法人における節税の有効な方法は?パターンと代表的な対策を徹底解説

資金調達手帳

法人が節税できる方法にはパターンあり。分類から具体例まで解説します。


法人においては、利益に応じた法人税を納付する必要がありますが、時に税金が資金繰りを圧迫することもあります。
しかし、脱税は犯罪であるため、合法的に節税を賢く行うことは経営におけるポイントにもなりえます。
法人の節税対策には多数の方法がありますが、パターンはいくつかに分類され、その仕組みを知ることで節税の意義を理解できるはずです。
今回は、法人の節税対策について、パターン分類と代表的な方法を解説します。

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この記事の目次

法人の節税対策におけるパターンと種類


法人の節税対策は、いくつかの基準でそれぞれのパターンに分類できます。

そもそも法人税とは

法人税は、利益を上げることを目的に事業を行っている法人に課せられる税金です。
法人税の金額は、税法上において営業もしくは営業外で得た益金から、支出の中で損金に計上される金額を差し引き、残った金額=所得金額をもとに計算します。
所得においては、税法上で定められた各種控除を受けられ、所得から控除額を差し引いて残った金額に、法人税率を掛けて最終的な税額を導き出します。

ちなみに、法人税は法人事業税や法人住民税とは別で納付しなければならないため、注意が必要です。
以下では、法人の節税対策についていくつかのパターンごとに見ていきます。

税法による性質で見るパターン2つ

税額控除を受ける

所得から差し引かれる税額控除には、以下のようなものがあります。

【全額控除されるもの】
  • 預金にかかる利子
  • 公社債にかかる利子
  • 合同運用信託分配金にかかる所得税
【元本の所有期間によって控除額が決まるもの】
  • 剰余金の配当金
  • 集団投資信託の分配金
  • 国外投資信託の配当金
  • 国外株式の配当金
  • など

【外国税額控除】
(国外にも拠点がある法人のみ)

【租税特別措置法によるもの】
  • 試験研究費
  • 雇用者数の増加
  • 経営改善設備
  • 中小企業経営強化税制
  • 中小企業投資促進税制
  • など

損金にできるものを計上する

残るか否かで判断するパターン2つ

永久に効果があるもの(永久節税型)

来期以降に繰延べられるもの(繰延節税型)

費用を要するか否かで変わるパターン2つ

費用がかからないもの

費用がかかるもの

費用の有無による代表的な法人の節税対策


こちらからは、代表的な法人の節税対策を挙げていきます。

費用がかからずすぐできる方法9つ

1.赤字の繰越し

ある事業年度で出た所得の赤字については、来期以降で黒字になった年度の所得と相殺することが認められています(欠損金の繰越控除)。
赤字の繰越し期間は10年間であり、黒字が出た事業年度の益金から赤字分、つまり欠損金を控除できることから、結果的に節税対策になりえます。

2.貸倒引当金の損金計上

支払いが見込めない売掛金などの不良債権を抱えている場合、その金額を貸倒引当金として計上し、債権の全額から差し引くことが可能です。
この貸倒引当金を損金計上すれば、所得の圧縮につながります。

3.役員報酬を見直す

役員報酬(役員賞与を含む)は、事業年度を開始した日から3カ月以内であれば、金額を変更することができます。
役員報酬は、基本的な要件を満たせば法人の経費として認められます。そのため、役員報酬の見直し方によっては、所得の圧縮が可能です。

ただし、金額を引き上げすぎると役員が支払うべき所得税などや社会保険料が高額になるため、適切なバランスを取りながら節税効果を狙う必要があります。

役員報酬変更について詳しくはこちらの記事を>>
役員報酬変更の方法と注意点

4.未払費用を経費として処理する

決算時に、下記のような費用を未払費用として計上することで、その事業年度の所得を圧縮できます。

・社会保険料
社会保険料については、支払いを行うのは来月分です。
そのため、例えば決算期が3月だとすると、その月に支払った社会保険料は4月分であるため、未払費用として計上できます。

・従業員の給与、ボーナス
従業員の給与支払いは、計算し金額が確定した時期と、実際に支払う時期が異なっているはずです。
例えば、3月15日締めで4月15日支払いだとすると、3月15日に金額が確定しても、実際の支払いは事業年度をまたぐため、未払費用として認められます。

・固定資産税
固定資産税に関しては、納付した日ではなく賦課(割当て)が決定した時点の事業年度においては、全額を未払費用とすることが可能です。
これにより、固定資産税はその事業年度の損金と考えられるため、利益から差引ける仕組みです。

5.固定資産や不良在庫を経費計上する

使用していない固定資産や、売れ残って価値が下がった不良在庫については、下記の3つの方法で経費として計上できます。

・売却損として
価値の下がった固定資産や不良在庫を、仕入れなどにかかった原価よりも低価格で売却した場合、損をした部分を経費にすることが可能です。

・廃棄損として
固定資産や不良在庫を売却できない場合、原価の全額について経費計上できます。

・評価損として
固定資産や不良在庫の評価額が下がった場合、原価より下がった部分についても経費になります。

6.修繕費などの経費の確認、少額資産の取得

例えば、固定資産の管理費や原状回復のために定期的にかかった修繕費は、経費として認められます。

また、資産の中でも少額(10万円未満)および法定耐用年数が1年未満であれば、消耗品として認められ、取得価額が経費となります。
つまり、上記条件に当てはまるのであれば、小さな備品からPCなども、消耗品費に算入可能です。

7.特別償却か特別控除に該当する取得資産をチェックする

特別償却とは、前述した租税特別措置法の中で定められた制度です。
特に、減価償却資産について、経営改善を行うもの、もしくは中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制に基づき、減価償却額に一定の金額を上乗せできる仕組みになっています。

一方、特別控除は、減価償却資産の中で一定の条件を満たしたものであれば、控除が認められている特例です。
特別償却と特別控除は、いずれかの方法を選べるため、取得した減価償却資産をチェックしてどちらが節税になるか計算するのがおすすめです。

8.決算期をずらす

これは、決算期から2カ月以内である法人税の納付時期を利用したものです。例えば、事業年度末の決算期に大きな売上を得たものの、入金が数カ月後になったとしましょう。
すると、決算期の2カ月後の法人税納付期限には、決算期に得た多額の売上に見合った所得分を支払う必要があり、資金繰りを圧迫する恐れがあります。
そこで、決算期を前倒しすることにより、売上げを来期に回せるため、決算期から2カ月後に納める法人税を抑えることにつながります。

9.車両を社用車として活用する

中小企業などで、自家用車を利用している場合は、社用車の登録を行うことをおすすめします。
理由は、車にかかる取得価額が経費になるほか、維持費や交通費、保険料も経費計上でき、所得の圧縮につながるためです。

費用をかけて有効な節税をする方法8つ

1.短期前払費用を活用する

事業所の家賃やリース備品などの費用、保険料などで継続的に支払うことが確定している場合、向こう1年分の費用を前もって年払いをするものが、短期前払費用です。
短期前払費用は、来期1年分のまとまった金額をその事業年度の経費として計上できます。ただし、来期以降も年払いをする必要があります。

2.旅費規程を作り手当を支給する

出張の旅費については、出張手当を支給するとその金額は経費として扱えます。
また、旅費交通費は実費でしか計上できませんが、出張手当は旅費規程に基づき、決まった金額の支給が可能であるため、より多くの金額を経費にできます。

注意すべき点は、出張手当を支給するには旅費規程を作り、手当の金額を決めなければならないことです。

3.福利厚生を充実させる

福利厚生については、例えば、社員旅行や健康診断、社宅にかかる家賃などが該当します。
これらのように、社員の慰安や健康維持、生活支援の規定にかかる金額は、それぞれに設定された条件を満たせば福利厚生費になりえます。
その条件や、法人が負担すべき金額とのバランスを見ながら、福利厚生全般を充実させるのも方法のひとつです。

4.生命保険料・経営セーフティ共済の掛金を損金計上する

法人が加入している生命保険について、保険料は契約内容によって損金に計上することができます。ただし、損金計上に制限があるケースも存在するため、注意が必要です。
また、中小企業の取引先が倒産した場合に備えて、経営難から守る制度として経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)があります。
会社を守るために加入すれば、条件にかかわらず掛け金は全額を損金とすることが可能です。

ただし、生命保険も経営セーフティ共済も、返戻金などは所得に算入されるため、資金繰りとよく相談することが大切です。

5.中古資産を取得し減価償却期間を短縮する

例えば、高額な設備や車両などの資産を購入する際には、特に新品が必要なければ中古で取得するのも良い方法です。
中古資産であれば、減価償却にかかる法定耐用年数の短縮につながるため、その分取得価額の多くを減価償却費とし、取得の事業年度に充てられます。

6.従業員の自宅を社宅化する

従業員の自宅を法人で借上げ、社宅として住まわせれば、家賃の一部を経費計上できます。これは、基本的に福利厚生費と認められるためです。
さらに、役員の自宅とする場合には、家賃の全額を経費とすることが可能です。そのため、特に中小企業では代表者自らが社宅に住めば、所得を圧縮して節税につながります。

ちなみに、住宅を賃貸するのではなく購入した場合、取得価額や固定資産税、減価償却費なども経費とみなされます。

7.不動産投資を行う

法人の事業として不動産を取得し、家賃収入を得る不動産投資は、物件の減価償却費計上によって所得を減らすことにつながります。
また、家賃収入は所得金額にかかわってきますが、直近の資金繰りには役立ってくれるため、スムーズなキャッシュフローの実現にも一役買います。

8.子会社を設立する

事業拡大により利益が大きくなった場合には、子会社を設立すると法人税の税率に変化が出ます。
法人税の累進課税制度における税率は、資本金1億円以下の法人であれば、基本的に資本金年800万円以下の部分は税率15%、800万円超の部分は23.20%と決められています。
つまり、資本金が1,000万円ある法人が、子会社を作り資本金を二分して500万円ずつにしたとすると、800万円超の23.2%の適用がなくなり、節税の一助になるでしょう。

さらに、交際費については、1社だけの上限額より2社の上限額を合わせたほうが有利です。
そのほか、親会社で所有する資産価値が下落した際には、子会社に売却して売却損として計上する方法もあります。
ただし、いずれの場合も税法にのっとった適正な方法で処理することが大切です。

法人が節税する時に押さえるべきポイントとは


法人の節税対策には様々なものがありますが、共通して押さえておきたいポイントがあります。

不要な出費は避ける

節税対策の多くは、経費計上を行って所得を圧縮するものです。しかし、無駄な出費を行って経費にしようとすると、経営を傾かせる一因になりえます。
法人の経営には、健全な資金繰りが重要です。出費ばかりがかさむと、現金が減り適切な取引ができなくなります。

無駄な保険に加入することは危険

特に、生命保険に関しては契約内容をよく確認しておく必要があります。
保険料を経費にできる割合は、契約によって変わり、前述のように解約返戻金などには法人税が課されるため、無駄に保険に加入することはおすすめしません。

会計処理は明確に行う

節税対策においては、しっかりと会計処理をしなければ適切な納税ができません。特に、様々な対策を講じていると、会計処理に見落としやミスも生じやすいです。
また、節税対策の中には結果的に繰り延べるだけのものもあるため、長期的な目線で見た時の資金繰りも考慮に入れておくべきです。

長期的なスパンを見据えて計画を立てる

節税対策の中には、決算期に慌てて行っても間に合わないものがあります。また、決算期に多くの業務を行うと、手間が増えて本来の決算業務に支障が出ることも考えられます。
対策を行うにあたり、どの時期に何を講じれば良いかについてきちんと整理し、普段から節税に努めてください。

法人の節税対策には適切な時期がある


法人の節税対策は、決算期を基準として時期別に行うべきものがあります。

決算期3カ月前に利益予想を立てる

月ごとに作成する月次決算によって損益の流れを読み、決算期である3カ月後の利益予想を立てます。
また、売上げ入金や納品が事業年度をまたぐ場合、売掛金や前受金などのように、会計処理をあらかじめきちんと済ませておくようにしてください。
その上で、毎月の利益と経費を算出し、決算期までのお金の流れをある程度頭に入れておけば、どのような節税対策を講じるべきかも見えてきます。

決算期3カ月前~直前に節税対策を洗い直す

決算期直前までの3カ月では、行うべき節税対策について調べ上げ、間に合うものがあればピックアップして決算前に準備をしておきます。
この時、節税対策をリストにまとめ、都度チェックを行うと便利です。

決算直後に役員報酬を決定する

前述しましたが、役員報酬は大きな節税のチャンスです。そのため、決算が終了した後には適切な役員報酬について、しっかり計算しておくようにします。
高すぎると役員が支払う所得税が増え、安すぎると役員の働きに見合った報酬を支払えません。発生する税額や社会保険料などをシミュレーションしながら金額を決定します。

決算期の2カ月後までに税金納付予定額を整理する

決算期が終了すると、その2カ月後が法人税の納付期限です。そこで、支払いを行う前に納付予定額を整理し、資金繰りにどのように影響するかを把握しておきます。
ちなみに、法人税のみならず事業税や消費税についても、合わせて確認しておき、来期に向けての節税対策に役立ててください。

まとめ

法人の節税対策は、今回紹介した以外にも多数存在します。いずれにしても、まず始めるべきは、費用をかけずにすぐに始められる対策です。
負担が少ない方法から始めていけば、資金繰りを圧迫せずに済むでしょう。

しかし、大きな節税効果を得たいがために不要な出費をしてしまわないよう注意してください。
また、自分の会社に見合った法人の節税対策は、専門家に相談しても良いでしょう。

創業手帳の冊子版(無料)では、法人が行っておくべき節税対策について詳しく解説しています。節税して健全な資金繰りや経営を行うために、ぜひお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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