キジカフェ 轟 裕介&奈津代|起業家に優しい街「千葉県流山市」で地産地消のカフェに挑戦

飲食開業手帳

「千葉県流山市」の創業支援制度で経営を学び開業!自分たちの強みと経験を活かしたカフェ経営のこだわり

シンガポール駐在経験を活かしたアジアンフードや自家焙煎コーヒーが人気の「キジカフェ」を千葉県流山市で経営しているのが轟 裕介さん、奈津代さんご夫婦です。地産地消を中心にフードマイレージの少ない仕入れや元インテリアデザイナーの経験を活かした居心地の良い空間がこだわりのお店です。

他分野からの飲食店経営への挑戦や、起業家に優しい街として知られる「千葉県流山市」でお2人が活用した創業支援制度について、創業手帳編集部が聞きました。

轟 裕介(とどろき ゆうすけ)/轟 奈津代(とどろき なつよ)
キジカフェ オーナー
夫である轟 裕介さんが勤めていた会社でのシンガポール支店設立をきっかけに家族でシンガポールへ赴任。妻である奈津代さんは、シンガポール料理をはじめ、タイ料理やベトナム料理の本場の作り方を現地で習う。このきっかけもあり、日本に帰国後にアジアンフードを提供する「キジカフェ」を地元である千葉県流山市で開業。

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シンガポールへの移住経験を活かして流山市で「キジカフェ」を開業

ーまずはキジカフェのお店の概要を教えていただけますか?

裕介さん:私と妻の地元である千葉県流山市で2019年10月に「キジカフェ」というカフェを開業しました。店舗は南流山駅から徒歩5分ほどの立地にあり、11時〜18時のランチ営業がメイン、14席ほどの規模のお店として経営しています。

仕入れる食材はできるだけフードマイレージが少ない地元の食材を中心に仕入れることで、地産地消で地域に根ざしたお店にしたいと思っています。

ーキジカフェのこだわりを教えていただけますか?

奈津代さん:お店の近くで親戚や知り合いの農家さんが野菜やお米を作っているので、地元の新鮮な野菜を使ったランチがこだわりです。自家焙煎しているコーヒーもオススメしたいです。

フードメニューは「アジアンフード」が中心です。

私たちは夫の仕事の関係で5年ほどシンガポールに住んでいた経験があり、その時に現地で食べたり、作り方を学んだアジアンフードを、出来る限り流山市の食材を使って作っています。

ーお店で提供するメニューはどのように考えられていますか?

裕介さん:基本的には私たちが食べたいもの、飲みたいものをメニューに取り入れています。

例えば、キジカフェではオリジナルのクラフトビールも提供しているのですが、私がビールが好きで、こだわりを持って作ったビールを提供したいと思ったことがきっかけでした。

キジカフェでビールを提供するのであればと、ビアソムリエの資格を取るなど、楽しみながらメニュー開発やお店の経営をしています。

ーキジカフェの名前の由来を教えてください。

奈津代さん流山市は鳥の「キジ」が多くいる地域で、子どもの頃から身近にいる存在でした。時々キジの鳴き声が聞こえる、のんびりした流山の雰囲気が好きなんです。

流山市も年々都市開発が進んでいますが、今でもキジがいる地域なので「今後もキジと共生したい」「キジがいる地域だと知ってほしい」という思いを込めて、「キジカフェ」という名前にしました。マークも自分たちでデザインしたんですよ。

インテリア設計士から一転して飲食店経営者へ

ーどのような経緯でキジカフェを開業することになりましたか?

裕介さん:私は前職で「インテリアの設計」を行っていました。

その会社でシンガポールに支店を立ち上げることになった際に、立候補して、家族を連れてシンガポールに赴任することになったんです。

5年ほど駐在し、最初は戸惑った南国ならではのおおらかな仕事のやり方を、少しずつ理解しながら、日本と現地のやり方をうまく組み合わせた新しい手法を模索することにやりがいを見出していました。デザインに関してはシンガポールの方がチャレンジングで先を行っていたこともすごく刺激的でした。

その後、日本に帰国して1年ほど同じ会社で働いていたのですが、シンガポールでの仕事とのギャップに適応できなかったことや体調を崩したことが重なり、会社を退職しました。

会社を退職して数か月ほどは流山市で療養していたのですが、気晴らしに食事に出かけても、周りにはチェーン店しかなく、私たちが行きたいお店が少ないことに気がつきました。ないのであれば、自分たちが行きたいお店を作ろう!と思い、流山市や商工会議所が主催する創業セミナーを受講して、アジアンフードを提供するキジカフェを開業したという流れです。

ー内装工事やメニュー開発などの開業前の準備はどのように進めましたか?

裕介さん:まず内装設計に関しては、家具や建具、照明の選定、内装の図面作成などは自分たちで行い、実際の工事と施工管理を業者の方にお願いしました。

奈津代さん:メニューに関しては、シンガポールにいた時に、料理教室に通ったり、シンガポール人の友人にシンガポール料理の作り方を習ったことがあったので、その経験を生かして自分たちが食べたいアジアンフードの味を再現しました。

シンガポールは多民族国家のため、タイやベトナムなど色々な国の料理が入ってきているので、シンガポール料理以外のアジアンフードも一通り学ぶ機会があり、それが今のカフェメニューの構成に役に立っています。

ーフードメニューはアジアンフードが中心ということですか?

裕介さん:アジアンフードが中心です。飲食店経験者ではない私たちがゼロから飲食店を開業するので、なぜ私たちがこの飲食店を開業するのか?というストーリーを大切にすべきだと思いました。

客観的に考えても、飲食店オーナーの人間性やバックグラウンドと店舗のスタイルに一貫性がある方が、お客様にも納得してもらいやすいですし、お店の魅力を受け取ってもらいやすいですよね。

「キジカフェ」を開業してすぐにコロナ禍に突入!その打開策とは?

ー店舗はどのような基準で選びましたか?

裕介さん:流山市は住宅街が多く、空き店舗は多くありませんでした。その中でも昼は自転車で探したり、夜はGoogleストリートビューで普段通らない道を見たりして、空き店舗になってそうな物件を探し、選択肢を挙げました。

実は今のキジカフェの店舗では「飲食店」の経営はダメだと最初に一度断られています。

しかし、他に納得のいく店舗がなかったため、ダメもとで再度「カフェ」であってもダメですか?と相談をしてみたところ、ちょうど建物のオーナーさんが変わったタイミングだったこともあり、「軽飲食」のカフェであれば良いと許可をいただけました。

この店舗は駅から近いことに加えて、自宅からも近い場所にあります。私たちは子育てをしながらキジカフェを経営しているため、「子育てとの両立」も店舗を選ぶ重要なポイントでした。

ー2019年10月にキジカフェを開業したとのことでしたが、コロナ禍の影響をどのように乗り越えましたか?

裕介さん:キジカフェを開業してすぐにコロナ禍に入ったので、経営的にも精神的にもかなり打撃を受けました。コロナ禍を乗り切る方法は、とにかく政府や街の人の動きを見ながら、情報をいち早くキャッチして臨機応変に対応するしかありませんでした。

しかし、幸いにもキジカフェでは流山市内や国産の食材を中心に仕入れていたため、輸入品の割合がとても少なく、「仕入れ面」での打撃は少なかったです。

地域に根ざした営業方針でコロナ禍でのニーズに対応

ー地域に根ざしたお店という点がプラスに働いたこともありますか?

奈津代さん:キジカフェは地域に根ざしたお店なので、コロナ禍でもご近所の方々には来ていただけていました。

コロナ前は東京都内に通勤していた方々が流山で在宅勤務になったことで、普段は来られないお客様にテイクアウトでランチを購入していただくなど、多くの方に店を認知していただけた事もあり、その後、店内飲食が再開した際には、来店していただける客層が幅広くなった気がします。

また、在宅勤務の方が仕事しながらでも、手軽に片手で食べられるようなテイクアウトメニューを考えたり、店に入らなくても買えるような販売スタイルにしたりと色々と新しいことにトライしました。

テイクアウト用の窓口

このように、地域に根ざして、地元のお客様のニーズに応えながら、お店の形態やサービス内容を変えたことでコロナ禍を乗り切れた部分は大きいと思います。

14席しかない小さなお店ということもあり、開業当初からテイクアウトにも力を入れたかったので、うまく時代の流れに乗ることができたと思っています。

ー集客はどのような工夫をされていますか?

裕介さん:Instagramを中心に情報発信を行っています。ホームページも検討したのですが、飲食店の場合は常に新しい情報をアップロードすることが大切だと思ったので、私たちはInstagramを特に重視しています。

奈津代さん:Googleマップで「近くのカフェ」と検索して、偶然近くにいるお客様が来てくださることも意外と多いです。

Googleマップに関しては、単に店舗情報を登録しただけなのですが、意外と集客に繋がっています。

起業家に優しい街「千葉県流山市」の魅力とは?

ー起業家目線で見ると流山市はどのような地域ですか?

奈津代さん:流山市は柏市と松戸市という大きな市に囲まれた土地で、特に大きな産業もない静かな地域です。

しかし、チェーン店ばかりある印象の街なので、少し変わったお店を開業すると注目してもらいやすいことは起業家にとって嬉しい点だと思います。私たちもアジアンフードを出すお店なので、流山市の中では珍しいと感じて来てくださるお客様も多いです。

新しいお店が少ない分、競合店舗と暗黙的な探り合いをする必要性が低いのも、新しくビジネスを始める人には安心できるポイントだと思います。

裕介さん:他の特徴としては、流山市に移住して新しく起業する方と、流山市で長年ビジネスをしている方の割合のバランスが良いようにも感じます。

互いが互いを刺激し合いながら、助け合えている雰囲気があるため、流山市は新しくビジネスを始めたい方には良い場所だと思います。

また、女性起業家を支援する制度が多いのも流山市の特徴だと思います。

都内へのアクセスも良く、子育てもしやすい街

ー流山市に住んで、東京都内の会社に通勤する方も多いですか?

裕介さん:とても多いと思います。つくばエクスプレスの運行が開始してからは、秋葉原まで最短で20分ほどで行けるようになりました。

家賃を抑えたい、静かな場所に住みたいという理由で、東京から流山市に引っ越して来る方も増えてきていると思います。

ー流山市は子育てがしやすい街だと聞いたのですが、その点はいかがですか?

奈津代さん流山市はコンビニよりも保育園が多いと言われるほど保育園が充実しています。仕事をしている方であれば、保育園に入れる可能性はかなり高いと聞いています。

例えば起業家でも、開業届を提出していれば保育園の申込みができるそうです。

小学校に上がってからの学童保育も充実しているので、どの年代でも子育てはしやすい街だと私も実感しています。

あとは、公園などの緑が多いのも、子育てする身からすると嬉しいポイントですね。

流山市で受けられる「創業支援制度」

ーお2人とも異なる創業セミナーに参加されたとのことですが、具体的にどのような内容のセミナーに参加されましたか?

裕介さん:私は「商工会議所」が主催する「創業塾」に参加しました。

参加者の人数は20名ほどで、年齢層は市の主催する「女性向け創業スクール」より少し高めの印象でした。セミナーの講義も資金計画や事業計画など創業に必要な基本内容をベースに、それを自分のビジネスモデルにどのように応用していくかを学ぶことが出来ました。

参加条件に「1年以内に開業予定の方」とあるため、かなり実用的な内容を勉強できてよかったです。

「創業塾」の参加者が開業予定の職種としては、行政書士や学童保育、飲食店、美容関係、介護、農業、ペット関連など多種多様で、普段の生活では出会うことのない色々な業種の方々と繋ることが出来、色々な視点で物を見ることが出来たように思います。今でも交流は続いており、地元で起業家仲間ができたことは大きな心の支えになっています。

ー具体的にどのようなセミナーの内容でしたか?

裕介さん:10月〜12月までの3ヶ月ほどの期間で、1回のセミナーは午前10時に始まり、夕方4時半までみっちりありました。

講義形式で専門家の方々の話を聞いたり、グループやペアに分かれてプレゼンテーション形式で発表をする機会もありました。

セミナーの最終回には、開業予定の事業についてのプレゼンテーション大会が実施されました。1人10分の持ち時間で、優勝者には流山市長の前でプレゼンテーションをする機会が与えられたのですが、まさかの優勝を手にし、市長の前でプレゼンテーションをさせていただくことになりました。

創業セミナーを通じて支え合える起業家仲間と出会えた

ープレゼンテーション大会で優勝できた要因は何だと思いますか?

裕介さん「自分達が持つ武器」と「自分達がやりたいこと」を咀嚼して熱意と説得力のある事業計画を作り上げたことと、プレゼンテーションの資料も魅力的な写真や分かりやすいビジュアルを使い、自分たちの世界観が伝わりやすい資料としてみせられたことが大きな要因だと思っています。

ー創業セミナーに参加してみてよかった点を教えてください。

裕介さん:参加者の方々は、今までの人生で深く関わってこなかった職業の方ばかりで、とても良い刺激や気づきを得ることができました。

講義形式のセミナーでは起業に役立つ基礎的な内容をしっかりと学びつつ、基礎が学べたことで、その裏をかく戦術が考えられるようになりましたね。

講義形式とワークショップ形式の両方あったため、基礎と応用を繰り返すことで内容的にもとても充実感がありましたし、自分が本当に何をやりたいのか深く考える時間が得られたのは大きいと思います。

当時の参加者のメンバーとは今でも定期的に会っていますし、地元の起業家仲間に出会えたことが、かけがえのない自分の大切な財産になったと感じています。

流山市が実施する女性起業家への支援制度「女性向け創業スクール」

ー女性向けの創業セミナーは裕介さんが参加されたものとは別のセミナーということですか?

奈津代さん:私が参加したのは「女性向け創業スクール」という名前の創業セミナーで、流山市役所の商工振興課が主催でした。

毎年、少しずつ形式が変わっているのですが、私が参加した年は30名ほどの参加者がいて、「基礎編」と「応用編」に分かれていました。

私は基礎編のみ受講し、午前中のみの実施で全4回の講義が1ヶ月で実施される内容でした。

「女性向け創業スクール」は毎年、募集開始して数日で定員に達するほど人気が高いセミナーです。

ー具体的にはどのような内容のセミナーでしたか?

奈津代さん:起業に対するマインドの講義や自分が持つ武器ややりたいことを考えるワークショップなどがありました。

「創業」についての基礎知識や考え方を学べたので、初めて創業を考える方にとっては良いセミナーだったと思います。

「子育て中の女性」も参加しやすい工夫も充実

ーセミナーにはどのような方々が参加されていましたか?

奈津代さん:全体の3分の2くらいが30〜40代くらいの方で、残りが50〜60代くらいの方という割合でした。託児サービスもあったので、若い方が積極的に参加している印象はありました。

参加している方々は、犬の食育ビジネスをしたい方や老犬介護、子どもにYouTuberとして発信させる、新しいスタイルでの学びを提供する方々、など多種多様でした。私もスクールを通じて出会った方々とは今もお付き合いがあります。起業した仲間も複数いて、一緒にイベントを開催したり、困りごとは相談したりなど、仲間がいるありがたみを常々感じています。

ー基礎編までしか参加されてないとのことですが、応用編では最後にプレゼンがありましたか?

奈津代さん:応用編ではプレゼンテーションがありました。

裕介さん:私は最後のプレゼンテーションの見学に行ったのですが、「女性向け創業スクール」は、女性的な柔軟な発想や、時代の先を読んだ新しいビジネスモデルが多い印象でした。

飲食店を開業するなら隅々まで「こだわり」を持って準備をするべき

ーどちらのセミナーの内容も素晴らしくて、流山市は起業家に優しい街ですね。

奈津代さん:これらの創業セミナーを最後まで参加した方は、審査はありますが融資が受けやすくなるなど、流山市から様々なバックアップをしてもらえるので、起業家にとって嬉しいサービスが多々あると思います。

ーどちらのセミナーも有料でしたか?

裕介さん:どちらも有料でした。恐らく有料セミナーだった分、参加者の方々も起業に対して真剣に取り組んでおり、実際に創業した割合も高いと思います。

ー最後に飲食店を開業する方へメッセージをいただけますか?

裕介さん:安定した仕事を辞めて起業するのであれば、自分ができることやしたいことをとことん突き詰めて、自分の好きなことを仕事にできるように考えるべきだと思います。自分の価値観に共感してくれるお客様との話は本当に楽しいですよ。

奈津代さん飲食店開業について言うと、初期投資は発生しますが、内装はしっかりと作り込んだ方が良いと思います。

居抜き物件で安く開業することも可能ですが、飲食店は世界観を作り込むことで、その魅力やこだわりがわかるお客様が集まってくれると思っています。

裕介さん:今はインターネットで様々なサービスを受けられますし、美味しいものも手軽に買えます。今後はメタバースなどの仮想空間での娯楽も増えると思いますし、「視覚」「聴覚」「触覚」は2次元でもかなり再現が可能になってきました。ですが、「味覚」や「嗅覚」は2次元では表現が難しいしお腹もいっぱいにならない。そういう意味では今後オンライン化が進んでも、リアルな飲食店はまだまだ生き残れる職業だと思っています。

ただし「美味しい」のは当たり前の世界で今後生き残るためには、実際に行きたくなる空間や、何かを呼び覚ますような「特別な食の体験」ができるような工夫が必要だと感じてます。そういう意味でもお店の空間づくりや他にない個性などは、今後もっと重要になってくると思います。

冊子版創業手帳では、飲食サービスに関わる起業家のインタビューを多数掲載しています。web版と合わせて、ぜひご覧ください。
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