クリエイターズネクスト 窪田望│GAFAMを倒す!【前編】

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年03月に行われた取材時点のものです。

創業していきなりラスボスと戦う前提でプランを考える

Googleを超えた自動運転の特許技術で注目される、株式会社クリエイターズネクスト。創業者で代表取締役社長を務めるのが窪田望さんです。

窪田さんは、2021年12月に2年連続のウェブ解析士 日本一の受賞を経て、45,000名の資格保有者の中で初となるウェブ解析士の「殿堂入り」を果たしました。
TikTokのフォロワーは11万人を超え、多くの方へマーケティング情報を発信しています。

「GAFAMを丸ごと倒したい」と語る窪田さんに、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

窪田 望(くぼた のぞむ)
株式会社クリエイターズネクスト 代表取締役社長
米国NY州生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。15歳の時に初めてプログラミング開発を行い、ユーザージェネレーテッドメディアを構築。 大学在学中の19歳の時に起業し、現在17年目。 東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻グローバル消費インテリジェンス寄附講座 / 松尾研究室(GCI 2019 Winter)を修了。 米国マサチューセッツ工科大学のビジネススクールであるMIT スローン経営⼤学院で「Artificial Intelligence: Implications for Business Strategy」を修了。 2019年、2020年には3万7000名の中から日本一のウェブ解析士(Best of the Best)として2年連続で選出。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

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自動運転車のためのAI特許を活用したセキュリティー事業

大久保:クリエイターズネクストの事業内容について教えてください。

窪田:直近でおこなっている、自動運転のためのAI特許を活用したセキュリティー事業についてお話しします。自動運転車などが期待されているスマートシティの市場規模が、2030年には426兆円の巨大市場になることがわかっています。
今後14.2億台の車が、ガラケーからスマホのように自動運転車に変わっていく。そんな未来に私たちは生きています。すると、社会にはどのような変化があるのでしょうか。3つの変化があるのではないかと思っています。

まず1つ目は、渋滞がなくなります。渋滞という言葉が死語になり、より豊かな移動が叶う。そんな時代がやってくることでしょう。

2つ目は、交通事故の減少です。
現在、世界では135万人にも及ぶ人が交通事故で亡くなっています。24秒に1人、亡くなっている計算です。自動運転によって死者数が減り、誰かが生きたかった明日を作り出せます。

3つ目は交通弱者の救済です。
交通弱者だとしても、いろいろなところに移動したり、車の中で医療サービスを受けられる。そんな未来がやってきます。大久保さんは渋滞や交通事故はお好きですか?

大久保:嫌いです(笑)。大嫌いですね。

窪田:そうですよね。僕もまったく同じです。こうした課題がなくなると、誰にとってもいいじゃないですか。ただし、この未来を実現するためには「ある障壁」があります。

大久保:それはなんでしょうか?

窪田:画像認識です。自動運転車というのは、画像認識の技術がベースになって作られています。
画像認識のベースを崩されてしまうと道路標識の認識が置き換わってしまい、大きな事故につながります。これは、防がなければいけない未来です。

そのために、自動運転車のためのワクチンを提供する事業をはじめています。

大久保:ワクチンですか。

窪田:自動運転車のための「ウイルスソフト」といったところでしょうか。じつは、自動運転車のセキュリティー領域で、世界一の論文を書いているのはGoogleです。自動車業界ではありません。このGoogleの研究を超えたいと考えています。

GAFAMを丸ごと倒したい

窪田:僕らはGAFAM(Google、Amazon、Facebook※現 Meta、Apple、Microsoft)をまるごと倒したいんです。これを言うと、多くの先輩たちからは「こいつ頭おかしいのか?」って思われますが(笑)。日本の東証一部上場企業すべてを合わせても、GAFAM5社の時価総額に負けていますからね。
でも、だからこそ僕は倒したいと思っています。そうしないと、日本はこれから復活しないじゃないですか。

実際にわれわれが研究をしたところ、Googleがおこなっていた世界最高峰の研究を、精度で2.2%、頑健性で7.8%上回り、世界一になれました。

大久保:実際に結果を出しているわけですね。

窪田:ですが、この自動運転の取り組みは、はじまりにすぎません。僕らはAGIという汎用人工知能を作っています。これは、人間のように自律的に動ける人工知能です。
自動車のみならず、医療やエネルギーなど、いろいろな領域に横展開できます。先日、僕が理化学研究所の客員研究員に就任しました。細胞機能評価研究に、AIの特許技術を導入をしていく予定です。

AIはアート分野でも活用できます。文字を入力しただけで、絵画が作れる仕組みを作りました。これを使って、3月からディープアート展をおこなおうと考えています。GAFAMを技術で超え、ビジネスで世界展開し、社会貢献するのが夢です。

大久保:壮大な取り組みをされていますね。私は以前、保険会社に勤めていました。
エアバッグなどのテクノロジーにより、交通事故による死亡数が減ったのを目の当たりにしてきました。新たなテクノロジーによって、さらに交通事故による死亡者が減るのは、本当にすごいことだと思います。

AIは、まばたきも居眠りもしない

窪田:人間が得意とするところと、AIが得意とするところは分かれています。運転しているときに右見て左見て、視覚で認識しますよね。でも人間の場合は、どんなに注意深くしても右見ているときは左が見えません。
自動運転車の場合は、360度見えます。自動車同士を通信ネットワークでつなぐ「vehicle to vehicle(ビークルトゥビークル)」を活用すれば、車同士で画像を交換することも可能です。
そうすれば、衝突事故もなくせます。

大久保:なるほど。そもそも人間とAIでは、情報のベースが違うわけですね。

窪田:そうです。人間よりもAIのほうが見えています。人間の場合、まばたきもするし、居眠り運転とかもあるじゃないですか。AIは、まばたきも居眠りもしないので、自動運転車は人間が運転するよりも安全性の面では高いですよね。
理想は、自動運転車だけが走っている世界です。そうすれば、お互いがお互いを制御し合う形になり、ブレーキを踏む必要がなくなります。より最適に移動できるはずです。

大久保:人間の場合、じつは見ているようで見ていないこともありますからね。疲れているときは、集中力もなくなりますし。自動運転車が浸透すれば「交通事故は過去のもの」になるかもしれませんね。
「昔は日本にサムライが居たらしいよ」と同じように「昔は人間が車を運転していたらしいよ」となるかもしれません。

窪田:そうなるかもしれませんね(笑)。ただ、F1のようなレースは残ると思うんです。
いまって移動する際、馬に乗っている人っていないじゃないですか。でも競馬はありますよね。同じように、エンターテイメントとしては残ると思います。

大久保:ほかにAIによって期待できることはありますか?

窪田:たとえば医療分野では、遠隔医療が今後当たり前になってきます。手術ロボットを活用して、フランスに居る医者が日本に居る患者を手術することも可能です。
その際、良性の腫瘍か悪性の腫瘍かを画像認識でAIが判別してくれます。

日本がヨーロッパに学ぶべきこと

大久保:AIの話を聞いて、政治家もAIがやったら忖度などがなくて良さそうだなと思ってしまいました。

窪田:政治には人間が交渉したり、世界を変えるエネルギーが必要だと思います。
日本はこれまでにも、不条理な条約を結ばされていますよね。日本は品質競争が盛んで、実際に品質では世界一になるのですが、その後でルール形成競争に負けるパターンを繰り返していると思うんですよ。
ルール形成競争の最適化は、国ごとにせざるを得ません。でも日本は、ルール形成競争を仕掛けにいかないんですよね。

その点、ヨーロッパはうまくやっています。ルクセンブルクを例に挙げます。宇宙資源法という法律がアメリカで作られたときに、ルクセンブルクが2番目に宇宙資源法を制定しました。
この宇宙資源法とは、宇宙空間に存在する鉱物や水などの探査・開発が許可制で認められる法律です。これがない国で宇宙空間に存在する鉱物や水などの研究をしてしまうと、犯罪になってしまう可能性があります。

大久保:それだと、研究者は怖くて研究できないですね。

窪田:そうなんです。ルクセンブルクが宇宙資源法を制定したことで、ヨーロッパの研究者がルクセンブルクに集まりました。結果、ルクセンブルグで宇宙産業が活発になりました。

大久保:いま調べると、ルクセンブルクの人口は約60万人しかいないんですね。それなのに国民一人あたりのGDPは日本の2倍以上もあります。

窪田:ヨーロッパの例をもう1つあげると「GDPR(一般データ保護規則)」があります。
アメリカのGAFAMに対処したといわれるのが、このGDPRです。GDPRは、EU域内各国に適用される法令で、個人情報の扱いについての規制をおこなっています。
違反すると、2000万ユーロ(約26億円)か世界売上高の4%のいずれか大きいほうが、制裁金として科されます。
2021年、GDPRに違反したとして、Amazonへ7億4600万ユーロ(約970億円)の罰金を科す決定を出しています。

大久保:すごい金額ですね。

窪田:アメリカはイノベーションの国、ヨーロッパはルール形成競争の国、中国は成長の国。日本は何の国かというと、中途半端でどれにもあてはまりません。
ただ、まだまだ日本の品質は良いと思うので、品質の国と言えるかもしれません。しかし、品質の基準自体が変わっているのが世界なので、品質だけではなくてルール形成競争も考えながら戦略的に動く必要があります。

いまはルール形成競争に頭脳を使っている人が、極端に少ないんだと思います。お上から降ってくる感覚は、いまだにあります。そのお上が誰なのかというと、アメリカです。アメリカが決めたルールに、日本が追従する形が大半じゃないですか。
アメリカで流行っているものを追えば、その3年後くらいに日本へ来ると考えている起業家は多いと思います。

大久保:日本も戦国時代には、国内でのルール形成競争ができていたかもしれませんね。それが一番うまかったのが、徳川家康でした。いまの日本人は、ルール形成競争をやっていないから忘れているだけで、素質自体はあるのかもしれません。

後編に続く

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社クリエイターズネクスト 代表取締役 窪田望
(編集: 創業手帳編集部)



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