個人事業主の屋号は必要?決め方のポイントなどを徹底解説!

創業手帳

個人事業主の屋号は必須ではないけれど…記憶に残りやすくなる!


開業届や確定申告など、個人事業主が提出する書類に「屋号」という項目があります。個人事業主の場合、屋号は必須ではありません。
しかし、屋号をつけることで、記憶に残りやすくなるというメリットがあります。

屋号とは何か、どうやって決めればいいのかなど様々な疑問を持っている方もいるかもしれません。
今回は、屋号の意味や個人事業主がつけるメリット、決め方のポイントなどを解説します。

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そもそも屋号とは?


屋号は、個人事業主が事業を営む際に用いる名称です。法人でいえば、会社名に該当します。

屋号は法人の会社名と違って必ずつける必要はないので、個人事業主は個人名でも活動は可能です。
特に個人で活動が基本のフリーランスやブログやアフィリエイトなどの事業で収入を得ている人は、個人名を用いるケースが多くみられます。

反対に、屋号があると便利なケースはお店や事務所を開いている場合です。屋号をつけることで、屋号名を店名や事業所名に使えます。

事業用の銀行口座も屋号名で開設することが可能です。ほかにも、ペンネームや旧姓で活動するために屋号を設定するケースもあります。

屋号が使われるのはどのような時?


主に屋号が使われる場面には、以下の例が挙げられます。

  • 開業届
  • 確定申告
  • 事業用の銀行口座の開設
  • 領収書・請求書・見積書・契約書などの書類
  • 名刺
  • お店の看板
  • ホームページ

屋号を決めて最初に使う場面は、開業届となります。開業届の屋号欄に、屋号名を記載して税務署に提出すれば申告は完了です。
申告後は、確定申告や銀行口座の開設などで屋号を使用できるようになります。

屋号は、領収書や請求書など事業で発行される書類でも用いられます。
ほかにも、自分の名刺やお店の看板、ホームページに記載すれば、屋号の認知度アップやブランディングに有効です。

個人事業主が屋号をつける4つのメリット


個人事業主が屋号をつけることには、メリットがあります。主に4つのメリットがあり、以下に詳しくご紹介します。

1.屋号に紐づく口座を作れるので金銭管理がしやすくなる

個人事業主は、経理管理を自ら行う必要があります。屋号をつけると、それに紐づいた口座を作成できるので、プライベート用の口座と分けることが可能です。

また、自動入力に対応した帳簿・会計ソフトと屋号名義の口座を連携させれば、入出金がある度にソフトに自動で反映されます。
手間のかかる帳簿づけの負担を軽減でき、金銭管理がしやすくなります。

2.融資が受けやすくなる可能性がある

事業を展開していくためには、時に融資を受けて資金調達をすることがあるかもしれません。融資を受ける際に、屋号を記載することで審査が有利になる可能性があります。

屋号は、税務署に開業届を出している証明になるため、事業に必要な融資と認められやすく、個人名での申込みよりも有利とされています。

クレジットカードの新規発行でも同様です。
屋号と共に個人事業主の社会的信頼度が高まっていけば、金融機関からの融資や新規クレジットカードの発行などの各種審査で、ますます有利になる可能性があります。

3.クライアントからの信頼度が高まる

クライアントからの信頼度が高まることも屋号を持つメリットです。屋号がない場合、金銭のやり取りや契約、請求などは個人事業主の名義で行われます。
すでにクライアントからの信頼を得ている状態であれば問題はありませんが、一般の顧客やクライアント企業の多くは、個人よりも企業のほうを信用する傾向にあるようです。
そのため、新規顧客・クライアント企業の獲得では不利になる場合があります。

屋号は法人でいう会社名にあたります。屋号を使って商品やサービスを売り出したほうがビジネスをやっていることをアピールできるので、社会的な信頼度も高まるでしょう。

4.事業内容を伝えやすくなる

事業内容をイメージさせる屋号にすることで、顧客やクライアントに一目でどのような事業をやっているのか伝えることが可能です。
例えば、商売であれば何を販売するお店なのか、事務所であればどのようなサービスを提供しているのか、これらの情報が屋号から瞬時にわかれば、相手も利用するか否かの判断に悩まずに済みます。
名刺や看板などの販促ツールに記載すれば、新規顧客の獲得にもつながる可能性が高まります。

商品を買ってもらったり、仕事を受注してもらったりするためには、クライアントの印象に残らなければなりません。
事業内容が伝わりやすく、印象に残る屋号にすることで、クライアントに覚えてもらいやすくなるのでビジネスチャンスも増えていくと考えられます。

個人事業主が屋号をつけるデメリット


個人事業主が屋号をつけることには、デメリットもあります。そのデメリットとは、以下の2点です。

1.仕事の幅が狭まる可能性がある

屋号によっては、仕事の幅が狭まってしまう場合がある点に注意してください。事業内容をイメージさせる屋号は、クライアントに印象づける上では効果的です。
しかし、その事業のイメージが定着してしまい、特定の仕事しか来ない状態になる場合があります。

例えば、Webディレクターをやっている人が、屋号に「デザイン」という言葉を使った場合を考えてみましょう。
そうすると、デザインの仕事がほとんどで、ディレクションの依頼が来なくなることも考えられます。
仕事の幅を狭めないように、自分の業務や提供したい価値を正確に伝えられる屋号にしなければならない点が、屋号を決める上での難しい部分といえます。

2.決めたり、変更したりするために手間がかかる

屋号を考える際、どのような屋号が良いだろうと様々な案が出てくるかもしれません。
印象に残り、自分の事業を表現できる屋号を決めるのはそう簡単なことではなく、時間がかかる場合もあります。

さらに、屋号を申告したら、ホームページ・名刺・銀行口座などに屋号を入れることになるので、その手続きにも手間がかかります。
そのため、本当に屋号が必要かどうか、慎重に検討してください。

屋号を決める際の手続き方法


屋号を申告する手続きは簡単です。税務署に届け出る「個人事業の開業・廃業等届出書」の屋号欄に、決めた屋号を記載して提出するだけで申告したことになります。

屋号は後から申告することも可能です。開業届の屋号欄を空欄で提出しても、屋号を使い始めた最初の年の確定申告で、屋号を記入することで申告できます。
また、途中で屋号を変えたい場合も、確定申告の際に新しい屋号を記載することで変更の申告は完了です。

屋号を決める際のポイント


実際に個人事業主が屋号を決める時、どのようなことを意識して考えれば良いのでしょうか。ここで、屋号を決める時のポイントをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

事業内容が伝わるものにする

屋号の基本は、事業内容をイメージしやすいものにすることです。
例えば、「フラワーショップ○○」や「○○デザイン事務所」などにすれば、何をしているお店なのかが一目で伝わります。
屋号からやっている仕事がわかれば、顧客のほうから来店やお仕事を受注してくれることもあるかもしれません。

反対に事業内容が伝わりにくい屋号の場合、こちらから事業をアピールしていかなければならず、集客に苦労することがあります。
営業効果を高めるためにも、事業内容が伝わりやすい屋号にすることは大事です。

覚えやすいものにする

屋号は覚えやすいものにすることも重要なポイントです。顧客に利用してもらうためには、まず自分自身やお店を覚えてもらわなければなりません。
売上げを伸ばすためにも、覚えてもらうことは大切です。

屋号の長さに制限はありません。しかし、あまりに長いと覚えてもらいにくくなるので注意してください。

また、屋号にはアルファベットや数字も使用できますが、横文字だらけの屋号も覚えにくいので要注意です。顧客の視点に立ち、覚えやすい屋号を考えることが大切です。

言いやすく、書きやすいものにする

屋号は、言いやすさと書きやすさも大事です。近年は、顧客がSNSやブログなどで口コミが投稿するケースが増えています。
その口コミからお店やサービスを認知したり、利用するきっかけになったりすることも多く、口コミも重要な販促ツールといえるでしょう。

言いやすく、書きやすい屋号ほど顧客に口コミは広まりやすく、集客効果に期待できます。

また、クライアントに領収書や請求書を書いてもらう際も、書きやすい屋号のほうが親切です。長くて言いづらい・書きづらい屋号は避けるのが無難です。

ホームページのドメイン名に使えるものにする

ホームページの開設を考えているのであれば、ドメイン名での使用にも考慮して屋号を考えてください。
ドメインとは、インターネット上の住所を指します。URLが「https://www.○○○○.com」となっている場合、「○○○○.com」の部分がドメインです。

ドメインは、メールアドレスでも使われます。屋号と同じドメインを取得できれば、覚えてもらいやすい上に、フリーメールよりも信頼度が高まります。

ドメインの使用権は早い者勝ちなので、すでに使われている文字では取得できません。そのため、使いたい屋号でドメインが取得できるかの確認が必要です。

インターネットで検索されやすいものにする

最近は、「Google」や「Yahoo!」などインターネット検索エンジンを使って、お店や事務所などを探すケースが多くあります。
そのため、インターネットで検索されやすい屋号にすることも大切なポイントです。
特にネットショップなどインターネット上でサービスを提供する場合は、検索されることを意識して考える必要があります。

検索されやすい屋号を調べる手段としては、同じ業種のキーワードで検索する方法がおすすめです。検索上位に来る屋号を参考に、考えてみてください。

また、地域密着型であれば、地名を取り入れることもおすすめします。
そうすることで、「○○市 美容院」など地域名と事業のキーワードで検索された時に、ヒットしやすくなります。

エピソードを交える

個性の強い屋号にしたい場合は、エピソードに関連づけて考える方法もおすすめでできます。
例えば、顧客が来店した際やクライアントと商談する時、インパクトのある屋号だとその由来を聞かれることがあります。
屋号にした理由や意味を伝えられることができれば、相手の印象に強く残るかもしれません。

屋号を決める際に知っておきたい注意点


屋号を決める際は、気をつけたいポイントを押さえておくことも大切です。ここからは、屋号を決める際の注意点をご紹介します。

法人化を目指している場合は記号の使用に注意する

屋号では、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット・アラビア数字・記号を使うことができ、自由度は高いといえます。法律で特に規制されていません。

ただし、商号においては、さまざまなルールがありますので、将来的に法人化を検討している場合は注意しましょう。
詳しい規定は、法務省のホームページを参考にしてみてください。

参考:法務省 商号にローマ字等を用いることについて

商標登録されている場合は使えない

屋号は自由につけることができ、ほかの事業者と偶然被ってしまうのは問題ありません。しかし、使いたい屋号が商標登録されている場合は別です。

商標登録は、他社の商品やサービスのネーミング(商標)を区別するために、特許庁に使いたい商標を登録することです。
登録されている商標を無断で使うと、権利の侵害となり、差止めや損害賠償などを請求される恐れがあります。
権利者とのトラブルを避けるためにも、使いたい屋号が商標登録されていないか、確認が必要です。

○○会社や○○法人は使えない

屋号に「○○会社」や「○○法人」は使えません。会社や法人の名称は、法務局に登記する法人にしか使えないものです。
そのため、相手に会社だと誤解を与える名称は、屋号では使用不可です。

ほかにも、「銀行」・「証券」・「保険会社」など特定の業種の名称は法律により使用できる法人が定められているので、こちらも屋号では使えません。

イメージが固定化しないようにする

屋号は、店舗や事務所の名称にできます。一本の事業でやっていくつもりであれば、事業内容が伝わりやすい屋号でも問題はないと考えられます。

しかし、将来的に経営を多角化・多様化させる予定であれば、イメージを固定化させない屋号を考えなければなりません。
特定の事業や業種を連想させる言葉は避けて、屋号を考えてみてください。

まとめ

屋号は個人事業主にとって、いわゆる会社名にあたります。
無理につける必要はありませんが、個人名よりも社会的な信頼度が高まったり、クライアントの印象に残りやすかったりするメリットがあります。
登録は開業届や確定申告に記載するだけで難しくありません。屋号があることで、事業の認知や営業の助けになるかどうかを検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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