メンテモ 若月 佑樹|車整備工場を探せる「メンテモ」でユーザーと整備工場の両者の課題を同時に解決する

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年01月に行われた取材時点のものです。

25歳の連続事業家が山梨で「メンテモ」を創業した理由とは?


車の整備や修理を行う工場は、サービス内容や価格をネット上に公開していないことが多く、初めて依頼するユーザーとしては、不安な気持ちのまま電話をしている方が多々います。一方で車の整備や修理を行う店舗側としても、業界全体での人手不足が続いており、業務の効率化が急務となっています。

そこで、車ユーザーと車両整備店舗の両者の課題の解決を目指しているのが、ネット上で自動車整備・修理店舗を探せる「メンテモ」を運営する若月さんです。

今回の記事では、若月さんが山梨県でメンテモ事業を創業した経緯や業界が抱える課題について、創業手帳の大久保が聞きました。

若月 佑樹(わかつき ゆうき)
株式会社メンテモ 代表取締役
山梨県で起業した25歳の連続事業家。19歳で匿名チャットサービス「NYAGO」を立ち上げ、CEOに就任。その後、祖父が自動車鈑金工場を経営していること、自身も2台車を所有するなど大のクルマ好きだったことが高じて、新しい事業として地元の山梨県でメンテモを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大学卒業直後にスタートアップと出会い起業を決意

大久保:まずは若月さんの生い立ちから伺えますか?

若月:私は生まれた時から周りに会社員が居ない環境で育ちました。

父方は宝石店、母方は車関係の工場を経営していたので、私自身小さい頃から将来は会社を営んでいきたいという思いを持っていました。

中学・高校の頃から、海外から商品を個人で輸入して国内で販売してみたり、友人とアプリを作ってみたりと、起業の走りのようなことは早々にやっていました。

アプリを作るために学校を休んでシステムを学び、コーディングする計画を考えていたほどです。

高校卒業後、バックパッカーで海外を旅したくて、お金を稼ぐ方法を探していたところ、ランサーズ経由で私を採用してくれたのがあるスタートアップで、それがスタートアップとの初めての接点でした。

そのスタートアップにそのまま就職することとなり、様々な起業家と繋がりを持ち、現在の起業に至るという流れとなっています。

大久保:アメリカへ留学もされていたとのことですが、どのような経緯だったのでしょうか?

若月:元々、高校卒業後はアメリカの大学に行くつもりでした。ですが、ギャップイヤー中にスタートアップでお世話になり、今アメリカに行くよりも、日本でこのまま経験を積む方が絶対に楽しいと確信を持ってしまいました。

とは言え、アメリカへ行ってみないとわからないと思い、一旦は渡米したんです。結局は入学金を支払う前に見切りをつけて、日本に帰国しました。

最初に作った事業は匿名チャットサービスの「NYAGO」

大久保:起業準備で大学に行く人もいるくらいなので、起業できるとわかったなら、その判断は1つの正解でもありますね。

若月:起業のチャンスはいつでもあるわけではないと思っていたので、急いで帰りのチケットを取りました。

大久保:その後、アプリを作られたということですね?

若月:当時は青春の心意気で、18〜19歳の今じゃないと作れないものを提供したいという思いで起業しました。

ありがたいことに初動がすごく良かったため、3日間寝なくても平気というほどアドレナリンが出ました。

内容としては、一定時間で消えるメッセージアプリなのですが、消えてしまうからこそユーザーの離脱が早く、マネタイズにも苦労しました。

その後、軸となるサービスが作れず、2019年5月にチームは解散となり、これで第一創業期は閉じました。

2つ目の事業として車整備工場を探せる「メンテモ」を山梨県で創業

大久保:そこから今の車関係の第二創業期に入ると思いますが、その経緯から教えてください。

若月:第一創業期が終わり、正直なところ、気持ちが落ち込んでしまっていました。ちょうどその時、個人で持っていたビットコインの価格が上がったので、その利益で車を購入しました。

当時、東京に住んでいましたが、地元ではない場所で故障の修理やメンテナンスをする際、どこのお店に持っていけば良いかわからず困りました。

まさに、祖父がやっていたような街の自動車工場を探せるサービスがあれば良いのにとひらめき、現在運営中のWebサービス「メンテモ」の立ち上げに至ります。

大久保:VCの方がよく言う、マーケットを知る・ユーザーを知る、ということに関しては、すでに知られていたということですね。

若月:幼い頃から、自動車整備・修理を扱う自動車アフターマーケット市場には、どんな人がいて、どのような商習慣があるのかは知識として持っていました。

そこに自分自身が車を持つことになり、ユーザーインサイトがわかるようになり、さらにプログラミングというスキルがかけ合わさり、当サービスとなりました。

大久保:前回と比べて、最初の反応はいかがでしたか?

若月:正直言って、地獄でしたね(笑)。

大変だった点としては、ユーザーも登録する修理屋さんも、両方集めてこなければいけないというところです。

山梨県内で10数店舗ほど加盟いただきローンチしたところ、反応が芳しくなく、友人や知り合いにおすすめして予約を増やす、という期間が1年ほど続きました。

そこからやっとオーガニックからの流入、予約が増えてきました。

大久保:その1年間でピボットなどがあって、良くなったということでしょうか?

若月:小さなプロダクトの変更は無数にありました。

ユーザーの声を探していくうちに、もっと予約を増やすための仮説を10個出して、1つが当たって良くなる、という繰り返しでした。

最初のターゲットは整備鈑金工場でしたが、整備ができるガソリンスタンドさんに加盟いただけるようになりました。

その中には、1社で30店舗経営されているところもあり、1営業1店舗だったところから、1営業数十店舗に拡大できたことが最初の拡大期です。

さらに加盟店が増えてきて、エリアのカバレッジが高まり、加速していきました。

車整備の「内容と価格を見える化」してユーザーが安心して選べる環境を作る

大久保:今後の展望を教えてください。

若月:長く整備鈑金工場・ガソリンスタンド関係に携わらせていただき、明確な困り事として感じるのは、やはり「人手不足」です。

ホワイトカラーと比べてブルーカラーの採用は難しく、整備鈑金工場やガソリンスタンドとしては、少ない人数でオペレーションを回すことがテーマとなっています。

ガソリンスタンドさんを例に挙げると、予約システムやオペレーションも各店舗で構築・改善する必要があり、本業以外の業務に工数が多く取られてしまっています。コンビニエンスストアのように本部が全てオペレーションをパッケージ化している業態ではなく、デジタルやWebの活用も進んでいません。

そのため、彼らの業務効率化やオペレーション構築に寄与できたり、その人がしなくてもよい業務をアウトソーシングできる仕組みを作ったり、ということができれば、与えられる影響は大きいと考えています。

その中で、我々が巻き取れる業務を増やす方法を模索しています。

大久保:近年、車業界における整備不良に関するニュースを定期的に目にする機会がいありました。その点、御社にとっては影響はありましたか?

若月:プラスに働いています。

飲食店のポータルサイトのように、小さいお店にスポットが当たる当社のサービスでは、サービス内容や口コミを誰でも確認できます。

そのため、初めてのお客様でも安心して点検や修理を依頼できると好評です。

さらに、これまで料金については一般的には公開していないお店が多かったのですが、ある程度の作業内容が見えるタイヤ交換やバッテリー交換などは、情報公開していこうと進めています。

大久保:金額を公開するのはなぜですか?

若月:その理由は、エンドユーザーが選んで直接依頼をする時代だからです。

そのため、妥当な値付けをして、事前にユーザーからお金をいただく仕組みを広げています。

例えば洗車料金は、車両のサイズによって異なりますが、そのサイズ判定は実は曖昧で担当者によって判断が分かれてしまうケースがあります。

事前に料金が明示されていないと、日によって請求料金に違いが出てしまう恐れがあり、ユーザーに不信感を抱かせる可能性があります。店舗としても、安くしすぎてしまうリスクも考えられます。

このような課題を1つずつ解決することで、業界スタンダードの向上を実現していきたいです。

大久保:車業界で独立したい方にとっては、小さな会社でも信用をつけて、成功に向けて進めそうですね。

若月車のサービスは品質と価格が重要です。サービス内容と価格を事前に確認できるというのが当社サービスのコアなバリューなので、今後も強めていきたいです。

大久保:新しいテクノロジーを使って、新しいニーズを生み出していくということですね。

日本を支えてきた車業界の「不便さ」をITサービスで解決したい

大久保:車業界における若月さんの役割は何だと思いますか?

若月:車業界は、ITとは一番離れた業界の1つですので、インターネットが当たり前の時代だということを広める役割として、これからもやっていきます。

大久保:ITサービスだと、東京の方が需要は多いです。ただし、車業界のサービスであれば、地方の方が絶対的に恩恵は大きいと思います。

そこで、若月さんが山梨で成功モデルを獲得されたのが、素晴らしいと思いました。

若月:山梨で車は必需品ですが、東京で車に乗っていると贅沢品と思われることもあります。山梨と東京では、車に対してこんなにもギャップがあります。

日本では多くのことが東京に集中していますが、視野を広げると、車社会が当たり前になっている地方の方が多いので、まだまだチャンスは多いと考えています。

大久保:車業界は歴史のある業界ですが、その業界で新しいサービスを広げていくことに対しては、どのようにお考えですか?

若月:日本に数十年前からあるビジネスは、今までの日本の成長を支えているため、とても尊敬しています。

そのため、車業界においても、私は全く新しいものを作り上げるというよりは、昔からあるもののお手伝いをしていくことが、人生を通してやりたいことです。

それは車業界だけでなく、様々な領域で昔からある会社と手を組んでビジネスを支えていけば、日本の不便なことが解消される。それを一緒に作り上げていく人が増えたら良いなと思っています。

さらに、人が足りなくなってくる時代に向けて、少しでもお手伝いができたらと思っています。

大久保:社長が成長すると、会社も成長するので、楽しみです。

大久保写真大久保の感想

山梨を拠点にした若者のスタートアップがこのメンテモ。人材が確保しやすく、コストの安い地方こそテクノロジーを活用するとチャンスが広がると思いますが、そうなっていないのが日本の現実です

例えばIT系のスタートアップは東京に極端に集中しがちですが、例えば「車」の環境で言うと東京は極めて特殊です。駐車場のコストや、車の使い方の違い(地方は一人一台のライフライン、東京の都心部では趣味の側面がより強くなる)があり、日本の大多数の市場である「地方」の現実へのリーチや理解のしやすさが東京に勝る分野も多いです。

このメンテモのように地方発のスタートアップが増えてくると日本はもっと面白くなってくると思います。車修理業界のような古くて大きい業界に若月さんのような若者がテクノロジーで新風を吹き込んでくると業界自体も活性化してくると思いますので今後に期待ですね。

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(取材協力: 株式会社メンテモ 代表取締役 若月 佑樹
(編集: 創業手帳編集部)



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