節税のつもりが無駄に?!損をしないための正しい節税対策を解説

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正しい節税対策で安定した経営を目指そう


一般的な節税対策は、損金を大きくして課税所得を小さくするものです。
しかし、それだけで節税しようとすると間違った節税対策になってしまうことがあります。
節税は、会社が事業を継続するため、無理なく納税し続けるためにも欠かせません。
せっかく節税しているのに会社にお金が残らないという事態を避けるためにも、適切な節税対策を学びましょう。

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節税とは?知っておきたい節税の基礎を紹介します


社会人になってから、支払う税金の額に驚いたことのある人も多いかもしれません。
せっかく一生懸命働いたのに、思っていたよりも税金が差し引かれて残念に感じた経験があるのではないでしょうか。

納税は国民の義務ですが、国が決めたルールを活用して税金を減らす、つまり手取りを増やすことはできます。
そのために有効なのが、節税対策です。以下に、節税の基礎を紹介します。

節税と脱税の違い

節税と脱税は何が違うのかと疑問に思う人もいるかもしれません。
そもそも、節税とは日本の税金の制度に則って、法律に反することなく税金を減らすことをいいます。

一方で、脱税の場合にはルールから逸脱した違法な方法によって税金を減らしています。
脱税した時には問題なくても、後から税務調査によって脱税が発覚してしまうケースは決して少なくありません。

国民の義務である納税を怠り、脱税を犯した場合、ペナルティが課されます。
具体的には、本来納めなければならない税金と実際に納めた税金の差額である追徴税と、さらにペナルティとしての付帯税を支払わなければいけません。
上記は行政処分ですが、悪質な脱税になると刑事罰となる恐れもあります。

経営が厳しい中で、出費を減らしたくて正しくない節税方法が頭をよぎるケースもあるかもしれませんが、法に反することは避けてください。
節税と脱税の違いを理解して、正しく節税するようにしましょう。

どうして会社に節税が必要なのか

潤沢に利益が出ていて、節税に必要を感じたことがない企業もあるかもしれません。しかし、適切な節税対策で税負担を減らすことは、どの企業にも利益にもなります。
どうして企業にとって節税が必要なのかをまとめました。

会社が利益を出し続けられるかどうかはわからない

会社は様々な環境の変化にさらされながら事業を行っています。
近年でいえば、地震のような自然災害や感染症の影響で多くの企業が経済的に打撃を受けています。

会社の利益に課せられる法人税は、利益が出た事業年度に課せられるものの、損失が出ていれば課せられません。
しかし、赤字の時には税金の出費がなくても事業の継続や操業に苦労する場合も多くあります。

社会環境や市場の変化があるため、安定して会社の利益が継続するとは限りません。
赤字が出た時にも対応できるように、日々備えておくことが必要です。
利益が出た時には、適切な節税対策や利益の繰延べを活用して、事業を継続できるように工夫するようおすすめします。

会社にかかる税金は多い

会社に課せられる税金には、所得に対して課税される法人税のほか、法人住民税・法人事業税・消費税・印紙税などがあります。
法人税は利益に課税される税金ですが、固定資産税のように資産に課税される税金もあります。

会社の利益が多い時は支払いに余裕があるかもしれません。しかし、仮に赤字に転換した場合、税金の支払いに困ってしまう場合も考えられます。
資金不足を起こさないためにも、利益が出た時にも節税しておくようにおすすめします。

法人にかかる税金について、詳しくはこちらの記事を>>
法人税率はどれくらい? 法人にかかる税金と計算方法などを紹介!

節税対策の基本のやり方

法人の所得税は所得から計算します。所得の計算方法は、「益金−損金」です。
この結果に対して法人税が課されるため、いかにして損金を多く計上するかが法人税を低く抑えるポイントといえます。
損金を多く計上するためにできる節税対策を紹介します。

損金を発生させる

損金となる経費を発生させれば、所得を減らし、課税額を少なくできます。
例えば、1,000万円の利益がある場合にそのままにしておけば法人税率を20%で計算すると200万円が税金となります。
しかし、広告宣伝費として1,000万円を計上すれば、所得がゼロとなり税金を支払う必要はありません。
ただし、後述しますが、損金となるのであればどのような支出でもいいわけではありません。

上記の例でいえば、将来の企業の成長に寄与するような先行投資である必要があります。
もしも、1,000万円の広告宣伝費で仮に1,500万円の売上げが得られるならば意味がある投資であるといえます。

しかし、仮に売上げが500万円だった場合、支出した経費の回収すらできていません。将来的に支出以上の利益があるかどうかを慎重に判断するようにしてください。

損金となる経費に変える

税法上、損金となる経費は決められています。
しかし、損金と認められない経費を損金として認められる経費に転換すれば、課税額を低く抑えることが可能です。

例えば、会社が支出した交際費などは損金にならず、法人税が課税されます。
交際費とは、交際費や接待費にあたり、法人がその得意先や仕入先、事業に関係ある人の接待や慰安・供応・贈答のために支出するものです。

しかし、交際費と似ていても全額が損金となる場合があります。
例えば、広告宣伝費や会議費として扱えるものがあれば、ほかの費用に転換するといった具合です。
税理士に相談して転換できるような費用がないかチェックしてみてください。

損金に算入できる額を増やす

会社の規模や構造によって課税所得の計算も変わります。
課税額が少なくなる構造の会社に転換することで、課税額を減らす方法もあります。

法人税等の税金は会社の規模が小さい場合、所得が小さい場合に税額が軽減される仕組みです。
例えば、現在の会社を分社化して規模の小さい会社にすることで、それぞれの会社が支払う税額の合計額を分社前の税額よりも少なくできます。

うっかりやってしまいがちな間違った節税


節税には様々な方法があり、自社の事業や規模に合った節税方法を選べます。しかし、中には間違った節税もあり、うっかり行ってしまわないよう注意が必要です。
どのような節税が間違っているのかを、以下に紹介します。

利益を圧縮するための経費を使用する

間違った節税対策としてよくあるのが、出費をともなう対策です。
例えば、1,000万円の利益が出ていた場合、法人実効税率が20%で計算すると税金は200万円です。
この利益を圧縮するための経費として900万円使ったとします。
その結果、利益は1,000万円−900万円で100万円となり、税金は20万円です。

ここで、お金がいくら残るかを計算します。
税金を200万円支払った場合だと、残るお金は800万円です。
経費として900万円支払った場合では、残るお金は80万円になってしまいます。
確かに経費を支払うことで、支払う税金は少なくなったものの、この方法では手元に現金が残りません。

会社にとって必要な経費であれば、節税にもなるため一石二鳥です。
しかし、当然のことながら節税のために無駄な出費をしてしまえば会社にお金が残らなくなってしまいます。

経費を借入金で支払う

手元に現金を残しつつ税金も減らしたいと考えると、借入金で支払う方法を思いつくかもしれません。
この方法であれば、経費が計上されて節税できるとともに手元には現金が残ります。

しかし、この方法は支出した年度は良くても翌年以降の税負担が大きくなってしまいます。
借入金の元金の返済は費用にできないため、翌年以降は経費にならない支払いをしなければいけません。

役員賞与の支給

役員賞与も経費を増やす手段として使われています。
経営者の心理からすれば、今後も継続して払い続ける役員報酬は低く抑えて、利益が大きくなった時には役員報酬を増やして経費で処理したいと考えるかもしれません。

しかし、役員賞与を損金に入れるためには、事前確定届出給与を納税地の所轄税務署長に提出しなければいけません。
これは、決算前に役員賞与を支払って利益調整して節税することは許されていないためです。

事前確定届出給与は届出期限を守る必要があり、届け出た額よりも支給額に過不足があれば損金として認められません。
役員報酬によって節税をしようとする場合には、損金に算入できるかどうかを慎重に検討して行うようにしてください。

保険に加入する

節税するために法人保険に加入して、保険料を経費にする方法もあります。
決算直前でも保険には加入できたり、保険商品に応じた保障が受けられたりとメリットも大きな方法です。

しかし、保険に加入して利益を先送りすることは、現金を支出するためキャッシュフローの悪化を招く恐れもあります。
また、資金が必要になった時に早期解約してしまうと返戻率が低く、手元に残る現金が少なくなってしまうこともあります。

保険を使った節税自体は一定の効果が期待できるものの、中途解約をした場合やキャッシュフローが悪化した場合の対応まで事前に検討しておかなければいけません。

すぐにでもスタートできる節税方法


節税は、適切な方法であれば、会社に残る現金を増やし、安定成長にも良い影響を与えます。
間違った節税方法は前述のとおりですが、以下には正しい節税方法で、スタートしやすいものを紹介します。

資産の評価方法を見直す

企業によっては、期末の棚卸資産を計上することになります。
棚卸資産には、商品・製品・原材料・仕掛品などの将来的に販売する予定があるもののほか、販売用でない消耗品で貯蔵中のものも該当します。
つまり、企業にいくらの資産が残されているか明らかにして、その事業年度の売上原価を算定可能にするものです。

期末棚卸資産の評価が大きい場合には、計算上売上原価は減少しますが、反対に期末棚卸資産の評価が小さい場合には、売上原価は上昇します。

期末の棚卸資産は仕入価格で評価できるほか、期末の時価が仕入価格よりも下がった時には時価で評価することも可能です。

これは低価法と呼ばれる方法で、一定の要件を満たすことによって評価損を計上して利益を圧縮できます。
さらに、節税方法としては不良在庫を評価損に計上したり、廃棄処分したりする方法もあります。

経営セーフティ共済に加入する

経営セーフティ共済とは、取引先の倒産の影響による連鎖倒産や経営難になるリスクを抑えるための共済制度です。
経営セーフティ共済で支払った掛金は経費となります。

取引先の倒産や経営難に備える場合、資金繰りに困ることがないように定期預金に預けたり、運転資金を潤沢にしておいたりする方法があります。
しかし、これらのお金を多めに置いておく方法は、資金の活用面から考えるとあまり効率は良くありません。

一方で、経営セーフティ共済は支払った掛金が経費となり、税負担を減らす効果があります。
保障内容は、被害額を限度として掛金総額の10倍まで貸付けが受けられます。

経営セーフティ共済を解約した場合には、解約手当金が受取可能です。
自己都合の解約でも掛金を12カ月以上納めていれば8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば掛金全額が戻ります。

ただし、解約手当金が入金された場合には、収入として扱われます。企業が黒字の時に何も考えずに解約すると、収入が増えた結果、税金が負担になるかもしれません。
赤字になって資金繰りが厳しい時に、赤字の補填に使うなどの工夫が必要です。

経営力向上計画による支援

経営力向上計画は、「中小企業等経営強化法」に基づいた中小企業などを支援する制度です。
経営力向上計画の認定を受けられる特定事業者には、会社のまたは個人事業主・医療法人・社会福祉法人・特定非営利活動法人が含まれます。
定められている従業員は、2,000人以下です。

経営力向上計画の認定を受けて一定の設備投資をした中小企業者などは、税制の優遇を受けられる仕組みです。
どのような認定を受け、優遇が受けられるのかを以下で説明します。

即時償却または取得価額10%分の法人税控除を受けられる

経営力向上計画の認定による支援措置の中でも、税制面でメリットが大きいのは即時償却です。
中小企業経営強化税制として実施される制度で、経営力向上計画に基づいた一定の設備を新規に取得すると、法人税の取得金額分の即時償却、または、取得価額における10%分の税額控除のどちらかを選択可能です。

例えば、工作機械を2,000万円で導入した場合を考えます。
経営力向上計画の認定を取得すれば、取得価額2,000万円を即時償却するか、取得価額の10%、200万円を法人税から控除するかを選択できます。

即時償却であれば、利益を大きく圧縮して節税可能です。取得価額の10%控除でも法人税からの控除が受けられます。
どちらを選択したほうが節税メリットが大きいかは、事業者の決算内容によって異なります。
事業で利益が大きくなりそうな時ほど、節税効果が高まる制度です。

2種類の認定申請

経営力経営力向上計画は、利用しようとしている支援措置に応じて複数の認定方法が用意されています。
A類型は生産性向上設備への投資に対する認定で、B類型は収益力強化設備への投資に対する認定、C類型はデジタル化設備、D類型は経営資源集約化に関する設備といった内容です。

A類型の場合には主な投資対象が機械装置の導入、B類型は新規出店などの設備投資などと、どれを選ぶかによって対象が違うため、事業内容に合う認定申請を選ぶようにしてください。

経営力向上計画について、詳しくはこちらの記事を>>
経営力向上計画とは。メリットや対象、申請方法について説明します。

中古資産を購入する

中古の資産を減価償却する場合、新品よりも短い耐用年数で償却可能です。
減価償却は使用することで価値が減少するものに対して経費計上する制度で、支出することなく費用計上できます。

中古資産の場合、短い期間で減価償却できるため、よりスピーディーに費用化できます。
最近では新品に遜色ないような中古品も数多く出回っているため、資産を購入する時には耐用年数や計上できる原価償却費をシミュレーションしておきましょう。

まとめ

節税対策はどの企業にも効果がありますが、方法には注意が必要です。
節税を意識するあまり経費を多く計上したり保険に加入したりすると、結果的に手元に残るお金が少なくなるため、長期的な目線での節税対策が大切です。

節税対策はまだ必要ではないと考えることもあるかもしれませんが、必要性を感じてからでは遅くなってしまう場合もあります。
早い段階で対策しておき、事業に必要なキャッシュを確保しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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