注目のスタートアップ

天体への(再)突入技術を活かした宇宙利用サービスの提供を目指す「BULL」が1.05億円調達

company

2023年6月20日、株式会社BULLは、総額1億500万円の資金調達を実施したことを発表しました。

BULLは、天体への(再)突入技術を活かした宇宙利用サービスの提供を目指しています。

デブリ対策装置をロケットに装備し、宇宙空間で本来ゴミとなってしまうロケットの周回スピードを減速させ、数か月かけて大気圏へと再突入させることで、自律的にデブリ化を防止します。

また、大気圏への再突入までの時間を有効活用するため、Micro-ISS(無人・非回収の軌道上小型試験装置)を同梱し、宇宙空間での試験サービスを提供します。

これにより、スペースデブリの発生抑制と、宇宙空間での試験サービスを同時に実現します。

今回の資金は、微小重力下での実験装置(Micro-ISS)とデブリ対策装置の開発推進、人材採用などに充当します。


近年、急激に宇宙ビジネス市場が成長しています。具体的な数字でいうと、2010年における世界の宇宙ビジネス市場規模は約27兆円でしたが、2019年には約40兆円にまで成長しました。

また今後、2040年代には市場規模が100兆円以上に達すると予測されています。

この宇宙ビジネス市場の成長の一因は、超小型衛星の開発が進んだことにあります。

従来の中大型人工衛星は、数百キログラムから数トンの重量がありました。現在は1キログラムから数十キログラムの小型化が実現されており、衛星打ち上げのコストが低減され、民間企業でも参入できるレベルになりました。

このため、世界の人工衛星の打ち上げ数は増加しており、2011年に129機だった打ち上げ数は、2021年には1,809機に達しています。

一方、こうしたロケット・衛星の打ち上げ数の増加によって深刻化している問題もいくつかあります。そのひとつがスペースデブリ問題です。

スペースデブリとは、使用済みの衛星、故障した衛星、打ち上げたロケットの上段、爆発・衝突によって発生した破片などのゴミのことです。

これらは軌道上で高速で移動しており、宇宙機や人工衛星と衝突すると大きな被害を引き起こす可能性があります。また、デブリによって事故が起きてしまうと、さらに多くのデブリが発生し、それがまた事故を起こし、という連鎖的な事故につながってしまう可能性もあります。

さまざまな企業が宇宙を利用するようになった現在、スペースデブリ問題の解決は、宇宙の持続的な利用にも関わる重要なテーマのひとつです。そのためスペースデブリ問題の解決に取り組むスタートアップもいくつか登場しています。

BULLは、デブリの発生源のひとつであるロケットに装置を取り付けて打ち上げ、役目を終えたロケットを装置によって大気圏に再突入させて消滅させることでデブリ発生を防止する仕組みの構築と、相互補完的な形で、再突入中の時間をさまざまな試験で利用できる試験サービスを提供することで、宇宙環境の維持と利活用を同時に実現することを目指しています。

株式会社BULLのコメント

このニュースを受けまして、株式会社BULL 代表取締役 宇藤恭士氏よりコメントが届きました。

・今回の資金調達の目的は何ですか?

現時点ではプレスリリースに書かせて頂いた(優秀な人材の採用や事業パートナーシップの構築・強化)内容が主であり、今後の事業及び開発の進捗に応じて柔軟に対応することを検討しております。敢えてかみ砕けば以下の内容を想定しております。
・研究開発に不可欠な優秀人材の採用・増員
・事業パートナーとの関係強化を含めた、事業化推進

・今後の展望を教えてください。

弊社が掲げる「地球内外の惑星間の行き来を “当たり前” に」することを目指し、既に手掛けている層内開発を進め、少しでも早い事業化を図ります。デブリ化防止装置・軌道上試験装置の商用化に続き、深宇宙を見据え、各惑星・衛星への再突入技術を活かした軌道上サービスの拡充を目指し、惑星間の往来インフラに資する事業としていきたいと考えています。

・読者へのメッセージをお願いします。

今般の調達において、幸いにして事業を本格始動できることとなりましたが、弊社は立ち上がって間もないスタートアップ/ベンチャー企業でございます。宇宙産業において、社会課題となるSDGsを視野に入れたビジネスを追求しており、栃木県宇都宮市という地の利を生かした産学官連携体制での事業拠点構築を図っております。

昨今の市況環境等を踏まえ、スタートアップ/ベンチャー企業の運営は決して平坦ではないと理解しておりますが、この度ご出資を頂いた方々をはじめご支援・ご協力を頂いている方々のご期待に沿えるよう、「拙速を貴び」つつ死力を尽くす所存です。

企業の成長には戦略的な資金調達や、シナジーの見込める企業との提携が重要です。シリーズ累計発行部数200万部を突破した起業ノウハウ集「冊子版創業手帳」の別冊「資金調達手帳」では、VCから出資を受けるためのノウハウや、融資を受けるためのノウハウなど詳しく解説しています。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ BULL Micro-ISS スペースデブリ デブリ対策装置 ロケット 再突入 大気圏 宇宙ゴミ 宇宙ビジネス 宇宙利用 微⼩重⼒環境 株式会社 試験サービス 資金調達
資金調達手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事
合同会社設立マニュアル|流れの6ステップや費用、必要書類などを解説!
【2025年版】補助金・助成金を活用しよう!起業・創業・開業に役立つ15選の制度
起業の仕方サムネイル
起業の6ステップ。素人でも失敗しない起業の仕方を大解剖。起業の専門家が体験とデータで解説。
【2025年最新】クラウドファンディングのやり方とは?仕組み・種類・始め方の手順ガイド
合同会社とは?メリット・デメリット、株式会社との違いをわかりやすく解説
事業計画書の書き方とは?18ステップごとにわかりやすく解説!

有望企業の創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

イヤリング型脈拍フィードバックデバイスを開発・販売する「e-lamp.」が3,000万円調達
2023年6月28日、株式会社e-lamp.は、3,000万円の資金調達を実施したことを発表しました。 引受先は、ANRI株式会社が運営するANRI5号投資事業有限責任組合(ANRI5号ファンド)です…
独自の発酵・蒸留技術によりサステナブル原料を開発・製造する「ファーメンステーション」が2億円調達
2021年3月15日、株式会社ファーメンステーションは、総額2億円の資金調達を実施したことを発表しました。 独自の発酵・蒸留技術を用いてエタノールやサステナブルな化粧品原料を開発・製造しています。 原…
VRゲーム・ソーシャルゲームを開発する「ジーゼ」が5.5億円調達
2023年1月1日、株式会社ジーゼは、総額約5億5,000万円の資金調達を実施したことを発表しました。 ジーゼは、スマートフォン・PC向けソーシャルゲーム開発・運用を行っています。 開発したタイトルに…
NFTによる地方創生を推進し「ふるさと納税NFT」などを手がける「あるやうむ」が資金調達
2024年5月21日、株式会社あるやうむは、資金調達を実施したことを発表しました。 調達額は、2023年11月に発表した前回資金調達と合わせて1.17億円となりました。 あるやうむは、「ふるさと納税 …
おしゃべりAI「Cotomo」を開発する「Starley」が7億円調達
2024年8月23日、Starley株式会社は、総額7億円の資金調達を実施したことを発表しました。 Starleyは、音声会話型おしゃべりAI「Cotomo」を開発・提供しています。 日常会話に特化し…

大久保の視点

明治大学ビジコンで優勝&100万円獲得はゼファーさん明治大学2年「NEUROGICA」メンタルIoT
2025年3月14日(金)に明治大学・御茶ノ水キャンパスで第3回明治ビジネスチャレンジ(明治ビジチャレ)が明治大学経営学部主催で行われました。 明治大学の各…
(2025/3/14)
日本サブスク大賞2024グランプリはAI英会話スピークバディが受賞!
日本国内で唯一のサブスクリプション特化型イベント「日本サブスクリプションビジネス大賞2024」が、2024年12月4日(水)にベルサール六本木で開催されまし…
(2024/12/4)
国際団体エンデバージャパン「EndeavorJapanSummit 2024」を現地レポート!
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
(2024/10/9)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集