所得税の計算方法のルールと注意点を解説

創業手帳

所得税計算は個人事業主と会社員で違う!正しく控除・申告して節税を


所得税計算は、個人事業主・フリーランスと会社員とで方法が異なります。そのため、独立起業した場合などには、戸惑うこともあるかもしれません。
所得税は自分で申告しないと節税できない場合もあるため、ルールを正確に理解して漏れなく手続きすることが大切になります。

所得税の計算方法の個人事業主と会社員との違い、所得税の節税に使える控除の種類などを解説します。
特に、個人事業主・フリーランスはやるべきことが会社員よりも多いため、注意が必要です。

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所得税計算のルール


所得税計算の基本的なルールは、個人事業主・フリーランスと会社員とではそれほど変わりはありません。
しかし、所得税計算の際にできる控除の種類や手続き方法などが異なります。

所得税計算のやり方の基本をはじめ、計算のために使う税率や控除の種類などを知っておきましょう。

所得税計算は年末調整と確定申告で行う

所得税は1年間の所得に課される税金で、1月から12月までの収入をもとに計算します。所得税の計算をして納税する手続きには年末調整と確定申告の2つがあります。

年末調整は会社員が、確定申告は個人事業主・フリーランスがそれぞれに行うものです。
どちらも1年間の所得をまとめて計算し、税務署に納税する手続きですが、実施する時期や主に計算などの作業を行う人が異なります。

会社員は年末調整で

会社員は所得税の計算と申告手続きとして年末調整を行います。
年末調整は、文字通り主に10月下旬~12月の年末に行う事務手続きで、実際に所得税を計算して申告するのは勤務先の給与担当者、労務担当者などです。
個々の社員は各種申告書を会社から受け取り、必要な証明書類とともに提出するだけで、自ら所得税の計算をすることはありません。

会社員は原則、給与から差し引く形で所得税を源泉徴収されています。
給与から差し引かれている所得税額は毎月の給与額に基づいて概算されたもののため、1月から12月の給与額が正式に決定した年末に正しい所得税額を計算し直すことが必要です。
その際には、個々の家族構成や経済状態など個人的な事情を加味して税負担を調整する「控除」も行います。

会社員は会社の担当者から必要な提出書類や書類の書き方、期日などを指示され、それに従って提出するだけなので、所得税計算の詳しい知識は必要ありません。
提出書類をまとめて担当者に提出するだけです。また、あらかじめ天引きされているため、不足がなければ新たに所得税を徴収されることもありません。

個人事業主は確定申告で

個人事業主・フリーランスは、会社員のように組織に所属していないため、自分自身で所得税の計算をし、納税します。これが確定申告です。
確定申告は年末調整とは違い、1月〜12月までの所得税を翌年の春先に手続きします。
通常の確定申告期間は2月16日から3月15日までですが、社会情勢などによって変わることもあります。

個人事業主・フリーランスは、所得税の計算から書類作成まで、確定申告の準備をすべて自分で行わなければいけません。
また、書類の提出や納税も自分で税務署を通して行います。
取引方法によっては個人事業主・フリーランスも取引先に所得税を源泉徴収されることもありますが、そうでなければ確定申告の後に発生した所得税額を納めなければいけません。
そのため、確定申告前には納税資金を確保しておくことも必要です。

年末調整と確定申告について詳しくはこちらの記事を>>
青年末調整と確定申告の違いと注意点

所得税計算に使う税率

所得税の計算では、課税所得に応じて段階的に高くなる超過累進税方式が使われています。所得税の累進課税の計算方法は煩雑です。
そのため、簡単に所得税額を計算するために、下記の所得税の速算表を用います。

速算表では所得金額は7段階に分かれており、課税される所得金額に応じて税率と控除額を当てはめて計算すれば所得税の金額が出るようになっています。

実際の超過累進税方式は、仮に50万円までは税率10%、それ以上は20%だった場合、60万円の所得があったら50万円分は10%、残りの10万円は20%というふうに金額の段階ごとに課税されるルールです。
しかし、それでは計算が難しすぎるため、速算表を使用します。

例えば、自分の所得金額が200万円だった場合、所得税の速算表の上から2段目「1,950,000円から3,299,000円まで」にあたるため、税率10%で97,500円をすべての所得金額から控除します。
一度に税率をかけて控除するだけなので効率的です。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

国税庁ホームページ「所得税の税率」より

所得税計算の流れ


所得税計算の流れを知ることで、個人事業主・フリーランスとして自分で所得税を算出したり確定申告したりしやすくなります。
また、会社員であっても、自分の所得税の金額がどのように算出されているか知ることは大切です。

所得税が計算されるまでの流れと計算に必要な控除の種類について解説します。
控除は個人事業主・フリーランスと会社員では違う点があるため、自分が当てはまる控除を正しく知っておきましょう。

収入から必要経費を引いて所得が決まる

所得税の計算をするのに初めに必要なのは、正しい所得の金額です。所得は収入とは違い、必要経費を引いた金額です。
収入がいくら多くても、必要経費も多ければ所得は多くなりません。
つまり、簡単に言うと実際にどれくらいの金額が手元に残ったか、どれくらい利益が出たか、所得金額によって知ることができます。

個人事業主・フリーランスの場合、所得は自分の事業で得た総収入から実際にかかった必要経費を差し引いて出します。
必要経費は仕入れ金額や販売にかかった費用などで、家賃や光熱費など販売と直接関係のない費用も必要経費にできるため、計上可能です。

会社員は個人事業主・フリーランスのように必要経費を差し引けません。その代わりに収入金額に応じて段階的に定められている給与所得控除を差し引くことになります。

所得から控除額を引いて課税所得が決まる

総収入から必要経費を差し引いて所得金額が決まったら、さらに所得金額から各種控除を差し引きます。
各種控除を差し引いた金額が、実際に所得税額を計算する際に使う課税所得です。

控除は扶養家族の有無・保険料支払いの有無・父子家庭や母子家庭など、様々な事情を納税額に反映させる制度です。
控除することで、生活にお金がかかる人から徴収する税額を抑え、それぞれの事情に即した公平性を保ちます。

より多くの控除をすることで課税所得を減らし、結果的に納税額を減らします。
しかし、控除はその人の事情を反映したものなので、条件に当てはまらない人には適用されません。

控除の種類

所得から差し引いて、課税所得を抑えられるのが所得控除ですが、所得控除には様々な種類があります。条件に当てはまるものは、複数併用することも可能です。
控除を受けられる条件や控除額の上限などを種類ごとに紹介するので、自分のケースに当てはまるか確認してください。

以下の控除は、自分が該当している場合に控除対象となるものです。

・基礎控除
所得合計が2,400万円以下のすべての人に適用される控除で、一律48万円です。

・生命保険料控除
生命保険や介護医療保険、 個人年金保険料を支払った場合に適用される控除です。保険の種類で控除額は異なり、それぞれ4万円~5万円が上限となっています。

・地震保険料控除
地震保険料を支払った場合に適用される控除で、控除額は最高5万円です。

・寄附金控除
ふるさと納税や認定NPO法人などへの寄付をした場合に適用される控除で、寄附金支出合計額か、所得の40%の少ないほうから2,000円を引いた金額が上限です。

・寡婦(寡夫)控除
配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる人のための控除で、控除額は27万円。一定の要件を満たす場合は、35万円です。

・ひとり親控除
ひとり親である人に適用される控除で、控除額は35万円。

・勤労学生控除
学校に行きながら働いている人に適用される控除で、控除額は27万円。ただし、前年の合計所得が75万円以下が条件です。

・小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済、個人型確定拠出年金(iDeCo)などの掛金を支払った場合に適用される控除で、支払った掛金の合計額が上限です。

以下の控除は自分もしくは家族などが該当している場合に控除対象となります。

・社会保険控除
健康保険料・介護保険料・年金保険料などを支払った場合に適用される控除で、支払った保険料の合計額が上限。本人と生計を一にする配偶者や家族も含まれます。

・医療費控除
一定額以上の医療費を支払った場合に控除されるもので、本人と本人と生計を一にする配偶者や家族の分も含まれます。
支払った医療費をもとに、保険金で補填された分と10万円を引いた額が控除されます。

・障害者控除
納税者本人や控除対象配偶者、扶養親族が障害者の場合に適用される控除です。ひとりに付き障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円が控除されます。

以下は該当の家族がいる人が対象となる控除です。

・扶養控除
16歳以上の子どもや両親など、扶養している人がいる場合が対象の控除です。一般の扶養親族38万円、特定扶養親族63万円、老人扶養親族は最大58万円が控除されます。

・配偶者控除
合計所得が48万円以下の配偶者がいる場合に適用される控除で、金額は一般控除対象配偶者が最大38万円、老人控除対象配偶者が最大48万円まで控除されます。

・配偶者特別控除
合計所得が48万円以上133万円未満の配偶者がいる場合に適用される控除です。上限は38万円で、配偶者の所得によって控除額は変わります。
納税者の合計所得が1,000万円以下であることも条件です。

個人事業主と会社員の違い

個人事業主は会社員が経費の代わりに差し引ける給与所得控除がありません。その分、自分が当てはまる控除を探して、申告する必要があります。

個人事業主・フリーランスは、課税所得から自分で控除をして課税所得を計算しますが、会社員は上記に当てはまる所得控除があった場合には会社の担当者に提出します。
会社員よりも個人事業主は自分で計算する手間がかかるため、期限が翌年の3月とはいえ、早めに準備をしておいたほうが安心です。

税額控除で最終的な所得税が決まる

課税所得が計算できたら、所得税の税率に当てはめて所得税を計算しますが、最終的な所得税を出す前にもうひとつ、税額控除という控除が受けられます。
税額控除は、所得税の金額から直接控除できる制度で、所得から差し引く所得控除よりも節税効果が高めです。

ただし、税額控除を受けるためには、原則確定申告が必要です。会社員も年末調整をしたあとで確定申告して税額控除を受けることになります。

税額控除の種類

税額控除の種類には以下のようなものがあります。
このうち、借入金控除等特別控除については、1年目のみ確定申告が必要ですが、2年目から会社員は年末調整でも控除が可能です。

・外国税額控除
外国企業から収入があり、すでにその国から課税されている場合に適用されます。

・寄付金特別控除
所得控除の寄付金控除以外で公的な団体に寄付した時に適用される控除です。

・住宅借入金等特別控除
国内で住宅ローンを組んだ場合に適用される控除です。

・住宅耐震改修特別控除
住宅に耐震工事をした場合に適用され、1981年5月以前に建てられた住居が対象です。

・住宅特定改修特別税額控除
バリアフリー工事や省エネのためのリフォームをした場合に適用されます。

個人事業主は個々での所得税計算が必要


個人事業主やフリーランスは、会社員とは違って個々に所得税計算をする必要があります。
自分で責任をもって納税までしなければいけない上に、ミスが許されない場合もあるため注意してください。

やり方を間違えるとペナルティも

個人事業主やフリーランスの確定申告は、正しく行わなければいけません。
税務署は税金を支払い過ぎても何も言いませんが、少なく申告した場合や申告しなかった場合にはペナルティを課せられる恐れがあります。
また、申告に不備があった際には帳簿の提出が求められますが、それによって帳簿の紛失などが明らかになった場合もペナルティの対象です。

ペナルティの内容は、加算税という追加の納税です。不足分が合った場合には不足分プラス加算税となります。
ただし、悪意なくうっかりミスをしただけの場合には救済措置もあるため、ミスに気が付いた時には速やかに申告し直してください。

困ったら税務署や青色申告会、商工会議所で相談

個々に所得税を計算していると、何かと不安や疑問が生じるかもしれません。そうした場合には、相談窓口を利用しましょう。
相談できるのは、税務署の個人課税部門・青色申告会・商工会議所などです。税務署では記帳説明会なども実施されています。

特に、初心者はわかりにくい専門用語も多いため、正しい帳簿の付け方や計算がわかるまでは、積極的に相談や説明会などを利用するほうが安心です。

不動産所得・事業所得・山林所得は青色申告が可能

不動産所得や事業所得、山林所得は、節税効果の高い青色申告も利用できます。
青色申告は複式簿記が必要で難しい印象でしたが、簡単と言われていた白色申告も同じくらいの帳簿が求められるようになりました。
そのため、節税効果の高い青色申告を選んだほうがお得です。

青色申告をしたい場合には、事業開始から2カ月以内、もしくは、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出する必要があります。

青色申告特別控除が利用できる

青色申告が節税効果の高いと言われるのは、青色申告特別控除のためです。青色申告だけに適用される控除で、最大65万円の控除が受けられます。

青色申告について詳しくはこちらの記事を>>
青色申告承認申請書はどう扱う?提出期限やメリット、正しい書き方などを解説

個人の所得税計算は会計ソフトが便利

確定申告の所得税計算は、個人が手計算でするには難しいものです。
そのため、個人事業主やフリーランスで働く場合には、会計ソフト、確定申告ソフトを利用することをおすすめします。
ソフトを使うと、難しい複式簿記の知識も必要なく、簡単に入力するだけで確定申告の体裁が整います。

所得税の計算で注意したいこと


所得税計算をする際には、いくつか注意したい点があります。
個々に計算が必要な個人事業主やフリーランスはもちろんのこと、会社員として働いている人も以下の点に注意してください。

控除は自己申告しないとできない

所得控除と税額控除は、基本的には自己申告しないと反映されません。誰でも一律で受けられる基礎控除でさえ、自分で確定申告書に記載する仕組みになっています。
せっかく該当していても自分が気づかなければ控除できなくなるため、自分の該当する控除については慎重に見極めることが大切です。

また、社会保険控除のように控除の上限が決まっていないものについては、対象となる金額はすべて漏らさず申告してください。控除の申告は、自分自身だけが頼りです。

基礎控除が2020年分から変更に

所得税の基礎控除は、2020年分から改正されています。2019年までは一律で38万円だった基礎控除が2020年以降は、合計所得金額に応じて段階的に金額が設定されました。

所得金額が2,400万円以下は48万円に引き上げられ、2,400万円超2,450万円以下は32万円と減額になっています。
また、2,450万円超2,500万円以下までは16万円とさらに減額され、2,500万円を超える人は基礎控除が適用されません。

2037年までは復興特別所得税も必要

復興特別所得税は、2013年から2037年まで実施される税金で、被災地の復興財源の確保のために作られました。
復興特別所得税は税率2.1%で、納税額は最終的に計算された所得税額に2.1%を掛けて算出します。

まとめ

所得税計算は、個人事業主やフリーランスには手間がかかり責任も重いものです。
会社員にとってはどちらかと言えば簡単ですが、場合によっては確定申告が必要となることもあるため、油断はできません。

個人事業主も会社員も、所得控除や税額控除などを忘れると節税が十分にできないため、正しく書類を揃えてください。
また、個人事業主の確定申告は計算ミスを放置するとペナルティの対象になる恐れもあるため、注意が必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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