はじめての所得税入門|計算方法・税率・課税所得の出し方・控除【個人事業主向け】
所得税を計算してみよう【確定申告】
(2018/03/05更新)
会社員時代にはほとんど会社がやってくれていた納税。ゆえに、起業したはいいけど、税金についての知識がほとんどない……という方も少なくありません。そこで今回は、税金で損をしないためにも要チェック!今さら聞けない「所得税」のキホンと計算方法ついて詳しく解説していきます。
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この記事の目次
所得税の基礎知識
「そもそも所得税とは?」
「収入・所得・課税所得の違いは?」
「控除って何?」
そんな疑問を持つ方のために、まずは所得税のキホンを解説します。
すでにご存知の方は読み飛ばしてください。
所得税とは
所得税は、その年の1年間(1月1日から12月31日まで)の収入から、必要経費と所得控除額を引いた「課税所得」に対してかけられる税金のことです。
会社員であれば、通常、源泉徴収で毎月の給料から天引きして所得税を納めており、年に一度の年末調整で正しい税額に調整します。
しかし、個人事業主の場合は、1年分の売り上げや必要経費などから自分で所得税を計算し、確定申告を税務署に提出、納税をする必要があります。
収入と所得の違い
ここで、まずは「収入」と「所得」の違いを確認しましょう。
収入:売り上げ、給与や賞与、年商といった実際に収入となる金額と権利が確定した金額の合計額のこと。
所得:収入から仕入れ代、家賃など実際に支払った金額や支払い義務がある金額といった必要経費を引いた金額のこと。
つまり、簡単にいうと
収入−必要経費=所得
となります。
所得と課税所得の違い
次に「所得」と「課税所得」の違いです。
「所得」は前述の通り、収入から必要経費を引いた、その年の1年間の売り上げです。
「課税所得」とは、その「所得」から扶養控除・社会保険料・生命保険料控除などの所得控除額を差し引いた金額となります。
所得税は、この「課税所得」に対し税率がかけられ、納税する金額を決定するのです。
所得税の控除とは
控除とは、「ある金額から一定の金額を差し引く」ということ。
同じだけ所得があったとしても、家庭環境や生活状況などは人それぞれ。単身者か扶養家族がいる人か、また、健康な人か病気やケガをしたかなどでは、生活にかかる費用も大きく異なります。その違いを考慮してくれる仕組みが所得控除です。
所得控除にはさまざまな種類があります。個人事業主(フリーランス)が対象となる所得控除は以下の通りです。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 寡婦・寡夫控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
所得税と住民税の違い
個人事業主が払う主な税金として「所得税」と「住民税」があげられます。
所得税と住民税の違いは、主に次の3つです。
納税先の違い
所得税は税務署に確定申告をして国に納税する「国税」であるのに対し、住民税は地方自治体に納める「地方税」に当たります。
納税先が違うので、もちろん納めた税金の使い道も異なるということです。
課税対象期間の違い
所得税も住民税も、所得に対して課せられる税金です。しかし、所得税は「その年の所得」に対して課されるのに対し、住民税は「前年の所得」に対して課されるという違いがあります。
納付方法の違い
所得税は納税者本人が税額を計算し自己申告する「申告納税制度」です。一方、住民税は、税務署に提出された確定申告などの情報をもとに各地方自治体が納税額を決定する「賦課課税制度(ふかかぜいせいど)」です。
所得税の計算方法
所得税は以下の流れで計算することができます。
- 課税所得を算出する
- 課税所得に所得税率を掛け、そこから課税控除額を差し引く
- 税額控除額を差し引く
- 復興特別所得税を足す
1.課税所得を算出する
課税所得は、収入から必要経費を引いて所得を出し、そこから各種控除を差し引いて計算します。
例えば、年間収入700万円・経費250万円
所得控除5万円・基礎控除38万円・青色申告特別控除65万円とした場合で考えてみましょう。
700万—250万=450万(所得)
450万-5万—38万—65万=342万(課税所得)
2.課税所得に税率を掛け、そこから課税控除額を引く
所得税の税率と課税控除額(課税所得金額に応じた控除のこと)は、下記の通り課税所得金額によって決まります。
課税所得金額 | 税率 | 課税控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
先ほどの例の場合、課税所得金額は330万円超695万円以下のため、税率は20%となります。
342万×20%=68万4000円
68万4000円—42万7500円(課税控除額)=25万6500円(所得税額)
3.税額控除額を差し引く
課税所得の金額を少なくすることができる「所得控除」に対し、所得税額自体を少なくすることができる「税額控除」というものもあります。
税額控除は、2重課税を防ぐ目的で制定されている配当控除や外国税額控除、また、住宅ローン控除、特定の団体に寄附をした場合の控除などがあります。
税額控除の種類については、国税庁のホームページをご確認ください。
所得税額を計算したら、そこから税額控除を引き、「基準所得税額」を算出します。
先ほどの例の場合、税額控除が5万円あるとすると、
25万6500円(所得税額)-5万円=20万6500円(基準所得税額)
となります。
4.復興特別所得税を足す
最後に「復興特別所得税」を加算して納税額を計算します。
「復興特別所得税」とは、2013年から2037年までに加算が義務付けられている、東日本大震災の復興財源確保のための特別税です。
原則として、その年の基準所得税額の2.1%を納付することとなっています。
20万6500円(基準所得税額)×2.1%=4336円(端数切り捨て)
20万6500円+4336円=21万836円
これが、実際に納める税額(所得税+復興特別所得税)です。
所得税の申告・納付方法、時期
所得税の納付期限は3月15日です(正確には、「その年の確定申告期限日まで」なので、3月15日が土日と重なる年には、期限日が後ろの月曜にずれるようになります)。
例年、確定申告の期間は2月16日から3月15日までなので、確定申告後すぐに納めるという認識でよいでしょう。
所得税の納付には3つの方法があります。
-
- 納付書を添えて現金で納税
- 銀行口座から振替納税
- ネットバンキングで電子納税
銀行口座から振替納税する場合は、事前に税務署へ依頼書の提出が必要です。また、振替納税の際は、実際には4月中旬頃の振替となります。
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まとめ
会社員であれば会社が行ってくれる納税も、個人事業主になると全て自分で行わなくてはなりません。各種控除など、正しい知識をつけることで節税にも繋がりますので、まずは基本となる計算方法をしっかり押さえ、確定申告に挑みましょう。
また、煩雑な経理業務の書き方や手続きについて専門家に相談することも一つの手です。創業手帳では事業内容をヒアリングした上で、あなたの会社に合った専門家を無料で何度でもご紹介することが出来ます。
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(編集:創業手帳編集部)
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