TimeTree 深川 泰斗|全世界で登録ユーザー3700万のカレンダーシェアアプリはどう生まれたのか?

創業手帳人気インタビュー

時間は人生そのもの。予定の共有と可視化で有効に時間を使える世界へ

どんな人でも使える時間は、1日24時間と限られています。希少な時間をどのように使うかによって、人生そのものが変わっていきます。

いかに時間を有効に使えるかが、よりよい明日を送るためには重要です。

株式会社TimeTreeは、時間をつなげることで人々の選択肢を広げています。カレンダーシェアアプリ「TimeTree(タイムツリー)」は、全世界で登録ユーザー数が3700万のサービスです。

どのようにしてTimeTreeは生まれ、拡大したのか。創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

深川 泰斗(ふかがわ やすと)
株式会社TimeTree CEO
九州の大学院で社会学・文化人類学を学び、2006年にヤフー株式会社へ入社。ソーシャル・コミュニケーションサービスの企画を担当。2012年にヤフーからカカオジャパンへ出向後、2014年に株式会社JUBILEE WORKS(現 株式会社TimeTree)を共同設立。2015年3月にカレンダーシェアアプリ「TimeTree」をリリース、2021年7月に日程調整サービス「Tocaly(トカリー)」をリリース。2022年4月よりサブスクリプションプラン「TimeTreeプレミアム」を提供開始。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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メンバーありきで起業

大久保:深川さんが起業した経緯を教えてください。

深川:前職はヤフー株式会社でプロダクトマネージャーとして、サービス企画の仕事をしていました。その後、ヤフーと韓国企業のカカオが合弁会社を作ることになり、2012年にカカオジャパンへ出向し、2年ほどメッセンジャーアプリなどの企画をしました。
ただ、なかなかうまくいかず、提携解消になったんです。
そのとき、一緒に働いていたメンバー4人とチャレンジを続けたいと思い、全員で会社を辞めて独立したのが起業の経緯です。アイデアがあったというよりは、メンバーありきで起業しました。

グローバルで3700万人の登録ユーザー

大久保:事業内容について教えてください。

深川:カレンダーシェアアプリ「TimeTree」を提供しています。もともと、カレンダーに少し不満がありました。
予定というのは相手と組まれることが多いのに、1人用のツールを使うのは不便だと思っていたんです。はじめから共有を前提にしたり、コミュニケーションを組み込んだほうが便利ですよね。そう考えて作ったのがTimeTreeです。
現在、全世界に3700万人の登録ユーザーがいます。半分強が日本のユーザーで、残りは海外のユーザーです。家族やカップル、会社やスポーツチームなどで使われています。

大久保:全世界に3700万人もの登録ユーザーがいるんですね。海外だと、どの国のユーザーが多いのでしょうか?

深川:日本の次に多いのが、アメリカです。あとはドイツ、台湾、イギリス、韓国などが続きますね。

大久保:これだけ多くのユーザーに広まったのは、どうしてでしょう? 海外でもプロモーションにも力を入れているのでしょうか?

深川:いえ、海外でプロモーションはしていません。夫婦間で「この日、空けておいてって言ったのに!」みたいなケンカが起こるのは、人類共通なんでしょうね。これが根っこにあります。そのうえに、いろいろな工夫をしました。あとはラッキーもありましたね。

プロダクトをユーザーに広めるための工夫

大久保:プロモーションをせずに、ここまで広がっているのはすごいですね。どのような工夫をしたのか教えてください。

深川:何か用事があればメッセンジャーで連絡すると考え、それぞれの国で一番使われているメッセンジャーツールを調べました。そして、TimeTreeを使うと、その国で一番使われているメッセンジャーツールが開くように設定しました。
TimeTreeは、共有するために使うツールです。1人で使う方は、ほとんどいません。
なので、1人が気になったら「一緒に使おうよ」と誰かを誘ってくれます。そうすると、ユーザー数が増えやすいですよね。
しかも、1人だと飽きたら辞めてしまいますが、複数人で使うと継続しやすいです。

大久保:ラッキーもあったとおっしゃっていましたが、どのようなラッキーがありましたか?

深川:Appleさんに評価していただけました。リリースした年に、その年のベストアプリとして、日本と中国と韓国で選んでもらえました。
その後も、いろいろな国で特集してもらえたのは大きかったです。Apple CEOのティム・クックさんもオフィスに来てくれました。

大久保:Googleカレンダーなどの競合もありますが、TimeTreeならではの強みを教えてください。

深川:「共有”も”」できるカレンダーアプリは結構あります。でも「共有の”ため”」に作られたカレンダーアプリはありません。
TimeTreeは共有に特化して、スマホユーザーが使いやすいように設計しています。

ITリテラシーの高い方は「Googleカレンダーで共有できるよね」と言いますが、誰もが高いITリテラシーを持っているわけではありません。パソコンでの使いやすさを考えて設計されたものと、スマホでの使いやすさを考えて設計されたものは、まったく違います。

大久保:スマホユーザーを意識したのですね。TimeTreeは完全無料で使えますが、どのようにマネタイズしているのでしょうか?

深川:現在は広告によって収益を得ています。4月19日に発表いたしましたが、課金プランをはじめます。有料プランに入っていただくと、共有機能と手帳機能がアップグレードされます。

日程調整SaaS「Tocaly(トカリー)」をリリース


大久保:これまで提供しているサービスはTimeTreeのみでしたが、昨年2021年7月に日程調整SaaS「Tocaly(トカリー)」をリリースされました。この狙いについて教えてください。

深川:ビジネスにおいて、予定調整のやりとりをする手間や無駄な時間を可能な限りなくしたいと考えて生まれたのが「Tocaly」です。
社内ではTimeTreeのことを「箱」と呼んでいます。箱には他社サービスも含めて、いろいろなものがあります。Tocalyは、AさんとBさんの箱をうまくつなぐ「パス」です。

日程調整できるサービスはいろいろとありますが、Tocalyは極限まで簡単にしていく方向で進めていきます。
いずれはTocalyとTimeTreeをつなげる予定です。TimeTreeとつなげられる日程調整サービスはTocalyだけ、とすれば強みにもなります。弊社のミッションは「世の中の時間をつなげて、世界中の人々がよりよい明日を選択できるようにする」です。未来のことがあまりにも可視化できていなくて、そのせいで納得いかない選択や不便が多いと思います。
身近な情報を集め、それを適切につないで、納得できる明日の選択をできるようにしていきたいと考えています。

創業してからの苦労


大久保:深川さんは会社を創業して8年目ですが、これまでに苦労されたことを教えてください。

深川:苦労ばかりですね(笑)。
やはり人に関する苦労が多いです。弊社は、実験的な組織運営をしています。勤務時間も勤務場所も決まっていませんし、有休日数の上限も決まっていません。経費で何か買うのも、各自の判断です。上司や部下という関係もありません。現在、社員数が70人くらいまで増えました。5-10人くらいのときは、これまでのやり方で何の問題もありませんでしたが、組織が大きくなると悩ましいことが増えてきますね。

大久保:フラットな組織だからこその悩みはありそうです。社内では、みなさんニックネームで呼び合うそうですね。

深川:はい。僕はFred(フレッド)というニックネームです。ニックネームはそれぞれが自分で決めるのですが、僕は前衛ギタリストのフレッド・フリスから付けました。

大久保:いまは人に関することで苦労されているそうですが、資金面での苦労はありませんでしたか?

深川:資金調達は大変でした。とくに最初のころは、投資家の方に「カレンダー共有は流行らない」とよく言われて、ヘコむ日々を送っていましたね。
でも、10人中10人が良いと感じるものよりも、10人中9人が「よくわからない」と感じるものでないと、新しくないだろうなとは思っていました。途中から褒められることが多くなって、逆に不安になりましたね(笑)。

全世界で1億ユーザーを目指す

大久保:現在は累計で約46億円を調達していますね。3700万ユーザーもいれば、いろいろなことができると思うのですが、目指す数字はありますか?

深川:「予定管理が変わった」と言われるには、少なくともグローバルで1億ユーザーはいかなければと思っています。この1億ユーザーという数字は、最初から目指していました。予定を確認する行為は普遍的です。そこをアップデートできたら大きいだろうな、と考えていました。
世の中の人はアプリというものに、それほど興味がないと思うんです。その興味のない中で、いかに使ってもらえるかを考えるのが基本スタンスです。
新しいことを理解するのってストレスじゃないですか。プロダクトを作るうえで、その負荷をいかに軽減させられるかを考えています。

大久保:「ユーザーにどれだけ寄り添えるか」がポイントですね。

深川:本当にそうですね。ユーザーが使いたいと思えるかどうかです。

大久保:深川さんが「こういう世界にしたい」という世界観はありますか?

深川:世の中の情報量は、どんどん増えていっています。
情報量と選択肢はイコールに近いです。Spotifyに入っている音楽やNetflixに入っている映像は、1人の人生の時間すべてを使っても消費しきれないらしいです。
選択肢はたくさんあるのに、僕の時間は1日24時間と決まっています。
そうしたら「いま聴いたり見たりしているものより、もっと楽しいことがあるんじゃないか?」と考えだすと、苦痛になってしまいます。

僕の時間は、僕の人生そのものです。ダラダラ過ごす2時間と、子どもと一緒に水族館で過ごす2時間は同じです。子どもと一緒に出かけた2時間がもしなかったと考えると、人生が目減りしているような感じがしませんか?
先の選択肢をもう少し可視化したり絞り込めれば、自分の人生を悔いなく過ごせると思います。

プロダクトづくりの流れ


大久保:プロダクトづくりは、どのような流れでおこなわれたのでしょうか?

深川:リリース時にはアプリを起動すると「TimeTreeを誰と使いますか?」と聞いていました。データを調べた結果、家族と使っている人の満足度が高いことがわかったんです。次に家族で使っている方々に、どこが良いかをインタビューして、商品のキャッチコピーに活かしたりしました。
どの層に刺さっているかを調査して、その層にインタビューするというやり方です。

大久保:データを集めるだけではなく、実際にユーザーインタビューをしたのですね。やはり生の声は大事でしょうか?

深川:そうですね。インタビューは対面でおこないました。スマホをどうやって操作するのか、スマホカバーはどのようなものを使っているのか、といったことまで全部見ました。アプリのことを聞くというより、1日の生活の流れを聞きましたね。
「朝起きて、まず何のアプリを開きますか? それはなぜですか?」とか「TimeTreeは、どのようなシーンで出てきますか?」といったことを聞きました。
社内では「馴染みのレストランのつもりで運営しよう」と言っています。レストランだと、常連さんに「新しいメニュー作ったから食べてみてよ」とお願いして、感想を聞いたりするじゃないですか。そういうノリです。うちにもいつでも話を聞ける常連ユーザーさんがいます。
そういう常連さんに新しい機能のプロトタイプを見てもらい、感想を聞いたりしています。

TimeTreeの今後の展開

大久保:今後、TimeTreeをどのように展開していこうと考えているか教えてください。

深川:さらに多くの方に、TimeTreeを使ってもらうことを目指しています。
いまはTimeTree上で、主に人と人しかつながっていません。そこにお店やサービスなどがつながれば、人力で頑張っていた予定管理が楽になっていきます。
たとえば、Amazonで買い物したら、届く日時に自動で家族のカレンダーに予定が入るとか。そうすれば、自分以外の家族の買った荷物がいつ届くのかわかるので、誰かが家にいればいいわけです。
お店にTimeTreeをつないでもらったら「金曜の夜は、常連さんにビールを1杯サービスする」といった提案もできます。そういう時間の可視化ができると、有効に時間が使えるイメージです。
すでに「TimeTree 公開カレンダー」というサービスがあり、スポーツチームやお店が参加してます。
ユーザーが気になるチームやお店をフォローすれば、自分のカレンダーに試合日程やイベント情報が入ってきます。この使い方を広げたり、開拓していきたいですね。

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(編集:創業手帳編集部)

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