所得税入門ガイド|課税所得計算・税率・確定申告控除など個人事業主向けに徹底解説
所得税・課税所得を計算してみよう【個人事業主の確定申告】
会社員時代にはほとんど会社がやってくれていた納税。ゆえに、起業したはいいけど、税金についての知識がほとんどない……という方も少なくありません。そこで今回は、税金で損をしないためにも要チェック!今さら聞けない「所得税」のキホンとして計算方法などを詳しく解説していきます。
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この記事の目次
所得税とは
所得税は、その年の1年間(1月1日から12月31日まで)の収入から、必要経費と所得控除額を引いた「課税所得」に対してかけられる税金のことです。
会社員であれば、通常、源泉徴収で毎月の給料から天引きして所得税を納めており、年に一度の年末調整で正しい税額に調整します。
しかし、個人事業主の場合は、1年分の売り上げや必要経費などから自分で所得税を計算し、確定申告を税務署に提出、納税をする必要があります。
収入と所得の違い
ここで、まずは「収入」と「所得」の違いを確認しましょう。
収入:売り上げ、給与や賞与、年商といった実際に収入となる金額と権利が確定した金額の合計額のこと。
所得:収入から仕入れ代、家賃など実際に支払った金額や支払い義務がある金額といった必要経費を引いた金額のこと。
つまり、簡単にいうと以下のようになります。
収入−必要経費=所得
課税所得とは
次に「所得」と「課税所得」の違いです。
「所得」は前述の通り、収入から必要経費を引いた、その年の1年間の売り上げです。
「課税所得」とは、その「所得」から扶養控除・社会保険料・生命保険料控除などの所得控除額を差し引いた金額となります。
所得税は、この「課税所得」に対し税率がかけられ、納税する金額を決定するのです。
個人事業主が毎年払う所得税を計算する際に、この課税所得を把握することが大切です。
1年すべての収入から必要経費と所得控除額を引いたうえで課税所得を計算し、この課税所得に所定の税率をかけると、その年に支払う税金額がわかります。
個人事業主に所得がある場合は、確定申告をして所得税を納付しなければなりません。また、所得控除額を受けるためにも、確定申告が必要になります。
所得税・課税所得の計算方法
所得税は以下の流れで計算することができます。
- 所得金額を計算する
- 課税所得を計算する
- 課税所得に所得税率を掛け、そこから課税控除額を差し引く
- 税額控除額を差し引く
- 復興特別所得税を足す
1.所得金額を計算する
所得金額の計算は、1年の総収入から諸経費を引いて割り出します。総収入とは、個人事業主が事業で得た金額のことです。
諸経費は、事業で収入を得るために使用した金額のことです。たとえば、以下のものが挙げられます。
-
- 事務所の家賃や光熱費
- 人件費
- 交際費
- 旅行交通費
- 広告宣伝費
- 福利厚生費
- 交際費
- 通信費など
事業に必要な経費は漏れなく計上することで、所得金額が少なくなります。
また、会社員の場合は必要経費がない代わりに、給与所得控除が受けられます。給与額によって、下記のように金額が決められています。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
2.課税所得の算出
課税所得は、収入から必要経費を引いて所得を出し、そこから15種類ある「所得控除額」を差し引いて計算します。
具体的にどのような控除があるかは、後ほど詳しく解説します。
総収入から経費を引いたうえで、さらに引ける控除があるか確かめましょう。
例えば、年間収入700万円・経費250万円
所得控除5万円・基礎控除38万円・青色申告特別控除65万円とした場合で考えてみましょう。以下のように計算します。
700万—250万=450万(所得)
450万-5万—38万—65万=342万(課税所得)
さらに、個人事業主の場合は、青色申告の条件を満たす場合に「青色申告特別控除」も受けられます。
これらは控除の対処となっても自動で受けられるわけではなく、確定申告をして初めて受けられるため注意してください。
3.課税所得に税率を掛け、そこから課税控除額を引く
所得税の税率と課税控除額(課税所得金額に応じた控除のこと)は、下記の通り課税所得金額によって決まります。
課税所得金額 | 税率 | 課税控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
先ほどの例の場合、課税所得金額は330万円超695万円以下のため、税率は20%となります。
342万×20%=68万4000円
68万4000円—42万7500円(課税控除額)=25万6500円(所得税額)
4.税額控除額を差し引く
課税所得の金額を少なくすることができる「所得控除」に対し、所得税額自体を少なくすることができる「税額控除」というものもあります。
税額控除は、2重課税を防ぐ目的で制定されている配当控除や外国税額控除、また、住宅ローン控除、特定の団体に寄附をした場合の控除などがあります。
税額控除の種類 | 控除の内容 |
配当控除 | 配当所得の10%か5%が控除される |
外国税額控除 | 外国で得た所得に対し一定額が控除される |
公益社団法人等寄附金特別控除 | 公益社団法人、公益財団法人、学校法人などへの寄付が控除される |
住宅借入金特別控除(住宅ローン控除) | 住宅ローンを組んだ場合の控除 |
特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除 | 青色申告を行う中小事業者による特定経営力向上設備取得に対する控除 |
所得税額を計算したら、そこから税額控除を引き、「基準所得税額」を算出します。
先ほどの例の場合、税額控除が5万円あるとすると、
25万6500円(所得税額)-5万円=20万6500円(基準所得税額)
となります。
5.復興特別所得税を足す
最後に「復興特別所得税」を加算して納税額を計算します。
「復興特別所得税」とは、2013年から2037年までに加算が義務付けられている、東日本大震災の復興財源確保のための特別税です。
原則として、その年の基準所得税額の2.1%を納付することとなっています。
20万6500円(基準所得税額)×2.1%=4336円(端数切り捨て)
20万6500円+4336円=21万836円
これが、実際に納める税額(所得税+復興特別所得税)です。
所得税の控除とは
控除とは、「ある金額から一定の金額を差し引く」ということ。
同じだけ所得があったとしても、家庭環境や生活状況などは人それぞれ。単身者か扶養家族がいる人か、また、健康な人か病気やケガをしたかなどでは、生活にかかる費用も大きく異なります。その違いを考慮してくれる仕組みが所得控除です。
所得控除にはさまざまな種類があります。個人事業主(フリーランス)が対象となる所得控除は以下の通りです。
- 個人事業主(フリーランス)が対象の所得控除
-
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 寡婦・寡夫控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
青色申告特別控除とは
個人事業主の所得が、不動産所得・事業所得・山林所得の場合で、以下の条件に当てはまる場合は青色申告特別控除が受けられます。
-
- 所得税の青色申告承認申請書を税務署に提出
- 複式簿記での記帳
- 確定申告に貸借対照表と損益計算書を添付
- 確定申告期限内にe-Taxで申告
- 電子帳簿保存を行う
青色申告特別控除が適用になると、最大65万円の控除が受けられます。ただし、e-Taxではなく郵送や持込の場合は、55万円の控除額です。
また、複式簿記ではなく単式簿記の場合は、10万円の控除額になります。
所得税と住民税の違い
個人事業主が払う主な税金として「所得税」と「住民税」があげられます。
所得税と住民税の違いは、主に次の3つです。
納税先の違い
所得税は税務署に確定申告をして国に納税する「国税」であるのに対し、住民税は地方自治体に納める「地方税」に当たります。
納税先が違うので、もちろん納めた税金の使い道も異なるということです。
課税対象期間の違い
所得税も住民税も、所得に対して課せられる税金です。しかし、所得税は「その年の所得」に対して課されるのに対し、住民税は「前年の所得」に対して課されるという違いがあります。
納付方法の違い
所得税は納税者本人が税額を計算し自己申告する「申告納税制度」です。一方、住民税は、税務署に提出された確定申告などの情報をもとに各地方自治体が納税額を決定する「賦課課税制度(ふかかぜいせいど)」です。
所得税の申告・納付方法、時期
所得税の納付期限は3月15日です(正確には、「その年の確定申告期限日まで」なので、3月15日が土日と重なる年には、期限日が後ろの月曜にずれるようになります)。
例年、確定申告の期間は2月16日から3月15日までなので、確定申告後すぐに納めるという認識でよいでしょう。
所得税の納付には3つの方法があります。
-
- 納付書を添えて現金で納税
- 銀行口座から振替納税
- ネットバンキングで電子納税
銀行口座から振替納税する場合は、事前に税務署へ依頼書の提出が必要です。また、振替納税の際は、実際には4月中旬頃の振替となります。
ネット銀行の口座を持っていると、色々な支払いのときに便利です。他の支払い手段よりも、手数料も安い場合が多いので、持っていると損しないでしょう。冊子版の創業手帳(無料)では、ネット銀行の選び方や、ネット銀行のサービス、おすすめなどを詳しく解説しています。
所得税や課税所得計算のよくある質問
Q:課税所得と非課税所得の違いは何ですか?
A:課税所得は所得税がかかる所得のことで、一方で非課税所得に所得税はかかりません。たとえば非課税所得には、遺族年金・障害年金・医療保険の保険金や手当・労災保険の給付・雇用保険の手当などがあります。
Q:個人事業主が確定申告で扶養から外れるデメリットはありますか?
個人事業主の所得が配偶者控除を受けられる以上にある場合は、配偶者控除が受けられなくなります。
Q:公的年金以外に個人事業主の所得が少額あり、所得税が0円の場合、確定申告は必要ですか?
A:所得税が0円であっても市県民税がかかることがあるため、市県民税に関しては申告が必要です。
まとめ・所得税の対象である所得=課税所得を計算しよう
会社員であれば会社が行ってくれる納税も、個人事業主になると全て自分で行わなくてはなりません。各種控除など、正しい知識をつけることで節税にも繋がりますので、まずは基本となる計算方法をしっかり押さえ、確定申告に挑みましょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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