合同会社はやめとけ?やばい・怪しいといわれる理由と後悔しない選び方
合同会社は本当に「やばい」「やめとけ」?特徴を理解して会社形態を選ぼう

2006年に会社法が施行され、新しい会社形態として「合同会社」が設けられました。合同会社は、危険な会社形態でも、怪しい仕組みでもありません。株式会社と並ぶ正式な会社形態のひとつです。
ただし、将来の資金調達や人材の採用、複数人での共同経営の進め方によっては、株式会社を選んだほうがよい場合もあります。
本記事では、合同会社が「やばい」「やめとけ」といわれる理由と、設立前に確認しておきたいポイントを解説します。合同会社と株式会社のどちらが自社に向いているかを判断する材料になるのでぜひ参考にしてください。
この記事の目次
合同会社での起業が「やばい」「やめとけ」といわれる5つの理由

合同会社がなぜマイナスなイメージを持ちやすいのか、その理由は主に5つ挙げられます。それぞれの理由について詳しく解説していきます。
1.株式会社より認知度や信用面で不利になる場合がある
合同会社は2006年の会社法施行で生まれた会社形態で、株式会社に比べると歴史が浅く、合同会社という名称になじみのない方もいます。そのため、取引先によっては株式会社と比べて会社形態を理解してもらいにくく、取引時に不安を持たれる可能性があります。
大企業との新規取引や法人向けの新規開拓では、会社形態を確認される場合もあるでしょう。ただし、起業した時点では会社形態に関係なく、設立直後は知名度や社会的信用が十分でないケースも少なくありません。会社形態の見え方が受注を左右しそうなら、はじめから株式会社を選ぶ道もあります。
2.株式発行による資金調達や上場ができない
株式会社は株式を発行して出資を募ることができますが、合同会社には株式がないため、株式を使った資金調達はできません。証券取引所に上場するのは株式会社の株式であるため、合同会社のままでは上場できません。
一方、合同会社の資金調達方法は金融機関からの融資や、国や自治体などの補助金や助成金の活用などによる資金確保は可能です。株式は発行できませんが、新たに社員を加えて出資を受けたり、社債を発行したりする方法はあります。
この違いが特に影響するのは、ベンチャーキャピタルからの出資や将来の上場を目指す場合です。その場合は、株式会社での設立や組織変更を検討する方法もあります。
3.複数人経営では意思決定や利益配分でもめる可能性がある
合同会社では、定款に別段の定めがない場合、社員が2人以上いるときは社員の過半数で業務を決定します。定款で業務執行社員を定めている場合は、原則として業務執行社員の過半数で決定する仕組みです。
複数で経営していると、意見が割れて意思決定が進まない可能性があります。また、利益の分け方もトラブルになりやすいポイントです。定款に定めがなければ出資の価額に応じて決まります。
そのため、最終的な意思決定者や利益分配のルールを事前に考えておくと、トラブルを防ぐことに役立ちます。出資比率どおりの支配関係をはっきりさせたいなら、株式会社という選択肢もあります。
4.採用やストックオプションの活用で不利になる場合がある
合同会社では、株式会社のようにストックオプションを活用できないため、株式を使った報酬の選択肢が限られます。
ストックオプションとは、あらかじめ決めた価格で自社株を取得できる権利で、給与を高く出せない時期でも将来の株式で報いる手段のひとつです。合同会社には株式がないため、この仕組みを利用できません。
加えて、合同会社は株式会社と比べて名称になじみのない求職者もいると考えられます。ストックオプションを採用施策として活用したい場合は、株式会社のほうが向いています。
5.社員の死亡・退社や事業承継、M&Aへの備えが必要
合同会社では、社員が死亡すると原則として退社となり、社員としての地位は相続人へ自動的に承継されません。ただし、定款に相続人などが持分を承継できる旨を定めておけば、承継が可能です。
複数の社員がいる場合は、一人が死亡してもほかの社員によって会社を存続できます。一方、一人合同会社で唯一の社員が死亡し、定款に承継規定がない場合は、社員がいなくなり解散につながる可能性があります。
一人合同会社では、設立時に持分の承継について定款へ定めておくことが重要です。また、将来の退社やM&Aを見据えて、持分の扱いについても確認しておく必要があります。
退社時には持分の払戻しが生じ、持分の譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要です。定款で譲渡の条件を定めておけば、持分譲渡によるM&Aを行いやすくなります。
合同会社はどのような会社?「怪しい会社」という意味ではない

合同会社は、出資者である「社員」が経営にも携わる会社形態です。株式会社と同じ法人であり、社員は原則として出資額を限度に責任を負います。そのため、合同会社という名称だけで、危険な会社や信用できない会社と判断することはできません。
ここでは合同会社の仕組みを、経営と出資の関係・責任の範囲・任期の有無・議決権の数え方の4つに分けて見ていきます。
合同会社の設立手続きや必要書類については、以下の記事で詳しく解説しています。
合同会社の設立方法を徹底解説|費用・手続き・必要書類までわかりやすく解説
出資者が会社の経営者になる
合同会社は会社形態の一種でアメリカのLLCがモデルといわれています。出資した人が会社の経営者となるので、所有と経営が一致しておりこれが、株式会社との大きな違いです。
株式会社は株主が会社の経営を経営者に委任して業務を行っていきますが、合同会社は出資者全員が業務執行権限を有しているので、出資者全員で会社の業務を実施していきます。
間接有限責任が適用される
合同会社の社員は、株式会社の株主と同様に間接有限責任を負います。会社に債務が残った場合でも、社員が負う責任は原則として出資額の範囲内です。
ただし、経営者個人が融資の連帯保証人になっている場合などは、出資額を超えて責任を負うことがあります。会社の形態そのものよりも、個人保証を付けるかどうかが、経営者個人の負担を大きく左右します。
業務執行社員などに法定の任期がない
出資をした人全員が経営者となり、定款に別段の定めがなければ、その全員が業務を執行します。ただし、定款によって一部の社員だけを業務執行社員とし、その中から代表社員を定めることも可能です。
株式会社の取締役には会社法上の任期がありますが、合同会社の業務執行社員や代表社員には法定の任期がありません。そのため、任期満了に伴う重任登記は不要です。ただし、業務執行社員や代表社員などの登記事項に変更が生じた場合は、変更登記が必要です。
業務の決定方法は定款で柔軟に定められる
株式会社の場合、出資額に応じて議決権が与えられますが、合同会社は出資した額に関わらずひとり1票の議決権が与えられる仕組みです。合同会社では、定款に別段の定めがなければ、社員が2人以上いる場合の業務は社員の過半数で決定します。定款で業務執行社員を定めた場合は、原則として業務執行社員の過半数で決定します。
ただし、日常的な業務は各社員が単独で行える場合があるほか、定款の変更など、全社員の同意が必要な事項もあります。出資額に応じて決定権を調整するなど、定款で別のルールを設けることも可能です。
合同会社の設立にはメリットがたくさんある!

合同会社には株式会社と比較すると様々なメリットがあります。どのようなメリットがあるかご紹介します。
1.組織設計の自由度が高い
株式会社では、所有と経営が一致しないケースもあるため、新規株式の発行や役員の選任、組織拡大といった重要な決定をする際には株主総会を開催しなければいけません。
合同会社には株主総会がなく、業務の決定方法は会社法の原則に加え、定款で柔軟に設計できます。複数人で経営する場合は、業務執行社員や決定権限をあらかじめ定めることで、意思決定を円滑にしやすくなります。
2.設立や維持にかかる費用を抑えられる
株式会社を設立する場合、定款の認証料が発生しますが、合同会社設立時にはかかりません。登録免許税も株式会社と比較すると安いので、半分以下ほどの費用で会社を設立できるケースもあります。
また、株主総会にかかる費用や役員更新費用、官報掲載費も合同会社にはないのでランニングコストも抑えられます。費用を抑えられるとなれば、製品の開発やサービスの拡大など、ほかの部分に費用を使えるようになるでしょう。
3.定款の認証や決算公告の義務が生じない
株式会社は、会社を設立する際に本店所在地を管轄する公証役場で定款の認証を実施する必要がありますが、合同会社であれば定款の認証は必要ないので公証役場まで足を運ぶ手間もありません。株式会社と比較しても早い段階での会社設立も可能です。
また、株式会社には毎年決算公告を行う義務がありますが、合同会社では不要になるので費用の削減が可能です。
4.利益は自由に分配可能
株式会社の場合、出資者への利益配分を出資比率と同じ割合にする必要があります。そのため、出資金が多ければ多いほど利益を受け取れる仕組みです。
一方、合同会社は利益を自由に分配することが可能です。原則としては出資比率と同じ割合ですが、定款に定めておけば比率を自由に変更することができ、会社に貢献した人に多く利益を分配する仕組みの確立が可能となります。
5.法人化によって税務上の取扱いが変わる
合同会社は法人であり、個人事業主とは税金の計算方法や経費の取扱いが異なります。従業員に支払う給与や賞与は、事業に必要な支出として原則として損金に算入できます。
一方、業務執行社員や代表社員に支払う役員給与は、定期同額給与などの一定の要件を満たさなければ、損金に算入できない場合があります。
また、法人が契約者となる生命保険の保険料は、保険の種類や契約内容によって、全額または一部を損金に算入するものや、資産として計上するものがあります。
欠損金の繰越期間にも違いがあります。青色申告をしている個人事業主は、事業所得などで生じた純損失を原則として3年間繰り越せます。一方、青色申告書を提出している法人は、一定の要件のもと、欠損金を原則として10年間繰り越すことが可能です。
合同会社を選んで後悔しないための設立時のポイント

最後に、合同会社を設立する場合の注意点やポイントを解説していきます。
代表社員を選定する
合同会社では、代表社員を別途定めない場合、原則として業務執行社員全員が会社を代表します。一方、定款または定款の定めに基づく互選により、業務執行社員の中から代表社員を定めることも可能です。
代表社員を定めることで、契約や登記上の窓口を明確にできます。ただし、代表権は対外的に会社を代表する権限であり、社内の業務決定権と同じではありません。複数人で経営する場合は、意思決定のルールも別途定款で定めておきましょう。
合同会社の代表社員については、以下の記事で詳しく解説しています。
合同会社に役員は在籍している?合同会社と役員に絡む疑問にお答えします
意思決定におけるルールを決めておく
前述したように合同会社は出資をした全員に議決権が与えられます。特に定めがなければそのままの状態で経営を行っていきますが、中には平等に議決権が与えられる点に不安を抱く人もいます。
出資額に応じた議決権を与える、最終的に決定権を持つ意思決定者を選出するなど、社員全員が納得できる意思決定のルールを定めることも大切です。
定款で利益分配や事業承継のルールを定める
合同会社を設立する際には、あらかじめ定款を定めておく必要があります。特に利益配当に関しては、ルールを定めておくと後々トラブルを起こしにくいです。
また、事業承継についても事前に取り決めを行い定款に記載しておくと問題発生のリスクを抑えられます。事業承継をきっかけに社員同士が対立する可能性もあるので、持分承継に関する定款をあらかじめ定めてトラブルを防いでください。
資金調達に融資制度や補助金・助成金を活用する
合同会社でも、金融機関からの融資や国・自治体の補助金・助成金を利用できます。
創業時の融資としては、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」や、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う制度融資などがあります。
補助金・助成金では、要件を満たせば、小規模事業者持続化補助金やキャリアアップ助成金などを利用できる場合があります。
ただし、融資には審査があり、補助金・助成金も必ず受給できるわけではありません。
将来的に株式会社への変更を検討する
業務が拡大すると株式会社に変更したほうが有利になるケースもあります。株式会社に変更すれば、株式発行による資金調達ができて社会的信用も高まるなどのメリットがあるので、事業拡大に影響を与えます。
変更をする際には、手続きや費用が発生します。最低でも1カ月ほどの期間を要するので覚えておいてください。
まとめ
合同会社が「やばい」「やめとけ」といわれているのは、知名度の低さや資金調達がしにくいといった理由があるためです。しかし、認知度は取引の実績を積むことで補えますし、意思決定や利益配分の決め方は設立時の定款で整えられます。
資金調達に関しても、国や自治体による補助金や助成金、融資なども資金調達の選択肢になります。
合同会社ならではのメリットも多く、事業の形によっては最も合う選択になります。将来の資金調達や採用の計画と照らし合わせ、自社に向いているほうを選んでみてはいかがでしょうか。
創業手帳の創業者・大久保の解説
(編集:創業手帳編集部)
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「毎日着ている創業手帳Tシャツのデザインがヤバい」とよく言われる創業手帳の創業者・大久保です。
多くの株式会社・合同会社の設立を支援してきた経験からコメントします。
「合同会社はやばいのか」という質問への結論は、合同会社そのものがやばいわけではない、ということです。大切なのは、会社の将来像に合った会社形態を選ぶことです。
アマゾンジャパンやGoogleの日本法人など、知名度の高い企業にも合同会社はあります。合同会社だから信用がないとは一概にいえません。
一方、将来、株式を発行して資金調達したい場合や、上場を目指す場合は株式会社を選ぶ必要があります。また、「代表取締役」「取締役」は株式会社の役職名であり、合同会社では「代表社員」「業務執行社員」などの名称を使用します。