OKAN 沢木恵太|置き型社食「オフィスおかん」で働く人のライフスタイルを豊かにする

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年08月に行われた取材時点のものです。

高齢化と人口減少が進む日本。人材定着と従業員の健康推進を「食」で支援


会社に冷蔵庫を設置してコンパクトな社食を作り出す、置き型社食「オフィスおかん」を提供しているのがOKANです。

仕事以外の要因で会社を辞めてしまうケースが多い日本で、人材定着と働く人のライフスタイル充実を目指してサービスを展開しています。

代表取締役CEOの沢木氏に、オフィスおかんの概要に加え、時代のニーズに合わせた新サービスについて話を聞きました。

沢木 恵太(さわき けいた)
株式会社OKAN 代表取締役CEO
大学卒業後、フランチャイズのコンサルティング会社に入社。数年後にソーシャルゲーム開発企業に転職。経営者としての胆力を求め、ゲーム業界とは真逆の教育系ベンチャーでスタートアップを経験し、組織を大きくする力を学ぶ。2012年に個人向け総菜配送サービスで起業。「株式会社OKAN」として法人向けサービスにシフトし、急成長を遂げている。2019年には、ハイジーンファクターに特化した、日本で初めての調査・改善サービス『ハイジ』をリリース。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ハイジーンファクターに着目し、食を切り口にサービスを展開


大久保:起業の経緯を教えてください。

沢木:OKANは 2012年12月に創業した会社です。今10期目になる会社ですね。私が28歳の時に創業しました。創業前は、新卒でフランチャイズのコンサルティング企業に就職しています。
その後ITの必要性を感じ、当時伸びていたソーシャルゲームの分野でプロデューサーとして活動していました。

学生の時から、将来事業を始めたいとずっと考えていたんです。正確に言うと仕組みですね。社会に貢献できる仕組みを作りたいと思っていました。ソーシャルゲームの分野で活動するなかで、自分がコミットできるテーマは何だろうか、と改めて考えました。エンターテイメント領域ではないと思いましたね。そこで真逆の、生活インフラに繋がるような教育の領域に活動を移してみたのです。自分がコミットしたいのは、まさに生活インフラだと気づきました。

ITの経験も活かしつつ、リアルな場で仕組みを作っていきたいと思った結果、OKANを設立した経緯です。

OKANでは、「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションとして掲げています。日本は、今世界で最も高齢化と人口減少の問題を抱えている国です。総生産を維持するためにも、1人ひとりがこの会社で働き続けたいと思えることが重要だと考えました。

従業員が会社に魅力を感じているにも関わらず、健康や家庭との両立、人間関係といった、仕事以外の理由で辞めるケースが今多く起こっています。
専門用語で、ハイジーンファクター(衛生要因の意味で、仕事内容とは別に会社を辞める原因)と呼ばれるものですね。

会社を辞める人の過半数が、ハイジーンファクターで辞めている統計もあります。ハイジーンファクターに対してサービスの必要性を感じましたし、そういったサービスがあったうえで、社会が形成されるべきだとも考えました。

手段として、イメージしやすかった「食事」というテーマに着目しました。食事を使って、人が働き続けられる支援をしていこうと思ったのです。会社に冷蔵事を設置して置き型社食を提供する「オフィスおかん」や、在宅勤務、共働きの方に食事のサポートをする「おかずストック」のサービスを考えました。

実は、2012年の創業当時は「オフィスおかん」ではなく、個人向けサービスを先にリリースしているのです。
資本力がないと 、B to Bサービスを成長させるのは難しいですから。
その後、法人向けサービスの「オフィスおかん」に軸足を移した流れですね。
サービスを立ち上げると、大きな反響をいただきました。今では3,500もの会社に「オフィスおかん」を導入していただいています。

大久保:以前の会社で体を壊されたと伺いました。それが、ハイジーンファクターに着目されたきっかけですか。

沢木:サービスの着想はまさにそこです。フランチャイズの時代に長時間勤務で食生活がおろそかになりました。 主食を置き菓子で済ませることもしていましたね。当然のように体調を崩してしまいました。体調を崩すと、その会社で働くこと自体に疑念を持つようになります。
改めて周りを見渡してみると、同じように体調を崩した人や、さらには子育てで働き続けられなくなった人がいると気づきました。これではいけないと感じたのです。
その感覚が「働く人のライフスタイルを豊かにする」というミッションにもつながった形ですね。

大久保:食の提供ですと、在庫管理など大きなお金が必要になると思います。強い想いがあったからこそできたことですか。

沢木:想いはもちろんあります。
また、その方が合理的だとも思いました。私たちのお客様は法人がメインですが、法人が従業員の人材定着のために投資をするのは、まだ一般的ではありません。けれど必ず必要になると確信してました。

身近なテーマを扱った方が、多くの方に広がりやすいという自信もありましたし、やり切って社会に貢献したいという想いが強かったです。

社員食堂よりも気軽に導入できる「オフィスおかん」で従業員の健康推進を


大久保:「オフィスおかん」を導入するときに、企業に必要なものはありますか。

沢木:冷蔵庫は私たちから提供します。一番小さいものでビジネスホテルにある冷蔵庫ほどのサイズになりますので、その分のスペースは必要です。
食べるために必要な使い捨ての容器やお箸類も全て提供させていただきます。企業様に用意していただくのは電源と電子レンジですね。

大久保:価格や内容は企業ごとに違うのですか。

沢木:従業員の方が利用される時の価格は一律で1品100円です。企業様に負担していただくサービス利用料金は規模によって変わってきます。一番安いプランで 6万円前後ですね。

大久保:6万円だと何食になるのですか。

沢木:150個が上限として設定される形です。私たちのビジネスモデルは、携帯電話の通信料と同じような仕組みになっています。
一定数まで使い放題で、使い切ると提供がストップするイメージですね。さらに必要であればその月だけのオプションを購入いただくか、プランをあげるという選択肢になります。

大久保:企業が導入するメリットはなんでしょう?

沢木:従業員が、忙しくてどうしても会社の外に食べに行けない場合もあります。
そうすると欠食をしたり、思わしくない食事の選択をとってしまいがちです。近接した場所ですぐに食事が手に入る環境が必要になってきますが、その環境を企業は従業員に提供できるようになります。料金も1個100円と経済的ですし、添加物や原材料産地、栄養バランスも安心安全です。

また、社員食堂は企業にとって高い投資です。設備投資が必要ですから、大手企業でないとなかなか実現できません。
これまで社員食堂を設置できなかった企業が、設備投資なく従業員に食事を提供できるのは大きいですね。それによって、従業員のパフォーマンスがあがったり、健康が保たれたりするメリットもあります。

社員食堂を持っていた企業の場合、コストダウンにつながるのも1つです。
食事の提供以外でも、従業員向けの研修や食生活指導もしていますので、そういった複合的なメリットを感じていただいています。

知識不足から遠回りも。インプットの重要性を知る


大久保:会社を経営されるなかで、大変だったことはありますか。

沢木:プロダクトマーケットフィット(サービスが市場に適合する)がすごくスムーズに入ったので、立ち上がりの苦労はそれほどなかったです。その分、比較的早く組織を拡大しなければならないフェーズが訪れたのが大変でした。また、やはり資金繰りについては常に課題を抱えています。

私たちのビジネスモデルですと、どうしても先行投資で後から回収する形になります。高利益率なわけでもありません。キャッシュフローの部分は常に意識が必要ですね。
実際に残キャッシュがないことで、交渉力の弱い資金調達をしなければならないこともありました。

また、私は食品の経験があったわけではないので、どうしても知識が不足しています。知識があれば回避できた課題にあたりながら経営するという状況でした。

生産管理とか品質管理が想像もつかないような状態でやってきましたので、そのあたりの無駄は多かったのではないかと思います。

大久保:事業の立ち上がりが上手くいったとしても、組織を大きくする難しさがありますし、自分の成長も必要だということですね。

沢木目の前のことに必死になっていると、インプットや考えることがおろそかになりがちです。出来るだけ前倒しでインプットしておくことが重要ですね。

大久保:リスクにはどうやって備えていますか。

沢木:創業者が適切にリスクマネジメントをするのは無理だと思っています。客観的にみてもらって指摘をもらうのが一番ですね。外部の人をどれだけ巻き込めるかが重要です。私たちは社外取締役にお願いしています。

大久保:外部の人との交流やつながりが大切になりますね。

沢木:同時期に創業している企業は、同じようなタイミングで似た課題を抱える可能性が高いです。ただしそこには時間軸の違いがあります。
例えば、2か月前に同じ課題を抱えていて、たまたまそれを聞いていたが故に、解決できるということも起こり得るんですね。

単純に同じタイミングで創業していれば気も合いやすいですし、そういった仲間を見つけに行くのは重要だと思っています。オンラインでのイベントで探すのもいいですね。そのつながりは今でも続いています。

経験豊かな年上の方とのつながりも大切です。オープンに悩みを伝えて、こういう人を紹介してくださいとお願いするのもいい手段ではないでしょうか。実際に私たちの取締役や社外取締役も紹介で繋がっている方です。年上の方の知見や経験に頼ることも大事だと思っています。

新サービス「おかずストック」でニーズに対応する


大久保:コロナで多くの会社がリモートになりました。それによる影響はありましたか。

沢木:オフィスで提供することを前提にサービス設計をしていたので、2020年のコロナ禍での影響はやはりありましたね。

私たちの主要ターゲットのIT業界も素早くテレワークに移行しましたが、ただ同時に他の業種で一定のお客様が増えていた状況でした。そのお客様の多くが、エッセンシャルワーカーを抱える企業だったんです。
テレワークは難しいですよね。コロナのタイミングでもこういったお客様がしっかりと支えてくれたので、大きく衰退することはありませんでした。
2020年以降もそういった業界での導入が伸びていることから、成長を続けられています。

新たなニーズとして、在宅勤務だからこそ食事が不十分になるということがあげられます。そこで、「おかずストック」という新サービスをスタートしました。

大久保:おかずストックの特徴を教えてください。

沢木:おかずストックは在宅勤務と共働きの方をメインのターゲットとしています。 多くの方がされているのが、土日におかずを作り置きして平日に消化するということです。
そうすると土日も休めません。また平日の昼間、1人だとなるべく食事を簡単に済ませたいと思ってしまいます。体に良くない食生活になりがちです。

こういった方の悩みを解決するために、隔週ごとに健康的なお惣菜を届けて、冷蔵庫にストックしてもらうB to Cサービスがおかずストックです。LINEで簡単に注文できますから、手軽に利用いただけます。

大久保:企業が導入するのではなく、個人向けにということですよね。

沢木:個人ですね。ただ、企業として従業員に優待提供したいという意見もすでにいただいていますので、企業を介してご自宅に提供するケースについても検討しています。

食以外のテーマでも働き続けられる支援を

大久保:今後の展開について教えてください。

沢木:「食」というテーマでは、ワークスタイルに合わせて複数のサービスで個人や企業をサポートしていきたいと考えています。
ただ、私たちのミッションでは「食」と言う言葉は一切使っていません。食はあくまでも入口の手段として、という捉え方です。食の領域で事業が拡大できているのであれば、顧客網を活かして食以外のテーマでサービスを作っていきたいです。
もちろん、人が働き続けられる支援に繋がる領域ですね。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社OKAN 代表取締役CEO 沢木恵太
(編集: 創業手帳編集部)



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