ウェルネス 中田航太郎|予防医療を社会に普及させ、防ぎえた死や後悔をなくす

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年06月に行われた取材時点のものです。

クライアントの健康な時間を守るために、データに基づいた戦略的な予防医療を提供する


日本人の三大死因となっている、がん・心疾患・脳血管疾患は「生活習慣病」といわれ、健康な長寿を妨げる大きな要因となり、国民の医療費にも大きな影響を与えています。そのため、ヘルスケアや予防医療の重要性がますます高まっています。

そんななか、パーソナルドクターによるクライアントに合わせた予防医療を提供することで、正しい予防医療の社会実装を目指している株式会社ウェルネスが注目されています。

代表である中田航太郎さんは、救急医として働きながら起業を行い、事業を成長させてきました。また、2024年4月12日に総額2億8,000万円の資金調達も発表しています。

今回は、中田さんが起業された経緯やサービスの強み、今後のビジョンについて、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

中田 航太郎(なかだ こうたろう)
株式会社ウェルネス 代表取締役
1991年、千葉県生まれ。幼少期をピッツバーグで過ごし、4歳から医師を目指す。東京医科歯科大学医学部卒業後、初期研修を経て救急総合診療科医。予防医学の普及と医療アクセシビリティ向上を目指し、2018年6月に株式会社ウェルネスを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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現役医師ながら「予防医療」で社会に対してインパクトを与えるために起業の道へ


大久保:最初になぜ医療の世界を志したのか教えていただけますでしょうか。

中田:医師を志したのは4歳の頃です。昔、小児喘息で入院したことがあり、当時のかかりつけ医の先生がめちゃめちゃいい先生で、私にはヒーローのように感じました。
病気を治してくれるという点でもそうですし、先生とお話するだけでも安心感を得られて、先生みたいな医師になりたいと思ったのがきっかけでした
また、父も医師だったこともあり、自分の夢として抵抗なく持ち続けることができたのもあると思います。

大久保:御社のサービスは、予防医療にフォーカスしていると思いますが、予防医療に興味を持つようになったきっかけを教えてください。

中田::現場で働いていると、病気が進行した患者さんは珍しくなく、そのほとんどの方がより良い医師に見てほしいと願っています。
しかし、病気が進行した場合、治療成果はあまり期待できません。例えば、大腸がんのステージ4患者の場合、世界一の名医が診たと仮定しても、5年生きられる可能性は2割を下回ります
健康を維持するための要因はもっと早い段階で決定づけられているんです
そこで、病気になってしまう人やまだ病気になっていない人へ、10年も20年も早く介入するためにはどうしたらよいのかを考え、予防医療に興味を持ちました。

大久保:医師として働きながらの起業ということで、とても忙しかったと思いますが、起業の準備段階で大変だったことはありますか?

中田:そうですね、まず医師としての業務が忙しかったのは間違いないです。
また、初めての起業なので、起業準備に色々なことを並行して行っていました。
経営者のお話を聞きに行くのもそうですし、エンジニアを集めたり、投資家へプレゼンしたり、投資家とのミーティング中にPHSが鳴って、緊急手術をやるために病院に戻らなければならなくなり、プレゼンが途中終了になった経験もありました。

大久保:お話だけで当時の忙しさが感じられます。
ただ、忙しい中でも起業を選んだ理由としては、医師として一個人で貢献することよりも、社会全体の仕組みに影響を与えたいという想いが強かったのではと感じました。

中田:はい。やはり医師の働き方は多忙を極めますが、医師が忙しいことと患者さんにいい結果が与えられることはイコールではないんですよね。
多くの患者さんを診療し、治療に関わっていても、社会における影響や価値をどれだけ生み出せているかどうかは全然違うことだと考えています。
私は、自分の街に住む人達にフォーカスしたいのか、日本全体や世界全体に対して貢献したいのかを考えた時に、世界全体へインパクトを与えたいという結論だったため、会社を作るしかないと思いました

予防医療×テクノロジーでクライアントの意思決定をサポートする



大久保:お話を伺っていると、Wellnessのサービスにはテクノロジーの発達も関係しているのかと推測しますが、いかがでしょうか?

中田:そうですね。世間一般でも言われていますが、今後20年で起こる変化として、個別化された予防医療による治療割合の減少は、確実に起こるだろうと思っています。
現在、検査の価格も下がってきていて、遺伝子検査やウェアラブルデバイスの普及も進み、どんどん個別化された医療ヘルスケアデータの収集がしやすくなっていますよね。
その中で、データを蓄積するためのプラットフォームとして、当然テクノロジーが必要になります。

蓄積されたデータを解析し、健康管理のアドバイスに出力するために、私たちはパーソナルドクターとして専門家サービスを提供しているんです。
また、現状にとどまらず、将来はデータ解析をAIに移行しつつ、Webアプリ上で蓄積されたデータをもとに、個別化された病気リスクや必要なアプローチまですべてわかるような世界感を作っていきたいと考えています。

大久保:テクノロジーを医療に活用していくことは、今後も市場として期待値が高い領域ですが、Wellnessのサービスの強みはどんな所だとお考えでしょうか?

中田:テクノロジーの良さを活用していくお話はしましたが、AIに言われた言葉や指示だけで人が動くとは思っていないんです。
私が医師を目指したきっかけも、直接医師と会うことで安心感を得られたことにあるので、一人一人が信頼できる医師を持つことが大事なことだと考えています。
そのため、私たちのサービスでは、パーソナルドクターとクライアントの信頼関係を構築することを意識していて、クライアントの人生が良いものであるように伴走していきます。
もちろん健康を維持する部分でもそうですし、例えば経営者であれば、その方の事業が上手くいくことをパーソナルドクターも一緒に願っているんです。

また、私たちはパーソナルドクターをライフクルー、つまり人生という船旅の船員として、一緒に航海していく船医に例えています。
テクノロジーを活用しながら自分の健康データを把握し、最終的な意思決定まで伴走してくれる医師、そんな人生における信頼できる医師を1人持つこと、これが私たちのプロダクトであり、特徴でもあります。

Wellnessを通して医療へのアクセスを最適化する


大久保:Wellnessは予防医療という面で、ある種今までの医療サービスと競合してしまう可能性も感じますが、いかがでしょうか?

中田:Wellnessは、至極まっとうに国民や社会にとってより良いサービスを届けていると思っています。
この至極まっとうにというのが大事だと考えていて、例えばよくわからない新開発の薬や点滴によって利益を出していたら、医師としても受け入れがたいと思います。
Wellnessはエビデンスがあって、かつ患者さんに対してより良いと考えられるサービスを社会実装しているため、医療業界からも共感を得やすいです。

私は、医師や病院、ひいては医療という概念において、健康な期間を維持することが一番優先されるべきミッションだと思っていますし、その観点で考えたときに、予防医療の重要性は多くの医師が認識している所だと思っています。
また、Wellnessが成長し、個別化された予防医療が届けられるようになれば、今まで自覚症状が現れてから受診していた患者層が、血圧が高いなどの検査異常段階で受診するようになります。

例えば、救急車で運ばれて初めて自身の異常に気づくような患者さんもいますが、その場合、国の予算として多くの医療費が消費され、大病院に患者が集中する問題の原因の一つにもなります。
Wellnessを通して、そういった今までの患者の受診モデルから、早期にクリニックを受診するようなプライマリケア※につなげることもできるんです。

※プライマリケア:身近で、些細なことでも相談にのれるような総合医療のこと。病気だけでなく予防医療まで責任をもつ、地域医療を担う役割。

大久保:Wellnessによって、クリニックや地域医療に患者さんが流れてくるということですね。

中田:そうですね。Wellnessのサービスに医療は含まれていませんが、ユーザーに医療が必要になった段階で、適切なクリニックや医療機関への紹介ができます。
つまり、医療へのアクセスの最適化をWellnessが担っているんです。
病気のリスクを減らしつつ、適切な医療を適切なタイミングで受けられるようにサポートしていくことが私たちの役割なので、その点で、医療業界と競合になりうる部分はないと考えています

プロダクトビジョンの実現は大変だが、核になる重要な部分

大久保:起業してから一番大変だった経験を教えてください。

中田:一番大変だったのは、やっぱりPMF(プロダクトマーケットフィット)ですかね。起業当初からビジョンだけは明確に持っていたので、ビジョンの達成のためにどんなアプローチがあるのかを試行錯誤して、何度もトライ&エラーを繰り返していました。
他にも人材やキャッシュフローとか、色々な問題が出てくると思いますが、私はプロダクトが一番の核だと思っています。
プロダクトビジョンを持って、それを実現することが一番大変で、一番重要だと思いますね。

大久保:では、起業して良かったと感じたエピソードはなんでしょうか。

中田:良かったことはWellnessにより、クライアントの命を助けるサポートができていることです。クライアントによっては、Wellnessのサービスが無ければ、救急車で運ばれていたかもしれないとか、命に関わる危険性があったかもしれないという方もいます

例えば、Wellnessのクライアントで、冠れん縮性狭心症が見つかった方が何人かいます。この病気は、普段は正常で症状もありませんが、たまに血管が収縮して胸が痛くなったり、心筋梗塞に移行することもある怖い病気です。

経営者の方だと忙しくて、多少の胸の痛み程度は放っておいたりする場合も多いため、すぐにパーソナルドクターから病院受診を勧め検査をしてみると、やはり狭心症だったというケースが複数ありました。
そういう方は、もしWellnessのサービスが無ければ、心筋梗塞で倒れるまで病院にかかることはなかったかもしれないと思います。
この例のようなケースは、病院で働いて患者さんが来るのを待っているだけでは手が届かなかった患者さんであり、パーソナルドクターの事業を起こした価値を感じます

Wellnessで正しい予防医療を社会に普及させたい


大久保:今後のビジョンについて教えてください。

中田私たちのビジョンは、予防医療を社会に普及させることで防ぎえた死や後悔をなくすことです。やっぱり、死ぬときに後悔が多く残るような人生よりも、折角なら悔いなく良い人生だったと言いたいと、私も含め多くの方が思っているはずです。
そのためには、戦略的に自分の健康を守ることが重要で、Wellnessが力になると思います。

今までも個人で健康を意識されて、色々な行動を起こしてきた方もいると思うんですが、正しく健康を守るためには、正しい予防医療が必要です。厳しい言い方をすると、間違った健康法を頑張っていても意味はないんです。
Wellnessによって、正しい予防医療を社会普及できれば、個人個人が自分のリスクを事前に予測し、適切な行動をとることにつながります
このカルチャーやサービスを、日本に、世界に届け、最終的には世界中の人を幸せにできたら嬉しいと思っています。そのための仕込みをどんどんやっている段階ですね。

大久保:最後に起業された方へのメッセージをお願いします。

中田:起業された方は何か熱い想いがあり、実現したいビジョンがあると思いますが、そこの軸は絶対にぶれずに続けてほしいです。
スケールするかどうかも考えなければいけないですけど、最初は泥臭く自分の想いを実現する方法を優先することで、腹落ちした状態でビジネスを続けられると思います。

また、私特有のアドバイスとしては、健康を大事に自分の体と向き合うことも仕事の一つと捉えてほしいことです。若いうちは健康を無限に続くものと勘違いしてしまいがちですが、経営者の健康状態が事業に与える影響ってとてつもなく大きいです。
スタートアップ経営者だからこそ、健康には絶対的に取り組む必要があると、私は思っています。

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(取材協力: 株式会社ウェルネス 代表取締役 中田航太郎
(編集: 創業手帳編集部)



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