創業手帳代表が日経をさくっと解説 SMBC、みずほFG社長のトップ対談ほか

2019年1月8日の日経新聞に、以下のニュースが取り上げられました。

1面
・日中韓経営者「貿易戦争、今後さらに悪影響」7割
・NEXT1000 中堅上場企業の時価総額18%増

3面
・景気持続ちらつく不安
「中国減速これから」「円高訪日消費に影響」「デジタル進歩商機」

5面
・消費税増税対策 ポイント還元に除外品
金券や切手、転売懸念。車や住宅は減税で対応

9面
・メガバンク SMBC、みずほFG社長のトップ対談
3メガ銀行はキャッシュレスやデジタル化への対応を急ぐ。

・米フィンテックに厳しい目
金融当局監視強化にカジ。法令遵守の緩さ問題視

10面
スタートアップと連携意欲 AIが最大の焦点

12面
・NEXT1000 時価増額の増加企業ランキング
・独自モデル武器に成長

13面
・迫る5G・動画広告磨く スマホで視聴 秒単位の勝負

14面
・中国アイフライテック 音声AI21億台提供

31面
・freee佐々木大輔社長のインタビュー 新技術に大企業注目。働き方改革必要。
・福祉タクシーチケット電子化

35面
・SNS 思わぬ利用凍結

起業家、スタートアップアップの観点で、創業手帳代表の大久保が、さくっと解説します。

1面:日中韓経営者「貿易戦争、今後さらに悪影響」7割

3面:景気持続ちらつく不安 「中国減速これから」「円高訪日消費に影響」「デジタル進歩に商機」

起業家、スタートアップ界にとっても気になるニュースですね。
米国と中国の相互の関税強化(貿易戦争)でお互いの景気が減速しています。中国の減速が輸出とインバウンド両方に作用し、今後さらにその影響が強まるということです。

1/7に日経平均が上昇し20000円台を回復したものの、今後、実需の影響が出てきそうです。
スタートアップにとっては、国内景気の減速に伴う売上への影響、CVC(事業会社からの投資)の資金の余力が減ることで株価がつきにくくなることが懸念されます。
ただし、今既にある投資ファンドは、組成されてから一定期間は投資が続きますが、今後に悪影響であることは確かです。

5面:消費税増税対策 電子決済のポイント還元に除外品 金券や切手、転売懸念。車や住宅は減税で対応

消費税が今年の10月に引き上げられます。
景気の悪影響をカバーするために、政府はポイント還元策をとっていますが、高額商品や転売可能な商品は除外されるというもの。消費増税は景気には悪影響であるものの、電子決済のポイント還元があり、電子決済の導入のきっかけになりそう。電子決済は課税回避を防止しやすくなるため、消費増税・電子決済導入はいずれも財政健全化策である一方で、景気が悪化すると課税対象も下がり、結果的に税収が下がってしまったということにもなりかねないですね。

今の景気を見ると、消費増税の悪影響はかなりありそうなので、経済・政治的な判断で止めるということもあって良さそうですが、ここまで話が進んでしまっていると、消費税アップのストップがかかることはまずないでしょう。

9面:メガバンク SMBC、みずほFG社長のトップ対談
3メガ銀行はキャッシュレスやデジタル化への対応を急ぐ

―3社のキャッシュレス・デジタル化対応―
・三井住友・・・決済データを迅速に処理するプラットフォーム構築、4月までに三井住友カードを完全子会社化
・みずほ・・・スマホで支払いや送金可能なデジタル通貨を3月にも発行、20年めどにLINEと共同出資で新銀行を設立
・三菱UFJ・・・米アカマイと、ブロックチェーンによる決済システム実用化、ネット通帳で過去10年分の取引閲覧可能に

メガバンクの生き残り策についてです。三井住友銀行は三井住友カードを完全子会社化、みずほはLINEと連携したり、ソフトバンクと組んだJスコアに注力。東京三菱と三井住友はコストの高いATMの相互開放をするなど、提携による生き残りが活発化しています。

この対談から、提携には他業種と組む方向、横(競合他社)と組む方向の2種類があることが見えてきます。

東京三菱と三井住友のATM相互開放は、後者です。従来はATMも独自に持つことで競争し、差別化の武器としていましたが、市場が成熟し縮小に向かう段階なので、お互いに組んで合理化を図っていくという動きになっています。
コストの削減や、今後ビッグデータの活用を考えると、規模が大きいほうが有利になる一方で、自前で広げるには無理があるので、現実的に競合と手を組んでしまうという考え方です。市場のイケイケの成長期には出てこない発想だが、賢い選択と言えましょう。

もう一つの方向は、スタートアップと組む方向では動きの早いテック系ベンチャーと組んで成長を加速させようというもの。

横で手を組む動きとスタートアップと手を組む2つの動きが今後、メガンバンクに限らず企業の成長と生き残りを左右すると言えそうです。スタートアップ側も、市場が成熟してきて勝負がつかなくなったり、市場環境が厳しくなってくると、資産の活用や顧客、技術の共通化のため横で手を組むという動きも出てくるでしょう。

9面:米フィンテックに厳しい目 
金融当局監視強化にカジ。法令遵守の緩さ問題視

米国のフィンテックやICO(仮想通貨による資金調達)で問題が発生し、金融当局が規制強化に乗り出している内容です。
市場に資金が過剰に供給されバブル気味になると、問題が起こり、規制が強化されるというのは以前から繰り返されてきたことですが、そういう動きの中で、問題ある業者は淘汰され、ホワイトな業者に顧客や資金が集中するので良い面が有ります。もっとも規制が強くなりすぎると市場を潰すことにもなりかねないので、金融当局は微妙な舵取りを求められます。

10面:スタートアップと連携意欲 AIが最大の焦点 
興味のあるスタートアップの分野

日経新聞が中・韓の有力紙とともに行った経営者アンケートで、アジア3カ国の経営者は、いずれもAIが関心事で、スタートアップと連携したいという意識が高いことがわかった、という内容です。
1位・2位はAI、IoTで同じですが、高齢化と賃金の上昇が進んでいる日本と韓国が3位にバイオヘルスケアが入っているのは社会構造の変化を表していると言えるでしょう。

また、日中韓の関係について、韓国は徴用工問題で悪化していると回答しており、今後が気になるところです。

12面:NEXT1000 中堅上場企業の時価総額18%増 
独自モデル武器に成長

NEXT1000は成長株の会社をくくった企業群のことです。当然、普通の会社に比べると成長性は高いですが、時価総額増加上位は、よく見るとスタートアップが並んでいる印象。

IT系の会社が多いのは当然ですが、M&A会社(M&Aキャピタル、ストライク)も多く、今後承継や再編でM&A市場が伸びていくことを反映しているといえるでしょう。

13面:迫る5G・動画広告磨く スマホで視聴 秒単位の勝負

―独自の動画広告サービス―
・CMerTV・・・消費者の好みに合う動画を瞬時に配信
・カイゼンプラットフォーム・・・大日本印刷との折り込み広告を動画に
・オープンエイト・・・AIを使って最短3分で動画制作
・電通デジタル・・・半日でインスタ用動画制作
・博報堂DYホールディングス・・・テレビCMとネット動画で広告効果測定
・Viibar・・・クラウド型動画制作管理システムを開発

2020年に5Gが商用化されると、動画が活発になり、それに伴って広告配信が進化するという内容です。
通信の進化で動画制作が活発化するイノベーションの連鎖が起こる可能性があります。
動画制作には、カイゼンプラットフォームのように、クラウドソーシング的に人を効率的に使う方向と、自動化する方向の2つあります。今後、増加する需要をまかないきるために、動画制作業界も変わっていくでしょう。

14面:中国アイフライテック 音声AI 21億台提供

21億台って!桁が半端ではないですね。AI、音声認識では、GAFA(フェイスブック、アマゾン、グーグル、アップル)が強いですが、GAFAの牙城を追い上げているのがアイフライテックです。
中国版のGAFAがBAT(バイドゥ(百度)、アリババ(阿里巴巴集団)、テンセント(騰訊))と言われていますが、新た一角として注目されているのがアイフライテック(iFlytek、科大訊飛)です。BATIになるかもしれないということですね。

アイフライテックは中国の安徽省に本社がある、中国科学技術大学発のベンチャーです。設立は1999年、創業者で現CEOは劉慶峰氏で、時価総額は1兆4000億円ほどの巨大企業です。

AIの英語の文章認識力と理解力を試すSQuAD(スタンフォードQ&Aデータセット)というイベントでは、グーグルが1位、アイフライテック・マイクロソフトが同率2位だったとのこと。ハードを握る中国系という強みがあり、今後の動向が気になる会社です。

31面:freee佐々木大輔社長のインタビュー 新技術に大企業注目。働き方改革必要

言わずとしれたfreeeの佐々木社長。良い会社はカルチャーに力を入れているとのこと。人材がいくらでもいた時代と違って、今後は採用難の時代になり、人を惹きつけ育てるカルチャーを持っている会社が、伸びていくでしょう。

31面:福祉タクシーチケット電子化

良い話題ですね。いまだに電子マネーが使えないタクシーがある中で、公共系が先駆けて電子化するメリットは高いです。特に福祉系はデータの活用が利ききそうな分野ですね。

35面:SNS 思わぬ利用凍結

起業家の武器はSNSです。facebookやtwitterの活用は、もたざる一方で動きの早い起業家は積極的に活用すべきですが、ガイドライン抵触による凍結は怖いところ。

解説 大久保幸世
創業手帳の創業者(代表取締役)
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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