栗城社会保険労務士事務所 栗城 恵|社労士に相談・依頼できる内容って何?現役社労士に直撃インタビュー!
社労士に依頼することで「経営者が事業に集中でき会社が成長し、人を大切にするいい会社になってほしい」と願う栗城社労士の仕事とは
企業が成長する上で欠かせないのが「人」。しかし、雇用において手続きや人間関係のトラブルに不安を抱く人は多いでしょう。そんな、企業の中の人にまつわる問題について力になってくれるのが社労士という仕事。
社労士とはそもそもどのような仕事なのか、企業はどのような場面で社労士を活用するとよいのか、どのようなメリットがあるのか、東京・江東区に事務所を構える栗城恵社労士にインタビュー。前編では、社労士に相談・依頼できる業務について、後編では栗城社労士自身の開業時のエピソードや思い、これからの起業家へ伝えたいメッセージについて聞きました。
栗城社会保険労務士事務所 代表
2014年に社会保険労務士試験合格。2017年に栗城社会保険労務士事務所を開設。ベンチャー企業の社外人事部として、社会保険の手続きや人事制度の整備等を行う。留学経験を活かし、外資系企業や外国人労働者を雇う企業への対応にも積極的に取り組む。企業や大学での講師を務めるほか、社労士向け専門誌などの執筆活動も行う。プライベートでは2児の母であり、自身も仕事と育児の両立を通して現在進行形で働き方改革中。
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この記事の目次
「労務管理と社会保険の専門家」社会保険労務士の仕事内容は
栗城:労働問題と社会保険の専門家として、企業に代わって行政に提出する書類手続きをおこなったり、労働に関するコンサルティングを行ったりすることが社労士のおもな仕事です。企業にとっては、具体的には大きく次の2つの局面で社労士が重要になってくると思います。
- はじめて人を雇おうとする創業期
- 組織づくりを進める成長期
まずは創業期においてです。人をひとりでも雇うとなると、法律上やらなければいけないことが10項目以上も増えます。しかし、まだ規模の小さな創業期には、総務を専任する部署や役職などはないことがほとんどです。そこで、社会保険の手続きを社労士に代行してほしいというのが、創業期によくある依頼内容です。
次に、会社が成長段階に入って社員数が多くなってくると、この先どんな組織にしていきたいかといった組織づくりの話が出てきます。
たとえば最近のベンチャー企業で多く耳にするのは、自律的な働き方を重視した組織を目指したいという考え方です。定時のあいだ会社にいればいいというわけではなくて、自律的に働いて成果を出してもらいたいということです。自律的に働く社員は柔軟な働き方を求める傾向が強く、柔軟な働き方のための制度や環境をどのように取り入れたらいいのかを考える必要があります。そこで、関連する法律を調べたり、規則や規程の整備、活用できる助成金制度などについて調べて提案したりするのが私たち社労士の仕事だと言えます。
創業期には、書類作成や助成金活用のサポートといった手続き代行の側面が大きく、中長期的には、組織のあり方や社員の働き方に対する経営者の理想を汲み取って一緒に組織づくりに携わる立場に移行していく。社労士はそのような仕事だと私は考えています。
栗城:私は早い方がいいと思っています。自分でやろうとして手続きにミスや抜け漏れがあった場合、あとから余計に発生する手間や費用はけっして小さくないからです。
人を雇用する際に自社で手続きを行い、繰り返し修正が必要になったり、あとから手続きの抜け漏れが見つかったというケースも多くみてきました。例えば、退職した社員から離職票がほしいと言われた際に、雇用保険にそもそも加入してなかったことにそこで初めて気が付いたという事例もありました。それから慌てて届け出をしようとしても、時間が経っているせいで追加書類が必要になったり、社労士にその時点で頼むと追加料金が発生したり、本来以上に手間と費用がかかる場合があります。それらの不安を踏まえると、専門家に任せた方がいいと私は思います。
地域や行政機関によって必要な書類や進め方は違いますし、どのようなときにどういう届け出が必要かを経営者がすべて自分で把握するというのはなかなか難しいです。また、人を雇うということは、トラブルや悩みが想像以上に生まれやすいものです。社員が初めて産休育休を取るときの対応をどうすればいいのか。社員がメンタルの不調を抱えているときはどうすればいいのか。いろんなことがあります。
ですので、人を雇うと決めた時点で、経営者やその会社にしかできない仕事、例えば、販路拡大や商品開発、社員教育などに集中していただき、労務は社労士事務所に任せてもらいたいなと思います。なので私は、人を雇い始める、あるいはその少し前から社労士と契約をした方がいいということをお伝えしてます。
栗城:単発でのご依頼もお受けできますし、依頼したい内容が具体的に決まっていない場合でも、まずは「社会保険や労務に関して全体的に不安がある」ということでご相談くだされば大丈夫です。
たとえば「はじめて人を雇うときに何をすればよいか分からなくて不安だ」とご相談いただいた場合であれば、まずは雇用するまでの流れを説明します。何が必要かという全体像が見えていますので、それを元に、「まずはこういったことから整備をしましょう」と説明することから始めています。
栗城社労士事務所の強みはベンチャー企業と外資系企業の支援
栗城:事務所を開いて初めてのお客様がベンチャーだったということがきっかけですね。ベンチャー企業にはどういった悩みがあるんだろうというのを調べながらやっていくうちに、だんだんと紹介をいただいたり新しい引き合いがあったりなどしながら、ベンチャー企業の多くに共通する状況が分かるようになってきました。
栗城:裁判外の話し合いにまで至るケースは少ないです。もちろんできることなら至ってほしくないですからね。ただやっぱり人間同士、トラブルや悩みというのはどうしても起こるので、まだ争いの芽が小さいうちに紛争への発展を予防することをまずは考えています。
裁判外の話し合いになってしまったとき、会社側も従業員側もよくおっしゃるのが「こんなはずじゃなかった」「ここまでしなくてもよかったのに」という言葉です。争いの原因をたどれば、会社と社員でのコミュニケーションにおけるちょっとした違いやズレだったということはすごく多いです。そういった小さな火種がトラブルに発展することを予防するために社労士がいるというような側面もあると思います。ちょっとしたトラブルが起きたときに自分たちだけで考えずに、ちょっとメッセージを送れば悩みに答えてくれる。企業にとってそのような関係性を築きたいと考えています。
栗城:IT化は、やはりみなさん当たり前のように取り組まれるようになってきています。私自身も、事務所開設のときからITの導入や活用に力を入れてきました。ハンコすらもう使わないという時代の流れの中で、電子申請への対応はもちろん、社員の情報をウェブ上で入力するだけで簡単に社会保険手続きができるようになるツールなど、IT化活用を推し進める動きは社労士全体にも感じられる変化だと思います。
栗城:学生の時にフィリピンに交換留学をし、英語を習得しました。その後、社労士を目指そうとなったときに、英語対応できる社労士事務所というのが都内でもわずかに両手で数えるほどしかないことに気が付いたんです。一方で、日本に進出したい、すでに進出している外資系企業は多いですし、そういう企業にサービスを提供するのも責務だと考えて、英語対応という点を自分の強みとしてやっていこうという方針を定めました。
栗城:必要な手続きや適用される法律などは基本的に変わりません。たとえばアメリカ企業の子会社を日本に作ったとして、社員を雇うときに必要なことは、日本で会社を設立した場合と変わらないんです。
一方、それが外国企業としては大変な部分でもあります。日本の労働法は知らないし、調べようにも、日本語を読めないということも多いからです。なので、設立に必要な書類作成を代行して支援しています。ほかにも、海外の親会社に送る月次レポートを作成したり、厚生労働省の資料や労働法について翻訳して説明したりといった形でお手伝いをしています。
栗城:私の事務所では、手続き代行をメインにしているわけではなく、手続き代行は当たり前にやって、人数が増えてくると必要になる就業規則や社内規程を通じて、組織作りのサポートをしています。
事務所のサービスを使いやすいように、報酬体系も工夫しています。顧問料を人数に応じた従量制にしたり、助成金については初回のみ初期費用をいただきますが、それ以外は助成金が正式に下りた後で報酬をいただくという手続き報酬のみにしています。
他の社労士だと、助成金の着手金が都度発生することが一般的です。相当程度受給可能性が高いものでないと提案できないですが、私の事務所なら、可能性があるならどんどんまずは申請してみるといった形にしています。
そのほか、顧問契約を結んでいるお客様は、私の事務所で就業規則を一度作成すれば就業規則の改定自体を無償でおこなうなどの細かなアフターフォローもしています。企業の就業規則を見てみると、数年前に作ったきりずっと更新されていないということも少なくありません。理由として「たった一文を変えるのに10万円というような大きな費用がかかってしまうから」ということが聞かれます。
そういう心配事は気にせず、会社を成長させる、売上を増やす、もっと良い会社を作るといったことにできる限り集中していただきたいと思っているので、企業と私たち事務所が同じ方向を一緒に目指していけるような考え方や工夫を大切に考えています。
(取材協力:
栗城社会保険労務士事務所 代表 栗城 恵)
(編集: 創業手帳編集部)