開業届を出すタイミングは?個人事業主なら知っておきたい開業届について

創業手帳

開業届を出す最適なタイミングや提出時のポイントを解説します


個人事業主として事業をスタートしたら開業届を提出しなければなりません。
しかし「開業届ってどこに出すの?」「いつ出せばいいの?」など、開業届の提出について疑問を持っている人も多いのではないでしょうか?

開業届は適切なタイミングで提出しなければ資金調達や税金面で不利になってしまうこともあります。
開業届の提出方法や提出のタイミング、注意点について詳しく解説していきます。

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開業届とは?

個人事業主が事業を開始したら、税務署へ提出するのが開業届です。
開業届とはどんな書類なのか、開業届提出の基本について解説していきます。

個人事業主が事業を開始したら出すもの

開業届とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届書」といいます。
開業届は個人事業主が事業の開始を税務署へ届け出るための書類です。

個人事業主は所得税を納税しなければなりませんが、開業届を提出することによって税務署へ事業の開始を申し出ることができます。
簡単に言えば納税のために「事業を始めました」ということを税務署に対して伝えるためのものです。

開業届を提出する税務署は事業主の住所を所轄している税務署です。
住所によって管轄の税務署は異なるので、国税庁のホームページからご自身の住所の所轄税務署を調べてください。

開業日の決め方

開業届には開業日を記入する欄があります。開業日の決め方に決まりはありません。必ずしも、お店がオープンした日や事務所を開設した日などでなくても構いません。

今後、その日を記念日としてイベントなどをする予定があれば、イベントを開催しやすい日で選んでも良いでしょう。例えば、2月などの閑散期を開業日とすることで、売上の少ない時期に開業記念イベントを仕掛けることもできるでしょう。

ただし、開業日の日付によっては、経理に影響が及ぶことは覚えておかなければなりません。
開業にかかった費用は、必要経費として計上可能なため節税効果があります。
しかし、開業日より前の日付にかかった費用は「開業費」に分類され「繰延資産」の扱いです。
繰延資産は、決算で任意の額を償却し経費に計上する違いがあります。

開業日の変更も可能

開業届を税務署に提出した後でも、開業日の変更は可能です。

日付の変更は、以下の2つの方法があります。

  • 開業届を出してから1カ月以内に取り下げる
  • 開業届を再提出する
  • 1カ月以内であれば取り下げできることがあるため、税務署に相談しましょう。
    取り下げできない時や1カ月以上経過している時は、開業届の再提出がおすすめです。

    開業届の提出自体は何度してもかまいませんが、何度も再提出すると税務署に目をつけられる恐れがあるため、やむを得ない事情がない限りは一度のみにするのが賢明です。
    どうしても開業日を変更したい時のみ、再提出しましょう。

    開業届を出すメリット


    開業届を提出するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

    開業していることの公的証明になる

    個人事業主にとって実務的に最も大きなメリットが「開業届を提出することが開業をしていることの公的な証明になる」という点です。

    個人事業主は法人のように登記をすることができないので、「個人で事業を営んでいる」と客観的に証明することが難しい存在です。
    しかし開業届を税務署へ提出することによって開業の事実を公的に証明することができます。

    屋号での銀行口座開設が可能に

    開業届の控えを銀行へ提出することによって屋号で銀行口座を作成することができるようになります。
    「〇〇(屋号)代表□□」という口座を作成することができるので、個人名の口座へ振り込みをさせるよりも信用度がアップします。

    青色申告特別控除が使用できる

    事業開始から2か月以内に開業届と同時に「青色事業承認申請書」を出すと、確定申告時に青色申告が使えるメリットがあります。

    青色申告は以下のような節税効果があります。

  • 最大65万円の特別控除が受けられる
  • 会計上の損失を3年間繰り越せる
  • なお、特別控除の額は、令和2年分から適用要件が変更されました。
    青色申告をしている人は、10万円・55万円・65万円の控除が受けられます。65万円の控除を受けるにはe-Taxの申告と電子帳簿の保存が必要です。

    青色申告について、詳しくはこちらの記事を>>
    知っておきたい青色申告の基礎知識とメリットデメリット

    個人名義で事業資金融資を受けられる

    銀行や日本政策金融公庫の事業資金融資は個人事業主でも借入可能ですが、審査の際には「確かに事業を営んでいる」という証明のために開業届の提出が必要になります。

    開業届を提出することによって低金利の事業資金融資を受けることが可能です。
    提出できない場合には、税務署へ開業届を提出してからの融資となるので、融資を受けたい場合には開業届の提出は必須となります。

    補助金・助成金等の申請に必要になることも

    補助金や助成金を申請する際にも「確かに開業している」という証明のために開業届の提出が必要になる場合があります。

    また、楽天市場などの出店店舗の審査を厳格に行うECサイトでも、出店審査の際に開業届の提出を求められることもあるようです。
    開業届は個人事業主にとって身分証明書のようなものですので、提出しておかないと資金調達などの場面で支障をきたしてしまう可能性があります。

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    いつ開業届を提出する?


    開業届はいつ提出すべきなのでしょうか?
    開業届の提出期限や提出をしなかった場合の対処法について詳しく解説していきます。

    開業届の提出は開業後1カ月以内

    開業届の提出については所得税法第229条に以下のように明記されています。

    「国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し(中略)た場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。」

    法律によって開業届の届け出は事業を開始した日から1ヶ月以内に税務署長へ提出しなければならないと定められています。

    提出が遅れても特に罰則はない

    ただし、所得税法第229条には罰則がないので、開業届の届け出が開業後1ヶ月を超えてしまったとしても罰則はありません。
    「屋号で銀行口座を作るタイミング」「最初の確定申告の前」などに届け出ても問題ありません。
    しかし、開業届を提出することによるデメリットは特にないので、口座作成や資金調達を円滑にするため、できる限り開業してから1カ月以内に提出した方がよいでしょう。

    開業届を出さなくても罰則はありませんが、以下のデメリットに注意が必要です。

  • 青色申告控除が受けられない
  • 従業員に支払う給与を経費に計上できない
  • 赤字繰越ができない
  • 事業用の屋号の銀行口座を開設できない
  • 融資を受けるのが難しくなる
  • 開業届の提出自体はすぐ終わるものです。
    提出が面倒だと思うかもしれませんが、提出が遅れれば結局は自分が損することになります。

    開業届提出のタイミングで気をつける5つのポイント


    開業届は届け出時に以下の5つのポイントに注意する必要があります。

  • 副業ではなく本業になったタイミングで提出
  • 年内に事業所得があった人は年内に開業届を提出
  • 再就職手当を受けたい人は退職のタイミングで提出
  • 失業給付を受ける人は注意
  • 健康保険の被扶養者は注意
  • タイミングを間違えてしまうと金銭的に損をする可能性があるので注意が必要です。

    副業ではなく本業になったタイミングで提出

    サラリーマンが副業として収入を得ている段階では、開業届を提出する必要はありません。
    副業ではなく本業になったタイミングで提出しましょう。

    副業収入で得た場合の所得は「雑所得」です。雑所得では事業所得から10万円または65万円の控除を受けることができる青色申告控除を利用することができません。

    副業の間に開業届を提出してもメリットはありません。
    副業から本業になり、事業所得を計上できるようになった段階で開業届を提出するようにしましょう。

    雑所得について、詳しくはこちらの記事を>>
    雑所得とは?サラリーマンの副業や一時的な収入があった時の所得の分類と確定申告時の注意点

    年内に事業所得があった人は年内に開業届を提出

    年内に事業所得があった場合には年内に開業届を提出するようにしましょう。
    開業届を提出するのが翌年になってしまうと、前年の所得に関して青色申告控除を受けることができなくなります。年内に所得が生じている場合には、その年に開業届を提出しましょう。開業届を出すときに一緒に青色申告申請書も提出すると良いでしょう。
    青色申告については以下で説明します。

    青色申告について

    青色申告とは複式簿記に基づいて作成した帳簿から所得税の計算を行って申告を行うことです。青色申告を行うことで10万円または65万円の青色申告控除を受けることができます。

    青色申告をするには、開業から2か月以内か青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出しなければいけません。時期を逃すとその年の確定申告は白色申告をすることになってしまいます。
    そのため、青色申告承認申請書は開業届と同時に提出すれば安心です。

    再就職手当を受けたい人は退職のタイミングで提出

    退職後に再就職手当を受けたいときは、退職する際に開業届を出しましょう。
    再就職手当は再就職した人がもらえますが、再就職には「個人事業主の開業」も含まれるからです。

    以下の要件を満たしているなら、開業届の提出で再就職手当が受給できます。

  • 1年以上事業を行うことが確実
  • 雇用保険の被保険者である
  • 7日間の待機期間満了後に事業を開始する
  • 以前の勤務先と深い関りがない
  • 基本手当の支給残日数が3分の1以上ある
  • 過去3年で再就職手当または常用就職支援手当を受給していない
  • 再就職手当の受給日までに就職しない
  • 失業給付を受ける人は注意

    会社を退職して失業給付を受けようとしている人は、要注意です。失業給付を受ける条件は、「本人に再就職する意思と能力があること」です。

    独立開業しようとしている人は失業状態ではないと見なされ、給付を受けられない可能性があります。

    ただし「再就職手当」は、事業を始めた場合でもが支給される可能性があります。詳しくはハローワークに問合せてみて下さい。

    健康保険の被扶養者は注意

    配偶者の被扶養者として配偶者の健康保険に加入している人には開業届の提出を慎重に考えましょう。
    健康保険組合の中には「個人事業主は健康保険組合には入れない」と決められていることがあります。

    そのような会社の場合、開業届を提出したことによって扶養を外れてしまう可能性があるので、開業届を提出する前に健康保険組合の確認をとった方がよいでしょう。

    開業届の入手方法と便利なサービス

    最後に開業届の入手方法と開業届提出の便利なサービスを紹介します。

    開業届の入手方法

    開業届は税務署の窓口か国税庁のホームページで入手することができます。
    開業届へ記入する内容は、住所、氏名、屋号、職業、届け出の区分(新設か廃業か)、所得の種類、開業日、事業の概要などで簡単な書類となっています。

    無料の開業届作成サービス

    「会計ソフトfreee」や「マネーフォワード」などのクラウド会計サービスで、個人事業主の開業届を無料で作成することができます。

    オンライン上で名前や住所などの項目を埋めていくだけで開業届けが作成され、作成した開業届を印刷し、税務署へ提出するだけです。
    間違いが少なく費用もかからないので、開業届の提出に不安がある場合には活用してみましょう。

    まとめ

    開業届について、お分かりいただけましたか。個人事業主として腰を据えてやっていこうと考えているなら、きちんと開業届を提出しましょう。実務的なメリットに加え、自分自身の開業への意識付けとなり得ます。

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    (編集:創業手帳編集部)

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