合同会社が「やばい」といわれるのはなぜ?設立のメリットやポイントを解説
合同会社が「やばい」「やめとけ」というのは嘘!特徴やメリットを知って起業しよう
2006年に会社法が改正されたことで新しい会社形態の「合同会社」が生まれました。
しかし、合同会社と聞くと「やばい」「やめとけ」といったマイナスな声が聞かれることもあります。中には、合同会社という形態そのものを知らない人もいるでしょう。
そこで今回は、なぜ合同会社が「やばい」「やめとけ」といわれているのか、その理由を解説していきます。
また、合同会社がどういった会社形態であるのか、メリットも含めて解説していくのでぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
合同会社での起業が「やばい」「やめとけ」といわれる6つの理由
合同会社がなぜマイナスなイメージを持ちやすいのか、その理由は主に6つ挙げられます。それぞれの理由について詳しく解説していきます。
1.株式会社よりも知名度が低い
合同会社が「やばい」といわれる最大の理由が知名度の低さです。会社形態と聞くと「株式会社」を思い浮かべる人は多いと思います。
合同会社を聞いたことがない人にとっては、「初めて聞いた」「知らない」と感じてしまうため、「大丈夫なの?」や「やばいのでは?」とマイナスなイメージを持ってしまうかもしれません。
知らないことについては誰もが不安になるので、マイナスなイメージを持つのは自然な流れといえます。
合同会社は前述したように会社法が改正されてから誕生した会社形態です。ほかの会社形態と比較すると設立してからの日が浅いため、合同会社自体の数は少ないです。
しかし、意外にも有名企業が「実は合同会社だった」といったケースもあります。合同会社だとアピールするわけではないので、認知度が高まっていないのです。
今後、合同会社の数が増えていけば、マイナスなイメージも少なくなっていくと予想できます。
2.社会的信用度が低くなりやすい
前述したように合同会社は知名度が低いです。
そのため、株式会社と同じような価値を認められていない実情があります。
例え営業活動を真剣にしていても、合同会社について理解していない取引先が相手であれば怪しいと思われ、不安を抱かせてしまいます。
ただし、起業した時点では会社形態に関係なく、どの会社も知名度や社会的信用が低いケースが大半です。
マイナスなイメージを抱かれているからと諦めず、商品やサービスの良さをアピールしたり、迅速な対応力などで信用を得ることが大切です。
3.第三者による資金調達ができない
株式会社は株式を発行して出資を募ることができますが、合同会社には株式がないため、株式会社のような資金調達は不可能です。
会社を設立する前や設立したすぐ後など、信用がない状態の時に資金が必要でもメガバンクからは融資を受けることは難しいです。
資金に不安な面があれば社会的信用度の低さにつながるのは当たり前なため、「合同会社はやばい」と表現されてしまいます。
合同会社の資金調達方法は、国や自治体などの補助金や助成金の活用、融資が中心となります。
4.意思決定に遅れが出やすい
合同会社は出資している社員であれば議決権を持っているので物事を決める際には多数決で決定しなければいけません。
自分ひとりの会社であれば自分の意志だけで物事が決められるので簡単ですが、議決権を持っている人が複数いれば、意見が割れる可能性があります。
特に社員の数が偶数で多数決によって意見が半々に分かれてしまった場合、重要事項が決定できずに時間だけが過ぎてしまうケースもあります。
議決ができない日が続いていけば、社員同士で対立してしまう可能性もゼロではありません。
最終的な意思決定者を決めておくといった対策を事前に考えておくと、トラブルを防ぐことに役立ちます。
5.ワンマン経営になるケースもある
株式会社においてもワンマン経営になるケースはありますが、合同会社はよりワンマンになりやすいといわれています。
合同会社は出資者が経営者になれる仕組みです。
会社を設立する際には多くの合同会社で代表者を決める傾向にありますが、代表者は強い権限力があるのでほかの社員に相談なく意思決定をする、契約を結んでしまうなど、独断専行が起きやすくなってしまいます。
ワンマン経営の会社に良くないイメージを持つ方もいるかもしれません。
株式会社であれば株主総会での要求が可能であり、ワンマン経営になったとしても改善できる余地があります。
しかし、合同会社であれば株式がないので株主総会もありません。抑止力がないので、ワンマン経営が続きマイナスなイメージを持たれる可能性が高まってしまうのです。
6.所有者の死亡で会社が消失する
株式会社の場合、株主が所有者なので代表取締役が死亡したとしても会社が消失することはなく、新しい代表取締役を選べば新しい体制で経営を続けられます。
しかし、合同会社の場合は出資をした社員が所有者です。
合同会社には解散の事由が定められており、社員が欠けてひとりもいなくなってしまった場合は合同会社が解散してしまいます。
もし、社員ひとりの合同会社だった場合は死亡によって会社の存続ができない可能性があります。
複数人で出資をすれば消失は免れますが、社員ひとりで経営する場合は定款に持分承継の規定を定めておくといった対応をとると消失を防げるでしょう。
合同会社はどのような会社?
合同会社が「やばい」「やめとけ」といわれる理由をご紹介しましたが、きちんと会社の仕組みについて理解していれば問題ありません。
合同会社について深く知るには、以下を参考にしてください。
出資者が会社の経営者になる
合同会社は会社形態の一種でアメリカのLLCがモデルといわれています。
出資した人が会社の経営者となるので、所有と経営が一致しておりこれが、株式会社との大きな違いです。
株式会社は株主が会社の経営を経営者に委任して業務を行っていきますが、合同会社は出資者全員が業務執行権限を有しているので、出資者全員で会社の業務を実施していきます。
間接有限責任が適用される
間接有限責任とは、会社が倒産してしまった際に会社の債務者に対して出資額を限度として責任を負うことを指します。
合同会社は株式会社と同様に間接有限責任が適用されるので、万が一会社が倒産してしまっても自分が出資した額以上の負債を負う必要はありません。
負債の返済のために出資したお金が戻らない可能性がありますが、出資した額以上の負債を抱える危険性はないので安心です。
役員に任期の上限がない
出資をした人全員が経営者となり、そのすべてが業務執行社員です。
しかし、定款で定めることで社員を区分でき、一部の社員のみを業務執行社員に任命することが可能です。
また、業務執行社員の中から代表社員の選定も可能です。
その場合、株式会社であれば役員の任期は2年という取り決めがありますが、合同会社の場合は任期に対する規定がないため、同じ人が何年も役員を続けるケースもあります。
役員の変更がない限り登記変更する必要もないので、負担も少ないです。
出資者ひとりに1票の議決権が与えられる
株式会社の場合、出資額に応じて議決権が与えられますが、合同会社は出資した額に関わらずひとり1票の議決権が与えられる仕組みです。
意思決定の際には出資した人全員で多数決を取り、決定を下します。
ただし、合同会社は定款でのルール変更が容易に行いやすいというメリットがあります。
そのため、最終意思決定者を決めておくこと、出資額に応じた議決権を持てるなどの変更を事前に決めておくことも可能です。
合同会社の設立にはメリットがたくさんある!
合同会社には株式会社と比較すると様々なメリットがあります。どのようなメリットがあるかご紹介します。
1.組織設計の自由度が高い
株式会社では、所有と経営が一致しないケースもあるため、新規株式の発行や役員の選任、組織拡大といった重要な決定をする際には株主総会を開催しなければいけません。
しかし、合同会社は株主総会を開く必要がないので、意思決定をする際には社員による多数決で決められます。
時には意見が割れてしまうケースもありますが、すべての社員が同じ意見を持っている場合には、意思決定をスピーディーに行えます。
2.設立や維持にかかる費用を抑えられる
株式会社を設立する場合、定款の認証料が発生しますが、合同会社設立時にはかかりません。
登録免許税も株式会社と比較すると安いので、半分以下ほどの費用で会社を設立できるケースもあります。
また、株主総会にかかる費用や役員更新費用、官報掲載費も合同会社にはないのでランニングコストも抑えられます。
費用を抑えられるとなれば、製品の開発やサービスの拡大など、ほかの部分に費用を使えるようになるでしょう。
3.定款の認証や決算公告の義務が生じない
株式会社は、会社を設立する際に本店所在地を管轄する公証役場で定款の認証を実施する必要がありますが、合同会社であれば定款の認証は必要ないので公証役場まで足を運ぶ手間もありません。
株式会社と比較しても早い段階での会社設立も可能です。
また、株式会社においては毎年決算公示を実施する必要がありますが、合同会社では不要になるので費用の削減が可能です。
4.利益は自由に分配可能
株式会社の場合、出資者への利益配分を出資比率と同じ割合にする必要があります。そのため、出資金が多ければ多いほど利益を受け取れる仕組みです。
一方、合同会社は利益を自由に分配することが可能です。
原則としては出資比率と同じ割合ですが、定款に定めておけば比率を自由に変更することができ、会社に貢献した人に多く利益を分配する仕組みの確立が可能となります。
5.個人事業主よりも節税メリットが大きい
合同会社は法人なので、個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いという特徴があります。給与や賞与といった費用も経費として計上可能です。
また、欠損金の繰越は個人事業主であれば最大3年という決まりがありますが、法人として青色申告書を提出している事業所の場合、最大で10年間繰り越せます。
生命保険料も全額経費として計上できるので、大きな魅力です。
合同会社を設立する際のポイント
最後に、合同会社を設立する場合の注意点やポイントを解説していきます。
代表社員を選定する
合同会社を設立する際には代表者を設ける必要がありません。
しかし、代表者がいないと意思決定時に時間がかかる、取引先が混乱するといったデメリットがあります。
そのため、あらかじめ代表社員を選出しておくとスムーズな運営が可能です。
代表者は1名ではなく複数名設置することもできます。話し合いを行い、最適な人材を選ぶことが大切です。
合同会社の代表社員に関しては、以下の記事も参考にしてください。
※内部リンク「合同会社 代表社員」の記事を挿入
意思決定におけるルールを決めておく
前述したように合同会社は出資をした全員に議決権が与えられます。
特に定めがなければそのままの状態で経営を行っていきますが、中には平等に議決権が与えられる点に不安を抱く人もいます。
出資額に応じた議決権を与える、最終的に決定権を持つ意思決定者を選出するなど、社員全員が納得できる意思決定のルールを定めることも大切です。
定款で利益分配や事業承継のルールを定める
合同会社を設立する際には、あらかじめ定款を定めておく必要があります。特に利益配当に関しては、ルールを定めておくと後々トラブルを起こしにくいです。
また、事業承継についても事前に取り決めを行い定款に記載しておくと問題発生のリスクを抑えられます。
事業承継をきっかけに社員同士が対立する可能性もあるので、持分承継に関する定款をあらかじめ定めてトラブルを防いでください。
資金調達に融資制度や補助金・助成金を活用する
株式会社と比較すると合同会社は資金調達が困難ですが、融資制度や補助金・助成金を活用し調達する方法があります。合同会社では以下の資金調達方法が利用可能です。
-
- 制度融資
- 日本政策金融公庫による新創業融資制度
- 信用保証協会保証付融資
- 少人数私募債
- キャリアアップ助成金
- 地域創造的企業補助金
- 小規模事業者持続化補助金
将来的に株式会社への変更を検討する
業務が拡大すると株式会社に変更したほうが有利になるケースもあります。
株式会社に変更すれば、株式発行による資金調達ができて社会的信用も高まるなどのメリットがあるので、事業拡大に影響を与えます。
変更をする際には、手続きや費用が発生します。最低でも1カ月ほどの期間を要するので覚えておいてください。
まとめ
合同会社が「やばい」「やめとけ」といわれているのは、知名度の低さや資金調達がしにくいといった理由があるためです。
しかし、意外にも有名企業が合同会社であるケースもあり、今後知名度に関しては上昇する可能性を秘めています。
資金調達に関しても、国や自治体による補助金や助成金、融資などがあるので活用すれば資金不足を防げるでしょう。
合同会社ならではのメリットも多いので、設立をして成功を収める可能性は十分に考えられます。
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多くの株式会社・合同会社の設立を支援してきた経験からコメントしますね。
合同会社はヤバいのか?ですが、結論はヤバくはありません。
選択の問題です。
合同会社は信用が無いのか?という意味では、アマゾンもグーグルも日本法人は実は株式会社ではなく合同会社ですが、誰も「合同会社なのでちょっと。。」という人はあまりいないですね。手軽さという意味でも良いと思います。
一方で、「合同会社なのに株式で資本調達したい」というおかしな相談をされるケースがあります。
融資は問題ないのですが、株式で資本調達したい場合は株式会社で無くてはいけません。
株式会社でなければ売れる株式がありませんのでやりようがありません。
また、「代表取締役」「取締役」も株式会社における呼称なので、何が何でも「取締役」と名乗りたい!という人がいればこれも株式会社である必要があります。
そういう意味ではヤバいと言えますが、それは「合同会社自体がヤバい」というより、本質的な選択を間違っている事がヤバいという事かもしれません。
合同会社は設立費用は安く抑えられますが、後で株式会社に変更すると登記や専門家の手続き費用などが、むしろ合同会社設立で抑えた費用より多くかかるので、最初から株式会社にしておいたほうが良いでしょう。ただ、株式にする予定がなければ問題はありません。
株式と合同会社は比較すると違いがあり、メリット・デメリットがありますが、優劣と言うよりは、選択の問題なのでこの会社を将来どうしたいかを考えて選択しましょう。
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