P2C Studio 重本隆之|「P2C」の時代が到来!約半年で7億円の売上を立てた、ヒトを起点としたブランド&モノづくり事業

創業手帳

起業を経験した上で「社内起業」を選択。直談判した事業で社内起業するメリットとは

影響力のある個人が、商品やサービスを消費者へ直接販売するビジネスモデルである「P2C」(Person to Consumer/P to C)は、YouTubeやSNSの普及とともにマーケットを拡大しています。

今回は、YouTubeクリエイター市場でトップを走るUUUMに新規事業を提案し、子会社の代表取締役社長に就任したP2C Studioの重本さんに、起業家がP2C事業に乗り出すメリットや、社内起業の利点を創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

重本 隆之(しげもと たかゆき)
P2C Studio株式会社 代表取締役社長

国内系コンサルティング会社で経営コンサルタントとして4年間従事後、起業しEC事業やコンサル事業を展開。社会により大きな影響を与えられる仕事を志向し、大手インターネットサービス会社にてグループ横断でのマーケティング施策や新規サービスの事業責任者を経験。 総合PR会社にてD2C事業子会社および関連会社の2社を立ち上げから拡大までを役員として牽引。
2020年12月、P2C事業立上げの新規事業責任者としてUUUMに入社。P2C・グッズ・ライセンス・ECなどを展開するP2C Studio株式会社を2021年6月にUUUM子会社として設立。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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企画書を持参し、社内起業を直訴


大久保:まず、これまでのキャリアを教えていただけますか?

重本:元々、会社を作りたいという思いがあったので、経営者と仕事ができ、なおかつ若いうちから経営戦略や事業課題と向き合えるコンサル業に興味を持ち、船井総合研究所に入社しました。入社から4年が経ち、お客様を獲得してコンサルティングサービスを提供し、お金を頂くという一連の流れを一人でできるようになったことから、27歳の時に独立し、会社を立ち上げました。

コンサルティングサービスを提供しながら、自ら商品を仕入れて販売するEC事業も展開するなど、それなりの収益を得ることはできていたのですが、「もっと世の中に大きな影響を与える仕事をしたい」と思い、30歳の時に楽天グループへ転職しました。そこで3年ほど働く中で、「IPO(新規上場)にチャレンジしたい」という思いが強くなり、スタートアップへの転職活動をしている時に、ベクトルで専務を務める楽天の元上司から「IPOができそうな会社を目利きできるのか? CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)事業を通して、IPOを狙うスタートアップをたくさん見た上で、本当に入りたい会社を見つければいいんじゃないか?」と言われ、PR会社でありつつも、多くの会社に投資をし、上場支援やPR・コミュニケーション戦略を担うベクトルに転職しました。

しかし、入社後にコーポレートベンチャーキャピタル事業に携わることはできず、再び転職を考えている時に、ベクトルの現取締役副社長の長谷川創さんと話す機会があり「IPOにチャレンジしたい」と話をしたところ、D2C事業を担う子会社ができるタイミングで「EC事業の経験を活かして役員をやってみないか」と打診していただき、36歳の時に子会社の役員に就任しました。

大久保:その後、UUUMに転職されたのですよね?

重本:はい。ベクトルの子会社にいる時に、モデル兼YouTuberの古川優香さんと協働で「RICAFROSH(リカフロッシュ)」というコスメブランドを作ったところ、1年で10億円規模のブランドに成長したことから、これだけの経済規模・事業規模を生み出せるレベルで企業の時代から個の時代に移り変わっていることを強く感じました。今後はますますP2Cのような「ヒト」を起点としたブランドづくりや、プロセスエコノミーでモノが売れていく時代に変わっていくと考え、その時代の流れに乗るためには、高いエンゲージメントを得られる動画の活用が必要不可欠だったことから、トップクリエイターを抱え、YouTube業界において圧倒的なアセットを保有するUUUMに転職しようと決意しました。

そこで、UUUMの過去のIR資料にて事業内容や売上構成比を確認すると、2~3年前には掲載されていた物販事業が最近のIR資料には載っていないことや、本業以外の新規事業が必要なことが分かり、「これはチャンスだな」と思いました。UUUMの管理部門を管掌する執行役員の渡辺崇さんはサークルの先輩で、Facebookで繋がっていたことから、「お久しぶりです。お元気ですか?さて、P2Cってご存知ですか?本来、P2C はUUUMのようなクリエイターを抱えている会社が圧倒的一番になれるはずです。ぜひ私にやらせてください」とプレゼン資料を添付して連絡したのが、転職のきっかけです。

大久保:自ら売り込んだのですね。

重本:はい。元々UUUMがP2C事業を行っていたわけではないので、ポジションを募集していたわけでも、ポジションが空いていたわけでもないんです。でも、自分のやりたい事業があり、提案できるコネクションもあったので、「P2Cカンパニー設立のご提案」という企画書を持っていきました。そこで、子会社にしてほしい旨と、いつかはIPOさせてくださいという相談をして転職し、入社半年後に子会社としてP2C Studioを設立する際に、代表取締役社長に就任しました。

大久保:なるほど。社内起業という形なのですね。実は、私もGMOメイクショップに移る際に企画書を持っていきました。企画書を持っていかないと、希望する事業に携われない可能性が高まるので、何かやりたいことがある場合は企画を持ち込んで自分で事業を作るというのも一つの手ですよね。

重本:そう思います。

大久保:IR資料も情報の塊ですから、それを転職に活用するのは非常に有効な手段ですね。

重本:IRライブラリーを見れば期ごとの資料を閲覧できますから、過去の資料と比べることで、「最近はこの事業に力を入れているんだな」とか「この内容が削除されたということは、この分野は諦めたんだな」とか、何にフォーカスしているのか会社の思いを把握することができるので、自分が持っていきたいストーリーに寄せられる内容をピックアップし、企画を提案するための裏付け資料として活用しました。

親会社のリソースを有効活用


大久保:事業案を持っていて、なおかつ経営を分析する力があったとしても、ゼロから会社を作るとなると相当な時間と資金が必要ですから、起業したい場合は社内起業も一つの手ですね。

重本:そう思います。VC(ベンチャーキャピタル)の友人に「P2C事業をやろうと思うんだけどどう思う?」と相談すると、「シード期に数千万円前半の投資は得られるのではないか」と言ってくれたのですが、継続性や在庫投資を考えると、1期目から大きな売上を立てることは難しいと思ったんです。私の管掌するP2Cブランド領域の事業では、2021年12月にブランドを立ち上げ、半年ほどで約7億円の売上を立てることができました。さらに今期は30億円を目標にしているので、30億円の売上を立てるためには、それ相応の在庫の確保が必要ですから、それを全部自分でやろうとすると、イチからやる楽しさもあるとは思いますが、おそらくファイナンスで仕事が手一杯になり、本業に費やす時間が削られてしまいます。また、資本力がある会社の方がマーケットを取りにいけますし、スタートアップでは話を聞いてもらうことが難しい大企業にも、「上場企業かつYouTuberマネジメント市場のトップ企業の子会社です」というと話を聞いてもらえるので、営業のしやすさも感じています。

大久保:ベンチャーで30億円資金調達するのはなかなか難しいですから、起業の目的が「事業を作ること」なら、既存の会社のリソースを活用するのもメリットが大きいですね。

重本:そう思います。キャピタルゲインは難しいですが、ストックオプション制度もありますし、報酬制度も交渉しました。「社内企業って、所詮サラリーマンでしょ」と思われがちですが、それは「やり方」と「考え方」、そして「親会社への交渉の仕方」によって変わると思っています。ハイリターンではないかもしれないけれど、リスクはほぼないので、ローリスク・ミドルリターンの起業ができます。現在、親会社から相当額の事業資金を借りていますが、それを全部自分で調達するのは大変なので、資金調達のための時間を事業の成長に使えているのは非常にありがたいですね。

ヒトを起点とする「P2C」とは?


大久保:P2Cとは何でしょうか?

重本:弊社では「ヒトを起点としたブランド・モノづくり」という表現をしています。UUUMという母体があるのでYouTuberが多いものの、芸能人とともに立ち上げたブランドもあります。

大久保:P2Cが出てきた背景は多々あると思いますが、SNSやYouTubeで人気のインフルエンサーの存在が大きそうですね。

重本:はい。SNSの広がりに合わせてP2C市場も拡大しています。従来は「ヒト」が芸能人やスポーツ選手など著名人に限られていましたが、近年は、SNSやYouTubeであらゆるジャンルの方が情報や自分自身のことを発信し、チャンネル登録者数やフォロワーが500万人や1,000万人という方も出てきたことから、インフルエンサーがプロデュースするブランドが事業として成り立つ規模になってきました。

大久保:ターゲット層に向けて宣伝するという意味では、テレビよりもYouTubeやSNSの方が適しているかもしれませんね。

重本:そうなんです。テレビは公共の電波ですから、自分がプロデュースするブランドや商品のことだけを延々宣伝をすることはできないですし、出演者はあくまでも「番組の演者」としての役割があるので、必ずしも自分が伝えたいことを伝えられるわけではないんです。でも、YouTubeやSNSであればエンターテイメントとしてプロセスエコノミーが成立しますし、ファンの方が見ているコンテンツなので、エンゲージメントの高さが格段に違います

大久保:仮に世間一般には知名度がなくても、特定の分野において多くのファンを持つ方であればビジネスとして成立しそうですね。

重本:おっしゃる通りです。例えば、竹脇まりなさんというYouTubeで人気の宅トレ(自宅でできるエクササイズ)クリエイターの方と「MARINESS Protein」という商品を作ったところ、約7カ月で約25万個を販売することができました。コロナ禍で宅トレの需要が高まったことから、竹脇さんのチャンネル登録者数が急増し300万人を超えたことや、低糖質ブームの影響でプロテインを飲む女性が増えたことが要因となり、非常に好評を得ています。

大久保:P2Cのすごいところは、ロイヤリティが高いお客様がすでにいて、狙うべき顧客セグメントを把握できているところから事業を展開できることですね。

重本:そうなんです。ペルソナがすでに実在しているので、ファンの方が何を求めていて、何を提供すれば動いてくれるのかを把握することが大事ですね。ただし、ファンがいたとしても、ニッチすぎて周辺に類似層がいない場合は事業を拡大することが難しいので、類似層が複数存在する分野を狙うことが重要です。例えば「MARINESS Protein」の場合、メインターゲットは竹脇さんのファン層である30~50代の女性かつ週1~2回運動するライト層なので、苺ミルクや抹茶ラテなどのフレーバーや、目的別に必須アミノ酸やヒアルロン酸を配合した女性向けプロテインを作ったのですが、プロテインマーケット自体も伸びていますし、類似層である一定以上の頻度で運動するミドル層や、運動はしないけれど低糖質ダイエットのために買う方もいるので、販路を拡大することができています。

大久保:類似層がいる分野であれば、P2Cはファンがついている人の数だけビジネスチャンスがありそうですね。

重本:はい。ある特定の分野だけ詳しい人は世の中に大勢いますし、YouTubeやSNSの普及に合わせてファンの数も拡大しているので、自社のビジネスと相性がよさそうなインフルエンサーのパワーをかけ合わせれば相乗効果が生まれると思います。

自身以外のアセットを活用して起業する時代に


大久保:自ら熱量のあるSNSコミュニティを作るのではなく、借りるというのも一つの手ですよね。

重本:そうなんです。コミュニティをゼロから作っていけば、他社が真似できない優位性を持てるかもしれないですが、簡単には実現できないですし膨大な時間がかかるので、すでに影響力のあるインフルエンサーと組むことによって、1年で何十億円規模の売上を目指せるようになります。商品やサービスというのは、どうしてもコモディティ化しやすいですが、熱量あるファンは簡単に真似できないので、選択肢の一つとしてP2Cというやり方があることを知ってもらえればと思います。

大久保:重本さんご自身も、会社のリソースを上手く使われていますよね。

重本:はい。自分でVCから資金調達し続けるのは大変ですし、私は1,000万人の登録者数を持つクリエイターをイチから育てることはできないので、UUUMに所属するトップクリエイターと協業することで、子会社のP2C事業として2年目で「売上規模30億円、黒字化」という具体的な成果が見えるところまで成長することができました。全部自分でやろうとするのは大変なので、自身の能力や時間を売上向上に役立てるために、「自分の力だけで起業する」という選択肢以外も視野に入れてもらえたら可能性が広がると思います。

大久保:自分だけの力で起業しなくても、他からリソースを借りることで気持ちも楽になりますし、時短にもなりますね。それでは最後に、これから起業しようと思っている方や社内起業を考えている方に向けてメッセージをお願いします。

重本:山の登り方は一つではないので、会社のアセットを上手く使うことによって、自分がやってみたかった規模感を短期間で実現する道はあると実感しています。それが社内起業だったり、大手企業とのアライアンスといった山の登り方だと思います。今は、すべてを自分でやる時代ではなくなってきているので、いろんなところにあるアセットを最大限使い、自分が行きたい道を最短で実現してもらえたらと思います。ぜひ「自分がやりたいことに役立つアセットはないか」という視点で世の中を見てもらえれば、より選択肢が広がっていくと思います。

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(取材協力: P2C Studio株式会社
(編集: 創業手帳編集部)

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