RevComm(レブコム)會田 武史|TechCrunch 2019で最優秀賞!「MiiTel入ってる」世界作りに挑む

創業手帳
※このインタビュー内容は2019年12月に行われた取材時点のものです。

RevCommの會田武史代表に創業エピソードと今後のビジョンを聞きました

(2019/12/26更新)

電話営業・顧客対応を人工知能で解析・可視化し、生産性向上につなげるクラウドIP電話「MiiTel(ミーテル)」を展開している、株式会社RevComm(レブコム)。2019年11月に開催された国内最大級のピッチイベント「TechCrunch Tokyo2019」では最優秀賞を受賞し、事業の将来性の高さに大きな注目が集まっています。

代表の會田武史氏は、小学4年生の時に起業を決めたという、ユニークなバックグラウンドの持ち主。創業エピソードや、ブレない信念でエネルギッシュに事業を展開していく秘訣を聞きました。

會田武史(あいだ たけし)株式会社RevComm 代表取締役
大学卒業後、三菱商事株式会社に入社し、自動車のトレーディング、海外市場での販売/マーケティング施策の企画・立案・実行、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、政府向け大口入札案件、M&A案件等に従事。2017年7月に株式会社RevCommを設立。

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小4から始まった「やりたい」を探す旅

ー事業の概要を教えてください

會田:MiiTelは電話営業や顧客対応の質や効果を可視化する、音声解析AI搭載型のクラウドIP電話です。これまで、「担当者が何をどのように話したか分からない」、「成約失注の理由が分からない」といった、“見える化“することが難しかった電話営業の成果や改善方法を導き出し、生産性向上につなげるサービスです。

ブラックボックス化しがちだった従来の営業電話

具体的には、音声認識AIが電話営業や顧客対応の内容をリアルタイムで解析・スコアリングし、結果を元に電話営業を改善することで成約率を上げたり、解約率や教育コストの低下に繋げます。

会話内容は顧客情報に紐付けてクラウド上で自動録音されるので、振り返りたい録音データにいつでも・どこでも・すぐにアクセスすることができ、教育目的やコンプライアンス目的など、多業界で幅広くご活用いただいています。

ー起業のきっかけを教えて下さい

會田:小学校4年生のときに起業することを決めました。夢を因数分解すると、「すべき × できる × やりたい」になると思っていて、僕の場合は最初に「すべき」を決めました。「自分でオーナーシップを持ってビジネスをして、世の中の仕組み創りをして、日本を世界に発信すること」です。

「すべき」が決まると、「できる」も必然的に決まるので、努力のベクトルは定まるのですが、難しいのは「やりたい」を決めることでした。小学4年から起業するまで、「やりたい」を探し続けたのです。

転機は、学生時代にアメリカへ留学したときに訪れました。当時はリーマンショック直後で、アメリカ経済はボロボロ。しかし、学生は活き活きとして、起業したり、NPOに従事したりと精力的に動いていました。僕のルームメイトも起業してホットドックのEC販売を始めました。結局事業は失敗したのですが、失敗した時、彼はなんと「さあ、次は何をしようかな」、と言ったのです。この時、「やりたいことが見つからない」を言い訳に、何もしていなかった自分に衝撃を受けました。

その後日本に戻ってから社団法人、NPO、学生団体など、いろいろな団体の立ち上げや運営に携わりました。

「ビジネストレンド×Pain(苦痛)」の視点で事業を決めた

ー日本に戻ってから、すぐ起業のアイデアを思いついたのでしょうか

會田:それがそうでもなくて、様々な団体の立ち上げなどを通じて、ゼロイチで何かを作ったり、面白い人たちとコネクションを作っていれば、自然とやりたいことは見つかるはずだ、と思っていたのですが、結局見つかりませんでした。

大学卒業後は三菱商事に入社し、トレーディング、海外でのセールスマーケティング、会社立ち上げ、クロスボーダーM&Aなど、ビジネスに必要な一通りの業務に携わりました。仕事はどんどん楽しくなっていきましたが、6年目にして「このままでいいのか」と思いました。今のままだと、将来的に「なんであの時挑戦しなかったんだろう」と後悔する瞬間が必ずやってくると確信したのです。学生時代、アメリカで何もしてなかった自分に気づいたはずなのに、またその時の自分に戻っていたんですね。

これではやばいぞ、ということで、「今後3~5年で、ビジネスで大きな波になる要素・技術 × 日頃自分がPain(苦痛)に感じていること」という2軸から「やりたい」を定めてしまい、起業することを決めたのです。

ー起業を決めてから、Miitelが生まれた経緯を教えて下さい。

會田:今後大きくなるビジネスのトレンドとして真っ先に思い浮かんだのが、「量子コンピュータ」、「ブロックチェーン」、「AI」の3つでした。なかでもAIは、2010年代に大きく発展したディープラーニングにより、急速に応用可能性が高まっています。ディープラーニングの力を使えば、過去の膨大なデータをもとに人間ではおよそ予測できなかったアウトプットを出すことができ、無限の可能性が広がっているとワクワクしました。

併せて、日本社会では、「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が優先されることが往々にしてあるため、コミュニケーションコストが高くなりがちな点にPainを感じていました。ここに一石を投じることで、日本の生産性は飛躍的に高まると信じ、事業の方向性を「AI×Communication」に定めました。

MiiTelは緻密な課題発見プロセスから生まれた

そこから、事業の最終的な到達目標を「経営判断AIを創出するプラットフォーム作り」に決め、どのようなサービスを作ればよいか突き詰める作業を繰り返しました。その結果、電話でのコミュニケーションを通じて営業を行う「インサイドセールス」という領域にたどりつき、営業電話の効率をAIの力を用いて最大化するMiiTelが生まれました。

最初からMiiTelのアイディアがあった訳ではなく、「誰の・どんな課題を・どのように解決するのか」を突き詰めたらMiiTelに辿り着いたという感じです。

日本社会の課題に見る「インサイドセールス」と「ボイス領域」の可能性

ー事業における軸はどこにありますか

會田:ビジネスは、いかに伸びゆく領域に軸足を置くか、が重要です。

我々は、「ボイス領域」と「インサイドセールス」の2本軸で事業を展開しています。まずボイス領域ですが、Googleが2年前くらい前に最重要経営戦略としてボイスを掲げたり、中国が先日、人工知能の最重要分野の一つにボイス領域への注力を発表したりと、いま世界的な市場トレンドとして音声認識技術への熱が高まっています。

今後、「グラフィカルインターフェース」が「ボイスインターフェース」に取って代わる技術革新が起きると見ています。どういうことかと言うと、現在我々は、パソコンやスマホなどを、主に視覚情報を元に操作していますよね。これが、声による操作中心になっていくのです。なので、ビジネスとしてボイス領域に関わる事業が伸びゆくのは間違いないでしょう。

続いてインサイドセールスです。今の日本の課題に目を向けてみると、約1億2000万人のマーケットのうち、生産年齢人口が約7800万人ですよね。このままだと、2060年までには5600万人と、約44%も減ると言われています。生産年齢人口が減りゆく中で、経済的・社会的文化的により豊かになるためには、「生産性を向上する」ことが絶対条件です。

そんな中、ビジネスの利益を生む上で欠かせない「営業」においては、今でも極めて非生産的な手法が横行している現状があります。インサイドセールは10年ほど前にアメリカで始まった手法で、その効果の高さについて、日本でも2年ほど前から認知が広がりつつあります。

そこで、我々は「ボイス」と「インサイドセールス」をかけ合わせたプロダクトを作ることで、個社ごとの利益向上だけでなく、市場の成長も促すことができるので、指数関数的に急激な成長を実現できるのではないかと考えています。

ー今後、業界でどのようなポジションを取りたいですか

會田:TechCrunchのピッチでも話しましたが、「MiiTel入ってる」を実現したいですね。世界中のPCにインテルのプロセッサーが入っているように、MiiTelの音声解析エンジンがあらゆるサービスに入ってる世界を作りたいです。

個々の「エンゲージメント向上」を重視した組織づくり

ー起業家として、大事にしているマインドセットを教えて下さい

會田:朝から晩まで事業のことを考えているので、よく人から「苦労しているね」と言われているのですが、私の場合辛さはなく、何か甘いんですよ。毎日がすごく楽しくて、実直に努力を積み重ねていると、いつの間にか夢中になっている。だから、社員からは「會田さんって、忙しくなればなるほど、どんどん元気になってく」って言われています笑。

あとは、「恐怖心に駆られてる者だけが勝つ」という言葉を大事にしていて、事業が上手く行っているときこそ危機感と恐怖心を持ち、ピンチの時は逆に楽しくなってくるような感覚でいます。起業家として乗り越えるべきポイントは、このマインドセットを保ち続けられるかどうかだと思いますね。

ー組織づくりで意識しているポイントはありますか

會田:実験的なアプローチとして、エンゲージメント経営※の実現に取り組んでいます。これまでの株式会社では、リーダーが組織の方向性と目標を定めて、メンバーはその目標に向かって画一的な働き方をする経営が主流でしたが、今後は、組織に属する個々のエンゲージメントをいかに高めるかが非常に重要になって来ると考えています。

※エンゲージメント経営・・・個々の組織や仕事に対する自発的な貢献意欲を重視する経営

個人のエンゲージメントを最大化させるために、とにかく任せ、権限移譲することを意識しています。業務について質問されたときも、その人がどういう考え・意図を持っているのか確かめるコミュニケーションを取っていますね。

個人の成長があると、個人の集合体である組織の成長があり、組織が成長すると、世のため人のためになり、結果として貨幣経済の中で対価としての売上が増え、企業価値が上がります。いい人材を採用して、その人を信じて、良いサイクルができるような組織形態を作っていきたいです。

一方で、自発性をどこまで信じるのか、自発性を促すコミュニケーションを生み出すにはどうすればよいか、バランスが非常に難しいです。自発性を持ってやってください、と言うだけでは意味がないですし、自発的な意見や案が上がってくるのを待っているだけでもいけません。どうすればメンバーの内発的動機づけができて、自分からやってくれる仕組みを作れるのか、日々試行錯誤している最中です。

究極的には、自分がいなくても組織のビジョンや哲学がブレることなく、勝手に成長していく組織になるといいなと考えています。

ピッチイベントでは、話す内容を一切変えない

ーTechCrunchなど、ピッチイベントに出場するようになったきっかけを教えて下さい

會田:今でこそいろいろなピッチイベントに出場していますが、最初はピッチイベントにでるつもりは全くありませんでした。しかし、縁あって2018年の「Infinity Ventures Summit(以下、IVS)」に出場することになり、短時間で作ったパワポ資料1枚で臨んだところ、3位に入賞しました。そこから一気に商談の問い合わせが増えて、ピッチイベントの影響力の大きさを知り、参加するようになりました。

ー数々の賞を受賞されていますが、ピッチでのコツはあるのでしょうか

會田:私はIVSの出場以来、ピッチイベントで話す内容を一切変えていません。いかに事業に真摯に取り組んでいるかが本質で、顧客のどんな課題をどう解決するかをしっかり向き合っていて、正しい人と事業を作り、実績を作っていることにつきると思います。

事業に真摯に取り組んでいれば、プレゼン内容もブレない

ーピッチイベントの意義はどこにあると考えますか

會田:ピッチイベントは大企業とスタートアップが接点を持つきっかけを生みます。日本全体的に縮小傾向にあるマーケットを、いかに社会的・文化的・経済的に盛り上げるかということを、大企業とスタートアップが一緒に取り組む一つのハブがこういうピッチイベントだと考えます。

大企業とスタートアップ、二項対立ではなく、互いにしかできないことがあるので、もっと多くの大企業からも参加者が増え、接点が増えると面白いことが起きるのではないかと思いますね。

起業家に必要な3つの資質とは

ー今後の事業の展望を教えて下さい

會田:4つの指針を持っています。

1つ目は、MiiTelの技術から、自動アポ取りAIを完成させることで、「人間を電話営業から開放する」こと。これを2、3年以内に実現したいと考えています。

2つ目は、事業領域の拡大です。現在取り組んでいるセールス領域の次はミーティング、その次はビジネスセッション、さらに経営判断AIと、カバーできる領域を広げていきたいですね。特に、経営判断AIの実現は10年スパンの時間がかかるので、地道実直に取り組んでいきます。

3つ目は、ソフトウェア作りからプラットフォーム作りへの展開です。「Miitel入ってる」の世界をいかに広げるかに取り組みます。

4つ目は、海外展開です。これは来年あたりから本格的に着手します。

ー最後に、起業家に必要だと考える資質を教えて下さい

會田:3つあります。「傾聴力」、「論理的思考力(わかりやすく言語化する力)」、「巻き込み力」です。

まず傾聴力ですが、起業は、「誰のどんな課題を、どう解決するか」が肝です。そのためにはまず、誰がどんな悩みを抱えているのかをしっかりヒアリングして、本質的な課題を見つける力を持つ必要があると考えます。

本質的な課題を発見してからは、それを言語化してわかりやすく伝えるための論理的思考力が必要になります。

そして傾聴力・論理的思考力が優れていても、結局応援してくれる人や、優秀なメンバーがいないと何もできません。日頃から事業についてしっかり考え、どんな思いで、なぜビジネスやっているかを人に共有し、巻き込んでいく力がいるのです。

この3つがあれば、起業できると思います。

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(取材協力: 株式会社RevComm/代表取締役 會田 武史
(編集: 創業手帳編集部)



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