FIT(フィード・イン・タリフ)制度とは?仕組みと手続き方法

創業手帳

FIT(フィード・イン・タリフ)制度で再生可能エネルギーを活用するには


FIT(フィード・イン・タリフ)制度は、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの買取に関連する制度です。
再生可能エネルギーを活用中、もしくは活用を検討中の場合には、その現状がどのようになっているか知っておく必要があります。

FIT制度の仕組みや実際の買取価格、現在の状況や制度の利用の仕方、制度の期間終了後の対応をまとめました。
すでに利用している場合もこれから始める場合も、制度の理解を深め、効果的な活用を目指しましょう。

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FIT(フィード・イン・タリフ)制度とは


FIT(フィード・イン・タリフ)制度とは、太陽光発電・風力発電・地熱発電などの再生可能エネルギーを普及させるための制度です。
多くの国や地域で導入されている制度であり、日本では固定価格買取制度とも呼ばれています。

FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を目指す制度ですが、実際に制度開始以降は再生可能エネルギーの普及が進んでいます。

日本語で固定価格買取制度

FIT制度は、日本語では固定価格買取制度と呼ばれます。その名前の通り、FIT制度は再生可能エネルギーの価格を一定期間固定する制度です。
この制度で、再生可能エネルギーは設備導入と発電開始から一定期間、有利な固定価格で買い取ってもらえます。

2012年に制定されたFIT制度は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づいて実施され、2017年4月に改定されました。
制度の中では、太陽光発電システムなどで作られた電気を、電力会社が国の定めた価格で買い取ることを義務付けています。

それぞれの発電施設で価格が固定されるのは10年~20年です。
発電施設では新しく導入し、手続きが完了してから一定期間、その時の固定買取価格によって電力の買取が利用できます。

多くの国や地域で導入

FIT制度は、ドイツやスペインなど、日本以外の数多くの国や地域で導入されてきた制度です。
各国の制度でも基本的な内容は変わりませんが、買取価格や買取期間などはそれぞれの国や地域で異なります。

最初に国家レベルで制度を導入したのはドイツです。
ドイツでは2000年にFIT制度を導入しており、一般家庭向け電気代の2倍以上の買取価格が20年間保証されています。
FIT制度導入により再生可能エネルギーの導入が増加した実績が評価され、ほかの国でも採用が広がっていきました。

再生可能エネルギーを普及させることが目的

FIT制度は、再生可能エネルギーの普及のために作られた制度です。
有利な固定価格での全量買取を法律で義務付けることにより、再生可能エネルギーの利用拡大を目指しています。

制度を利用することで、発電設備を設置した事業者は設備費用を早く回収できるようになります。
長期にわたり買取価格が固定されることで、採算性の見通しも立てやすくなるでしょう。
このように再生可能エネルギーの導入ハードルを低くし、より多くの人や企業に利用してもらうのが目的です。

国内の再生可能エネルギーの導入例には、家庭用では太陽光発電が目立ちますが、企業ではそれ以外の再生可能エネルギーの導入も進められています。
FITの対象となる再生可能エネルギーのどれかを使い、国の定める要件を満たすことで制度の利用は可能となります。

2022年4月1日に改定

2022年4月からの改正により、「電気事業者による再⽣可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」から、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となりました。
改正にともない、日本のFIT制度も改正されます。

改定では、FIT制度に加えて、新たに「FIP制度(フィード・イン・プレミアム)」が誕生しました。これは、市場価格を踏まえて一定のプレミアムを交付する制度です。
また、地域の送配電業者が負担していた系統増強費用の一部を、賦課金方式で負担する制度ができました。

そのほかにも改正により、発電設備を適切に廃棄するため費用の外部積立を義務化したり、未稼働案件の失効期限を設定したりするなどの対策も始まります。

FIT(フィード・イン・タリフ)制度の仕組み


FIT(フィード・イン・タリフ)制度の仕組みは、以下2つの内容で成り立っています。
国が一定の価格を定めて一定期間の買取を約束していますが、実際に買い取っているのはそれぞれの電力会社であり、その原資を負担しているのは、電気の利用者です。

再生可能エネルギーの導入を考える際には、基本的なFIT制度の仕組みを理解しておきましょう。

電力会社が一定価格で一定期間買い取る

FIT制度は、電力会社が国の定めた価格で電力を買い取る制度です。
再生可能エネルギーを作っている発電施設が発電した電力は、電力会社の送電線から電力会社に送られます。

各発電施設が一定の価格で電力を売れるのは、発電施設の稼働から10年もしくは20年です。発電施設によって期間は異なります。

再生可能エネルギー発電促進賦課金によって負担

再生可能エネルギーを電力会社が買い取る固定買取価格は、再生可能エネルギーの導入促進のために有利に設定されています。
有利な価格で電力会社が買い取るために必要な原資は、電気を利用している人たちが支払っている賦課金です。

再生可能エネルギー発電促進賦課金は、電気の使用者から広く集められているものです。具体的には、毎月の電気料金と合わせて請求されています。
電気を使うすべての人が対象で、負担額は電気の使用料に比例しています。

FIT制度の対象となる再生可能エネルギーと買取価格


FIT制度の対象となる再生可能エネルギーの種類は、5つあります。
有名なものは太陽光発電ですが、そのほかの再生可能エネルギーの活用促進も重要視され、企業などの導入も増えてきました。

導入した場合にどれくらいの価格で買い取ってもらえるか、エネルギーごとに買取固定価格の目安をチェックしておきましょう。

太陽光発電

太陽光発電は、規模によって買取価格が設定されています。
FIT制度では、住宅用太陽光発電と事業用太陽光発電の250kW未満は入札対象外、それ以上の事業用太陽光発電は入札によって決定します。
入札対象外の太陽光発電施設について、買取価格の実績は以下の通りです。

電源 規模 2022年度 2023年度
住宅用太陽光発電 10kW未満 17円 16円
事業用太陽光発電 10kW以上
50kW未満
11円 10円
50kW以上 10円 9.5円

風力発電

風力発電は、陸上風力発電と洋上風力発電、さらに規模などによって買取価格が定められています。以下は2022年度(一部では~2024年度まで)の実績です。

電源 規模 2022年度 2023年度 2024年度
陸上風力発電 50kW未満 16円 15円 14円
陸上風力発電
(リプレース)
全規模 14円
着床式洋上風力発電 全規模 29円 入札制
浮体式洋上風力発電 全規模 36円

FIT制度では、陸上風力発電に2023年度から自家消費型・地域一体型の地域活用要件が設定されます。また、50kW以上の陸上風力発電は入札により決まります。

地熱発電

地熱発電は、地下の高温に熱せられた蒸気や熱水でタービンを回して発電する方法です。地熱エネルギーを使用するため、燃料のように枯渇する心配がありません。

地熱発電の電力における買取金額ですが、2022年度の実績は以下の通りです。

電源 規模 2022年度
地熱発電 15,000kW未満 40円
15,000kW以上 26円
地熱発電
(全設備更新型)
15,000kW未満 30円
15,000kW以上 20円
地熱発電
(地下設備流用型)
15,000kW未満 19円
15,000kW以上 12円

中小水力発電

水力発電では、中小水力発電を事業者などが活用できます。買取価格はそれぞれの規模に応じて変わります。

電源 規模 2022年度 2023年度
中小水力発電 200kW未満 34円
200kW以上
1,000kW未満
29円
1,000kW以上
5,000kW未満
27円
5,000kW以上
30,000kW未満
20円 16円
中小水力発電
(既設導水路活用型)
200kW未満 25円
200kW以上
1,000kW未満
21円
1,000kW以上
5,000kW未満
15円
5,000kW以上
30,000kW未満
12円 9円

バイオマス発電

バイオマス発電とは、木屑や燃えるゴミなどが燃える際の熱を利用して発電する方法です。
バイオ燃料も二酸化炭素を排出しますが、排出量は化石燃料よりも少ないといわれています。バイオマス発電の電力買取価格は、燃料の種類や規模によって定められています。

電源 規模 2022年度 2023年度
バイオマス発電(一般木材など) 10,000kW未満 24円
バイオマス発電(未利用材) 2,000kW未満 40円
2,000kW以上 32円
バイオマス発電(建設資材廃棄物) 全規模 13円
バイオマス発電(一般廃棄物・その他) 全規模 17円
バイオマス発電(メタン発酵バイオガス) 全規模 39円 35円

FIT制度申請の流れ


FIT(フィード・イン・タリフ)制度を利用するためには、事前の申請が必要です。
申請自体は事業者自身でも可能ですが、専門知識や用語などが出てくるため、難しいと感じる場合もあるかもしれません。
そのため、自分たちで申請するのではなく、代行事業者に手続きを委任するケースも多くあるでしょう。

FIT制度の申請手続きを控えている場合には、事前に申請の流れを確認し、自身でできるかどうかを検討してください。

1.事業計画策定ガイドラインを確認

FIT制度を利用するためには、まず事業計画策定が必要です。
ガイドラインを確認し、関係法令の遵守など、事業を行う上で必要なことを理解した上で再生可能エネルギー発電事業計画を立てます。
策定された事業計画をもとに認定が行われます。

発電施設ごとにガイドラインの内容は異なるため、必要なガイドラインに目を通してください。
例えば、未使用木質バイオマス発電では、燃料調達先を管轄する都道府県の林政担当部局への事前説明が必要です。

2.「再生可能エネルギー電子申請」にユーザー情報を登録

再生可能エネルギーの申請のためには、「再生可能エネルギー電子申請」サイトへの登録が必要です。
申請サイトを利用するためには、サイトのアカウントのほか、「GビズID」のプライムまたはメンバーのアカウントを取得しなければいけません。

「GビズID」は、行政サービスを利用するためのIDサービスであり、登録すれば経済産業省の各種行政サービスを利用できるようになります。
ほかの事業で取得している場合には、新しく取得する必要はありません。

「GビズID」のアカウントを取得したら、「再生可能エネルギー電子申請」サイトにユーザー登録し、ログインIDを取得します。
事業者本人か代行事業者のどちらかの、申請を行う方が登録します。

3.申請内容を登録

必要な準備が揃ったら、「再生可能エネルギー電子申請」サイトにログインし、申請内容を登録します。
申請情報を入力し、添付書類はサイトにアップロードします。代行事業者に依頼する際には、委任状が必要です。

50kW未満太陽光は承認後審査

50kW未満の太陽光発電では、申請を登録後、入力した内容に問題がないか事業者宛てにメールが送信されます。
事業者はそのメールの指示に沿って申請内容を確認し、承諾すると審査が始まります。

それ以外は申請書を出力して送付

50kW以上の太陽光をはじめ、風力・水力・地熱・バイオマス発電の場合には、申請書を出力し、返信用封筒と一緒に発電施設のある都道府県を管轄する経済産業局へ送付して申請します。
記載事項を確認した後、「GビズID」認証が終わると申請内容が送信されるので、その後郵送してください。

4.認定

発電の種類にかかわらず、申請から認定までは3カ月程度かかり、バイオマスは4カ月程度が目安です。ただし、添付書類に不備があると遅くなります。

買取期間終了後の対応


FIT(フィード・イン・タリフ)制度の固定買取期間は永遠に続くものではありません。
住宅用太陽光発電の余剰電力は固定買取期間が10年間、産業用は20年間と定められています。
そのため、FIT制度を利用している場合でも、その後のことを考えておく必要があります。

余剰電力を売電したいケース

これまで売電していた余剰電力を引き続き売りたい場合には、小売電気事業者に相談する必要があります。
電気事業者ごとに単価や買取メニューが決まっているため、それらを検討します。

自家消費したいケース

買取期間終了後は、自家消費にも切り替えられます。蓄電池や電気自動車と組み合わせて自家消費すれば、電気代を抑えられます。

そのまま放置しておくと……

FIT制度の買取期間が終わった後に放置していた場合の状況は、契約内容によって異なります
契約内容によっては発電した電力を十分活用できなくなるため、契約内容の確認と買取期間の終わるタイミングの把握をしておくと良いでしょう。

契約が自動継続となっている場合

契約が自動継続となっている場合には、何もしなくても新しい単価で継続して買取が行われていきます。
FIT制度で決まっていた価格とは違う価格になりますが、放置していても買取は続くので安心です。

契約が自動継続となっていない場合

契約が自動継続となっていない場合に何もせずに放置しておくと、発電した電力は一般送配電事業者が無償で引き受けることになっています。
買取契約がなくなることで、配線状況によっては電気の供給まで遮断されるといったリスクが生じることがあるためです。
これは、一時的・例外的な受け皿として政府の審議会で了承されています。

まとめ

FIT制度は、様々な再生可能エネルギーによる電力を安定的に買い取ってもらえる制度です。
FIT制度は改正され、新しいFIP制度との併用となりますが、今後も継続していきます。

FIT制度を利用するためには、それぞれの発電事業者が申請を行わなければいけません。
申請手続きは代行事業者も使えるため、自分で申請できるか否かを検討してください。
また、FIT制度の買取価格は期間が決まっているため、買取期間の終了後も対応が必要です。

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(編集:創業手帳編集部)

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