平成29年版|起業家が理解しておくべき源泉徴収額の計算方法・税率

創業手帳

源泉徴収「する側」になったら、ここに注意!

(2017/11/13更新)

「源泉徴収?給与明細で引かれてるやつだよね」と考えているあなた。
源泉徴収が、実際何に使われていて、いくら引かれているのか正しく理解できていますか?

今回は、新たに源泉徴収「する側」になった起業家のために、源泉徴収の基本と計算方法・税額について解説します。

本文を読む

そもそも源泉徴収ってなに?

源泉徴収とは、人を雇って給与を支払う場合や、報酬・料金などを支払うとき一定率の金額を天引きして預かり、支払いを受ける者のかわりに所得税および復興特別所得税を納付するしくみです。

つまり、本来は給料をもらう人が支払わなければならない税金を、会社が代わりに(その人の給料から)払っているということです。ただし、源泉徴収で天引きしている金額は正確な税額ではないので、年に一回その額を清算する「年末調整」が行われるのです。

源泉徴収は企業の義務なので、対象となる報酬・料金などの支払いをするときは、かならず源泉徴収しなくてはなりません。
しかし、すべての報酬が源泉徴収の対象ではないので、そのことを知っておく必要があります。

源泉徴収が必要な支払いと不要なケース

従業員を雇用し給料を支払う場合は、かならず源泉徴収します。

また、従業員以外でも、企業が支払った報酬・料金に対し源泉徴収が発生するケースがあります。
起業初期は、業務の一部を外部委託したり、フリーランスに仕事を依頼したりする場合も多いと思いますが、この場合の源泉徴収はどうなるのでしょうか。

まず、必要な報酬・料金などの範囲は、その支払いを受ける者が個人なのか法人なのかで異なってきます。

源泉徴収の対象となる支払い(個人事業主)

フリーランスなど個人の場合は以下の8つが対象となる範囲です。

  • 原稿料や講演料など
  • 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  • 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  • プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

企業がフリーランスへお願いする依頼内容は様々だと思いますが、実は、依頼内容の法の解釈によって源泉徴収対象となるかならないか曖昧な部分があるので注意が必要です。

ここでは、この8つの中でも、多くの企業が使っている「原稿料や講演料など」について、もう少し説明します。

まず、「原稿料や講演料など」には、「デザイン料」も含まれます。フリーランスにデザインを依頼している方も多いですよね。

国税庁のホームページによると、この場合の“デザイン”とは、「工業デザイン」「クラフトデザイン」「グラフィックデザイン」「パッケージデザイン」「広告デザイン」「インテリアデザイン」「ディスプレイ」「服飾デザイン」「ゴルフ場、庭園、遊園地等のデザイン」の9つとなります。
参考:国税庁ホームページ 所得税基本通達204-7

しかし、ここで挙げられているもの以外でも、たとえばウェブサイトのデザインは所得税法で規定されているデザイン料に該当するため、源泉徴収する必要があるのです。

ちなみに、ウェブサイトの制作費(コーディング)はデザインではないので、源泉徴収する必要はありません。

このように範囲が曖昧なケースもあるため、自分が依頼している内容が源泉徴収の対象になるのかどうかわからない場合は、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

源泉徴収が不要なケース(個人事業主)

上記で挙げた範囲に含まれない報酬・料金などは源泉徴収する必要はありません。

また、報酬・料金を支払う側が個人(個人事業主)の場合で、以下のケースでは、源泉徴収が不要な場合があります。

  • 常時2人以下で、お手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与などを支払っている人
  • 給与などの支払いがなく、弁護士報酬などの『報酬・料金等』だけを支払っている人

支払対象が法人の場合

法人の場合は以下の1つが対象となる範囲です。

  • 馬主である法人に支払う競馬の賞金

また、研究会、劇団などに出演料などを支払う際、その活動状況から独立団体とみなされる場合は法人として扱います。
つまり法人に支払う場合は、ほとんどの場合が源泉徴収の対象となりません。
法人の場合はとても明解なので間違えたり勘違いしたりすることは少ないでしょう。

源泉徴収税額とは

源泉徴収税額とは、給与・報酬・料金などを支払う際に源泉徴収する税額のことです。納める税金の内容は、所得税と復興特別所得税です。

それでは、実際に支払う給与や報酬に対し、いくらを源泉徴収していけば良いのでしょうか。次に、源泉徴収税額の計算方法と税率について詳しく解説していきます。

復興特別所得税とは?

「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」により創設された税金で、基準所得税額の2.1%分の金額が課税されます。
課税所得金額から見た復興特別所得税を計算すると税率は0.21%のため、源泉徴収税額は、所得税の10%と合わせた10.21%で計算します。(詳しい計算方法は後述)
この税は平成49年12月31日までの間に生ずる給与・報酬などの所得に発生します。

源泉徴収の計算方法・税率は?


源泉徴収税額は、課税所得に税率をかけて計算していきます。

そして、源泉徴収税額の税率は「従業員の給与」と「個人事業主などへの報酬」では考え方が異なります。

それぞれ見ていきましょう。

【従業員への給与】

給与から社会保険料等を控除した額に税率をかけて計算します。
扶養親族等の数によって税額が変わってきますので、国税庁が掲載している「給与所得の源泉徴収税額表」を使って計算します。
この税額表には「月額表」「日額表」「賞与に対する源泉徴収額の算出率の表」などがあります。
参考:給与所得の源泉徴収税額表(平成29年分)

【フリーランス・個人事業主への報酬】

報酬の場合は、支払金額に税率をかけて計算します。
この時、報酬金額100万円を基準に税率が異なる「二段階税率」を用いるので、注意が必要です。

また、「報酬額から源泉徴収税額を引くのか」、「手取り金額での契約にするのか」で計算方法が異なります。後々揉め事にならないよう、個人事業主との契約は双方しっかりと確認するようにしましょう。

報酬ベースの計算方法

まずは、報酬額から源泉徴収税額を引く場合について考えていきます。

100万円以下の場合、報酬に対し税率の10.21%をかけ、それを引いた額が実際に支払う金額です。

報酬が、10,000円(消費税込)の場合。
10,000 x 10.21% = 1,021円(源泉徴収税額)
10,000 – 1,021 = 8,979円
となり、8,979円が実際に支払う金額です。

報酬が、10,000円(消費税別)の場合。
10,000 x 8% = 800円(消費税)
10,000 + 800 = 10,800円
10,000 x 10.21% = 1,021円(消費税を含まない額で計算する)
10,800 – 1,021 = 9,779円
となり、 9,779円が実際に支払う金額です。

100万円超の場合は二段階税率が適用されます。
報酬から100万円を引き、そこに税率の20.42%をかけたあと102,100円を足します。

報酬が、1,500,000円(消費税込)の場合。
(1,500,000 – 1,000,000) x 20.42% + 102,100 = 204,200円(源泉徴収税額)
1,500,000 – 204,200 = 1,295,800円
となり、1,295,800円が実際に支払う金額です。
つまり100万円超の場合は、上記の100万円以下の場合の計算方法の10.21%の部分が20.42% + 102,100円になるということです。

手取契約の場合の計算方法

手取契約の場合は、委託先などから提示された金額が実際に支払う金額のため、そこから源泉所得税額を計算しなくてはなりません。

手取10,000円(消費税込)の場合。
10,000 / 0.8979 = 11,137円(報酬金額)
※ 0.8979 = 1 – 0.1021(10.21%のこと)
11,137 – 10,000 = 1,137円(源泉徴収税額)
となります。

手取10,000円(消費税別)の場合。
10,000 / 0.8979 = 11,137円(報酬金額)
11,137 – 10,000 = 1,137円(源泉徴収税額)
11,137 x 0.08 = 890円(消費税)
11,137 + 890 = 12,027円(消費税を含んだ報酬金額)
12,027 – 1,137 = 10,890円(実際に支払う金額)
となります。

消費税は手取り金額ではなく報酬額に対して発生する点に注意します。

100万円が基準となるのは実際の支払額のため、手取契約の場合は手取金額が897,900円を超えた場合に二段階税率が適用されます。

手取1,500,000円(消費税込)の場合。
1,500,000 – 102,100 = 1,397,900円
1,397,900 / 0.7958 = 1,756,597円
1,756,597 – 1,500,000 = 256,597円(源泉徴収税額)

源泉徴収税額計算時の注意点

端数は切り捨て

計算のときに一番注意が必要なのは、確定税額で1円未満の端数が出る場合は四捨五入ではなく、切り捨てになっていることです。

消費税の取扱い(個人への報酬の場合)

フリーランスなど個人への報酬の場合、税率10.21%は「消費税込みの金額」にかけるか、「税抜きの金額」にかけるか、どちらでしょうか。

実は、どちらでもいいんです。

原則的に、源泉徴収する時には「報酬として支払った全ての金額」が対象になります。なので、本来であれば消費税も入れた金額から源泉徴収することになるのです。
ただし、請求書で本体価格(報酬)と消費税が明確に分けられている場合には、税抜き金額から源泉徴収しても良いとされています。

まとめ

源泉徴収は、個人事業主にとっても、起業家にとっても知らなければならない知識のひとつともいえます。
源泉徴収税額の計算は、仕組みさえ理解すれば決して難しいものではありません。ただし、特に個人に業務を依頼する時には、対象になる業務かどうかが曖昧な場合があります。不明点がある時には必ず税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

法人税、消費税、所得税、固定資産税の支払い時期と納税方法
年末調整の書き方とは。計算方法、注意点などを解説します【保存版】

(執筆:創業手帳編集部)

この記事に関連するタグ

この記事に関連する記事

創業手帳

創業時に役立つツール特集

カテゴリーから記事を探す