知っておきたい青色申告の基礎知識とメリットデメリット

創業手帳

青色申告とは?申請手続きや申告の流れと白色申告にはない節税メリット


青色申告は、個人事業主やフリーランス、法人まで幅広い人が利用している確定申告の方法です。
節税効果が高く、白色申告よりもメリットが多いと言われる青色申告ですが、やや難しいのが難点です。

青色申告で確定申告しようとしている人は、手続きのやり方やメリットデメリットなどトータルな知識を身につけておきましょう。
また、すぐに青色申告を始められないこともあるため、自分がいつから青色申告できるか確認することも必要です。

確定申告の仕方について詳しく知りたい方は、創業手帳がまとめた「令和3年分 初めてでも分かる確定申告ガイド」を参考にご覧ください。無料でお届けしています。

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青色申告とは


青色申告とは、確定申告の方法のひとつです。
個人事業主やフリーランス、法人などは、青色申告か白色申告かのどちらかを選んで申告することになっています。
青色申告を選ぶためには条件を満たす必要があり、事業内容や簿記の形式などが当てはまらないと認められません。

まずは、自分が青色申告の対象となるか確認しておきます。
白色申告と青色申告は条件も申告の仕方も違うため、申告の準備を始める前にどちらで行うか決める必要があります。

青色申告の対象者

青色申告の対象者となるのは、不動産所得や事業所得、山林所得がある人です。
所得税の対象となる所得には様々な種類がありますが、ほかの所得の場合には青色申告の対象にはなりません。
また、青色申告は事前に申請をした人のみが利用できます。期限までに申請をしなければ、所得の種類が何であれ、白色申告の対象となります。

個人事業主やフリーランス、法人で多い所得の種類は事業所得です。
事業所得は継続的な事業によって発生した所得であり、副業やプチ起業、一時的な儲けでは認められない場合があります。

白色申告との違い

青色申告できない人は、白色申告という方法で確定申告を行います。
青色申告と白色申告の違いは、前述した事前申請の必要性と帳簿を付ける際の簿記の形式、節税に生かせる特別な制度の有無です。

青色申告は事前の申請が必要ですが、白色申告は特別な申請なしに誰でもできます。
また、青色申告では必ず帳簿に複式簿記を使用し、申告には貸借対照表と損益計算書を添付することが必要です。
節税の制度も青色申告では利用できますが、白色申告では利用できません。

青色申告のメリット・デメリット


青色申告は白色申告に比べて大きく違う点があり、その違いをもとに青色申告を選ぶかどうか検討する人が多くなります。
青色申告を始めたほうが良いかどうか、青色申告のメリットとデメリットを比較して考えてみてください。

青色申告のメリット

青色申告のメリットは節税効果の高い制度を利用できる点です。
いくつかの制度は青色申告でしか利用できないため、白色申告を選んでしまうと税金の納税額が上がってしまうこともあります。
代表的な青色申告の節税メリットをチェックしてみましょう。

青色申告特別控除を受けられる

青色申告では、青色申告特別控除という特別な所得控除を受けることが可能です。
青色申告特別控除は最大65万円の控除で、青色申告をすることと電子申告などの条件を満たした時のみ利用できます。
最大で受けられる控除金額が大きいため、この控除が増えるだけでも大きな節税効果が期待できます。

家族の給与を必要経費にできる

青色申告にすることで、家族の給与を必要経費として申告することが可能になります。
これを「青色事業専従者給与の特例」といい、生計を一にする家族が仕事を手伝っている場合のみ、適用される制度です。
適用される家族は15歳以上の配偶者や親族で、青色申告者の事業に専従している人です。

ただし、このルールは、事業所得を得ている個人事業主やフリーランスにのみ適用されます。
事業的規模ではない不動産貸付業で不動産所得を得ている人などには適用されません。また、青色事業専従者である家族は控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

赤字を繰越や繰戻しできる

青色申告をすると、赤字を出した年もメリットがあります。
青色申告では、事業で損失が出た場合、その赤字の控除を繰越しすることや繰戻しで前年の所得税の還付を受けることが可能です。

赤字の繰越しでは、個人事業で損失が出た際に1年間のほかの所得と通算し、それでも控除し切れない部分を翌年に繰り越せます。
繰越しは翌年以降3年間にわたって利用できます。赤字の繰戻しでは、損失の出た年の損失額を前年の所得金額に繰戻すことで、所得税の還付を受けることが可能です。

減価償却の特例を受けられる

青色申告では、白色申告よりも減価償却の方法も有利になります。白色申告では、10万円以上のものは、固定資産として使用できる期間に応じて減価償却が必要です。
しかし、青色申告では、30万円未満であれば減価償却せず、一括で全額を経費にできます。

購入したその年に全額経費にすることで、実際にかかった費用の分だけ所得金額を減らせます。
段階的に経費にする減価償却も長い目で見れば同じことです。しかし、出費が大きかったその年に所得税を減らせるため、キャッシュフローが安定しやすくなります。

貸倒引当金の計上ができる

貸倒引当金の計上が可能となることも青色申告のメリットです。
貸倒引当金は、取引先の倒産などで売掛金や未収入金、貸付金といった債権を回収できなくなった時に備えたものです。
青色申告では、貸倒引当金を経費として計上できます。経費として認められるのは、年末の売掛金残高の帳簿価額合計の5.5%以下の金額です。

ただし、節税効果が期待できるのは最初に貸倒引当金を計上した年のみです。
翌年、貸倒引当金は「貸倒引当金戻入」として収入に計上するため、2年目以降は節税効果がありません。

青色申告のデメリット

青色申告は白色申告よりも節税効果の期待できる制度が充実していますが、その一方で使いにくい点もあります。
青色申告のデメリットは、白色申告よりも手続きが多い点です。また、白色申告よりもコストがかかる場合もあります。

白色申告よりも手間がかかる

青色申告のデメリットは、白色申告よりも提出書類の作成が難しい点です。
白色申告では家計簿のような簡単な記帳で申告が可能ですが、青色申告の場合には複式簿記が必要となります。
複式簿記は記帳の仕方も複雑で、手計算で帳簿を付けていくのはかなり難しいかもしれません。

そのため、青色申告を選択する際には、多くの人が会計ソフトなどを用います。会計ソフトは無料ではないため、手間だけでなく経費も増えることもあります。

事前の申請が必要

青色申告を始める前には、青色申告承認申請書という書類を所轄の税務署に提出しなければいけません。
申告書の提出には期限も設けられており、それを過ぎるとその年の確定申告は白色申告しか選べなくなります。

青色申告承認申請書の提出期限は、開業から2カ月以内です。また、途中から青色申告に変えたいと思った時には、その年の3月15日までに提出する必要があります。

青色申告をするには


青色申告をするために必要な手続きや確定申告までの流れを手順に沿って解説します。青色申告は確定申告時期の前だけでなく、年間を通して準備することが大切です。

青色申告の申請手続きの方法

前述の通り、青色申告をする事業者は事前の申請手続きを行う必要があります。青色申告承認申請書は、税務署に提出するものです。
もっともスムーズに申請するなら、開業届と同時に提出するのが良いでしょう。
相続によって不増産所得を受け継いだ人で故人が青色申告をしていた場合は、4カ月以内に手続きが必要です。

申請書の内容は、所得の種類や事業の開始日、簿記の方式など、簡単なものです。必要な情報をすべて埋めて、提出するだけで終わります。

青色申告承認申請も税務署に行かずに電子申請できるようになりました。忙しくて税務署に行けない人でもパソコンから申請でき、外出の手間を省けます。

青色申告の記帳方法

青色申告をする場合、記帳方法は原則的に複式簿記となります。ただし、青色申告特別控除の金額によっては簡易簿記を使用することも可能です。

青色申告は青色申告特別控除の金額がその手続きの内容によって異なります。青色申告特別控除の金額には10万円と55万円、65万円があります。
それぞれのケースで記帳方法のルールも違うため、自分が受けたい控除金額に合わせて準備してください。

青色申告特別控除55・65万円を受ける場合

青色申告特別控除の金額が55万円と65万円の場合には、記帳は複式簿記で行う必要があります。複式簿記に基づいて記帳し、青色申告決算書を作成します。

複式簿記は取引内容をより正確に記すことのできる方法です。記帳の方法は難しいものですが、あいまいさを排除して不正を防止できます。

実際に記帳する際には、会計ソフトを用いるのが一般的です。
複雑な計算も必要なく、ソフトが指定する通り金額や取引内容を入力することで、取引の記録である仕訳という処理ができます。
1年分の仕訳ができたら、青色申告決算書と確定申告書を作成します。この書類作成も会計ソフトであれば、ほとんど自動で処理してくれるので安心です。

青色申告特別控除10万円を受ける場合

青色申告特別控除の最大10万円を受けるのは、上記の55万円と65万円の要件を満たしていない場合です。
言い換えれば、青色申告特別控除の金額が10万円で十分だという人は、複式簿記ではなく簡易簿記で帳簿を付けることができます。

簡易簿記でも、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などは必要です。
ただし、青色申告決算書の貸借対照表は必要なく、損益計算書だけ記入するだけで済みます。書類を作成したら、青色申告決算書と確定申告書を税務署に提出します。

青色申告の確定申告方法

青色申告の書類が整ったら、税務署で確定申告の手続きを済ませます。
この方法も、青色申告特別控除の金額によって異なるため、自分が希望する控除額に合わせて手続きしましょう。

青色申告特別控除65万円を受ける場合

青色申告特別控除の最大控除額である65万円を受ける場合には、電子申告するか、優良な電子帳簿保存が必要となります。
会計ソフトなどで作成した青色申告決算書と確定申告書を「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」で提出してください。

電子申告を使って確定申告をする方法には「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」があります。
「マイナンバーカード方式」がこれからも続く正式な方法で、「ID・パスワード方式」はマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応です。

電子申告は国税庁のシステムを用いて行う方法と会計ソフト上で行う方法があります。
会計ソフト上で行う場合には、決算書を作成したらそのまま手続きを進められますが、国税庁のシステムを使用する際には指定のファイル形式で提出しなければいけません。

また、会計ソフトでの電子申告では、マイナンバーカードの所有が必須の場合もあります。
青色申告特別控除の65万円の適用を希望する際には、早めにマイナンバーカードの取得をおすすめします。

青色申告特別控除10・55万円を受ける場合

青色申告特別控除の10万円と55万円を受ける場合には、65万円の時のように電子申告の必要はありません。
作成した書類は、自分の都合に合わせて税務署へ直接出向いて提出したり、税務署へ郵送で届けたりします。
つまり、控除額65万円以外は従来の形式で確定申告を行うことが可能です。

青色申告特別控除はできるだけ欲しいものの、電子申告ができない場合は、複式簿記だけはしっかり行い、提出は従来のやり方にすることで最大55万円の控除を受けられます。

青色申告の注意点


青色申告で確定申告をすると決めたら、正しく申告して途中で白色申告に戻ってしまうことのないようにします。
青色申告は申告書類の作成方法が難しいだけでなく、ルールも厳しくなっているため、うっかりしたミスで青色申告できなくなることもあり、注意が必要です。

申請期限を過ぎるとその年は白色申告になる

青色申告は青色申告承認申請書を事前に提出しなければいけません。申請期限を過ぎてしまうと、その年は白色申告しか選べなくなります。
白色申告では記帳方法こそ簡単ですが、控除や特別な制度も利用できず、利益が多かった年には納税額が高くなってしまうこともあります。
売上が順調に上がっている場合には、早めに青色申告承認申請書を提出し、節税を目指しましょう。

2年連続で期限後申告すると承認取り消しに

青色申告は承認されることで可能になりますが、その承認が取り消されることもあります。
青色申告の申請をした後、2年連続で期限後申告をした場合には、青色申告の承認は取り消され、白色申告に戻ります。

これは、青色申告が記帳方法などの義務を果たしている納税者のための制度だからです。
青色申告にふさわしくないと認められた場合には、その制度を利用して特典である控除などを受けられなくなります。

また、それ以外にも確定申告や帳簿つけにおいて青色申告にふさわしくない行為(違反など)をした場合には、承認取り消しの恐れもあります。

まとめ

青色申告は、白色申告に比べるとハードルの高い確定申告の方法ですが、青色申告を利用することでより高い節税効果を得られます。

青色申告は、事前の承認申請の手続きと複式簿記での記帳が必要です。
青色申告を始めたい人は、早めに申請手続きを行い、会計ソフトの準備をしておきましょう。
また、より高い金額の控除を受けるために電子申告の準備も進めておくことをおすすめします。

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確定申告の仕方について詳しく知りたい方は、創業手帳がまとめた「令和3年分 初めてでも分かる確定申告ガイド」を参考にご覧ください。無料でお届けしています。
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(編集:創業手帳編集部)

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