融資を検討する個人事業主へ!選択のポイントと注意点を解説
個人事業で融資を受けるためには?より良い資金調達方法の比較と必要な準備
融資を検討する個人事業主が最も不安に思うことは、利用できる方法が限られることではないでしょうか。
個人事業主の場合、企業と比較して審査が通りにくく、融資を申し込んでも受けられないことがあります。
個人事業で融資を受けるためには、自分に合う融資方法を選び、入念に準備することが大切です。
安全で個人でも使いやすい資金調達方法と必要な準備について知っておきましょう。
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この記事の目次
個人事業で受けられる融資とは
個人事業主が融資をできるだけ円滑に受けるためには、個人でも借りやすい方法を選ぶことが大切です。
最も有名なのは銀行ローンですが、それ以外にも様々な手段があるため、選択肢を広げて自分に合うものを探してください。
また、資金調達の方法には融資以外もあります。融資が不可能だった場合には、融資と似た資金調達から選んで利用するのも良いです。
銀行
銀行からの融資は、ほかの金融機関と比較して一般的に金利が低く、限度額が大きい傾向があります。
銀行やローン商品によっても異なりますが、銀行融資の金利は1.0%〜15.0%程度が目安です。
大きな事業を始めたい場合に向いており、その融資実績は大手銀行であればあるほど、次の融資審査の信用にもつながります。
とてもメリットの多い銀行融資ですが、個人事業主やフリーランスなどが利用するには若干ハードルが高い点は否めません。特に、メガバンクは難しいようです。
ただし、近年頭角を現しているネット銀行などは比較的柔軟な審査が期待でき、個人でも可能性はあります。また、都市銀行や地方銀行などもねらい目です。
なお、銀行の融資は良いことばかりではなく、注意が必要な点もあります。銀行はほかの融資元よりも融資スピードは遅く、すぐに現金が必要な場合などには向きません。
審査などの状況によっては申込から実行まで1カ月程度かかることもあります。
銀行の審査では、面談や審査などに複数の工程があり、それらに時間を取るため遅くなる傾向です。
また、事業のための融資では、担保や保証人が必要となることも多くなります。個人事業主では連帯保証人や不動産、有価証券などの担保を準備するのは難しいかもしれません。
信用金庫
信用金庫は地域密着型の金融機関で、その土地の人や地元企業が主な利用者となります。
利用者・会員が互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織であり、非営利法人です。
銀行とは異なり、地域の資金需要に対応する金融機関であり、地域社会の活性化に貢献しています。
営業エリアも限定され、主な利用者は地元の中小企業や個人です。そのため、銀行よりも信用金庫は個人事業主の利用にも向いていると言えます。
営業エリアが限定されるため利用する信用金庫は限られますが、その分身近な存在として長い付き合いができるでしょう。
金利も銀行ほどではないにせよ低く抑えられ、融資の審査も事業の成長性などを総合的に見てもらえます。
とはいえ、業績が悪い、経営計画が成り立っていない状態では審査に通ることはできません。
また、融資を希望する場合には、預金や積立で利用するなど、あらかじめ関係性を作っておくことも大切です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が100%の株式を持っている政府系の金融機関です。日本の政策金融を支える金融機関であり、運営は法に基づいて行われています。
銀行など民間の金融機関とは異なる目的を持ち、国民のセーフティネット機能として、日本経済の成長を支え、地域活性化に貢献しています。
日本政策金融公庫は、営利目的の企業ではなくあくまでも経済成長や地域活性化への貢献を目的としており、弱い立場の人への融資にもとても積極的です。
また、金利や融資の条件なども優遇されています。借入期間も長めに設定されており、無担保・無保証人の融資もあります。
個人事業主や実績のない企業などが利用する融資としては、最有力の選択肢と言えるでしょう。
ただし、融資の申し込み書類として準備するものが多く、融資までのスピードは遅めです。
個人事業主や中小企業にも広く門戸を開いていますが、だからといって審査は甘いわけでなく、自己資金額などもしっかりと見られます。
自治体の制度融資
自治体の制度融資とは、地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携して行う融資です。
金融機関の融資に信用保証協会が信用保証をし、自治体が信用保証料の補助や貸付資金の一部を金融機関へ預託することで、信用の低い個人や企業への融資を進めます。
銀行の審査に通りにくい立場の人や企業のための制度なので、個人事業主にも向いている方法です。
信用保証があることで、万が一の時も弁済されるため、審査ハードルも低くなっています。
ただし、制度融資は申込から融資実行までには時間がかかるので、注意が必要です。
また、制度融資も利用できる制度が住んでいるエリアによって異なり、制度ごとに上限金額なども違います。
利用にあたっては、自分の住む自治体の制度融資の内容を確認してください。
カードローン
カードローンは、プライベートで使えるものと事業資金として使えるものがあります。
カードローンはこれまで紹介した方法に比べると金利が高い場合が多いですが、いざという時の選択肢として覚えておいても損はありません。
カードローンの良いところは、契約だけしておくといつでも資金を借りられる点です。個人事業主が使う場合には、自営業者向けのローンをおすすめします。
カードローンを扱う企業としては、銀行などの金融機関・信販系・消費者金融などがあります。
銀行のカードローンは、ほかの融資と同様に金利は低めで審査には時間がかかる傾向です。信販系の金利も銀行系と同程度に設定されています。
消費者金融はスピード重視ですが、金利は高めです。
金利は、銀行系・信販係の金利は1.5~15%程度、消費者金融が3.0~18.0%程度です。
融資に似た資金調達方法も
個人事業主が使える資金調達方法には以下のようなものもあります。融資とは異なり、融資と同じように事業資金に使える方法です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを介して資金調達を行う方法です。
専用のプラットフォームで提案をし、その提案に賛同した人から資金を少しずつ受け取ります。
金額は自分で設定でき、数多くの支援者がいれば多額の資金を集められる手段です。
資金を出してくれた支援者に対しては、資金を募った側からリターン(見返り)として何らかのものを提供するのが一般的です。
リターンとしては、物やサービスを提供することや株式を発行して配当や運用益の分配などをすることもできます。
ただし、中には「寄付型」という対価性のないリターンを設定するタイプのクラウドファンディングもあります。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛債権をもとに資金を調達する方法です。売掛債権を売却してその対価を受け取ります。
融資ではないため、利用する人への厳しい審査もなく、担保や保証人も必要としません。
ただし、資金の上限は売掛債権の額面までで、そこから手数料がさらに引かれます。
最終的に受け取れるはずだった売掛金を手数料で減らしてしまうため、資金繰りに悪影響を与えることがあり、使い方や頻度には注意が必要です。
また、売掛債権を持たない人は利用できません。
クレジットカード決済
クレジットカード決済は、現金の融資ではありませんが、支払いのタイミングを遅らせつつ、事業に必要な経費などを支払うのに便利です。
支払いをクレジットカード決済にするだけで、現時点での現金を減らすことなく設備資金や経費などを使えます。
事業用の経費として使う場合には、個人事業主であってもビジネスカードを申し込むのが良いです。
事業に役立つ付帯サービスなどもあり、プライベート用とカードを分けることで経費の管理もしやすくなります。
個人が融資を選ぶ時のポイント
個人事業主の融資選びは、法人、特に大企業と比べると難しいことも多くなります。そこで、個人事業主が融資を選ぶ際に注目したいポイントを紹介します。
審査の柔軟さ・借入条件
個人事業主が融資を選ぶ際に確認したいポイントは、審査や借入条件が自分に合っているかどうかです。
融資の種類によっては、審査が厳しく、資産額や売上高など、個人事業主では通らないレベルのこともあります。
そのため、まずは、個人事業主でも通る審査基準なのかを確認することが必要です。
ハードルが高そうな銀行融資でも銀行のタイプや融資の種類を選べば、柔軟な審査が期待できることもあります。
有利な条件で借入できる中から、できるだけ柔軟に審査してもらえるものを探してください。
ニーズに合っていること
融資スピードや金額の上限、使途の限定など、融資を選ぶ際には自分のニーズに合っていることも大切です。融資はそれぞれに金利が異なり、強みなども違います。
審査に時間がかかっても、低金利が良い、少しでも早く資金を調達したいなど、希望条件を基準に融資サービスの中から合うものを探して利用すると良いです。
個人事業主対応可能かどうか
融資の中には、そもそも個人事業主が使えないものもあります。
要件などがわかりにくいことが多いため、できれば「個人事業主専用」・「個人事業主向け」などと銘打ってある融資がおすすめです。
中小企業や小規模事業者の使える融資は、個人事業主が使えるものも多くなりますが、中には個人は対象外の場合もあります。
要件を見てもわかりにくい場合には、直接問い合わせして、選択肢から除外すべきかを判断してください。
個人が融資を受けるために必要な準備
個人事業主が融資を受ける際には、融資の種類を問わず共通して必要な準備があります。
現在融資を検討していない人も最低限の準備を整えておくことで、いざとなった時にも慌てずに済みます。
開業届を提出
個人事業主が融資をスムーズに受けるためには、開業届の届出は重要です。
開業届を出すことで事業を営んでいることを示し、融資の申し込みの際にも開業届は最低限の条件として挙げられています。
開業届は、所得税法でも定められている義務です。しかし、中には開業届を出さずに事業を進めている人もいます。
罰則がないため問題ないと考える人も多いですが、いざ資金調達が必要となった時のために早めに提出してください。
確定申告をする
毎年の収入を確定申告し納税していることも、融資を受けるためには必要です。
また、年収額の条件に当てはまるかどうかは確定申告書類や決算書などをもとに審査されます。
そのため、確定申告をせず、確定申告書の控えがないと融資の審査さえ受けられません。
確定申告をして納税をすることは、利益が出ている事業者の義務です。
また、赤字になっている場合でも、大規模な設備投資をした、新規事業のために出費が増えたなど、決算の内容次第では融資のチャンスはあります。
そうした面を見てもらうためにも、誠実に帳簿を付け、確定申告を続けることが重要です。
必要書類を作成する
融資を受ける際には、大体の場合で求められる書類が決まっています。
特に、事前に入念に準備しておきたいのは、事業計画書・資金計画書・借入計画書などです。事業を起こすための資金調達を目指す人は、創業計画書も必要となります。
融資の申し込みの際には、それ以外にも本人確認書類や印鑑証明書、確定申告書などが必要ですが、事業計画書や資金計画書は自分で作成しなければいけません。
この内容が甘いと信用も得られないため、説得力のある事業計画を立てる必要があります。
不安がある人は信用情報の取得を
過去の信用情報に不安がある人は、審査を受ける前に信用情報期間で自分の信用情報を取得し、確認します。
融資審査では、過去の信用情報もチェックされるため、過去に信用情報を傷つけるようなことがあった人は注意が必要です。
問題となるのは、過去のクレジットやローンでの返済の遅延や滞納、保証会社の代位弁済や破産などです。
こうした情報は異動情報として一定の期間、信用情報機関に記載され続けます。
個人事業主の融資審査で重視される項目
融資の申し込みでは審査があります。個人事業主はどのような審査項目が重視されるのでしょう。具体的な内容を4つ紹介していきます。
1.資金の使い道
具体的に融資資金を何に使うのか明確にしないと、審査に通ることは難しくなるでしょう。融資の使い道としては、設備投資と運転資金の2種類が挙げられます。
設備投資は、具体的に何を購入予定なのか細かな数値まで算出してください。見積もりを取った数値を提示できれば、購入の根拠となるでしょう。
運転資金の場合は、将来予測が含まれるため大まかな数値でも問題ありません。
2.事業計画
事業計画書は、実現可能な計画を提示するようにしてください。融資審査で求められる事業計画書は、きちんと返済可能なのかという点が重視されているからです。
たとえば、飲食店の運営のため融資を受けるケースでは、売り上げから経費を引いて、どのくらいの利益が見込めるのか、利益から返済ができるのかという事業計画のもとで融資希望金額を申請しましょう。
金融機関は店舗の規模から具体的な利益を把握しているため、曖昧な計画を作成してもわかってしまいます。
また、店舗を借りてから融資審査を受けようとするような計画性のなさも、審査の評価対象となっています。
計画書を出す以前に問題がある経営者には、金融機関は融資をしたいとは思いません。
3.自己資金
自己資金は開業資金のことです。一般的に、融資希望額の3割は用意しておく必要があるとされています。
しかし、金額の割合はあくまでも目安で、むしろ資金を準備した内容のほうが重要です。いつ準備したか、どうやって準備したのかが融資審査の対象となります。
たとえば、融資審査を受ける直前に一括で開業費が振り込まれた場合は、融資のために準備した資金だと思われてしまいます。
自己資金は事業のための費用であるはずなのに、預金口座外からまとまった資金が入金されると一時的な資金として印象が悪くなるため、注意してください。
4.返済計画
融資審査で最も重要なことは、きちんと返済してくれるかどうかです。そのため、融資審査では具体的な返済プランがあるほど、審査に有利になります。
金融機関から完済までの事業推移を聞かれたら、きちんと答えられるよう書類を用意しておくことをおすすめします。
資金の使い道や事業計画とあわせて、具体的な返済プランを提出しておくといいでしょう。
個人が融資を受ける際の注意点
個人が融資を受ける際には、融資の選択や利用方法に注意が必要です。誤った選択は大きな損失につながることもあります。
自分ひとりで判断しなければいけないことも多くなりますが、融資を利用する際は十分注意してください。
SNSで見られる個人間融資には乗らない
個人事業主が融資を受けるのは大変で、なかなか審査が通らないこともありますが、安易な融資の誘いには乗らないように注意してください。
特に注意したいのは、SNSのDMやインターネットの掲示板などでの個人間融資の誘いです。
個人間の融資はトラブルになりやすく、中には個人を装い誘いをかける闇金業者もいます。
それによって個人情報の悪用や違法な高金利での貸し付けなどの被害に遭う恐れもあります。
個人は事業者ローンを使えないこともある
個人事業主も事業を営んでいることに変わりはありませんが、事業者ローンの中には個人事業主が使えないものもあります。個人事業主は、法人限定のローンは選べません。
また、個人事業主が使える事業者ローンでも、審査が個人事業主に不利になることもあります。
安定性などの面で法人と比較されないためにも、個人事業主は個人事業主専用ローンなどを選ぶほうが安心です。
融資を受けるタイミングは開業前が良い
個人事業主が融資を受けるなら、開業前がおすすめです。開業前なら事業計画書の提出で審査がスムーズになりますが、開業後だと業績悪化を疑われてしまうためです。
事業を開始してから融資を受けるということは、それなりの理由が必要になります。設備が古くなって新たな投資が必要なときや、事業拡大といった理由が必要になるでしょう。
何も理由がない状態で融資を申し込んでしまうと、業績が伸びなかった理由から融資の申し込みをしていると金融機関に思われても仕方がありません。
定められた利用目的に合った使い道を
融資では、必ず資金の使途が決まっており、使途に合わない使い方はできません。
特に、公的融資やビジネスローンは事業資金目的以外で使わない、個人の生活資金と混同しないことが大切です。
また、反対に事業資金として認められていない個人向けローンを事業用に使うこともできません。
銀行系カードローンの中には事業用として使えないものも多いため、事業用として使う際にはビジネスローンや事業資金を目的としたカードローンを選んでください。
余裕をもって申請の準備をする
融資審査前に、必ず申請期限を確認しておきましょう。期限が決まっていると、資金が得られるまで数か月先に延びることがあります。
必要なタイミングで融資が受けられないと事業に影響が出る恐れがあるため、融資申し込みには余裕をもたせてください。
まとめ
融資は個人事業主でも利用できるものは多く、選択肢は十分にあります。しかし、法人と比較すると、個人事業主には使いにくい、厳しいものも多いことも事実です。
個人事業主が融資を選ぶ際には、個人が利用できることはもちろん、自分の目的や必要金額などに合ったものを探しましょう。
事前に入念な準備をしておくことで、よりスムーズな借入が可能です。
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(編集:創業手帳編集部)