日本政策金融公庫とは?民間金融機関との違い・サービス内容を徹底解説!

資金調達手帳

日本政策金融公庫を活用しよう。銀行とは違うサービスの特徴や具体的な活用方法を解説


日本政策金融公庫は、日本の政策金融を支える金融機関です。
その性質上、なかなか融資の審査に通りにくい立場の人でも融資を受けやすく、個人事業主や起業家、中小企業などに利用されています。

民間金融機関で資金を借りられなかった場合には、日本政策金融公庫の利用を検討してみましょう。
規模の小さい事業や信用度の高くない人に対して積極支援の姿勢があり、独立起業を目指す人や事業を始めたばかりの人の助けになります。

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日本政策金融公庫とは


日本政策金融公庫は、国が株式を100%保有しており、その設立と運営は「株式会社日本政策金融公庫法」に基づいて行われます。政府公認の政策金融機関のひとつです。

日本政策金融公庫は、株式会社ではありつつも、求められる役割は民間金融機関である銀行や信用金庫などとは異なります
また、事業内容は日本政策金融公庫の前身となる国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3法人をもとにした3つがメインです。

民間金融機関の取り組みを補完する金融機関

日本政策金融公庫は、民間金融機関の取り組みの補完を目的とし、事業に取り組む人や何らかの理由で融資を必要としている人を助ける金融機関です。
民間金融機関である銀行や信用金庫では支援できない部分を、日本政策金融公庫が補います

資金を必要としている個人や法人の中には、銀行などが融資を渋るような境遇の人もいます。
銀行は、安定経営の大企業であれば融資できますが、事業を始めたばかりで不安定な中小企業や個人事業主には簡単に融資できません。
そういった融資しにくいケースのために、日本政策金融公庫はあります。

3つの役割

日本政策金融公庫には、公庫の持つ目的と意義を果たすために3つの役割として以下のことが決められています。
日本政策金融公庫が中小企業や個人事業主、ほかの金融機関では融資しにくいケースでも融資を受けられるのは、これらの役割をまっとうするためです。

セーフティネット機能の発揮

日本政策金融公庫の役割のひとつは、国民のためのセーフティネット機能です。
自然災害や感染症の流行、経済環境の変化といったタイミングで、社会のニーズを満たすために政策金融を実施します。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大にあたっても、特別相談窓口を設置し、特別な貸付プランなどの支援を実施しています。

日本経済成長・発展への貢献

日本政策金融公庫の役割には、日本経済の成長と発展への貢献もあります。
国の政策に基づいて、新たな事業の創生や事業の再生、事業継承や海外展開などの支援を行います。
また、農林水産業の新たな展開と持続のための環境やエネルギー対策、事業の見直しなどの支援も日本政策金融公庫の役割です。
これらの支援を行い、事業を支えることで日本経済の成長と発展に貢献します。

地域活性化への貢献

地域活性化への貢献も、日本政策金融公庫の役割のひとつです。雇用の維持と創出などによって地域経済を支える中小企業や小規模事業者、農林漁業者を支援します。
地域貢献を考える起業家にも関係の深い役割です。

民間金融機関と連携し、地域プロジェクトに参画するなどによって地域を活性化させます。
また、感染症流行による影響を受けた地域の連携と活性化に貢献します。

3つの事業

日本政策金融公庫は、与えられた役割を果たすために3つの事業を運営しています。
前身である国民生活金融公庫からは国民生活事業を、中小企業金融公庫からは中小企業事業を、農林漁業金融公庫からは農林水産事業を引き継ぎました。

内容は、それぞれの対象者に特化した融資や経営支援などです。
日本政策金融公庫の持つ金融力と情報力、ネットワークを生かして3事業を推進し、国民のセーフティネット機能を果たし、経済成長と地域の活性化に貢献します。

国民生活事業

国民生活事業は、国民一般向けの業務で、主な事業内容は融資や事業支援です。教育ローンや事業融資を行い、国民の生活と創業、事業承継を支えます。

事業融資では従業員9人以下の小規模事業者や創業者を中心に、平均融資残高1,008万円の小口融資を主体として行っています。
無担保融資割合90%と、担保に依存しない融資が中心です。

また、小規模事業者や創業企業に対して経営に関する情報提供などの支援も行っています。
財務診断サービスやSWOT分析などの経営分析から創業計画書の作成サポートまで、経営者はもちろん、これから事業を始める予定の人のサポートも充実しています。

中小企業事業

中小企業事業は、国民生活事業と同様に融資業務を行うとともに、証券化支援業務や信用保険などの多様な企業活動への支援を行う事業です。
民間金融機関との連携を行うことで、より充実した総合的な支援を可能としています。経営相談支援では、外部ネットワークとの連携でさらに様々なニーズに対応可能です。

中小企業事業では、すでに滑り出している事業や法人の成長と発展を金融面から支援することが中心になっています。
長期資金を専門に取り扱い、安定的な資金の調達を助け、設備投資や財務体質の強化を助けるのが中小企業事業の業務です。

農林水産事業

農林水産事業は、農林漁業や食品産業の支援事業です。融資を始め、経営支援サービスの提供を行っています。
事業を通じ、国内の農林水産業の体質強化と良質な食料の安定供給を目指すのが目的です。

天候などの影響を受けやすく、収益が不安定になりがちで、短期的な投資回収が難しい産業に対し、持続的で健全な発展のための長期資金を提供します。
また、経営規模の拡大や事業の多角化などの支援も行っています。

日本政策金融公庫と銀行との違い


日本政策金融公庫は、民間金融機関である銀行とは違った目的や意義を持っています。そのため、日本政策金融公庫の活用方法も銀行とは区別して考えることが必要です。
2つの違いを知り、活用方法のヒントにしましょう。

日本政策金融公庫 一般的な銀行
事業目的 経済の発展や生活の安定、
創業者の増加、倒産の減少
営利
預金業務 なし あり
金利 低め 比較的高い
着金までの期間 長め 短め
創業時の融資 比較的受けやすい 受けにくい
担保・保証人 無担保・無保証人の制度あり 原則的に担保・保証人が必要
必要な自己資金額 低め 高め

国が株式の100%を常時保有する特別な株式会社

日本政策金融公庫は、国が株式の100%を常時保有する特別な株式会社です。国以外が株式を持つことはなく、株式会社の形は取っているものの民営ではありません。
株式会社という形を採用することで、その仕組みを利用して透明性を保っています。

つまり、株式会社でありながらも日本政策金融公庫は政府公認の金融機関であり、民間企業とは異なる立場です。
事業目的も営利目的ではなく、経済の発展や生活の安定などが中心となっています。
また、目的のために必要な事業だけを取り扱っており、民間の金融機関にはある預金業務などはありません。
そのため、日本政策金融公庫で融資を受ける際には、民間の金融機関に別途口座を開設する必要があります。

利息が安い

日本政策金融公庫の特徴であり、魅力でもあるのが、利息の安さです。
民間金融機関である銀行や信用金庫に比べて低金利であったり固定金利であったりすることで、返済の負担を減らすことができます。

創業や規模の小さい企業の経営では、借入金返済と利息の支払いは大きな負担です。
そのため、日本政策金融公庫では、創業時や小規模事業者への融資は国民生活事業から、中小企業の融資では中小企業事業から、それぞれに低金利や固定金利での貸し付けを行っています。

融資の利率としては、創業融資で年利2.5%、それ以外では1%台も可能です。カードローンなどはもとより、ビジネスローンでも考えられない低さです。

創業・事業再生を積極支援

日本政策金融公庫では、創業や事業再生などの支援を積極的に行っています。これは日本政策金融公庫の目的と意義によるものです。

日本政策金融公庫では、国民の生活の安定と経済の発展、地域の活性化を目指し、事業の創生や再生、継続や経営基盤の安定などを支援しています。
そのため、民間金融機関である銀行や信用金庫などが支援できない厳しい境遇の事業者なども積極的に支援し、従業員や経営者の暮らしを守り、経済の発展を目指します。

無担保・無保証で利用できる融資もある

日本政策金融公庫では、無担保・無保証人で利用できる融資もあります。民間の金融機関では、基本的に担保や保証人は必要です。
民間の金融機関は営利目的で経営するものであり、貸倒リスクを防ぐ必要があるためです。
日本政策金融公庫では支援が目的のため、担保や保証人の必要ない融資も揃えています。

創業・経営サポートが充実

日本政策金融公庫では、創業や経営に関するサポート・情報提供も積極的に行っています。
日本政策金融公庫の役割は、融資のみならず事業支援全般です。融資とともに経営サポートを行うことで、事業の発展と安定を目指します

支援サービスは多岐にわたり、内外の支援機関を利用できます。各地にサポート施設があるため、全国で支援を受けることが可能です。

全国各地に創業支援センターやビジネスサポートプラザ

日本政策金融公庫は、全国各地に創業支援センターやビジネスサポートプラザを持っています。
創業支援センターは全国15カ所に、ビジネスサポートプラザは全国6カ所あります。
ビジネスサポートプラザは土日や夜間の相談も可能です。また、各支店でも創業セミナーや企画展示などが催されています。

インターネットビジネスマッチング

日本政策金融公庫では、取引先の新規開拓の支援としてインターネットビジネスマッチングも運営しています。
全国各地からインターネットを通じて、販路開拓や仕入れ先・外注先の検索などが可能です。

事業資金の融資残高のある人、農林水産業などのビジネスマッチングを希望する人が対象で、利用には会員登録が必要となります。

日本政策金融公庫の活用方法


日本政策金融公庫の役割や事業内容、機能は、起業家にとってとても有意義なものです。銀行の融資が難しい場合などには有効活用し、経営の安定と発展を目指しましょう。

起業資金の調達に

起業資金の融資は、日本政策金融公庫の最も得意とするところです。銀行などから融資を断られた場合でも、柔軟な審査と低金利での融資が期待できます。
融資は下記の事業で行われていますが、起業資金であれば国民生活事業の新企業育成貸付が向いています。

新規開業資金

国民生活事業の新企業育成貸付のひとつである「新規開業資金(新企業育成貸付)」は、新たに事業を始める際の創業資金として向いている融資の種類です。
創業資金だけでなく、事業開始後約7年以内の資金調達にも使えます。

融資限度額は7,200万円で、そのうち運転資金としては4,800円が限度です。
返済期間は設備資金が20年以内、運転資金は7年以内、どちらも据え置き期間は2年です。利率は要件に当てはまる場合には、特別利率が適用されます。

女性、若者/シニア起業家支援資金

女性または35歳未満、もしくは55歳以上の人が使える事業資金の支援制度です。女性・若年者・シニアの起業をサポートします。

創業期、または、事業開始から7年以内という条件は新規開業資金と同じです。また、融資限度額・融資期間も新規開業資金と同様です。

経営資金の調達に

日本政策金融公庫の支援は、創業期の開業資金だけでなく経営中の事業の安定や発展のためにも使えます。
小規模事業者から中小企業まで、設備投資や資金繰りの改善などに生かしましょう。

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、低金利で無担保・無保証人で融資を受けられる制度です。
商工会議所や商工会などで経営指導をうけている小規模事業者が対象です。名称の通り、経営改善に必要な資金を調達できます。

融資限度額は2,000万円で、返済期間は設備資金が10年以内、うち据え置き期間は2年以内、運転資金は7年以内、据え置き期間は1年です。

IT活用促進資金

IT活用促進資金は、情報化の促進を行うための支援で、IT活用のための設備投資と運転資金に使途が限定されています。
IT化によって企業内の業務改善や業務の高度化、経営革新などを目指す人・企業への融資です。

融資限度額は7,200万円でうち運転資金は4,800万円となります。また、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金は7年以内、どちらも据え置き期間は2年です。
コンピューターや周辺装置、端末装置や関連設備などの設備取得費用、運転費用に使えます。

新型コロナウイルス感染症関連の融資制度も

日本政策金融公庫では、新型コロナウイルス感染症関連の融資制度も実施しています。
新型コロナウイルス感染症特別貸付や生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付など、一時的な経営状況の悪化に対する支援サービスが中心です。

まとめ

日本政策金融公庫では、国民の生活と国内の事業の発展・維持のために、起業や経営を助ける支援サービスを行っています。
融資を受けにくい立場の人や企業にも使いやすいのが特徴です。

創業初期や経営状況の芳しくない時など、民間の金融機関を利用できない場合に役立ちます。融資はもちろん、事業計画作成などの支援も可能です。

創業手帳の冊子版(無料)は、資金調達や事業計画など起業前後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
また、最新版の『補助金ガイド』では、起業家にとって利用しやすい補助金・助成金が分かりやすくご確認いただけるようになっています。あわせてご活用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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