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2020年9月28日長い目が育むESG経営の芽、投資家が注意すべき点とは

日本企業の中で、これまで主流だった中期経営計画に代わり、10年先を展望する長期経営計画を打ち出す動きが広がっています。ESG投資の機運が高まる中、「長計」は安定株主を増やすための呼び水となる可能性があるとの声が上がっています。
ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。
持続的に社会に貢献できることを示し、長期投資家に安定的に株式を保有してもらうためにも長期ビジョンを策定する企業が増えています。投資家や顧客など様々なステークホルダーとの対話をする中で、目指している企業像を描いてほしいと求められたことも策定を後押ししています。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、足元では1年先の業績予想を未定とする企業がなお多く、一段と不確実性が高まる中で、将来のあるべき姿を明確に示す重要性が高まったことも寄与しているものと思われます。
投資家が「長計」をみるときに注意すべき点は、いくつかあります。
1つ目は、絵に描いた餅ではないかを見極めることです。最終年度までの時間が長ければ、現実から乖離する可能性も高まるため、具体的な施策をみて実効性を精査する必要が生じます。突拍子のないものではなく、固有の強みをうまく活用した事業ポートフォリオの構築を目指しているかも確めるべきです。
2つ目は、企業がESGの観点からみた事業リスクに対し、シナリオ分析ができているかどうかです。リスクをきちんと把握できていれば、回避こそできなくても被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。
上場企業で「長計」の公表が進めば、長期的な価値に着目した投資のための環境が整うことになります。この流れを受けて安定的な長期投資家が増えれば、企業側も目先の利益追求にとらわれず、ESGに配慮した事業活動ができる好循環が生まれることが期待されます。
編集部のコメント
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一方、ESG・SDGsに象徴される価値観への偏重に警鐘を鳴らす専門家もいます。その根拠の一つは、投資商品やファンドの運用成績の低さです。ESG投資を謳い多額の資本を集めた投資商品の一部が市場平均を下回る運用成績となっていることです。一般論としてアクティブ運用の成績はパッシブ運用を下回ることは経験的に知られていますが、ESG投資を謳った投資商品の収益率が一段と低迷しているのです。
米国ではESG投資の運用成績に疑問があることから、各種規制がかかり始めています。長期視点で考えるESGに対して投資商品の運用成績は年単位で評価することが多く、時間軸にずれがあるので単純な議論はできませんが、ESG投資の経済合理性に対して疑義が投げかけられ始めていることは事実です。
日本でもESG投資に対する規制の議論が進むか、注目したいところです。