速報!「TechCrunch 2019」 最終ラウンドに進むスタートアップ6社は…

創業手帳

TechCrunch Tokyo2019 初日の様子と、ファイナルラウンドに選出されたスタートアップを紹介します

(2019/11/14更新)

11月14日、都内でスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo2019」が開催されました。スタートアップとテクノロジーにフォーカスしたメディア「TechCrunch Japan」主催のイベントで、今年で9回目を迎えました。注目されているスタートアップ20社の代表によるピッチバトルや、世界で活躍するスタートアップの代表によるトークイベント、企業のブース出展などが行われました。初日の様子をお伝えします。

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トークプログラム「Fireside Chat」

Fireside Chatでは、世界的に活躍する企業の代表によるトークプログラムが行われました。中でも創業手帳編集部が注目した回を紹介します。

「自動運転OS『Autoware』が作り出す未来」

ティアフォーの加藤真平取締役会長兼CTOが登壇。

安心・安全な自動運転の普及を目指して2015年に創業した同社は、自社で開発した自動運転のソフトウェア「Autoware」をオープンソースで世界に公開しました。同社の技術を自由に活用できるようにすることで、世界中の企業とアライアンスを組みながら、誰でも幅広く使える自動運転技術を作っていくというビジョンを掲げています。

プログラムの途中で、イベントに参加していたJapanTaxiの川鍋一朗代表も登壇し、トークセッションという形に。両代表は、自動運転が普及した未来について、

・人間が運転に関わる特殊な技術を持つ必要はなくなっていく。技術の高度化によって、テクノロジー面ではなく、それを扱う人材のホスピタリティが重要になる時代がやってくる

・自動運転技術がどれだけ進歩しても、全てをテクノロジーだけで補うことはできない。人とテクノロジーの協業による、社会的に完成されたサービスづくりが求められる

という予想を示しました。自動運転の最前線に立つ両代表ですが、今後は技術の進歩が車に関わる人の仕事を奪うのではなく、むしろ、そこに関わるマンパワーがサービスの差異化のポイントになっていく、という見解を持っている点が印象的でした。

シリーズCで60億円超を調達、SmartHRのこれまでとこれから

SmartHRの宮田代表(右)とTechCrunch Japanの吉田編集統括(左)

SmartHRの宮田昇始代表取締役が登壇。

雇用契約書、年末調整、社会保険など、人事・労務に関わる手続きを自動で処理するクラウド型のサービスを提供している同社は、2015年のTechCrunchに登壇し、優勝しました。その後事業を急速に成長させ、今年7月にはシリーズCで60億円の資金調達を達成し、大きな話題を呼びました。リリースから4年で3万社が導入し、利用者の解約率は0.5%と、高い顧客満足度を誇ります。

SmartHRは、同社がリリースした中で3番目のプロダクトです。最初の2つはローンチしたものの、長続きせず撤退した過去があります。SmartHRが生まれるまでに、リリースしなかったものも含めると、12個ものプロダクトを作ったといいます。

この経緯について、宮田代表は

・最初の2サービスは、自分たちに出来るプロダクト作りから始めたから失敗した。それ以降は、世の中に本当に求められているサービスを探すことに注力。日本で、社会保険の手続きが長年アナログのままであることに着目し、SmartHRの誕生につながった。

・資金調達に関して、参入障壁の低い事業であることはわかっていたので、TechCrunchを始め多くのピッチイベントに参加し、まずVCなどの注目を集めてから資金調達につなげようと考えた。中でも、VCのコーラルキャピタルが、自分たちの事業を信じて資金を集めてくれたことが成長のきっかけになった。

と振り返りました。

また、サービスとして、企業の規模や業種を問わず普遍的に必要な手続きの問題を解決するプロダクトを作ったことで、事業の拡大とともに顧客企業の数・規模が変化しても業種ごとの対応や改良を加える必要がほとんどない、という強みも示しました。

今後の展望としては、業界としてアナログな体制が残っていて、かつテクノロジーの力で普遍的に解決可能な領域の発掘を続けていくそうです。

スタートアップが、どんな視点で課題を探し、サービスやプロダクトを作っていけばいいのか、ヒント満載のトークでした。

スタートアップピッチの登壇企業紹介

今回のスタートアップピッチでは、A・B・C・Dと4つのブロックに5社ずつ、計20社が登壇しました。以下の通りです。

Aグループ

estie

オフィスの貸し手と借り手をつなぐプラットフォーム「estie」を開発・運営しています。AIによる圧倒的なスピードのオフィス仲介を実現。ターゲットは2桁人数くらいの従業員数のスタートアップで、大手の仲介ルートや、賃貸探しのノウハウを持っていない経営者です。7月のローンチから約3か月で、70社以上の仲介を達成している実績から、期待度の高さがわかります。

space engine

委託販売のマッチングサービスで、誰でもかんたんに、商品のオフライン販売が出来る環境づくりに取り組んでいます。物件探しや賃料といった初期費用がかからないため、製造に携わる事業者にとって、最短のオフライン販売ルートを提供。店舗側には、新商品発掘のコストや、買取で仕入れるリスクを抑えることができます。

株式会社yup

フリーランスが資金繰りに悩む原因の一つである、「請求書の送付から支払いまでのタイムラグが起きること」を解決するため、請求書を先払いにすることができる金融サービスを展開。請求書をアップロードするだけで、先払いの手続きが完了し、審査が通れば、最短1日で給与を受け取ることができます。

マッシュルーム


初期費用無料、月額300円程度の負担で、どこでも設置できるスマート宅配ボックスを開発・提供しています。生産コストも流通コストも抑え、数万~数十万円かかっていた従来の宅配ボックス運用の常識を覆すモデルです。

SE4


人間同等の能力を持ったロボットを宇宙に送る事業を展開。1対1でしか動かせない、指示と操作の間に大きなタイムラグがある、複雑で繊細なオペレーションが必要、といった、ロボットの遠隔操作における課題解消を目指します。同社のテクノロジーは、「オーケストラオートノミー」といい、ユーザーが複数のロボットにカンタンに指示を出せるそうです。宇宙を想定しているものの、土木関係や、海中での操作など、地球上での活躍にも期待が集まります。

Bグループ

SPACE WALKER

打ち上げコストが低く、打ち上げ間のリードタイムが短かく、環境に優しいエコなロケット開発を手掛けています。一度の使い切りのロケットが主流の中、再利用できるロケットの開発に挑むという、気鋭のスタートアップです。

ラックベア

業者とユーザーを直接つなぎ、建物の修繕点検を受発注できるアプリ「タテカン」を提供。不動産など、業界全体の多重構造により、コストがふくれがちな不動産管理の現状改善に挑戦しています。

RevComm

電話営業をAIで解析し、効果的な営業を行うサポートする「MiiTel」というサービスを提供しています。効果的な会話の速度やストローク、コメント数など、細かく解析することで、業界ごとにベストな営業トークの効率化を図ることができます。月額約6000円程度で使える低コストも魅力です。ITリテラシーが高くないユーザーでも活用しやすい点が支持されています。

Aill


AIを使って相手の行動や反応を分析・予想することで、「傷つかない恋愛」を実現するナビゲーションサービスを、法人向けに提供しているユニークな企業。従業員のワークライフシナジーを高めたいと考えている企業での導入が進んでいるそうです。

Handii


法人カードをオンライン上で何枚でもすぐに発行できる法人向けウォレットサービス「paild」を開発・運営。複数利用のハードルが高い法人カードを、より使いやすくすることで、従業員の利便性、経理の透明性の双方が高まるサービスです。

Cグループ

オーティファイ

ソフトウェアの検証作業を自動化するプラットフォーム「Autify」を開発しています。エンジニアでない人でもカンタンにテストを自動化するシナリオ作成ができるサービスで、メンテナンスコストも低い点が特徴です。半年前にベータ版を発表し、10月に本導入を開始。ベータ版を使ったほとんどの顧客が本導入で継続利用しているそうです。

OsidOri

家計の管理をシンプル&未来につながる形でサポートする「OsidOri」を展開しています。家族のお金に関わる情報について、一つのアプリで個人・家族での共有部分と領域ごとに分け、まとめて管理することができます。家族の資産運用にも活用できるとのこと。

Linc’well

医療機関の予約・問診・診療から会計までをシームレスにつなげるオペレーションシステムを開発。患者向けのアプリなどを通じて、クレジットカードを登録しておけばその場で決済せずに帰宅できたり、通院・診療履歴をカンタンに参照できるようになります。

ENDROLL


ARを活用して、現実世界をゲームなどエンターテイメント空間に書き換えるサービスを、商業施設向けに提供しています。施設のデッドスペースを利用することで、導入にテナント賃料がかからず、コストパフォーマンスに優れている強みがあります。能動的なユーザーを獲得できるエンタメ領域から事業をはじめ、他領域への普及を目指します。

PSYGIG


ドローンやロボット、自動運転車など、モビリティのIoT開発者に向けたSaaS型のデータ解析サービスを提供しています。マシンの状態監視や、故障予知、事故の原因分析など、リアルタイムでアシンの状態を可視化。導入が数日で完了するという利点もあります。

Dグループ

Basset


仮想通貨取引に関わる情報をリアルタイムで分析し、悪用の可能性など危険性を監視するプラットフォーム「Basset」を開発・展開しています。アジア圏など、展開ができるよう、各国のコンプライアンスに合わせる形で柔軟にサービスを構築していくようです。

メディクション

海外医療を受けるために、日本に訪れる外国人患者向けに、「越境オンライン医療相談」を提供。現状、海外の医療を受けようと考えると、相談レベルの受信でも渡航が必要ですが、このサービスを活用すると、オンライン上で日本人医師と外国人患者をマッチングするので、コストを抑えることができます。

Elaly


家具のサブスクリプションサービス「airRoom」を開発・運営しています。1つあたり月額500円からという低価格で利用できるほか、組み立て・設置なども無料です。データを活用して、ユーザーの適切な購買を斡旋するので、継続率が95%という高い顧客満足度を実現しています。

KAICO


昆虫の蚕を使ったバイオ医薬品・ワクチンの開発を手掛けています。蚕1匹から豚300頭分のワクチンを作ることができる技術が強みです。今後、製薬会社と協業し、初の人用ワクチン生成・実用化を目指しています。

ANTWAY

共働き世帯をターゲットにした料理惣菜配達サービス「つくりおき.jp」を運営しています。週に一度、平日全ての食事(冷蔵)を自宅に配送し、家庭にある調味料だけでカンタンに調理できるという利便性が売りです。衛生面の厳しいチェックで安全性も担保しています。大量生産用の体制を整えており、事業の規模がスケールしても対応できるよう手を打っているそうです。

ファイナルラウンドに通過したスタートアップ

将来性が期待される、ユニークな事業20社の中から、ファイナルラウンドに通過したのは以下の6社です。おめでとうございます!


・Linc’well
・オーティファイ
・SE4
・RevComm
・KAICO
・Basset

ファイナリスト6社の代表

ファイナリストに残った6社は、15日のDay2で最優秀賞の座をかけたピッチに挑みます。2日目の様子もリポートする予定です。乞うご期待!

昨年の様子はこちら
【TechCrunch Tokyo 2018 2日目レポ】新進気鋭のスタートアップ6社による「スタートアップバトル」

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