業手帳よりご請求ください。

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