サラリーマンと個人事業主の税金はどう違う?比較してみよう!
サラリーマンと個人事業主の税金は違うので比較してそれぞれに合う節税を選ぼう
副業が一般化し、サラリーマンと個人事業主を両立しようと考えている人、もしくは個人事業主として独立しようとしている人もいるかもしれません。
起業の足掛かりとして、個人事業主を選ぶ人もいます。
サラリーマンと個人事業主は、納税に必要な手続きから税金の計算方法まで異なります。
個人事業主にはサラリーマンのような給与所得控除はありませんが、工夫次第で大きな節税も可能です。
この記事では、立場で分けて節税方法や税金の支払いなどを解説します。
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この記事の目次
比較してみよう!個人事業主とサラリーマンの税金
同じ仕事をしていたとしても、サラリーマンと個人事業主では立場が異なります。
個人事業主とは、個人で事業を継続している人を指します。
個人事業主となることにより、社会保険や税金などで様々な違いが生まれます。
以下に、サラリーマンと個人事業主で税金にどのような違いがあるのかをまとめました。
共通して課税される税金の種類
個人事業主とサラリーマンに対して、共通して課税される税金は、復興特別所得税を含む所得税と住民税です。
所得税と住民税は、1月1日~12月31日までの所得に対して税率を掛けて算出します。
所得税は5%から45%までの7段階に分けられ、住民税は10%です。
所得の種類
個人事業主とサラリーマンでは、働いて得られる所得の種類も違います。
その2つの違いを説明する前に、「所得」の意味をおさらいしましょう。
来年の所得が増えそう、収入が少ないなどと、所得と収入を同じように使うことは日常では珍しくありませんが、所得と収入は別物です。
収入は、1月1日~12月31日までに得た総収入金額で、額面金額をいいます。
一方で、所得は収入を得るためにかかった費用を差し引いて計算したものです。
所得は得る方法の違いによって分類されています。税法上で所得は、給与・事業・利子・配当・譲渡・不動産・一時・退職・山林・雑の10種類に分けられています。
所得の計算方法
それぞれの所得税は、収入ではなく所得金額をもとにして計算します。
サラリーマンの場合、所得は給与所得に分類され、給与所得を計算するための式は以下のように定められています。
給与所得=給与収入-給与所得控除
サラリーマンが差し引きできる給与所得控除は、給与所得の額によって定められています。
給与所得控除額は、2022年現在は収入金額162万5千円までで、最低額は55万円です。収入金額が850万円以上の時には、給与所得控除額の上限は195万円です。
このように、サラリーマンの給与所得控除は収入額によって一定に定められています。
一方、個人事業主が得た収入は事業所得に分類され、収入から必要経費を差し引いて計算します。
事業所得=事業所得-必要経費
事業所得を計算する場合の必要経費には、決まりがありません。事業に必要な額であれば、所得の計算上差し引くことが可能です。
国税庁のホームページでは、必要経費について「収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用」と定義しています。
具体的には、売上原価と給与・賃金、地代・家賃、減価償却費が該当します。
家事上の経費は必要経費にはなりません。
しかし、事業所得を生み出すために業務の遂行上必要であると明確に区分できる場合には、その部分に相当する金額を按分して経費にできます。
個人事業主の所得計算の特徴
会社員から個人事業主になる時に、税金の扱いや手続きが変わることに戸惑う人は少なくありません。
個人事業主が所得を計算する際は、サラリーマンと比べてどのような違いがあるのでしょうか。
必要経費がある
確定申告では、事業収入と必要経費に関する情報を記載します。
個人事業主の必要経費は、節税するために重要な部分です。
例えば、自宅で仕事をしている場合には、家賃の一部を経費として計上できます。
また、パソコンやインターネットを使っている時には、通信費や電気代も事業として使っている部分を按分して経費化できます。
節税対策の第一歩は経費の見直しです。
収入に対する経費を漏れなく申告すれば、所得税を少なくする効果が期待できます。
計上し忘れている経費がある場合もあるかもしれません。
まずは経費の漏れをなくすために、事業にかかっている支出を見直してみてください。
青色申告ができる
個人事業主は開業時に青色申告承認申請書を提出し、条件を満たすことによって青色申告が可能です。
複式簿記での帳簿付けなどの条件はあるものの、青色申告によって様々な税法上の特典を受けられます。
青色申告の特典は、青色申告控除として所得から直接控除できる制度や配偶者などに支払った給与を必要経費にできる青色事業専従者給与などがあります。
なお、青色申告ができるのは不動産所得や事業所得、山林所得がある人だけです。
個人事業税がある
個人事業主だから受けられる制度もあれば、個人事業主だから課せられる税金もあります。個人事業主は、所得税や消費税、住民税のほかに個人事業税が課されます。
所得税や消費税は国に納める国税なのに対して、個人事業税は地方自治体に納める税金です。
個人事業税は、事業の運営で利用する行政サービスに対して課される税金です。
サラリーマンであれば、個人事業税を支払うことはありません。
個人事業税は、収入から必要経費や各種控除を差し引いた額に一定の税率を掛けた金額が課せられます。
個人事業税の納付は8月と11月の年に2回です。
個人事業税の課税対象とならない業種もあるので、事前に支払う必要があるかどうか調べておくと良いでしょう。
なお、事業主控除として年間290万円を控除できます。
消費税を納める場合もある
日常生活で買い物した際に、消費税を支払うことはあってもサラリーマンで消費税の納税について気にすることはあまりありません。
一方、個人事業主の場合には、一定の条件を満たして課税事業者に該当した場合には、消費税課税事業者届出書を提出して納税手続きをする必要があります。
免税になるか課税されるか、どちらに該当するかを判断するのは、基準期間の課税売上高です。
課税される前々年(2年前)の課税売上高が、1,000万円を超えた時や、開業して2年経過していなくても前年の1月1日~6月30日の課税売上高、または給与支払額が1,000万円を超えた時に課税事業者となります。
また、消費税課税事業者選択届出書を提出している場合も課税事業者です。
消費税が課税されるかどうか前々年の売上げで決まるため、売上げの減少によって消費税の納付ができない場合もあります。
納付期限を超えても支払いができない時には延滞税が課されるので、計画的に準備しておくようおすすめします。
サラリーマンと個人事業主の納税方法の違い
サラリーマンと個人事業主は、納税方法も異なります。
個人事業主になってから、必要な手続きを知って慌てて手続きの準備をするケースもあります。
ミスや漏れをなくすためにも、事前に準備しておくようにしましょう。
サラリーマンは年末調整で納税する
サラリーマンは、一般的には自分で所得税や住民税の納税手続きをすることはありません。
これは、会社が毎月の給料から所得税を源泉徴収しているからです。
年末には年末調整を行って源泉所得税額と所得税額の過不足を調整します。
年末調整で計算して、天引きされている源泉所得税額のほうが多い場合には差額が還付され、天引きされている源泉額が少ない場合には追加で納めます。
納税に関わる手続きは基本的に会社がしてくれるため、自分で手続きしたことがない人もいるかもしれません。
しかし、サラリーマンであっても確定申告が必要な人もいます。
例えば、サラリーマンでも副業で20万円を超える収入があった場合や、不動産を売却した時には確定申告が必要です。
ほかにも、給料が2,000万円を超えた場合や2カ所以上から給与を受け取っているなど、様々なケースがあります。
サラリーマンでも確定申告が必要な人について説明しましたが、確定申告が義務ではないものの、確定申告をしたほうが得になる人もいます。
それは、確定申告することで税金の還付が受けられたり、税金の支払いが免除されたりする場合です。
例えば、高額な医療費がかかっている場合には、医療費控除を利用できます。
また、災害や盗難にあった人や寄付をした人は雑損控除、住宅ローンを受けた人は住宅ローン控除があります。
気が付いていなくても確定申告したほうがお得なケースもあるので、自分が利用できるものがないかチェックしてみてください。
個人事業主は確定申告が必要
個人事業主は、毎年2月16日から3月15日の間に確定申告をするように義務付けられています。書類の記載から納税額の計算、書類の提出まですべて自分で実施します。
確定申告に関わる書類は見慣れていないとわかりにくく、初めは確定申告も大変に感じることが多いかもしれません。
確定申告は税務署の窓口に出向いて手続きする方法だけでなく、郵送や「e-TAX」による電子申告での確定申告もあります。
所得税の納付は、指定された金融機関への振り込みやインターネットの電子納税、コンビニ支払いなどから選びます。
住民税は確定申告の内容から税額が決定され、住民税の普通徴収の支払い時期は6月・8月・10月・1月です。
毎年6月になると、支払い用の納付書が届くため、納付し忘れないように注意が必要です。
個人事業主がやっておきたい節税対策
サラリーマンと個人事業主では、税制面で様々な違いがあります。
個人事業主は、給与所得控除がないため、必要経費の扱いが税額に大きく影響します。
以下は、個人事業主であればやっておきたい節税対策をまとめました。
経費を見直す
個人事業主の節税対策の第一歩として、まずは経費をチェックしてみてください。
課税となる所得金額から、必要経費を差し引ければ差し引けるほど節税効果につながります。
計上し忘れてしまいがちなものが、租税公課です。
個人事業主が納めた税金のうち、事業に関わる税金は租税公課として経費に計上できます。
住民税や所得税、相続税などは個人に課せられる税金なので、計上できません。
しかし、個人事業税や消費税、事業用の自動車税や固定資産税など多くの税金を経費計上可能です。
使える控除がないかチェックする
収入から差し引きできるのは、経費だけではありません。
控除も差し引きできるため、利用できる控除がないかチェックしてみてください。
具体的には、社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除・扶養控除・ひとり親控除などがあります。
これらの控除は所得控除ですが、税額から直接差し引きできる税額控除には、配当控除や住宅借入金等特別控除があります。
青色申告にする
確定申告は、青色・白色の2つから選択可能です。
青色申告は特典があるものの、複式簿記での記帳のほか備付帳簿にも決まりがあります。
複式簿記での記帳となり、貸借対照表と損益計算書の確定申告の添付が必要になるため面倒に感じるかもしれませんが、青色申告を選択することで特典を受けられます。
最近は、簿記の知識がなくても内容を入力するだけで青色申告用の帳簿を作成できるソフトもあるので、活用を検討してみてください。
一方で、白色申告は簡易の簿記の記帳方法で提出書類も少ない点が特徴です。
経理作業の難易度は下がりますが、青色申告のように特別控除はない点が特徴といえます。
減価償却の特例を使う
減価償却を使うと、購入した資産を税法で定められた耐用年数で分割して支払えるため、数年にわたって節税効果があります。
一方で、少額の減価償却には特例があり、一定額の資産で条件を満たせば耐用年数に関わらず全額を損金算入できる特例が設けられています。
黒字が大きい年に一括で必要経費にすれば、節税効果が見込める特例です。
特例を使うためには条件を満たさなければいけない点に注意してください。
法人化を検討する
事業が成長して税負担が大きくなった場合には、法人化が有効な手段です。
個人事業主が支払う所得税は所得が大きくなると税率も上がっていく仕組みです。
一方で、法人税は、その法人の区分によって税制が決まっているため、同じ所得であっても法人税のほうが安くなるケースがあります。
まだ少額の所得しかない場合には事業所得のほうが税率は低いものの、ある程度所得が大きくなったなら、法人税のほうが税率を低く抑えられます。
事業が成長した段階で、法人化も検討すると良いでしょう。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済は、個人事業主を対象とした廃業や退職時の生活資金のために積み立てを行う退職金制度です。
小規模企業共済の掛け金として支払った月額は全額を控除可能であり、将来に備える制度としても有効な手段です。
まとめ
サラリーマンと個人事業主では、所得の種類が違うため、税金の計算も大きく変わります。手続きや制度が異なるので、自分に必要な情報を知り、活用してください。
また、個人事業主が取り組める節税対策には、経費の見直しのほか、減価償却の特例や青色申告の特別控除などがあります。
事業が拡大した際には法人化も視野に入れると良いでしょう。
さらに、税金カレンダーの新しい提供を開始しました。主要な税金の納付期限をカレンダー形式で表示し、一目瞭然です。納付期限を事前に確認し、漏れがないようにしましょう。詳細については、以下のバナーをチェックしてください。
(編集:創業手帳編集部)