商標ってどんな権利?大企業じゃなくても取ったほうがいい? 弁理士起業家に聞いた

商標登録をサポートするサービスをしているCotoboxの五味和泰代表に話を聞きました

(2020/02/27更新)

知財(知的財産)の一つである「商標」は、企業のブランドや権利を守る上で重要な役割を果たします。最近、企業による知財保護の重要性が叫ばれている一方で、「商標登録は大企業がするもの」という認識で、商標の取得を考えていない経営者もまだまだ多いのが現状です。

そんな中、cotobox株式会社は、主に中小企業以下の事業主向けに、円滑な商標登録をサポートするサービス「Cotobox」を展開しています。同社の代表であり、弁理士でもある五味和泰氏に、商標に関する基礎知識や、事業の規模に関わらず商標登録を意識すべき理由などについて話を聞きました。

五味和泰 (ごみ かずやす) cotobox株式会社 CEO
早稲田大学理工学部卒、米国 南カリフォルニア大学法学修士。特許事務所で10年間、知財実務に従事。2015年、はつな知財事務所を設立。2016年2月より現職。日本弁理士会、日本商標協会に所属。

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中小企業以下の事業者による商標登録のハードルを下げるサービス

ーサービスの概要を教えて下さい

五味:商標登録をスムーズに行うサポートをするサービスです。商標を登録するための最初のステップとして

  • 既に同一・類似商標が登録されていないかを調査する
  • 登録する商標の事業領域を特定する

という2つの作業があります。Cotoboxは商標検索システムを提供していて、過去に登録された商標や類似商標をカンタンにチェックできるだけでなく、特許庁が定める900種以上あると言われる事業領域(商品及びサービスのカテゴリ)の中から登録を考えている商標に近い領域を絞り込むことができます。

検索システムによる商標の調査と事業領域の絞り込みができたら、ユーザーと弊社の提携弁理士(=知財の専門家)を繋ぎ、実際に登録を進める段階に入ります。登録の進捗や、弁理士とのやり取りなどの情報はユーザーのアカウントに蓄積され、随時チェックできるので、登録を円滑に進めやすくなります。

Cotoboxの仕組み

ー起業に至った経緯を教えて下さい

五味:もともと弁理士として10年以上特許事務所に務め、特許取得のサポートをしていました。そこからアメリカのロースクールに留学し、そこで若手の弁護士や学生、エンジニアが中心となってリーガルテックを活用した事業を進めている姿を見て、日本でも今後同じような流れが来るのではないかと思いました。

日本では、「商標は大企業が取るもの」というイメージが根強いですが、アメリカや中国では企業の規模に関わらず権利を守るための商標取得が当たり前になっています。

私も、日本で中小企業以下の企業による商標取得を応援したいと考えましたが、弁理士などの専門家に頼むと商標の取得には相応のコストがかかります。資金が潤沢でない場合も多い中小企業以下の事業主にとっては、ハードルが高いのです。このギャップを埋めたいと思い、Cotoboxを立ち上げました。

そもそも商標とは?基礎知識と登録の流れ

ー「商標」とは、わかりやすくいうとズバリ何でしょうか?

五味:「会社もしくは事業のイメージを表すもの」でしょうか。

例えば、Apple社のりんごマークがありますよね。私達は、あのマークを見ただけで、Apple社であることがわかりますし、Apple社がどんな商品を作っているのか、どんなコンセプトを持っているのかといったいろんなイメージが湧いてきます。

商標として登録できるものは、名前だけでなく、マークや、商品の形状、匂いや音楽まで多岐に渡ります。そういった意味でも、商標は広くイメージの権利を保護するものと言えるでしょう。

ー「商標」と「商号」の違いを教えて下さい

五味:まずそもそも法律的に扱いが全く異なります。商号は単に法人の名称を示し、保護するためのものであるのに対し、商標はサービスや自社の事業領域を守るためにあるものです。

例えばサービス名と会社名が同じ企業がありますよね。経営者の方は、「商号を登記してあるのだから、その名前でサービスを展開するのは当然だ」と考える方も多いのですが、商号として登記できても、その名称が既に商標として登録されている場合は自由に使うことが出来ません。

特に経営者の方は、商号と商標は全く分けて考えなければならないこと、サービスとしての価値を保護したいのであれば、商標の取得を別途行わなければならないことを頭に入れておくと良いと思います。

ー商標を取得するまでの実際のステップを教えて下さい

五味

  • 登録する名前を考える
  • 登録するカテゴリを決める
  • 既に同一又は類似商標がないか調査をする
  • 特許庁に提出する書類を作成する
  • 特許庁に書類を提出し、審査してもらう
  • 審査がOKだった場合、商標の登録料を払う

※審査では同一又は類似商標以外の要件もチェックされるので、調査も様々な観点から行われます。

という流れになります。4の提出書類の作成は、弁理士に依頼した場合最短で1~2日、長くて数週間程度の時間がかかります。

5の特許庁による審査は、通常13か月かかりますが、一定の要件を満たせば2か月程度で審査が完了する早期審査制度もあります。

6については、商標の存続期間を5年・10年のどちらにするかによって登録料が変わります。登録料の支払いから約2週間で完了の通達が届き、そこから商標が効力を持ちます。

商標の取得には、戦略的な判断が必要な場合もあります。例えば大企業では、文字での商標が取得できなかった場合、まずロゴで商標を取得し、商品の販売を通じて商標の知名度を上げたのちに、文字での商標を取りなおす、といった形をとることもあります。

商標登録で見落としがちなポイント

ーCotoboxを使うと、従来の商標取得方法に比べてどんなメリットがあるのでしょうか

五味商標登録の最初のステップを簡易化することで、弁理士に相談する際のハードルを下げることができます。弁理士に委託する場合、商標と事業領域の候補を社内で揉んでから弁理士に提出しても、調査の結果提出した商標の登録が難しそうだ、という判断が出た場合は、振り出しに戻って社内で揉みなおす必要が出てくることもよくあります。Cotoboxを使えば、こうした余計な差し戻しの負担を軽減し、スムーズな登録をしやすくなります。

また、商標に強い弁理士と提携しているため、ユーザーにとって適切な専門家を選びやすいという点も特徴です。

ー起業家が初めて商標を取得する際に、見落としがちなポイントはありますか

五味:まずはコスト面ですね。専門家に依頼する場合は、トータルで十数万円程度のコストがかかります。自身でやる場合、上手く行けば3~4万円程度でコストを抑えることができます。なので、商標取得を自分でやろうと考える人は少なくありません。

しかし、自力でやる場合、もし申請がスムーズに行かなかった場合の対応にはある程度の専門知識を持って行う必要があり、1から学ぶことを考えると時間がかかります。特に、創業間もない忙しい時期だと、起業家がバックオフィスに割く時間を十分に確保できないことも多いでしょう。また、自力で取得は出来たものの、5・10年後にやってくる更新のタイミングを忘れて、期限が過ぎてしまった、という相談も後をたちません。

トータルで考えると、自力で取得するよりも、最初から専門家に依頼するほうがコスト的に安くなる場合のほうが多いように思います。

また、商標を専門にしている弁理士を探すのが難しいというのがあります。特許事務所の7~8割は特許専門で、商標を専門にしている弁理士の数は、割合としては多くありません。さらに、大企業の商標登録には慣れているけれど、中小企業やスタートアップに精通しているわけではない、という場合もあります。

このような現状から、自身の事業領域に強い弁理士をゼロから探そうと思うとハードルが高いかもしれません。Cotoboxのサービスで、弁理士の紹介もしているのは、ユーザーのニーズを満たす弁理士探しのサポートをする意味もあります。

ーこの事業で、どんな社会課題を解決したいと考えていますか

五味:商標の取得によって、企業の競争力をあげたり、防御を固めることができます。一方で、日本では企業の規模によって商標に対する情報の非対称性があるのもまた事実です。

最近、日本でも知財の保護が叫ばれるようになってきましたが、いまだ、「商標は大企業が取得するもの」という認識は根強く、日本の法人総数に対して、商標を取得している企業はまだまだ少ない現状があります。

私はこの事業を通じて、小さい会社や、個人事業主にとっても商標の取得が当たり前になるように、知財の民主化をしたいと考えています。

商標権は、創業初期から取得を視野に入れたほうがいい

五味代表の分かりやすい解説で、商標権についての理解が深まったかと思います。自社のブランドを守るためにも、創業初期の段階から商標取得を考える視点を持つ必要がありそうですね。

商標権に限らず、事業を立ち上げるにあたって気をつけておかなければならないチェックポイントは無数にあります。無料でもらえる創業手帳の冊子版では、事業を進める上で必要なノウハウをまとめて解説しているので、ぜひ活用してみてください。

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(監修: cotobox株式会社/五味 和泰CEO
(編集: 創業手帳編集部)

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