「地方で起業したい」を叶えるために知っておきたいポイント

創業手帳

地方での起業を目指している方に、メリット・デメリットや地方ならではの制度の活用方法について解説します

(2020/05/14更新)

ひと昔前までは起業といえば「東京」というイメージでしたが、地元に戻って起業をしたい、都心に比べ可能性が未知数な地域で起業をしたいと考えている人が近年増加傾向にあります。リモートワークが進み、オフィスが都心になくても仕事ができるようになったのも大きいでしょう。地方で起業するとどのようなメリットがあるのか、地方起業についてのポイントをまとめました。

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地方で起業するメリット

はじめに、地方で起業するメリットについて見ていきましょう。

コストを削減できる

都市部と比較して物価が安いのが最大のメリットと言えるでしょう。特に、事務所の家賃、スタッフの人件費の差が大きいのが特徴です。

都内一等地で開業する場合の資金が工面できた場合でも、これらのランニングコストは相当大きいものなので、事業の継続年数が長くなればなるほど支出額に差が出ていきます。

コストを安く抑えたい場合は、地方で起業するというのもひとつの手段となるでしょう。

地方で起業する人向けの優遇措置がある

地方の経済発展や地方創生効果を期待し、各都道府県や市区町村が補助金や助成金を設けている場合があります。

起業資金を半額支給したり、販路支援をしてくれたり、事業税を免除してくれたりなど、取り組み内容は様々ですが、経費の削減に繋がると言えるでしょう。

特に、資金面だけを理由に起業を諦めようかと思っている場合、こうした制度を上手く利用することで事業を行える可能性も出てきますので、十分に調べておきましょう。

ライバルが少ない

都心に比べ、競合する企業が少ないため、顧客の奪い合いが起こりにくいというメリットもあります。
一方で、全国に顧客を持つような事業ではなく、顧客の中心が地域の人であるような事業では、顧客数が都心ほど多くないので注意が必要です。

起業する際は、競合他社の数やシェア数なども念頭に入れて場所選びをするとよいでしょう。

地元ネットワークを活用できる

地方には横繋がりのネットワークが多く、起業家同士のコミュニケーションや商工会による後押しが多いのもポイントです。中には地方に特化してレンタルオフィスやコワーキングスペースを展開している企業もあり、地方金融機関や信用組合の創業支援活動と上手く組み合わせれば起業資金をかなり抑えることが可能です

地方で起業するデメリット

では反対に、地方で起業するデメリットも見ていきましょう。

業種や地域によっては新規参入がしづらい

ライバルが少ない一方、昔からそこに根付いている企業がその地域の大多数のシェアを握っているケースも多く、新規参入してきた企業がどれだけ顧客を獲得できるかという問題もあります。

起業する土地での同業他社の動向やシェア率について、念入りな調査を行っていくことも大切です。

スタッフの確保が難しい

求人に対して応募してくる人が少ない、学歴や職歴が求めるレベルに達していない、などの可能性もあります。

また、都心でよく利用されている転職エージェントや求人サイトがメジャーでない地方も多く、その地域でよく目にされている求人手段についてリサーチすることも必要です。
人材確保には余裕をもって取り組みましょう。

そもそも市場が小さい

その地域でのシェアをほぼ独占できたとしても、そもそも市場規模が小さいと会社として成り立たなくなる可能性も出てきます。
どれくらいのニーズがあるのか、居住者のステータスや生活についても念入りに調べておきましょう。

地方の起業に向いている人

起業そのものも決して簡単ではありませんが、さらに地方であることが加わると、どのような人が向いているのでしょうか。地方で起業スタートしやすいパターンを見ていきましょう。

ITスキルの高い人

プログラマー、システムエンジニアといったIT系のスキルを持っている人であれば、地方での起業はしやすいと言えるでしょう。

地方起業のデメリットに、ビジネスが集中している都心部への距離の遠さが挙げられます。しかし最近では、社内外の打ち合わせもオンライン会議で済ませるところも多く、IT系の知識があり、ツールを使うのに抵抗がなければ場所を選ばず仕事ができます。

地方の特産物や観光資源に興味がある人

その地域ならではの特産物や観光資源を用いた事業を行いたい場合、なるべくその地域内で起業した方がアクセスよく働けるという利点があります。行政からのバックアップや地元住民からの支援も受けやすく、地域に馴染みながら仕事ができます。

○ブランディングやコンサルティングスキルが高い人
地方の商工会や団体の中には、地域の特産物や観光資源を多くの人に売り出したいけれどどうしていけば効果的なのか分からない、という悩みを抱えているところも多いものです。

ブランディングやコンサルティングを得意とする人であればこうした悩みにアプローチすることが出来ます。地域の商工会などとタッグを組んで、ヒット商品を開発したり、PR方法を提案し新たな顧客層に訴求したりする例は数多くみられます。ひとつの地域で上手くいけば、他の地域から声がかかることもあるかもしれません。

地方での起業が向いていない人

地方で起業することに向いていないのは、どのような人でしょうか。

コスト面での利点のみを考えている人

地方での起業は、物価が安いだけでなく様々な支援金が受けられる側面もあるのでコスト面で非常に有利だと言えます。

一方で、コスト面での利点のみを考えて地方で起業してしまうと失敗するケースが多いのも事実です。あえて地方で起業する意味、競合他社の調査、その地域ならではの特徴を理解し、「東京以外ならどこでもいい」という状態にならないよう念入りな計画が必要です。

○地域に根差す意欲のない人
都心で起業する時以上に、地方での起業には「よそ者」という目で見られやすいリスクがあります。
信頼できるビジネスパートナーやファンとなってくれる顧客を獲得するためには、その地域に根差すのは不可欠だと言えるでしょう。

3年間は種まきの期間だと心得て腰を据えて事業を行っていくなど、ある程度の覚悟が必要です。

地方起業を支える公的サポート、国の支援

地方で起業する人向けの公的サポートや国による支援があります。
起業をする際には、自分に当てはまるかどうかも確認しながら制度を上手に活用していきましょう。

内容について、詳しくご紹介していきます。

〇起業支援金制度
3つの条件を満たした人に対し、200万円を上限として起業に必要な経費の半額を交付する制度です。
条件は以下の3つです。

  • 東京圏以外の道府県もしくは条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと
  • 公募開始日以降、補助事業期間完了日までに、個人開業届又は法人の設立を行っていること
  • 起業地の都道府県内に居住していること、又は居住する予定であること

起業する場所は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県以外の地域、もしくは東京都小笠原、埼玉県秩父、千葉県館山など都心から離れた地域である必要があります。
起業のための支援資金であると同時に、地域創生を目指して行くための資金でもありますので、もし条件に当てはまる場合は申請しておきましょう。

○移住支援金制度
3つの条件を満たした人に対し、100万円以内(単身の場合は60万円以内)でそれぞれの都道府県が設定する金額を交付する制度です。
条件は以下の3つです。

  • 元々住んでいた場所が東京23区の在住者又は通勤者であること
  • 東京圏以外の道府県又は東京圏内の条件不利地域への移住者であること
  • 移住支援事業を実施する都道府県が、マッチングサイトに移住支援金の対象として掲載する求人に新規就業した方又は起業支援金の交付決定を受けた方

起業支援金制度と同様、移住する先は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県以外の地域、もしくは都心から離れた地域である必要があるのでよくチェックしておきましょう。
必ずしも自分自身で起業する必要はなく、移住支援金の対象となっている起業の求人に応募して仕事を始めた人にも適用されるというのがポイントです。
起業するのは難しいけれど地方で働きたいという場合には、こうした制度を利用するのもひとつの手です。

支援金制度を活用しながら上手に地方起業をしましょう

コストを抑えながら起業したい、地域に根差した事業がしたい、という人にとって、地方で起業することは大きなメリットとなります。地域活性のために設けられた支援金制度を利用すれば、資金面で起業を諦めていた人もチャンスをつかむことができるでしょう。どの地域で起業すればいいのか悩んでいる、起業する際の費用が心配だ、という場合は、地方起業を考えてみるのもいいかもしれませんね。

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(編集:創業手帳編集部)

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