DIVE INTO CODE 野呂 浩良|アフリカ×日本のIT教育 起業家はエンジニアに「解像度」を上げてビジョンを伝えよう

創業手帳

2030年には人口が倍になることが予想されるアフリカの若者を教育し、日本のIT人材を輩出

アフリカのエンジニアを使って日本のIT人材を育てる事業を行っているのが、DIVE INTO CODEの野呂さんです。日本ではアフリカというと未開の地のイメージですが、ポテンシャルがある若者が多く、これからの経済発展も期待されます。そんな有り余るアフリカの若者を教育し、さらに日本のIT人材教育を行うという逆転の発想がユニークです。
アフリカ事業とIT教育、起業家がエンジニアとうまく付き合う方法を、創業手帳代表の大久保が聞きました。

野呂 浩良(のろ ひろよし)
DIVE INTO CODE 代表取締役

東京農業大学農学部卒業。グロービス経営大学院大学経営管理科(MBA)修了。リクルートの法人営業を経て、29歳で非エンジニアの開発未経験からワークスアプリケーションズの問題解決能力発掘プログラムを突破。その後、独立・起業過程でITエンジニア人材の不足を痛感し、プロのエンジニアになるために挑戦する人がチャンスをつかめる「DIVE INTO CODE」を2015年に創業。世界すべての国へIT教育と雇用の機会を届けることを目指す。2017年8月よりルワンダ共和国でITエンジニア教育を開始。ITエンジニアとして活躍する卒業生を輩出。新規サービス立ち上げや社会人向けITエンジニアへの転職支援、プログラミング教育の講師経験多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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アフリカの若者を教育して、日本人の教育をまかせる!?

大久保:本日はよろしくお願いします。まずは、事業の概要を教えてください。

野呂:こちらこそよろしくお願いします。日本ではエンジニアが質・量ともに足りていない状況があります。今後、日本のエンジニア不足は深刻になっていきますので、そこで質の高いIT人材を育成・輩出していきたいと考えています。

そのため教育の部分を、ITが急激に進んでいるアフリカの方に担っていただいています。日本人でITエンジニアになりたい方向けの、弊社独自のIT人材の育成のメソッド・教育プログラムの一部をアフリカの方にスタッフとして働いていただいています。
日本の教育×アフリカのIT人材で、日本のエンジニア不足と実戦で使えるIT教育とアフリカの経済発展両方を実現しようとしています。

大久保:どういう経緯で起業したのですか?

野呂:元々、現在はTSUTAYAに買収されたすみやで働いていて、その後リクルートで法人営業をしていました。その後ワークスアプリケーションズでプログラミングの世界に飛び込みます。

日本のITエンジニア人材が不足していることを痛感し、またアフリカ地域の経済発展にも貢献したいという思いから、アフリカの人材を教育して日本人の教育にあたってもらうことを思いつきました。現在アフリカでは、シエラレオネ、ルワンダ、ベナン、ブルキナファソなどの方にIT教育の業務に携わって頂いています。

大久保:日本人でアフリカと言うとライオンとか、逆に内戦のイメージを持っている人が多いですよね。実際はどうなんでしょうか?

野呂:ライオンや象は、国立公園などに行かないと見られません(笑)。
アフリカの都市部は高層ビルが立ち並び、東南アジアの途上国の都市部とそんなに変わりはないです。町としては工事ラッシュではありますがインフラは整いつつあります。
ネット環境については、リープフロッグ現象といって、間を抜かして一足飛びに次のステージに行く現象が起こります。そのため、アフリカではスマホを使ったりITに対する抵抗感はありません。カフェなどでも当然のようにWi-Fiが使えます。

国民性ですが、アフリカと言ってもさまざまな国があり、国民性も色々あります。陽気な国柄もあれば、内気で真面目な国もある。ただ時間の厳守は日本よりもルーズなのは否めません。
これは、日本に比べると交通機関が時間通りに運行しない、一次産業が多く時間管理に厳密なホワイトカラーの仕事が一般的ではないなどという文化もあり、時間の観念に幅を持たないと暮らしていけないということもあると思います。

大久保:アフリカの方に日本のIT教育の業務ができるのですか?

野呂:「教える」「書く」という仕事を分業してやるようにしています。コミュニケーションの部分は日本人で、提出された課題の評価などはアフリカの方と分業してやっています。機械翻訳などのツールも使えば、アフリカの方でも問題なく業務ができます。

賃金は、アフリカの場合だとインターンや見習いで時給1ドルからスタートして、マネージャークラスになると時給10ドル強です。日本から見ると値段が安いですが、現地の物価や給与水準から見るとかなり良い給料になり、現地の雇用や経済成長に貢献しています。

野呂氏の事業、ここがポイント!

  • 日本のIT教育×アフリカのIT人材で日本のIT人材の充実とアフリカの経済発展に貢献したい!
  • 起業までに法人営業とエンジニアの両方を経験
  • アフリカ=遅れていると先入観で見ない。ITが急激に発展している
  • 「分業」で不可能と思われたアフリカ人の活用を実現

ある程度のストレスやプレッシャーがエンジニアの教育には必要

大久保:アフリカの方の適性はどうなんでしょうか?

野呂:エンジニアになるためには地頭が大切だというのが自分の考えなのですが、やはり優秀な人はたくさんいますし、そういう人は学習機会を提供すればきちんと伸びます。アフリカで大学を卒業して就職する人の割合は日本に比べるとだいぶ低いですし、ポテンシャルを持った若者をちゃんとトレーニングして成長させてあげたいですね。

大久保:向こうの大学のレベルなどはどうなんでしょうか。

野呂:残念ながらあまり高いとは言えないようです。大学を出たばかりの若者に教えていたので話を聞いたことがありますが、ITの授業などでは全員がきちんと動くパソコンを持っているわけではないので、黒板にコードを書いてそれをノートに書き写すといったことが普通に行われているようです。せいぜい短いプログラムを書くぐらいで、本当に基礎的なことを教えてもらうだけのようですね。

自分のエンジニア教育に対する考え方ですが、優しく教えているだけではなかなか人は伸びません。あえて厳しく、ストレスをかけたほうが成長すると思っています。これは実体験から来ているもので、リクルートの法人営業から転職したワークスアプリケーションズでは地頭重視で、文系でも良いので自信がぺしゃんこになりつつも厳しい課題をクリアしていくと、自ら問題を解決するのが当たり前であるという姿勢に変化するという経験をしました。そういう厳しい教育を受けたエンジニア未経験の人材が、同社では会社を牽引していきました。

自分自身も、起業家に多いですが、勘違いして自信満々でした。研修なんて楽勝だろうと思っていましたが、実際は全くできない。会社からはプレッシャーをかけられる。でも、だんだんわかるようになると面白くなってくるんですよね。

企業側では採用後ずっといて欲しいので甘やかしたりしますが、自分はその手法は疑問です。ただ、スクールとして考えると、お金を払っているんだから厳しくて辛いのは嫌だ、詳しく手取り足取り教えて欲しいというお客さんもいますよね。そこが矛盾で、ずっと葛藤しているところです。

最初に大事にされるより、最初にガツンといって、現場に配属される頃にはマインドセットもできているという方が成長すると思いますが、大手だと飼い殺しになりがちです。自分としては能力開発が一番の顧客貢献だと思っているので、会社が求めるIT人材を育て、スクールを卒業した後も現場で活躍できるように、あえて厳しい課題にチャレンジしたり、答えを全て教えたりせずに、「自分で考え解決する力」を養う環境を提供しています。

大久保:ベンチャーのIT開発と、大手企業のIT開発の予算感はかなり違う気がするんですが、どうですか。

野呂:そうですね。そこはやはりかなり違います。日本の開発はどうしてもITゼネコン的な大手が巨額の金額で請け負っているケースが多い。責任を負っている面もありますが、ウォーターフォール式で開発するので、専門家ごとの分業化が発生し、柔軟に仕様を変えることは難しいから、最初から100発100中で当てに行かなければなりません。

ベンチャー系の開発会社の場合は、マーケットフィットとアジャイル的に小さく作って、リーンな開発の仕方が主流です。最初の予算は多くなく、始めて徐々に拡大していくという手法です。

大手や巨大企業のプロジェクトは、まず規模が大きいですし、最初からプロセスは決まっており、合意形成されています。使う言語もどこかの会社が商用で公式サポートしているものを使います。いかにリスクをヘッジするかというところで予算が大きくなるところもありますね。

合併した金融機関などがシステム障害を起こしたりしていますが、規模が大きすぎて複雑になりすぎ、開発をする側が一人の頭で追いきれず、全体像がわからないということも原因だと思います。

人口が増えていくアフリカでビジネスチャンスを見つけよう

大久保:起業家としては、アフリカでビジネスすることについてどんな風に考えていますか。

野呂:今は、DXなど第4次産業革命と言われており、ITが進んでいき待ったなしの状況です。人口が減って行く今だからこそ、社会やビジネスの仕組みを変えるチャンスだと思っています。ということは、起業家が新たなビジネスを始めるチャンスではないかと思いますね。

日本では少子化で若者がどんどん減っていくと言われているのと対照的に、アフリカは2030年に人口が倍になると言われています。日本企業は今アフリカにほとんど進出していないですが、作物やアート、文化など、さまざまな素晴らしいものがアフリカにはまだあり、日本の仕組みを応用して現地とつなげていくというのは、まだまだビジネスチャンスがあるのではないかと思っていますね。

アフリカは特に若年層が多いので、わたし個人としては、彼らにITを必死で勉強するチャンスを与えてあげたいと願っています。言語の壁を飛び越えさえすればいいんです。

どんどん日本の起業家の方にもアフリカに進出して、一緒にチャレンジしていきましょうと言いたいですね。

大久保:今後野呂さんが目指しているところを教えてください。

野呂:大きく2つあります。ひとつは日本国内の話ですが、スクールで教えているコンテンツを月額約1000円で見られるようにしています。サポートはないため、そのために人件費がかからないので実現できている価格なんですが、目的としては裾野を広げたいという気持ちがありますね。プログラミングをもっと万人に広め、もっと上に行きたいと思う人を増やしたいと思っています。

2つ目としては、アフリカの人材に研修を行い、開発の事業を立ち上げたいと考えています。具体的には日本のDXの推進や、アフリカ現地企業のためのプロダクト開発です。

今はルワンダ人とセネガル人で10人の社員がいますが、今は大学との接点も出来てきたので、エンジニアとして自社の採用、またゆくゆくは他社の採用にもつなげていきたいですね。

大久保:起業家がエンジニアと接する際のアドバイスを教えてください。

野呂:人間がやりたいものを描くときってかなり漠然としていますよね。例えば頂上の景色があって、「あの景色が見たいんだよ」っていうときに、「じゃあどの道をどうやって登ればいいのかは全くわからない」のが新しいプログラムを作るときの状況だと思うんです。

その一歩一歩を見ているのがエンジニアで、ビジョンを見ているのが起業家の方ですよね。ゴールから逆算して同じ道を登れるかどうか、言ってみれば解像度を上げるのが、起業家の大切な仕事だと思います。

「こんなもの作りたいから、よろしく」だけではなく、仕様は、顧客が何を求めているのか、なぜ開発が必要なのかといった要素をきちんと伝えたり、相手との対話を通して少しずつ解像度を高めていってください。骨が折れることかもしれませんが、必ずその分よいものができるはずです。

大久保:今後のアフリカの発展と、野呂さんの活躍に期待しています! 今日は貴重なお話をありがとうございました。

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(取材協力: DIVE INTO CODE代表取締役 野呂浩良
(編集: 創業手帳編集部)

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