開業届はいつ出す?提出期限・タイミング・開業日の決め方・注意点を徹底解説
開業届を出す最適なタイミング、提出時のポイントとは?

●開業届はいつまでに出すべきか(提出期限と基本ルール)
●開業届を出すタイミングの判断基準(今すぐ出すべき人・待ってもよい人)
●開業届に記載する開業日の決め方と、経理・税務への影響
●開業届を提出することで得られるメリット(公的証明、青色申告、融資など)
●開業届の提出時に注意すべきポイント(失業給付・再就職手当・健康保険)
個人事業主として事業をスタートしたら開業届を提出しなければなりません。
しかし「開業届はいつ出せばいいの?」「開業日の決め方にルールはある?」など、開業届の提出について疑問を持っている人も多いのではないでしょうか?
開業届は適切なタイミングで提出しなければ資金調達や税金面で不利になってしまうこともあります。開業届の提出方法や提出のタイミング、注意点について詳しく解説していきます
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この記事の目次
開業届とは「個人事業主が事業の開始時に出す書類」
個人事業主が事業を開始したら、税務署へ提出するのが開業届です。正式名称を「個人事業の開業・廃業等届書」といいます。
個人事業主は所得税を納税しなければなりませんが、開業届の提出によって税務署へ事業の開始を申し出ることができます。簡単に言えば納税のために「事業を始めました」と税務署に伝えるためのものです。
開業届は事業主の住所を所轄している税務署に提出します。住所によって管轄の税務署は異なるので、国税庁のホームページから所轄税務署を調べてください。
開業届はいつまでに提出するのがベスト?提出期限は?

開業届はいつまでに提出すべきなのでしょうか?開業届の提出期限や青色申告をする場合の対応について詳しく解説していきます。
節税したい人:所得48万円超えたら(青色申告対策)
節税を意識する人は、年間の事業所得が一定額を超えた時点で開業届を提出するのが基本です。
従来は、年間所得が48万円を超えると課税所得が発生するため、青色申告による節税効果を考慮して開業届を提出するのが目安とされていました。
しかし、令和7年度の税制改正により、所得に応じて基礎控除額が変わるようになりました。
-
- 所得が低い場合 → 最大95万円まで控除される特例あり
- 所得が高い場合 → 基礎控除は従来通り48万円〜55万円程度
参照:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
つまり、所得が95万円以下なら所得税の負担は基本的に発生しない可能性があります。
ただし注意すべきは、これはあくまで「基礎控除」の話であることです。
青色申告控除(最大65万円)は別制度で、事業所得や経費の状況によっては、基礎控除額が増えても青色申告を活用するメリットは十分に残ります。
・副業収入の段階で開業届を出す必要はない(雑所得扱い)
・本業化して事業所得が見込める場合、早めに開業届+青色申告承認申請を提出
・年間所得が基礎控除額(最大95万円)を超える場合、青色申告で控除を活かす節税効果が大きい
将来的な収入・経費の見込みを踏まえ、「基礎控除額だけで判断せず、青色申告控除も考慮して提出タイミングを決める」のが安全です。
副業→本業化の人:本業化の瞬間
副業段階では、開業届を提出しなくても問題ありません。副業収入は原則として「雑所得」扱いであり、青色申告も利用できません。
しかし、以下の条件がそろったら本業化のタイミングで開業届を提出すべきです。
-
- 主たる収入源として事業を行う
- 事業所得として計上できる状況になった
- 継続・反復した事業活動になっている
副業段階で開業届を出してもメリットは少ないため、「本業になった瞬間」が最適タイミングとなります。
年内に事業所得が出た人:必ず年内に
年内に事業所得(雑所得ではなく事業所得)が発生した場合は、その年のうちに開業届を提出しましょう。
理由は、青色申告の適用時期が決まっているためです。
青色申告承認申請書の提出期限
→ 開業後2か月以内、またはその年の3月15日まで
もし開業届を翌年に繰り越してしまうと、前年分の青色申告控除が使えなくなり、最大65万円の節税チャンスを逃す可能性があります。
年末ギリギリに収入が発生した場合も、年内提出が必須と覚えておきましょう。
再就職手当を受けたい人:ハローワーク手続き後
退職後に「再就職手当」を受給したい場合は、ハローワークで必要手続きを済ませたあとに開業届を提出してください。
再就職手当は「就職扱い」になれば支給されるため、個人事業主の開業も対象です。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
-
- 1年以上継続して事業を行う見込みがある
- 7日間の待機期間後に事業開始
- 前職との取引や関与が深くない
- 基本手当の支給残日数が3分の1以上
- 過去3年以内に再就職手当を受けていない など
ポイントは、開業届を出した時点で「失業状態」ではなくなるということ。そのため、失業給付(基本手当)は受けられなくなる可能性があります。
再就職手当を狙う人は、開業届の提出順序に特に注意しましょう。
扶養の人:健康保険組合確認後
配偶者の扶養に入っている場合、開業届の提出を急ぐと扶養から外れてしまうリスクがあります。
健康保険組合によっては、以下のように定めているケースもあります。
-
- 「個人事業主は扶養に入れない」
- 「事業収入がある時点で即扶養対象外」
そのため、開業届の提出前に必ず以下を確認しましょう。
-
- 収入基準
- 個人事業主が扶養に入れるか
- 扶養の継続条件
扶養から外れた場合は国民健康保険加入となり、保険料負担が増えることもあるため要注意です。
口座開設や補助金申請をしたい人:できるだけ早く
事業用口座の開設や補助金・助成金の申請を予定している人は、できるだけ早めに開業届を提出するべきです。
なぜなら、以下の手続きで「開業届の控え(税務署印付き)」がほぼ必須だからです。
-
- 銀行の事業用口座開設
- 公的な補助金・助成金の申請
- 事業用クレジットカードの発行
- 私的補助金・支援制度の申請
特に補助金は「事業開始後でないと申請できない」ため、開業届=事業開始の証拠として扱われます。
早く提出しておくことで、資金調達の選択肢が広がり、事業運営がスムーズになります。
開業届を青色申告承認申請書と一緒に提出する場合
青色申告をする場合、開業届とともに「青色申告承認申請書」を出します。青色申告承認申請書は、開業から2カ月以内には提出しなくてはなりません。
青色申告をしたい場合の厳密な提出期限は次のとおりです。
- 開業日が1月1日~1月15日:3月15日までに提出
- 開業日が1月16日以降:開業から2カ月以内に提出
提出期限を過ぎてしまうと、開業初年度の青色申告ができなくなります。白色申告となり控除額に影響するため、提出期限を意識しておきましょう。
開業届は提出が遅れても特に罰則はない
開業届の提出が開業後1カ月を超えてしまったとしても罰則はありません。
そのため「所得が一定を超えたタイミング」「屋号で銀行口座を作るタイミング」「最初の確定申告の前」など、さまざまな選択肢があるのです。
しかし、開業届を提出することによるデメリットは特にないので、口座作成や資金調達を円滑にするためにも、できる限り開業してから1カ月以内に提出した方がよいでしょう。
開業届を出すとできるようになること・メリット

開業届は提出によって事業に有利となることがほとんどです。メリットを把握し、早めに出しておきましょう。
開業を公的に証明できる
個人事業主にとって実務的に最も大きなメリットが「開業届の提出によって開業を公的に証明できる」という点です。
個人事業主は法人のように登記ができません。故に「個人で事業を営んでいる」と客観的に証明しにくいですが、開業届を提出していれば十分な証明になります。
開業の事実を公的に示すことで取引における信用性が増すなど、事業をする上で重要なアピール材料になります。
屋号で銀行口座が開設できる
開業届の提出は、屋号で銀行口座が作れるメリットにもつながります。銀行に開業届の控えを出せば、屋号で銀行口座が作れるのです。
個人名の口座を使うよりも信用度がアップするほか、プライベートな口座との区別が明確になるため、管理しやすくなります。
青色申告特別控除が使用できる
事業開始から2カ月以内に「青色申告承認申請書」を出すと、確定申告時に青色申告が使えるメリットがあります。青色申告承認申請書は、開業届を提出した事業者が出せる書類です。
青色申告には以下のような節税効果があります。
特別控除を利用すれば、事業所得にかかる税金を抑制できます。青色申告の控除額は10万円・55万円・65万円と段階的に分かれており、最大額の控除を受けるにはe-Taxの申告と電子帳簿の保存が必要です。
損失の繰り越しも青色申告特有のルールで、事業が赤字の場合は利益との相殺によって納税額を減らせます。もしものために把握しておきましょう。
低金利の事業資金融資を受けられる
銀行や日本政策金融公庫の事業資金融資は個人事業主でも借り入れできますが、審査の際には「確かに事業を営んでいること」の証明として開業届が必要です。
低金利の事業資金融資は、事業の拡大や発展に欠かせません。開業届によって資金調達の選択肢が増えることにもつながります。
すぐに融資の予定がなくても、開業届を提出して融資が受けやすい状態に整えておくのがよいでしょう。
補助金・助成金や各種サービスの申請で使える
補助金や助成金を申請する際にも、事業をしていることを証明するために開業届が必要になる場合があります。
また、楽天市場などのECサイトでも、出店審査の際に開業届の提出を求められる可能性があるでしょう。事業で使うサービスの規約にて開業届の必要性を確認してください。
開業届は個人事業主にとって身分証明書のようなものです。提出しておかないと事業のさまざまな面で支障をきたす可能性があります。
家族への給与を経費にできる
開業届を出すことで利用できる青色申告では、家族を従業員として雇う場合に給与を経費計上できます。
家族従業員は「青色事業専従者」となり、支払う給与を経費として扱えるのです。
開業届を出していない場合は白色申告のみなので、青色事業専従者のルールは利用できません。家族に事業を手伝ってもらう予定の個人事業主は知っておくべきポイントです。
開業届に記載する開業日の決め方:いつにするのがベスト?
開業届には「開業日」を記入する欄がありますが、実はこの日付に厳密なルールはありません。すでに事業を始めている場合でも、開業日が曖昧であれば改めて設定することが可能です。
店舗のオープン日や事務所の契約日と一致していなくても問題はなく、自身の状況に合わせて柔軟に決められます。
とはいえ、後々の経理処理や事業運営に影響する場面もあるため、いくつかの観点を意識しておくと安心です。
開業日は自由に決められる
開業日は「この日でなければならない」という決まりはなく、事業主が任意で設定できます。実際の営業開始日より前後していても差し支えありません。
すでに売上が発生している場合や、準備期間が長引いた場合でも、事業として本格的にスタートするタイミングを基準に決めるケースが一般的です。
重要なのは、無理に過去の日付にこだわるのではなく、後の手続きや管理がしやすい日を選ぶことです。
経理・税務に影響するポイント
開業日によって注意したいのが、経理や税務上の扱いです。
開業にかかった費用は原則として経費にできますが、開業日より前か後かで処理方法が異なります。
開業日前に発生した費用は「開業費」として扱われ、繰延資産に分類されます。
繰延資産は、決算時に任意の金額を償却して経費計上できるため、赤字の年は償却せず、黒字になってから計上するといった調整も可能です。
このように、開業費の扱いを見据えて開業日を設定することで、資金繰りや税負担の面で有利になる場合があります。
縁起の良い日を開業日にする考え方
開業日の決め方としてよく選ばれるのが、縁起の良い日を基準にする方法です。必須ではありませんが、事業のスタートとして気持ちよく迎えたいと考える人も多いでしょう。
代表的な吉日には、次のようなものがあります。
-
- 一粒万倍日:小さな行動が大きな成果につながるとされる日
- 天赦日:年に数回しかない、最上の吉日
- 寅の日:金運に良いとされる日
- 大安:六曜の中でも特に縁起が良い日
暦の考え方は人それぞれなので、自分が納得できる基準で選ぶことが大切です。天赦日と一粒万倍日が重なる日は「最強の開運日」と呼ばれ、開業日として選ばれることもあります。
開業日が記念日になる可能性を意識する
開業日は、将来的に事業の記念日になる可能性があります。周年イベントやキャンペーンを行う予定がある場合は、開催しやすい時期を意識して選ぶのも一つの考え方です。
例えば、比較的集客が落ち着く時期を開業日にしておけば、開業記念イベントを通じて売上の底上げを図ることもできます。
特に強いこだわりがない場合は、気持ちの面だけでなく、ビジネスとしての活用しやすさも含めて総合的に判断するとよいでしょう。
開業届の入手方法と便利なサービス

開業届の入手方法と開業届提出の便利なサービスを紹介します。
開業届の入手方法
開業届は税務署の窓口か国税庁のホームページで入手できます。
開業届へ記入する内容は住所、氏名、屋号、職業、届け出の区分(新設か廃業か)、所得の種類、開業日、事業の概要などで、簡単な項目がほとんどです。
無料の開業届作成サービス
弥生などのクラウド会計サービスを使えば、個人事業主の開業届を無料で作成できます。
オンライン上で名前や住所などの項目を埋めていくだけで、簡単に作成可能です。作成した開業届を印刷し、税務署へ提出するだけで手続きが済みます。
間違いが少なく費用もかからないので、開業届の提出に不安がある場合には活用してみましょう。
開業届の開業日は変更が可能
開業届を税務署に提出した後でも、開業日の変更は可能です。日付の変更は、以下の2つの方法があります。
開業届を出してから1カ月以内に取り下げる
開業届は1カ月以内であれば取り下げられるので、税務署に相談しましょう。一度取り下げたあと、改めて開業日を設定してから届け出し直します。
取り下げや再提出の手間はかかりますが、どうしても開業日を変更したい場合は検討してください。
開業届を再提出する
取り下げできないときや1カ月以上経過しているときは、そのまま開業届を再提出します。最初に提出したときと同様に開業届を用意し、税務署に届け出ましょう。
開業届の提出自体は何度してもかまいませんが、繰り返し再提出すると税務署に目をつけられる恐れがあるため、やむを得ない事情がない限りは一度のみにするのが賢明です。
迷ったらチェック|あなたに合った開業届の提出タイミング
開業届には「事業開始から〇日以内に必ず提出しなければならない」といった厳密な期限はありません。
そのため、いつ出すべきか迷う人も少なくありません。
ここでは、よくある状況をもとに「今すぐ出したほうがよい人」と「少し様子を見ても問題ない人」に分けて整理します。
自分の状況に近いものを確認してみてください。
今すぐ出すべき人
すでに事業として本格的に動いている場合は、早めに開業届を提出しておくほうがメリットが大きくなります。
-
- すでに本業として事業を始めており、売上が発生している
- 初年度から青色申告を利用したい
- 屋号付きの銀行口座を開設したい
- 融資や補助金・助成金の申請を検討している
- 年内に事業所得があり、今年分の確定申告で青色申告を行いたい
これらに当てはまる場合、開業届の提出を遅らせるメリットはほとんどありません。
開業届自体の手続きはシンプルなため、事業を始めた段階で早めに提出しておくと、その後の手続きがスムーズになります。
少し待ってもよい人
一方で、事業の方向性や生活への影響を見極めてから判断したほうがよいケースもあります。
-
- まだ副業の試行段階で、事業として継続するか判断中
- 年間の所得が少なく、当面は青色申告を利用する予定がない
- 失業給付や再就職手当を受給中、または受給予定がある
- 配偶者の健康保険の扶養から外れる可能性があり、影響を確認したい
これらに該当する場合は、状況を整理してから開業届を提出しても問題ありません。
特に失業給付や健康保険の扶養は、「開業届を出したかどうか」だけでなく、収入や事業の実態で判断されることがあります。
ただし、開業届の提出時期によって不利になるケースもあるため、事前にハローワークや健康保険組合へ確認したうえで判断することが重要です。
まとめ・開業届をいつ出すかに決まりはない。自分のベストタイミングを選ぼう
個人事業主として腰を据えてやっていこうと考えているなら、きちんと開業届を提出しましょう。実務的なメリットに加え、自分自身の開業への意識付けとなり得ます。
(編集:創業手帳編集部)
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