酒類販売業免許とは?お酒の販売には免許が必要!飲食店開業のための酒販免許取得を専門家が解説

飲食開業手帳

酒類販売業免許について「許認可の専門家」が解説します

飲食店では酒類の販売をフードとともに行うことによって、客単価が上がり、また料理と比べて調理の必要がないため、手間と人件費を押さえることにより利益率も上げやすいです。また、ソフトドリンクに比べるとアルコール酒類は単価を上げやすいという特徴もあります。

そのため、飲食おいてドリンクおよび酒類の販売は、飲食店経営や開業においては重要な要素になります。

ただ、起業にあたり、業種によっては許認可が必要なケースがあり、その中の一つに、お酒の販売に必要な免許、いわゆる「酒類販売業免許」があります。

飲食店開業で検討するケースが多い、お酒を販売する事業を始める方のために今回は、「酒類販売業免許」の許認可を行っている専門家に「許認可を取るために必要なこと」についてご解説いただきました。

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お酒の販売には「酒類販売業免許」が必要

「お酒の販売」を事業として始める方にとって避けて通れないものが、税務署による「酒類販売業免許」です。お酒の販売を行う場合は、販売対象に合わせた免許が必要です。

例えば、ラーメン屋などの飲食店でアルコールを提供する場合、通常時間のアルコール提供では免許や届出は不要ですが、深夜(午前0時~6時)の場合は「深夜酒類提供飲食店営業開始届」が必要となります。

仮に、飲食店で「このビールを購入できますか?」といった状況になり、ビールそのものを販売する場合は「酒類小売業免許」が必要です。

飲食店と酒屋の免許の違いとは

結論から言うと「お酒の容器を開栓してから売るか、開栓せずにお酒そのものを売るか」の違いです。飲食店の営業は食品衛生法に基づいて行われるため、保健所から「飲食店営業許可」を取得します。

このとき、飲食店では「メニューのひとつ」として顧客にお酒を提供していることになります。つまり、日本酒やワイン、ビールやサワーなど、開栓済みのボトルや樽からお酒を提供する場合は、飲食店営業許可の範囲になります。

一方で、未開栓のボトルや樽をそのまま売る場合は、「酒税法上の酒類の小売業」となるため、酒類販売業免許が別途必要になるのです。

つまり、1つの店において酒類をメニューとして扱うのか、小売り商品として扱うのかによって免許の違いが出てくるのです。

私は企業法務や許認可専門の行政書士として、「酒類販売業免許」「酒類製造免許」のサポートをしておりますが、他の許認可と比較して以下の特徴があります。

酒類販売業免許は2種類に分かれる

創業手帳、飲食店開業手帳で飲食店や小売店の開業相談に訪れる方は、毎月たくさんいます。ただ、酒類販売業免許は形態によって2種類に分かれます。

酒類販売業免許は、その販売形態に応じて「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」に区分されます。それぞれ対象となる事業や特徴が異なるため、飲食店を開業したい方や酒類の卸売業を始めたい方は違いを押さえておきましょう。

酒類小売業免許とは

「酒類小売業免許」は、一般消費者や飲食店等を対象とする販売の免許です。酒販店やコンビニのように店頭でお酒を販売する「一般酒類小売業免許」と、広範な地域の消費者を対象にインターネットやカタログによって販売する「通信販売酒類小売業免許」があります。

免許区分 事業対象 特徴
一般酒類小売業免許 店頭(酒販店やコンビニなど)でお酒を販売する場合 有店舗・無店舗ともに、全酒類の小売ができる
通信販売酒類小売業免許 インターネットやカタログによって販売する場合 輸入酒の販売制限がない

酒類卸売業免許とは

「酒類卸売業免許」は、主に酒類販売業者や製造者を対象とする卸売販売の免許です。いずれの免許も「どんなお酒を扱うか」「どのお酒をいくらで仕入れていくらで販売するか」「年間の収支見込・取扱数量をどのくらい見込んでいるか」「どの地域のどのくらいの消費者への販売を見込んだ計画なのか」など、細かな事業計画を作成しなければなりません。

免許区分 事業対象 特徴
洋酒卸売業免許 ウイスキー、リキュール、ワイン、スピリッツ、発泡酒などを卸売する場合 他の卸業者から仕入れることもできる
自己商標卸売業免許 自社開発のオリジナルブランド(商標や銘柄)の酒類を卸売する場合 自己商標以外の酒類の卸売はできない
全酒類卸売業免許 すべての酒類を卸売する場合 免許取得のハードルが高い傾向にある
ビール卸売業免許 ビールを卸売する場合 免許取得のハードルが高い傾向にある

酒類卸売業免許には事業計画が必要!

小売業で事業計画を立てるにあたって、販路などの具体的なシミュレーションが必要になります。冊子版の創業手帳(無料)では、販路拡大の方法を表にまとめています。一覧で確認できるため、使える販路を探すのに役立つでしょう。(創業手帳編集部)

事業計画書の作成では、年間販売数量・取り扱う酒類の品目・人員数などを明確に記載してください。数量や品目の提出が必要になる理由は、都道府県における免許可能件数の上限が決められていることと、事業としてやっていける利益が十分あるか収支見込を確認するためです。

年間販売数量は、販売見込み数量及び算出根拠の欄に、「kl」単位で記入します。どの取引先から「〇件〇kl」の取引承諾をもらっているという具体的な根拠を記載してください。品目は、ビール・洋酒・輸入酒類などの種類のことで、取り扱う品目により免許が変わるため記載が必要です。ほかにも、店舗の広さ・人員数なども事業計画書に記載してください。

税務署で酒税や酒類販売免許に関する質問や相談ができる

酒類販売における免許や酒税について不明な点があるときは、税務署に相談しましょう。税務署では酒類指導官の部門職員が巡回しており、相談が可能です。専門の職員がいなければ相談はできないため、事前に巡回税務署や巡回日時を確認しておいてください。

また、相談は事前予約制です。酒類指導官が在籍する税務署に電話して、予約します。酒類指導官に直接電話できるのは、千葉県は千葉東税務署・松戸税務署・成田税務署、東京は神田税務署・品川税務署・浅草税務署・豊島税務署・立川税務署、神奈川は横浜中税務署・川崎北税務署・厚木税務署、山梨は甲府税務署です。

酒類販売業の免許取得の要件

免許取得の要件は多岐にわたります。例えば、「個人事業主・法人ともに経営者が経営経験を有していること」「酒類販売に関する経験や知識を有していること」が求められます。

こうした経験がない場合は、全国で開催されている「酒類販売管理研修」を受講するなど、知識を補うことも一つの対策となるでしょう。

酒類販売業の販売場所の要件

販売場所に関する要件もあります。当然のことではありますが、賃貸物件の場合は「土地建物の所有者との間できちんとした契約を結んでいること」が大前提です。

契約内容が「居宅用」であったり、極端に短い期間であったりすると、最悪の場合は「契約のやり直し」となる可能性があるので注意しましょう。

店舗内については、お酒の販売場所は飲食店等と同一の場所との制限があり、他の販売場所と明確に区別する必要があります。

よくスーパー等でお酒の陳列棚に「酒類コーナー」「これはお酒です」「20歳以上の年齢であることが確認できない場合には酒類は販売しません」という表示が目立つように設置されていますが、こういった表示も酒類の販売場所を明確に区分するために、法律で定められたものです。

酒類販売業の経営基礎要件

もっとも重要な要件は「経営基礎要件」です。これは簡単に言ってしまえば「赤字が続いている会社や税金を滞納している会社へは免許は出せません」ということです。

これから起業する場合は実績がないため、その点は心配ないかもしれませんが、「破産者で復権を得ていないこと」という要件も含んでいます。

免許申請時には「直近3年分の財務諸表の写し」と「県と市町村の納税証明書・誓約書」を提出して、経営基礎要件を満たしているか否かを審査されます。

ここでつまずくと申請自体ができなくなるので、私が相談された場合は最初に確認している重要なポイントです。ご自身で申請される場合も、経営基礎要件については最初に確認したほうが良いでしょう。

酒類販売業免許を取得する流れ

酒類販売業免許の申請は、事前の相談で要件を満たしているか確認するところからです。要件を満たして申請できることがわかってから税務署へ申請します。また申請の前に以下の3つの内容を確認しておきましょう。

  • 交付までの期間
  • 提出する書類
  • 登録免許税の費用

酒類販売免許取得までのステップ

免許取得の相談先は、酒類指導官設置税務署です。また、申請代行を依頼するときは、行政書士に相談できます。酒類販売の申請に自分で取り組むなら税務署へ相談して要件や提出書類の指導を受けるといいでしょう。

税務署では酒類販売が初めての人向けの研修があるため安心です。しかし、酒類販売の内容把握は容易ではないため、専門家に相談して必要書類の作成から申請まで代行してもらう方法もおすすめです。

申請に必要となる書類が揃ったら、管轄税務署へ申請書を提出します。申請書を提出すると、必要に応じて現地調査される場合があります。税務署より免許交付の通知があったら、税務署に出向いてください。無事に免許交付がされたら、酒類の販売ができるようになります。

申請後〜免許交付までの期間

酒類小売業免許の場合は、最短2か月で免許が交付されます。しかし、提出した書類に誤りがあると修正が必要となるため、さらに期間が長引くことがあります。書類の内容が不十分な状態で申請することはできますが、税務署から修正を求められればそれだけ時間がかかるため、事前に修正がないか確認しましょう。

2か月という期間は一般消費者向けや飲食店に酒類を販売する場合で、卸売の場合はさらに時間がかかると考えておいてください。

酒類販売免許取得のために提出する書類

申請の際には、添付書類が揃った状態での申請がおすすめです。書類に不足があると審査が遅れることがあるため、しっかり揃った状態で申請しましょう。提出する書類は、申請者が法人の場合と個人の場合で異なります。

【法人】

  • 履歴事項全部証明書
  • 定款
  • 3事業年度の財務諸表

【個人】

  • 住民票
  • 最近3年間の収支計画書など

【共通するもの】

  • 申請者の履歴書
  • 契約書等の写し
  • 土地・建物登記事項証明書
  • 地方税の納税証明書
  • 酒類販売業免許申請書チェック表
  • 酒類販売業免許の免許要件契約書

また、通信販売をしたいときは、通信販売における表示を明示したカタログ・販売しようとする酒類の説明書・酒類の製造者が発行する証明書が必要です。卸売の場合は、仕入先や販売先の取引許諾書を取得しておいてください。

登録免許税などの費用

酒類販売業免許の申請では、登録免許税がかかります。免許税は1審査あたり30,000円です。1つの審査では2種類の免許申請まで可能で、まとめて申請すると費用の削減ができます。

また、注意が必要なのは、店舗や販売場所ごとに登録免許税がかかる点です。複数の場所で販売するときは、店舗数分の登録免許税がかかります。登録免許税がかかるのは交付される段階のため、審査に通らなければ費用はかかりません。

お酒の免許申請は飲食店開業の第一歩

このように免許取得は簡単ではなく、事業計画作成や要件を満たすための準備期間が必要であり、実際に申請してから免許取得までに約2か月はかかるでしょう。

その一方で、事業計画の策定や販売形態の構築などに自ら関わることで、経営に必要なスキルを磨く又とないチャンスであるとも言えます。

酒類販売業免許はもちろんですが、お酒を製造する免許である「酒類製造免許」の場合は、さらに厳密な事業計画や細かな要件が求められます。実際に、私は製造免許に関わった経験がありますが、作成書類も膨大となり、税務署・国税局から求められる内容も多岐に渡るものでした。

とくに、申請者ご本人が考える事業計画は「販売地域の特性」「予想される顧客層」「自社の強み」「取引予定先の見込」等について、実に緻密に考え抜かれた圧倒的な内容で驚愕したことを覚えています。

つまり、「酒類の免許取得=税務署が認めた事業計画を作り出した」と言えるため、ぜひ自信を持ってお酒の販売に挑戦してほしいと思います。

事業計画書は酒類販売業免許の取得だけでなく、融資などの資金調達にも必要となってきます。綿密な事業計画書を作成した経験を、資金調達や事業を紹介するといった「経営者として避けては通れないビジネスシーン」でも活用してください。

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また、冊子版創業手帳(無料)でも、資金調達にも使える事業計画シートをご提供しております。これまでに多数の起業家の方が使用されており、実用的なシートになっております。こちらもぜひお試しください。

(監修:High Field行政書士事務所 代表 行政書士 方波見 泰造(かたばみ たいぞう)
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳別冊版「飲食開業手帳」は開業までの準備とともに開業後いかに成長させていくかまでを網羅した飲食店開業のポイントをまとめたガイドブックです。無料でお届けしますのでご活用ください。

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