日本にない「産後ケア施設」を作りたい! 元CA起業家のゼロイチ起業ストーリー

創業手帳

ブライトンの伴照代 代表に、創業エピソードを聞きました

(2020/04/22更新)

バースコンシェルジュ」という言葉をご存知でしょうか。産婦人科や、不妊治療の病院などに常駐し、女性患者のためのケアを専門で行う人たちのことです。

バースコンシェルジュを生み出したのが、株式会社ブライトン伴照代 代表です。伴氏は、客室乗務員(以下、CA)のキャリアを引退した後、出産・子育ての苦労をきっかけに「産後ケア」の領域で起業しました。妊娠・出産を経験する女性が抱える課題に取り組む公益性の高さが注目され、大手新聞や官公庁のコンテンツなどでも取り上げられるなど、認知を広げています。

これまで日本に存在しなかった職業を自ら作り、事業化するという、難易度の高い挑戦を続ける伴氏に、創業エピソードや、事業への想いを聞きました。

伴照代(ばんてるよ)株式会社ブライトン 代表取締役社長
大学卒業後、国内大手航空会社へ入社。客室乗務員として約9年間乗務。
自身の出産、産後の経験から妊娠出産に関わる医療施設、ケア施設の重要性を痛感。韓国の「産後調理院」を視察し「日本にも産後ケア施設を作る」と決意した。産後ケアサロン運営や、産婦人科で「バースコンシェルジュ」として産後ケア業務に携わる経験を経て、2015 年株式会社ブライトンを設立。バースコンシュルジュを育成し、業務委託として医療機関に派遣する事業を展開している。2019 年には、医療機関向けの接遇研修プログラム「BC ラボ」を発足し、ノウハウを全国に普及させている。

創業手帳の紙面版では、伴氏のように、精力的に事業を展開する起業家のインタビューを多数掲載しています。無料で利用できますので、ぜひ事業を進める際の参考にしてみてください。

「産後ケア施設を日本にも作ろう!」が原点

ー事業の概要を教えてください

:「バースコンシェルジュ」という、産婦人科・不妊治療の現場専門のコンシェルジュを、業務委託の形で各機関に派遣する事業と、看護師や助産師など、医療現場で働く方向けのビジネスマナー研修・セミナー事業を展開しています。

バースコンシェルジュという職業を普及させるための育成事業も行っており、現在約30名が現場で活躍しています。

ーこれまでのご経歴と、起業したきっかけを教えてください

:大学卒業後、日本航空のCAになりました。その間に、結婚・出産を経験し、出産後約1年でフライト生活に戻りました。CAになることは小学校からの夢で、復職後の仕事もとても楽しかったのですが、子育ての兼ね合いで思う所あり、退職することになります。

その後、2度目の出産を経験しました。しかし、子育てがとても大変で、産後鬱に近い状態になり、体調を崩してしまったのです。同じ頃、テレビで有名なアナウンサーが産後鬱で自殺したというニュースを聞き、ショックを受けると同時に、「自分も含め、日本には産後の負担に苦しむ女性たくさんいるのだ」と知りました。

産後の女性をケアしてくれるサービスはないのか?と探す中、韓国では「産後調理院(産後ケアを専門で行う療養施設)」が広く普及している話を聞きました。実際に現地を視察したところ、ソウルだけでもケア施設が400~500件くらいあり、産婦人科の近くはもちろん、ショッピングセンターの中にも設置されるくらい、当たり前の存在になっていました。

韓国の事情を知り、「日本にも絶対に産後ケア施設があったほうが良い!私が作ろう!」と決めました。これが起業の原点であり、情熱のままに動き始めました。

ー決意から、まずどのような行動を起こしたのでしょうか?

:日本に帰国してから、自分がお世話になった産婦人科の先生に、起業のアイデアだけを持って相談しに行きました。すると、先生が過去に、産後ケア施設建設の構想を進めていたことがわかりました。

他の大学病院の先生と「アフターバースケア協会」を立ち上げ、産後ケアの有用性を示すエビデンスも集め、大手不動産とコラボして施設の設計図まで完成していたのに、事情あって計画が頓挫していたとのことでした。

そして、先生は「事業構想の資料を、そのまま使ってくれて構わない」といって、私にくださったのです。私は、この事業の実現を、先生から託されたのだと感じました。

そこから本格的に起業の勉強を始め、まずは出産を経験した女性の生の声を知るために、個人事業主として産後ケアサロンを開業しました。お母さんが、子どもを預けて、オイルマッサージやエクステ、ヨガといったサービスを受けられるサロンです。

苦難の連続だった、産婦人科のスタッフ時代

ー個人事業主としてのサロン運営から、法人を設立する間に、一度産婦人科のスタッフを経験されたそうですね。どうしてでしょうか?

:産後ケアサロン運営を続ける中で、お世話になった産婦人科の副院長から、「独立して開業することになったので、産後ケア専用のスタッフとして協力してくれないか」とお声がけいただきました。

もともと、「産後ケア事業を展開する上で、産婦人科の現場を知ることは必須」と考えていました。既にサロンにかなりの投資をしていたので、ためらいもありましたが、思い切ってサロンをしめ、産婦人科の立ち上げメンバーになることを決めたのです。

ー産婦人科のスタッフ時代と、会社設立までのエピソードも教えてください

:病院の立ち上げメンバーに加わったものの、スタッフには医療の専門家はもちろん、事務の方もいます。専門家でも事務でもない自分は、「何をやればいいか?」まったくわかりませんでした。

なので、とにかくできることは何でもやろうということで、事務や、医療従事者の業務サポート、患者さんの対応など、あらゆる仕事に取り組みました。

特に、患者さんとのコミュニケーションでは、相手の名前はもちろん、その方のバックグラウンドや悩みをすべて頭に入れて、丁寧な対応に徹しました。一般的に、病院は、多くの患者さんに対応するため忙しく、患者さんの細かな不安に対するケアにはどうしても限界があります。しかし、患者さんにとっては、出産は何度やっても不安なものです。なので、私は患者さんの精神的安心を確保するために尽力しました。

最初のうちは、病院のスタッフから「あの人は何のためにいるの?」というネガティブな視線を感じたり、厳しいこともたくさん言われました。私も、自分がやっていることが正しいのかどうか手探りで、苦しい時期が続きました。

ところが、半年後くらい経って、変化が起きました。患者さんが「伴さんいますか?」と、私を訪ねてくれるようになったのです。私にとっては、目の前の患者さんが喜んでくれたら正解。自分がやっていることは正しく、「需要は確かにあるのだ」と実感しました。一緒に働くスタッフからも、だんだん頼ってもらえるようになりました。

同時に、他の病院の方から「あなたみたいな人材はどこに行けば採用できるの?」と尋ねられる機会も増えてきました。他の病院でも需要があることを確信し、自ら「バースコンシェルジュ」という肩書を名乗るようになりました

そして、病院のスタッフとして務め始めてから3年半後、会社として独立することを決めました。

「この世にない職業」を作り出す苦労をどう乗り越えたか

ー事業をすすめる上で、最も苦労したポイントと、それをどのように乗り越えたか教えてください

:何よりも、「この世にない職業を作り出す」難しさが大変でした。前例がないので、全てが手探りであることはもちろん、医療現場は、これまでバースコンシェルジュという存在がなくても回っていたわけです。なので、最初はどうしてもネガティブな反応を受けがちになってしまいます。これは、どこの現場にいってもそうです。

そんな状況から、我々の存在の意義を現場の方にわかってもらうためには、「実績と感謝」をコツコツ積み上げていくしかありません。バースコンシェルジュを育成する研修でも、この困難は必ず伝えるようにしています。

ー創業期、経営の上ではどんな課題がありましたか

:バランスシート、キャッシュフロー、会計システムは、請求書作成など、基本的なお金のことも全く分からない状態からのスタートでした。そんな時に、創業後に必要なノウハウがまとまっている創業手帳がとても助けになりました

事業が進んでからも、営業チラシの作り方や、社内のコミュニーケーションツール選びなど、創業期には考えていなかった抜け漏れが出てくると、創業手帳で確認しました。事業でなにか悩んだポイントは、だいたい網羅されていたので、ありがたかったですね。

産後ケア施設を中心に「線のサービス」を構築したい

ー今後の事業の展望について教えてください

:産後ケア施設を作る、という最初の目的は変わっていません。ただ、今は、当時描いていた構想よりも大きな枠組みで事業展望を考えています。

具体的には、5年後を目処に、産婦人科、産後ケア施設、学童保育やカフェなどを含めた複合施設を作りたいです。というのも、産婦人科の現場に入って、出産に関わるケアには長期的なケアが必要だとわかったからです。

お母さんの不安を払拭し、何でも頼ってもらえるような信頼関係を作るためには、出産初期からコツコツコミュニケーションを重ねる必要があります。そして、出産してからも、子供の成長に併せて新たな心配が次々生まれるものです。

私達が対応したお母さんたちの中で、産後しばらく経ってからも産婦人科に訪ねてくる方はたくさんいます。多くのお母さんたちが、「つながり」を強く求めているのです。我々としても、過去から蓄積された情報や関係値があれば、その方が必要としているサービスを提供しやすくなります。

現在、日本では、出産・産後ケア・託児・教育など、出産に関わる各サービスがそれぞれ独立した「点のサービス」になっています。複合施設を作り、それらが繋がった線のサービスを提供したいですね。

ー複合施設の実現に向けて、新たに取り組みとして考えていることはありますか?

:5年後に複合施設を作るためには、まず資金面を考えなければいけません。この事業は人材が命なので、コストに占める人件費の割合がとても高いです。人件費を削減することなく、内部留保を増やしていくためには、ベースとなる売上をもっと伸ばす必要があります。

医療従事者向けの研修を行う伴代表

研修を行っていた病院で、「研修終了後もバースコンシェルジュの肩書をそのまま使わせてほしい」という依頼を受けたことがありました。このとき、バースコンシェルジュという肩書自体を、ライセンス化すれば、サービス向上のための需要があるのではないかとひらめいたのです。そこで、今後はバースコンシェルジュのライセンス化事業にも取り組んでいこうと考えています。

事業に対する「ぶれない軸」の力

ー経営者として、大切にしている信条を教えてください

:「とにかく愛を持って誠実に、正直に」ですね。対人コミュニケーションが要のサービスなので、何をするにも、根底に愛が無いと見透かされてしまうものです。

そして、迷ったときは「人として正しいかどうか」を自分に問うようにしています。

あとは、支えてくれる人への感謝です。子育てでサポートしてくれる夫や実家、ハードな環境で頑張ってくれるバースコンシェルジュの皆の支えあって、ここまで来ることができました。

ーこれから起業を考えている人へ一言メッセージをお願いします

:やはり、事業に対するぶれない軸が何より大事です。事業を展開していると、本当に心折れそうな場面がたくさんあります。そんなとき、「なぜ自分はこの事業を始めたのか」という確固たる軸があれば、乗り越える力になります。私の場合は、「人に喜んでもらいたい」が原点です。苦しい時も、とにかく目先の人を喜ばせることを考え、「ありがとう」といってもらうことで先に進む力をもらいました。

また、特に女性に向けてですが、妊娠・出産・不妊治療の現場に携わってきたからこそ、起業への情熱とともに、自分のライフプランとのバランスを考えることが必要だと感じています。特に、将来的に子育てを考えてらっしゃる方は、できる内からライフプランも踏まえて事業を進めていくことをおすすめします。

伴代表も活用した創業手帳の紙面版では、経営のステージごとに役立つノウハウをまとめて紹介しています。先輩起業家のインタビューも掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。

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(取材協力: 株式会社ブライトン/伴照代 代表取締役社長
(編集: 創業手帳編集部)

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