合同会社と株式会社の違いは?それぞれのメリット・デメリットを徹底比較
合同会社と株式会社はどっちがいい?違いを知って、失敗しない法人格選びをしよう
法人設立には意外といろいろな選択肢があることに起業すると気づきますよね。
株式会社が主流となっていますが、会社形態には昨今増加してきている合同会社という選択肢もあります。創業手帳は株式会社であり、創業者の大久保は合同会社を設立した経験があります。株式会社と合同会社設立の両方のメリット・デメリットについて実体験を交えてご紹介していきます。
会社形態の選択をまちがえてしまうと、思ったような資金調達を受けることができないこともあるので気を付けてくださいね。実際に、創業手帳の無料相談に、合同会社を設立したにもかかわらず、出資での資金調達を受けたいがどうしたらよいか相談に来た方もいます。スケールレスな出資や調達を考えている場合は、株式会社の設立が必須なのでしっかり事前に理解しておかないとあとからこうした問題に直面することもあります。
今回は、このような実体験もご紹介しながら、「合同会社と株式会社、どちらを選べばいいの?」という方のために、合同会社と株式会社の違いやメリット・デメリットを解説します。
創業手帳は起業前であっても起業に必要な情報や資金調達に関する情報が掲載された資料を無料で取得することができます。自身の成長につながる情報がたくさんあるのでこの機会に登録してみてはいかがでしょうか。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
実際に作ってみてわかった合同会社と株式会社の違いは?
株式会社と合同会社の違いは、事業内容というよりも「経営と出資の関係」や「組織のあり方」にあります。
株式会社と合同会社の違いは、今後の成長や可能となる資金調達の方法にも影響するので、どちらがよいのかしっかり判断することが大切です。合同会社から株式会社に変えることもできますが、手続きが煩雑ですし、そうしているうちに資金調達のタイミングを逃すことにもなります。これまでの経験からみても会社の形態を変えている事例はあまり見かけませんので、違いをよく把握してあとから後悔することがないようにしましょう。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
資本金 | 1円~ | |
設立に必要な人数 | 1人~ | |
設立時の登録免許税 | 15万円~ | 6万円~ |
定款認証 | 必要(5万円) | 不要 |
定款に貼る印紙 | 必要(4万円)※電子定款の場合は不要 | |
出資者の責任 | 有限責任 | |
経営者 | 株主によって選ばれた取締役(株主と重複することも可能) | 定款に特に定めなければ出資者全員。定款に定めることで、出資者のうち経営者にあたる「業務執行社員」「代表社員」を指定できる。 |
代表者 | 代表取締役 | 代表社員 ※ただし、代表社員を定めないこともできる。 |
利益の配分 | 「1株あたり〇円」など、株数に応じる。 | 自由に決めることができる。 |
決算公告 | 必要 | 不要 |
▼資金調達 | ||
社債 | 〇 | 〇 |
転換社債型新株予約権付社債 | 〇 | × |
新株発行 | 〇 | × |
金融機関の融資 | 〇 | 〇 |
個人・法人の出資 | 〇 | 〇 |
ベンチャーキャピタルの投資 | 〇 | ×(地方創生ファンドなどファンドの目的によっては対象となるケースがある。) |
株式上場 | 〇 | × |
M&A(合併、買収) | 〇 | 〇 |
両者の違いについて詳しく知る前にまずは会社形態にはどういったものがあるのでしょうか。
現在の会社法では、大きく分けて2種類の会社が定められています。
ひとつは「株式会社」、もうひとつは「持分会社」です。その持分会社のひとつが「合同会社」で、ほかにも「合資会社」「合名会社」が存在します。ただし、実質的には、合資・合名会社は実在していない状況です。また、創業手帳を配布している現場からも、統計的にほとんどみかけません。合資・合名会社の形態は、実践的ではありませんので、株式会社か合同会社のどちらがよいのか絞って検討するのが現場ではよく見られる傾向です。
また、上記以外にも会社法が施行される前に設立された「有限会社」もあります。しかし、法律が変わり新設はできないようになっています。また、今では株式会社は資本金が1円からでよいということになり設立のハードルが低くなっていますので、有限会社であることのメリットは薄れつつあります。
なお、創業手帳は毎月3000件以上の起業家に向けて冊子を配布していますが、その先に一般社団法人やNPO法人というのも少数ですがあります。一般社団法人やNPO法人について詳しく知りたいかたはこちらをご参考にしてください。
>>>一般社団法人設立の完全ガイド
>>>【保存版】はじめてのNPO法人設立
どの会社形態にするのかを登記直前まで悩む方もいますが、できるだけ早めに決めておく必要があります。
どういった会社形態があるのかを確認したら、つぎに合同会社と株式会社の特徴やそれぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。
合同会社とは
合同会社は、2006年の会社法施行によって新たに作られた法人形態で、合資会社・合名会社とならぶ持分会社の一種です。1977年にアメリカで誕生したシステム「LLC」とはLimited Liability Companyの略で、法人課税と構成員課税のどちらかを選べる特徴があり、日本政府がメリットに注目し導入しました。
創業手帳では、過去に合同会社を作った経験があります。事業そのものをスケールするつもりがなかったので合同会社を選びました。また、合同会社の場合、組織設計がシンプルであり、登記料を抑えることができるので比較的負担を抑えて小さく始めるのに適していました。ただし、まれにアマゾンのように海外企業が支社を設立するために、合同会社を選択している場合があります。こうしたグローバル企業は、すでに信頼性も十分あるので、あえて株式会社にはしていないという事例も中にはあります。
創業手帳の配布先を見ても、合同会社は株式会社にならんで人気のある法人形態です。
そして、「経営と出資の関係」でいうと、合同会社は出資者と経営者が分離していない形の法人であるため、経営者は必ず出資者でなくてはなりません。
ただし「出資するだけの出資者」と「出資も経営もする出資者」を分けることはできます。
では、合同会社のメリット・デメリットを確認していきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
合同会社のメリット
設立にかかる費用が株式会社より少ない
内容 | 費用のめやす | 実際の金額例 | 株式会社の場合 |
---|---|---|---|
登録免許税 | 6万円~ | 15万円~ | 15万円~ |
公証人による定款認証 | – | – | 5万円(電子認証の場合不要) |
定款貼付用印紙代 | 電子定款は不要 | 電子定款は不要 | 4万円 |
設立時に必要な登録免許税が最低6万円~ではありますが、実際に負担は15万円~となる場合があります。
これまでの合同会社設立経験から、サポートを受けることによる各種手数料などが発生し、費用がかかるためです。なお、株式会社の場合は、登録免許税が15万円ですが、外部からのサポートを受ける場合、実際の負担は増えます。
合同会社の場合、公証人による定款認証(5万円)も不要です。定款に貼付する印紙(4万円)も電子定款なら不要なので、非常に少額で設立することが可能です。
なお、創業手帳の創業者である大久保は、起業家の負担を軽減するために内閣府の委員として起業に係る制度設計への助言をしていますが、まだまだ費用面でのハードルがあるのが実情です。
会社の維持にかかる手間と費用が少なく、意思決定が早い
株式会社は決算公告の義務があり、合同会社にはありません。ただし、小さい会社であると株式会社であっても公告ができていない場合が実情です。
決算公告に代表されるように、合同会社は、経営者の負担が軽減されるようになっています。例えば、出資者=経営者なので株主総会を開催せず、速やかに重要な意思決定ができるようになっています。
出資者は全員が有限責任
フリーランスと合同会社の違いとして、責任の範囲があります(有限責任か無限責任か)。個人事業主(フリーランス)の場合、事業がそこまで大きくないので事業が中断しても個人が責任を取ることができる可能性が高いこともありますが、事業上の責任は個人がすべて負うことになります。
一方、合同会社の場合は、事業を中断しても会社を清算することができるなど、責任は有限責任であるのでリスクヘッジすることができます。
大きな事業をする場合は、個人の責任を超えてリスク対応するのが難しいので合同会社(もしくは株式会社)がとするほうがよいでしょう。
よく会社のほうがリスクが高く、個人事業主(フリーランス)のほうがリスクが低いと思われがちですが、法律的な実態では逆です。むしろ、会社のほうがリスクの範囲が有限なので、事業を中断しても個人で責任を取る必要がなく、経営者が守られます。勘違いしやすいポイントなので気をつけてください。
また、株式会社と同様に、出資者は全員が有限責任となります。これは、ほかの持分会社(合資会社、合名会社)にはない合同会社の大きな特徴です。
無限責任の場合は負債総額の全額を支払う必要があるため、有限責任であることはメリットが大きいです。
出資金額にかかわらず対等な議決権を持つ
出資者は、出資額にかかわらず対等の議決権をもちます(定款で変更することも可能です)。そのため、対等に事業を進めたい場合はメリットとなります。
出資金額にかかわらず利益の配分をすることができる
株式は株式保有数で利益を配分し、株式保有数は、出資額に応じて決める場合が多いです。しかし、合同会社であれば、出資者の出資金額と関係なく利益を配分することができます。
そのため、たとえば「出資金額にかかわらず均等割」「(出資金額が少なくても)利益に貢献した製品開発に貢献した人に加重して配分」など、会社の事情に応じて利益配分を考えることができます。
組織運営の自由度が高い
合同会社の場合は、会社の事情に合わせて定款で組織のあり方を決めることができます(「定款自治」などといわれています)。
たとえば「出資だけする出資者」「出資と経営両方を行う出資者(業務執行社員)」を分けることや、代表社員を定めるか否かなども柔軟に考えることができます。
規模を拡大したい場合は株式会社への移行もできる
合同会社の規模が大きくなってくると、株式会社へ変更した方が得られるメリットが多くなり、会社のスタートは合同会社でも、途中で手続きすれば株式会社へ移行できます。株式会社と同じ税制でありながら合同会社ではできなかった、株式の上場が可能になります。
株式会社へ変更する際には、官報への公告費用3万円程度と登録免許税の収入印紙代6万円程度が必要です。
合同会社のデメリット
資金調達の選択肢が少ない
合同会社には株式がないので、株式を買ってもらう出資など株式会社の仕組みを使った資金調達はできません。時に、創業手帳の無料相談に、合同会社で出資調達ができるかと相談を受けることがありますが、出資での調達は株式への出資となりできません。
また、ベンチャーキャピタルのように株式上場や値上がりの利益を狙うファンドの投資対象にもなりませんので、資金の調達方法の選択肢は限られます。
とはいえ、融資や寄付購入型のクラウドファンディング、ファクタリングなどの資金調達はできるので、調達できる金額の中で事業を行えるのであれば、合同会社でもよいということになります。
出資者の人間関係や合意形成に努力が必要
「利益の配分を自由に決められる」ということは、逆にいうと誰かが満足できない配分になるというリスクも含んでいます。
また、原則として出資金額にかかわらず対等な議決権があるので、出資者の人間関係が崩壊したり、対立が収拾できなくなると経営が困難になるリスクもあります。
良好な人間関係や丁寧に合意形成する努力が求められますし、場合によっては議決権や利益の配分について定款に定めておくことも必要です。
知名度・認知度はまだ低い
前述の通り、合同会社は2006年に創設された制度なので、まだ15年ほどの歴史しかありません。増加しているとはいえ、全国で5万社程度(平成27年度分「会社標本調査」)です。
合同会社の代表者を定めた場合の肩書は「代表社員」ですが、「代表取締役」に比べると認知度はまだまだありません。なお、「代表取締役」という表現を使いたいという場合、合同会社ではできません。
お客様から「合同会社って・・・何かが合同してできた会社なんですか?」と聞かれたり、「代表社員」がピンとこないために名刺の肩書を「代表」だけにしているケースもよく見かけます。
こういった点もデメリットといえるかもしれません。
権利譲渡・相続・事業承継がしにくい
合同会社は会社法第585条1項にもとづき、社員すべての合意がない限り社員の持ち分の一部または全部の譲渡ができません。上場企業の株式は自由に譲れますが、合同会社はそれが難しいです。
事業承継も同様で、合同会社の社長が亡くなったあとに相続人は相続できず、死亡した社員は退職扱いになってしまいます。株式会社では後継者となる相続人が株式を相続して事業承継が完了しますが、合同会社ではあらかじめ定款に「出資者の地位が相続の対象となる」と書き加えておかなくてはなりません。
社員が社長ひとりだけの合同会社で社長が死亡したとき、社員がひとりもいなくなると会社法にもとづいて解散します。もし父親ひとりが社員となり資産を管理する合同会社があるときは、会社の消滅を防ぐためにも社員を複数にしておくことが必要です。
株式会社とは
株式会社は、株式を発行することによって資金を集めて作られる“会社”の代表的な形態です。
創業手帳で毎月の法人の設立状況を見てみると株式会社と合同会社で半々くらいです。小規模であると合同会社、拡大を狙っているところであると株式会社を選択という傾向があります。
創業手帳のこれまでの経験から、成長や資金を集めている所の多くは、株式会社です。また、VCなどから資金を得る予定がないものの事業拡大を狙っていたり、採用を進めたりする場合も、株式会社を選択しているケースが多いです。将来的に上場や株式からの資金調達の予定がなくても、社会的な信頼性の面から株式会社を選ぶことが多いようです。
「経営と出資の関係」でいうと、経営者(社長や役員)と出資者(株主)が別々になっています(なかには、創業社長=最大株主のように同一人物の場合もあります)。
したがって、上場会社の株の売買を考えていただくとわかりやすいですが、経営にはまったくタッチせずに株だけを売買したり、配当を得ることもできます。
また、株主が同意すれば外部から招いた人物を社長や役員に据えることもできます。
株式会社の最終的な決定権は株主総会にあり、議決権は株数に応じるため、株式を多く持っている株主により多くの権限があることになります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
株式会社のメリット
国税庁平成27年度分「会社標本調査」によると、日本の会社等(一般社団・財団法人などは除く)の9割以上が株式会社(旧有限会社を含む)です。
合同会社が増加しているとはいっても約5万社なのに対し、株式会社は約250万社が活動しています。
資金調達方法の選択肢が広い
合同会社と比較して、大きなメリットは資金調達方法の選択肢が広いことです。
株式を使ったさまざまな資金調達の方法があります。成長して条件を満たせば株式市場への上場も可能です。
また、ベンチャーキャピタルなど、未上場の株式会社を投資対象とするファンドもあります。
株式会社だけが行える資金調達方法としては「出資」という方法もあります。合同会社と比較する場合、この資金調達方法がどれだけ自身の事業において必要になってくるのかを考えておく必要があるでしょう。
出資者は全員が有限責任
株式会社への出資者は全員が有限責任です。有限責任とは、出資した金額の範囲で責任を負うことです。
つまり、万が一会社が倒産したときなどに出資したお金は無くなってしまう可能性はありますが、それ以上の責任は負わないということです。
有限責任であることによって出資のリスクは少なく、出資してもらいやすいといえます。
株式会社のデメリット
設立時の費用は合同会社よりも多くかかる
内容 | 費用 | 合同会社の場合 |
---|---|---|
登録免許税 | 15万円~ | 6万円~ |
公証人による定款認証 | 5万円(電子認証の場合不要) | 不要 |
登記に必要な登録免許税が最低15万円~かかります(合同会社は6万円~)。
また、公証人による定款認証(5万円)も必要になります(合同会社は不要)。定款認証は、電子認証を選択することによって余計な手数料を省くことができます。
freeeや弥生会計などの会計ソフトを活用して行うことも可能です。
会社の組織や運営に法令の規定が多い
株式会社の場合は、株主総会の開催、株主総会の決議が必要となる事項、取締役の権限や取締役会の運営などについて、さまざまなルールが定められています。
また、取締役の任期、決算公告義務などもありますので、定期的に登記費用や公告の掲載料も発生します。
利益の配分は株数に応じる決まり
利益は「1株あたり○円」など株数に応じて配分します。
そのため、たとえば数人で起業して「出資は少ないが技術やノウハウなどで会社に不可欠なメンバーにも利益を配分したい」といった場合などは、悩ましい問題が生じるかもしれません。
合同会社と株式会社のどちらを選べばいい?
そもそも事業内容によって「合同会社でないとできない」「株式会社でないとできない」というものはありません。
また、法人税等、消費税等、社会保険等についても、どちらかが有利ということはありません。
どちらを選択するか迷っているときは、どの会社形態が事業を行なっていく上で有利になるかを考える必要があります。
設立費用のような目先のことだけにとらわれず、長期的な視点をもって検討するようにしましょう。
株式会社が向いている場合
会社を大きくして「いずれは株式上場」まで含めて考えるなら、選択肢は株式会社一択です。株式を発行しない合同会社が株式を上場することはできません。
ベンチャーキャピタルなどの資金調達を想定する場合も株式会社にする必要があります。
また、事業のターゲットが企業(BtoB)で、営業していくことを考えるなら株式会社の方が有利です。競合他社がいる事業においては、対外的に印象の良い株式会社を選択しておいた方がよいでしょう。
そのほか、研究開発費などに多くの資金が必要になると予想される場合も、資金調達の選択肢が多い株式会社が合っているといえます。
さらに、組織として社員を多く雇用していきたいと考えている場合は、しっかりと設計されている株式会社を選択するとよいでしょう。
創業手帳も、スケールするために株式会社を選択しました。合同会社ではできなかった資金調達もできたのでよかったと実感しています。なお、創業手帳の経営無料相談に来る人も、株式会社に設立している場合が多いです。法人の改組は、手間や費用も掛かり負担が大きいので、事業規模を拡大したい場合は、株式会社を選択するとよいでしょう。
合同会社が向いている場合
許認可や入札などの関係で法人格が必要な場合や、個人事業主が節税を狙って法人化する場合などは、少ない費用で設立することができて、維持費も少なく済む合同会社がよいでしょう。
「自身は技術やノウハウ」「友人は資金」など、それぞれの得意分野を持ち寄って起業するような場合にも、出資額にかかわらず利益を配分できる合同会社の特徴を生かせます。
また、出資額にかかわらずフラットなメンバーシップをもちたいと考える場合などにも合同会社は有力な選択肢です。
たとえば、地域おこし的な事業のために地域住民や地元企業の出資で法人を設立する場合などが考えられます。
設備投資などに大きな資金を必要としない事業や、技術者・デザイナー・コンサルタントなど無形の技術やノウハウなどが核となる事業、会社名よりもブランドや屋号でお客様に評価されやすい事業、BtoCの事業(小売店、飲食、理美容など)も、資金調達や法人格の知名度があまりデメリットにならない合同会社に向いているでしょう。
過去に合同会社をつくったこともあり、起業家の中には株式会社と同数で合同会社を設立している割合も半分半分です。
合同会社は、どちらかというとコンパクトにやりたい人向けです。そもそも、合同会社の制度は、設立のハードルを下げることで日本での起業を加速させるために取り入れられた制度です。自身の事業のサイズや負担を勘案して、条件に合致する場合は合同会社がよいでしょう。
合同会社・株式会社設立までの具体的な手順をわかりやすく解説
最後に、会社設立の手順についておさらいしておきましょう。作成する書類や一部の手続きを除いて「株式会社」も「合同会社」もおおまかな流れは同じです。
1.基本事項の決定
会社名、本店所在地、事業の目的、資本金額など、法人設立に必要な事項を決めます。
2.定款作成
定款は株式会社か合同会社によって必要事項が一部異なります。
確認しながら1で決定した事項を定款として作成します。定款は電子定款(電子署名したPDFファイル)として作成すると印紙税を節約することができます。
3.定款認証(株式会社のみ、合同会社は不要)
株式会社の場合は作成した定款を公証人に認証してもらいます。
4.資本金の払い込み
まだ法人が設立できていないので、この段階では発起人(合同会社の場合は出資者となる人いずれか)の個人口座に出資者が資本金を振込みます。
5.登記書類作成
法務局に提出する書類を作成します。
登記申請書、登記すべき事項、定款、印鑑届書などのほか、必要書類を作成します(必要書類は株式会社と合同会社で一部異なります)。
合同会社と株式会社の設立に必要な書類は異なります。合同会社は9種類、株式会社は11種類の必要な書類を紹介します。
合同会社 | 株式会社 |
---|---|
会社設立登記申請書 | 登記申請書 |
定款 | 登録免許税納付用台紙 |
印鑑届書 | 登記すべき事項を記録したCD-Rなど |
代表社員就任承諾書 | 定款 |
本店所在地決定書 | 発起人の決定書 |
登記用紙と同一の用紙 | 資本金の払込証明書 |
社員の印鑑証明書 | 取締役の就任承諾書 |
払込証明書 | 代表取締役の就任証明書 |
収入印紙 | 監査役の就任承諾書 |
– | 取締役の印鑑証明書 |
– | 印鑑届書 |
株式会社は最大で11種類の書類が必要ですが、設立の状況などにより少なくなるケースもあります。合同会社の代表社員とは株式会社の代表取締役をさし、資本金を出したすべての代表社員の書類が必要です。
用意した書類は、公証人役場・法務局・税務署の3か所それぞれへ正しく出しましょう。
6.登記申請
法務局に5の登記書類を提出します。
なお、このとき登録免許税額分の収入印紙が必要になります。登記申請書を法務局に提出した日付が会社設立日となりますが、登記手続きの完了までは数日かかります。
7.登記後の各種行政などへの手続き
登記手続き完了後、税務署、都道府県税事務所、市町村役場、社会保険関係(年金事務所、労働基準監督署、ハローワーク)などに必要な手続きを行います。
なお、より詳しく具体的な手順を知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
まとめ
「株式会社」か「合同会社」かどちらを選択するかといった法人格選びは、創業メンバーや出資者・投資家などと、会社との関係のあり方や会社の将来像をイメージしながら選択しましょう。
会社の将来像をイメージするとはいっても、まだ起業したことのない状況ではなかなか難しいでしょう。
創業手帳は、これまでに実際に合同会社と株式会社のどちらも設立した経験がありますので、どちらの良さも理解しています。創業手帳では、会社設立について有益な情報をWEBでも数多く提供していますので、イメージが難しい場合は無料相談など含めぜひ利用してみてください。
冊子版の創業手帳では、起業後の手続きや販路拡大の方法など、起業後に必要となるノウハウを解説しています。また、起業家のインタビューも多数掲載しているので、起業後のイメージを立てるために活用しましょう!
(執筆:創業手帳編集部)