トラジェクトリー 小関 賢次|ドローン完全自動化で災害救助の効率化を目指す。
人命救助のためのドローン管制システム
(2018/04/17更新)
いつしか馴染み深いワードにもなっている「ドローン」。ですが、いざ操縦するとなると、法制度の理解や豊富な経験がなければ、うまく運用することができません。
そんなドローンを完全自動化する管制システムを開発しているのが、株式会社トラジェクトリーです。彼らが実用化を目指しているのは、災害救助の分野。現在は山岳捜索活動を行なっている民間団体と共に、ドローンを利用した捜索活動を行い、実際に遭難者を探し当てたことでも注目を集めている企業です。
今回は、株式会社トラジェクトリーの代表取締役社長 小関 賢次氏に起業したきっかけや今後の目標についてお話を伺いました。
ドローンの完全自動化が人命救助に繋がる
小関:私たちは、無人飛行機(ドローン)の管制システム開発、及び管制運用サービスを提供しています。
近年、ドローンの需要が高まってきていますが、ドローンは法制度の理解、豊富な知識・経験が無ければ高度な運用は困難です。ドローンの産業利用の普及、ドローン前提社会を構築するためには、人によるドローン運用ではなく、これらのスキルをAI化した管制システムが社会インフラとして必要となると考えています。また、これらのシステムを運用導入するために、ドローンを利用した山岳遭難者の捜索活動、災害救助支援活動に活かせる環境作りを行っています。
小関:私は、前職で航空管制システムの開発をしていました。その際に感じたのは、「有人飛行機では、航空管制の完全自動化は難しい」ということでした。有人機の世界では、乗客の命の安全を守るために、飛行機のパイロット、管制官といった高度に訓練された人の力がどうしても必要だったのです。
一方で、「ドローンに代表される無人飛行機は有人飛行機よりも早く完全自動化ができるのでは?」と考えていました。産業用途でドローンを利用する場合、複数の無人機を1機ずつ人が操縦するコスト的に割にあいません。複数の無人機をシステムで管理・制御することが求められており、その技術をいち早く実現して、様々な分野に活かしたい、と思ったのがきっかけです。
小関:起業した時は、私に経営経験が足りなかったことを痛感しました。サラリーマン生活しか経験していませんでしたので、起業に関する様々な知識・経験がありませんでした。サラリーマン時代も管理職として実務していましたが、ベンチャー経営となると全く別物の感覚が必要でした。起業当初は本当に右も左も分からない状況の中、多くの仲間が私に足りないことを補ってくれて、サポートして頂いたことで、法人設立や設立後の事業のスタートをスムーズに行うことができました。
また、投資を受けるにしても、「ドローン市場が普及しているかどうか」のタイミングが課題でした。ですが、日本政府の取り組みの加速、ドローン市場の成長の加速、特に管制システムについては、アメリカのNASAやFAAを中心とした世界的な開発競争がスタートしたことで、起業と投資を受けるタイミングとしては、今しかない、という状況でした。
さらに、今はまだ起業直後なので、これからはチームビルディングが課題です。ドローン業界に限らず全体的に人材不足ですから、今後もこの点は課題となってくるポイントだと思います。
小関:実際にドローンを使用して山岳での捜索を行った時でした。民間の救助隊の方が、私たちがドローンで得た情報をもとに捜索計画を立てました。
すると、幸運にも捜索から短時間で発見することができ、ご遺体をご家族の元に帰してあげることができました。ご家族の方の笑顔を拝見した瞬間が、とても印象に残っています。
弊社のドローン運用技術が、実際に山岳捜索の現場で有用であるということが証明できた、と感じました。
小関:「相手の立場になって物事を考える」こと、「俯瞰して考える」ということにこだわっています。お客様とお話をする際は、お客様が解決したい課題をしっかり伺った上で、その課題がどのように生まれていったのか、といった原因に迫るところまで、一緒に考えるようにしています。また俯瞰目線で全体像を意識しながら、一緒に解決策を考え、ドローンが利用できること、ドローンで業務改善効果があるところ、技術的にも手の届く範囲で提案するようにしています。
まだまだドローンの技術では、お客様の全ての課題を解決することはできません。現状では人の仕事の中にドローンを加え、人とドローンが連携した新しい業務スタイルを提案しています。
小関:「相手の期待以上のサービスをする」ということです。相手の期待を超えるためには、そもそも相手の期待を正しく理解しなければなりません。その上で良い意味で相手の期待を裏切るサービスをする、ということは、「常に自分たちがお客様の期待を越えるためにチャレンジする」ということでもあります。その点は、いつも意識して行っていることですね。
ヘリコプター・ドローンが安全に飛べる空を目指す
小関:今後は警察などと連携して、遭難事故が発生した直後に、即時に広域にドローンによる捜索を行えるようにすることを目標としています。
警察や消防、民間の捜索チームと連携し、弊社のドローン管制システムが空のインフラとなり、警察や消防ヘリコプターや多くのドローンが安全に空を飛べるようにしたいと思っています。
小関:思いだけで起業しても、時代に対してサービスが合わない、とか、海外ではニーズあるけど日本ではまだ求められていない、といったことが起こりうるかもしれません。また時代が合っていて技術も持っていたとしても、一人では何も達成できません。起業する前には多くの方に思いや事業プランを話して、たくさんの方の意見を取り込み世界観をより具体化しながら事業内容をブラッシュアップするのと、そして、事業へのファン作りをすること大切だと思います。
(取材協力:株式会社トラジェクトリー/小関 賢次)
(編集:創業手帳編集部)