シンデレラバスト発案で話題の大学生起業家、ハヤカワ五味に聞くものづくりとビジネス

資金調達手帳

ラグジュアリーブランド『feast』デザイナー兼、株式会社ウツワ社長であるハヤカワ五味氏 特別インタビュー

(2015/07/16更新)

ネガティブなイメージであった貧乳を「シンデレラバスト」と表現し、「品乳ブラ」としてAAA〜Aカップ用の下着を展開している、ラグジュアリーブランドfeast。現在大学生でありながらfeastを立ち上げたハヤカワ五味氏に、立ち上げの経緯や、資金調達の方法、今後の展望などを伺いました。
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ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)
1995年、東京都出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科2年在学中。高校時代から服飾の創作活動を始め、デザインフェスタに出展。2015年に株式会社ウツワを興し、代表取締役に就任。同年5月にラフォーレにてポップアップ出展。6月に原宿で行った、「少女漫画」シリーズの展示予約会では初日だけで100人の来客があり、年末には渋谷のGARRET udagawaにて 新作「RPG」シリーズのお披露目ショーイベントを予定している。GOMI HAYAKAWAの妹ブランドにあたるラグジュアリーブランド『feast by GOMI HAYAKAWA』は「品乳ブラ」として一躍有名になる。

コンプレックスから生まれた、「品乳ブラ」

―まず「シンデレラバスト」や「品乳ブラ」生み出したきっかけや、ニッチと思われがちなところに目を付けた理由を教えてください。

ハヤカワ:もともと私自身、貧乳がコンプレックスなんですが、貧乳向けの商品はほとんど売っていません。

ショッピングモールに下着屋さんが3~4件入っていたとしても、全店舗で5個も売っていないくらい商品がない、とういうことを体感していたので、それを「自分で実際に形にすればいいかな」と思い始めたのがきっかけです。

小さい胸用のブラは一応あるにはあるんですけど、まず、ダサいんですよね。フルオーダーのものでも、やっぱりデザインがとてもダサいんです。

そこで、「大企業はこれが限界なんだ、だったら私がやったほうが早いな」と思いました。自分が欲しければ作る、人に何かを望むならまず自分から動くという理念を持っているので、文句を言う前に作ろうと思いました。

もともと私が服を作り始めたのも、「自分の欲しいものを作りたい」という思いからです。「自分がしたいことを自分でする」「自分が嫌だと思ったことは自分で変える」というような。

単純な考えですけど、それが今、様々な所に繋がっているんだなと思っています。

―シンデレラというコンセプトは、元々あったのですか?

ハヤカワ:シンデレラバストというのはワードとして使っているだけで、コンプレックスをさらに助長するような「貧乳」という単語を何とかしたいと思っていました。

コンプレックスを強める単語や、コンプレックスに対するそもそもの価値観を変えるというところを含めてブランディングなので、コピーから入ったり、ビジュアルから入ったり、いろいろな方面から攻めようとしています。

起業して資金が集まり、視界が開いた

―株式会社ウツワを起業したきっかけを教えてください

ハヤカワ:もともと個人事業主でやっていこうと思っていたので、起業する予定はありませんでした。けれども、アパレルは事業がだんだん大きくなってくると、権利関係がややこしくなります。

「シンデレラバスト」が、ツイッターの流行の言葉のランキングで上がってきたり、ニュースで扱われるうちに、いつのまにか他社が勝手に取り上げていたんです。「大人って容赦なく怖い事してくるんだ!」と感じ、自己防衛しなきゃと思いました。

以前、テレビにひどい扱い方をされて揉めたとことがあったんです。下手したらブランドを潰さざるを得なくなりますし、そうすると私自身がつぶれちゃうことになります。そこで、自分のブランドや権利を守る盾として、会社を作っておいたほうがいいかなと思いました。

「ウツワ」という社名ですが、言ってしまえば会社自体には価値がなくて、その中に入るものに価値がある、本当に器として作っているという意味で「ウツワ」という社名にしています。

―起業したことで、悩んだことはありましたか?

ハヤカワ:資本調達をどうすればいいのかとても悩みました。周りの人の話を聞けとよく言われましたが、周りで起業している人はIT系の人が多く、資金調達の面でかなりやり方が違うんです。

一億に売り上げが到達するのは小売りのほうが早いけれども、利益の出方として律儀に妥当な金額しか返って来ません。宝くじ要素がないというか、アメリカンドリーム感がないような(笑)。堅実に自分で売り上げを立てていかなければならないので、資本調達しづらいのです。

最初の頃は親からも資金提供を受けず、基本的に自分のお金だけでやっていたので、作れる商品数も少ないし、毎回完売してしまったりで大変でした。

クラウドファンディングも活用しました。15万円で申請していたのですけれども、いつの間にか140万円集まっていて、(手数料が抜かれたので110万くらいになるのですけど、)自分の想定以上のお金が集まりました。

この体験で良かったことは、自分の想定していた金額よりも1ケタ多い金額を扱うようになったことで、視界が広がったということですね。

それまでは自分の資金だけだったので、ポスターに何万円もかけられないと資金を削ったり、このモデルにこの金額は払えないと、資金注入する勇気がなくて、逆にクオリティーを下げてしまっていました。

そこへ110万円使ってください、むしろ使い切らなきゃダメなくらいなので、視界が広がって大きな金額を扱えるようになったと感じています。しっかりお金をつぎ込めばそれなりのクオリティのものが上がるということを間近で体感しました。

4月~5月くらいに、ようやく日本政策金融公庫の創業補助金が入り、自分の資本金よりも多めの金額を借りることができました。どうしても小売は資本力がものをいう世界なんです。次は水着やパジャマを作ろうと考えていますが、それを大きめのロットで作れるので、資金調達ができて良かったと思っています。

私、もともと凄いケチなんです。普段は、「お昼ご飯に500円も使うなんて!」と言ってお弁当作るくらいです。けれど、仕事の時などは、ここに広告で100万使うべきだとか、発注するのに200~300万かかるということが分かるようになってきました。ケタが増えていくことによってだんだん視界が広がるのかなと思っています。

心を動かされたら、お金を使っちゃう

―PRやブランディングに関して意識していることってありますか?

ハヤカワ:私は中学高校のときにフリフリしたロリータブランド服にすごい金額を使っていました。だから、心を動かされたらお金を使っちゃうという感覚がある程度わかります。

「自分がこれをされたらたまらないな」みたいな。完売しちゃったら余計欲しくなる、という気持ちが分かるので、それを実際に自分のブランドに生かしているというのはすごく大きいです。

あと、価格競争に走ってはいけないと思っています。大手メーカーと似たものを出して大手を超えるクオリティーを作ろうとすると、価格的に圧倒的にきついんです。だから、戦うよりも、別ベクトルでやっていきたいと思っています。
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コミュニティー内で紹介が紹介を呼ぶ人脈作り

―権利を守るために起業されたということで、権利や商標などは専門家の方にお聞きする形かなと思うのですけれども、どのように人脈などを作っていましたか?

ハヤカワ:弁理士の方は、たまたま私の展示会とかに行った時、「もともと興味あったんですよ」のような感じで、向こうから声をかけていただいたりしていました。

税理士や弁理士以外の方に関しては一番最初は自分で見つけたり、それこそ税理士に関しては親の使っている所に最初お願いをしていて、そのあとは紹介を通してという感じでした。

同じようなことをしているコミュニティーって、既に結構できあがっていたりするじゃないですか。その中で私はアパレルで、企業の方はIT関係が多く、他と競合することがないので、協力していただき紹介していただくことが多いですね。

―起業するとなってから、弁理士を知ったんですか?

ハヤカワ:そうなんです。技術系やアパレルは権利が一番大事ってぐらい大事じゃないですか。ITと同じ点は、そのままコピーで同じものを作れる点で、ITと決定的に違う点は、権利で守れるところです。

商標や意匠でかなり強めに守ることができるので、勉強し始めなきゃいけないなと思っていました。実際それで自分のブランドを守ったり、やりたいことができるようになったことが強みかなと思います。

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目標は、人をデザインするということ

―お客さんから言われて嬉しかったことはありましたか?

ハヤカワ:展示会の時にわざわざ遠くから来てくださる方がいるんです。原宿で展示会をやった時は、北海道から飛行機で来てくれた方や、中部のほうから来てくれている方もいました。

実際にお客さんから聞いた声でやってて良かったと感動したのは、背骨が歪んでいる方だったり、胸が陥没する病気の方と話した時です。私としては胸が小さい人向けという想定でやっていましたが、うちが作ったブラジャーにすごく救われていますと言ってくださって。本当に辛かったんだと思います。泣きながら話してくれました。

そういう時は、やっていてよかったと感じる瞬間ですね。

私自身、ブランドで利益を出すとか食っていくとか、正直どちらでもいいんです。利益的な話でいったら、ブランド以外の仕事でも食っていく自信はあるので。

でも、やっぱりブランドをやっていて良かったと思うのは、人の人生を変えたり、価値観を変えるようなことが仕事としてできたということです。そこが個人的にはすごくよかったなと思っています。

―もともと人助けをしたり人に喜ばれたいという思いが根本にあって、それがたまたまアパレルだったということですか。

ハヤカワ:はい。私は人をデザインするということを目標に掲げています。

私がロリータ服に結構人生を変えられた部分があって、人に対していい意味で精神的な影響を与えることが、他の人にもできたらなあと思ってやっています。今は服でやっていますけれども、今後また別のイベントだったり他のことでできるかなと思っています。

人を変えることが目標で、その手段としての物作りであり、販売であり、宣伝なので、そこは忘れないようにしたいと思っています。

自分は何もできない、だから助けてくれる

ーチームとして物作りをやるなかで、大切にしていることはありますか?

ハヤカワ:私が一番大切にしているのは、別に意識してやっているわけではないですけれども、それぞれの人たちをリスペクトするということです。

私はもともとすごくプライドが低くて、自分はダメだと思っているので、自然にいろいろな人を尊敬しています。カメラマンとか事務を手伝っている子も。だからうまくいってるのかなと思っています。

私もクリエーターなので、私の上にリーダーがついて何かやることも結構多いです。けれども、自分が偉いと思っているリーダーはだいたいダメで、それぞれのことを信頼していなくて、「自分がやったほうが早いけど、君たちにやらせてあげるね」という人が意外と多くいます。

それだとモチベーションが上がらないからクオリティも下がるし、最終的にしわ寄せが来て、それをリーダーが尻拭いして、「やっぱり俺はすごい」という悪循環が起こってしまいます。

私はみんなと一緒にやるということを意識しています。

人間が3人いて、その後ろに台車が付いていた場合、台車に乗っている人がリーダーか、3人の先頭に立って一緒に引っ張るのがリーダーかという話があります。私は、先頭でみんな引き連れていくほうが私であり、代表というものかなと思っているので、そこは忘れないようにしています。

あと強いて言うなら、基本的に何もできないので、みんなに何かしてあげなきゃと思われるようです。「ハヤカワ五味がなんかヤバイ、助けてあげなきゃ」みたいな部分が根底にあるのかなと思います。

ーそれがあって130人も応援者が集まったんですね(笑)

ハヤカワ:たぶん、ハヤカワがやることだから楽しんだろうみたいなのがあったんだと思います。実際、楽しく仕事することを理念としてやっているので、そういう部分がやっと伝わってきてよかったなと思います。

やはり1つ信用を付けてしまえば、今後何をやるにしても自分の考え方を認めてもらいやすくなるし、変な話、ギャラがなくても一緒にやりたいという人じゃないと良い物ってできないんだなっていろいろなところで実感しました。今、やりたいことを一緒にやりたい人とやれて、すごく幸せだと思います。

ーハヤカワさん自身がちゃんと声を発信しているからこそ、セルフブランディングがうまくいっているという印象ですね。

ハヤカワ:大きなギャラは渡せないし、本当に「仕事=楽しい」が基本ですから。でも仕事じゃなくても別に楽しければ何でもいいんです。

普段から楽しいことをしようと思っていて、突然「焼き鳥パーティーします!」みたいな(笑)。隣の人が聞きつけたらしくて、まだ焼いてないのに不動産屋さんから「焼き鳥してますよね」って電話がかかってきたこともありましたけど・・・。

いろいろワイワイとやっているんですけど、それも含めて全体で楽しんでもらっているから1人のパフォーマーとしてもいいかなと。今後もこんなスタイルで進んで行こうと思っています。

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次はレクリエーションに挑戦

―胸が小さい人向けがメインになっていますが、巨乳の人も胸の形が崩れやすいなどの問題を抱えていると思います。そこに対して挑戦することは考えていますか?

ハヤカワ:まだ考えていないというか、今後もやっていかないと思っています。

私自身が胸が小さいという悩みがあるから胸が小さい人向けのブラジャーを作れるだけで、大きい胸の人向けは大きい胸の人が作ったほうがいいと思うんですよ。ビジネスとしては可能性があるし、やれば利益は出ると思います。私がやれば広告的には外さない自信もあります。

でも、私がやってもすごく空虚というか、それこそ本当にビジネスでしかないのです。ちょっとニッチな市場にも大手が手を出したくなるくらいにうちの企業がスケールして、「あっちは貧乳やってるからこっちは巨乳やるか」みたいに大手が競い始めてくれたらこっちの勝ちかなと思っています。

―今後アパレル以外にやってみたいことは、ありますか。

ハヤカワ:すでに面白法人カヤックもやっていますが、私は本当に今、アパレルの仕事しか基本的にお金が入ってこなくて。ハヤカワ五味として入ってくる仕事は、たいてい講演系かメディア系かアパレルです。

それがつまらないと思っていてカヤックにいるので、アパレル以外のプロダクトだと、1対1のイベントなどですね。今ちょっと気になっているのはスポーツやレクリエーションと言われる分野なので、今後やっていこうかなと思っています。

たぶんレクリエーションは直近で動き始めそうなので、ぼちぼちやっていくかなという感じです。やはり楽しい人達が多いので、面白いですね!

これからベンチャー起業を目指す、若手起業家へ

―ハヤカワさんは19歳。皆さんに若手経営者と言われると思います。これから大学生が自分でベンチャーを起こすということが増えてくると思いますが、若手の起業家と呼ばれる人たちに送るアドバイスやメッセージはありますか?

ハヤカワ:起業は目標でも目的でもなくて、手段でしかありません。何をやりたい、こうなりたいという願望がなかったら、どこかでしくじると思うので、その理念だけは本当にしっかりと持ってやるべきだと思っています。

起業を1つの経験としてやってみるとか、就職に有利になるからやるということであれば別にいいと思いますが、本当に自分のやりたいことがあるなら、そこを軸にして、起業を手段としてもっとライトに考えて使えるようになっていったらいいのかなと思います。

いろいろな人から様々なことを言われるし、悪い誘惑をしてくる人もいます。けれどもちゃんと軸を持っていれば、その点でブレることはないんです。

若手でやりはじめると一気にお金が手に入って、目標がブレたりすることがありがちです。だから最初の目標が何だったのか、しっかり思い出して進んでいけばいいのかなと思います。

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(取材協力:株式会社ウツワ)
(編集:創業手帳編集部)

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