Hubble 早川晋平|契約慣習と現代のビジネスツールとの架け橋に!契約書管理クラウドサービス「Hubble」で迅速でミスのない業務フローを実現

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年03月に行われた取材時点のものです。

契約業務の正しい効率化を目指す!新時代の契約プラットフォームで契約書管理の課題を解決


企業にとって事業リスクのコントロールや、営業活動の収益と業績の源泉となる契約書は、法律上の義務として保存する必要があります。なおかつ経営者は契約管理義務を課されているため、ただ保存するだけでなく適切に管理することが大切です。

ところがこの契約書管理の実態を紐解くと、依然として紙の契約書をキャビネット・書庫で保存していたり、Excelのスプレッドシート管理などの手法に依存している企業が少なくありません。

こうした状況下で期待を寄せられているのが、テクノロジーの力で法律に関する業務や手続きを効率化するリーガルテックです。なかでも、迅速でミスのない業務フローを実現するHubble(ハブル)が注目を集めています。

同社は契約慣習と現代のビジネスツールとの架け橋となることで契約業務の正しい効率化を目指し、複雑な契約書のやりとりや管理をシンプルにミスなくスムーズにする契約書管理クラウドサービス「Hubble」、コンソーシアム型NDA締結プラットフォーム「OneNDA」などのサービス展開をしています。

今回はCEOを務める早川さんの起業までの経緯や、契約書管理業務の効率化について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

早川 晋平(はやかわ しんぺい)
株式会社Hubble CEO
関西学院大学を卒業後、会計事務所に就職。多くの企業に残る非効率な業務オペレーションの現場を目の当たりにし、それらを解決すべく2016 年にHubble創業&CEO就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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会計事務所でスキルアップ!契約書管理業務の改善のために起業

大久保:まずはご経歴についてお聞かせ願えますか。

早川:2014年に関西学院大学理工学部を卒業後、会計事務所に入社しました。

もともと大学時代から「いずれ起業したい」という意思がありましたので、ファーストキャリアも将来のプラスになるスキルが身につけられる分野を視野に入れていたんですね。

そこでまず「起業家を目指すなら、お金を集めるノウハウは絶対に必要だ」と考え、資金調達手段のひとつである銀行借入れに関われる職種で探し、会計事務所に就職しました。

あらゆるビジネスモデルに携わりながら、事業計画作成のサポートをはじめとした経験を得ることができるというのも選んだ理由のひとつです。

大久保:先を見据えながら、ご自身に必要な経験やスキルを身につけるためにキャリア形成をされたんですね。そこから起業までの経緯についてお聞かせください。

早川:前職では税務申告だけでなく、コンサルタントとして経営者や担当者からあらゆる相談も受けていましたので、会計・労務・法務と幅広く実務経験を積むことができました。

そんななかで、「契約書管理業務があまりにも非効率だな」と気づいたんです。「なんとかできないかな」と思考を巡らせているうちに、「テクノロジーの力で改善できるはずだ」と考えるようになりました。

当時は会計関連でfreeeやMoneyForwardが進化していましたが、契約書関連はクラウドサインが登場したばかり。だからこそ、契約書管理業務は介在価値が高そうだと感じたんです。

大久保:会計事務所の担当者は、ベンチャーやスタートアップのCFOのような業務を担う側面があります。早川さんも幅広くご担当されているうちに、無駄や改善点に気づくようになったということなんですね。

早川:はい。顧客企業と二人三脚しながら業務にあたるうちに、契約関連の問題が見えてきて「煩雑化している契約書管理業務をなんとかしよう」という使命感が芽生えるようになりました。

そこで2016年4月にHubble(ハブル)を設立。起業から1年ほど、本格的に事業を運営するための助走期間としてさらなるスキルアップを行いました。

大久保:どんなご経験をされたのか、具体的にお教えください。

早川:起業後の準備期間では、主にプログラミングの受託開発をしていたんです。

開発レベルの知識までは必要ないとはいえ、起業家はある程度のプログラミングを知っておいたほうがいいと思ったからなんですね。

いま振り返ってみても、この当時の経験が活きています。経営者として会社を存続させるためには、多少なりとも理解できたほうがいいですね。

契約書の作成から管理まで行える契約書管理クラウド「Hubble(ハブル)」

大久保:御社の軸を担う「Hubble(ハブル)」のサービス内容についてお教えください。

早川「Hubble」契約書の作成から管理まで行える契約書管理クラウドです。迅速でミスのない業務フローの実現を目指して開発しました。

契約書ドキュメントのスタンダードになっているマイクロソフトのWordGoogle Docsをそのまま使用できますので、簡単に操作が可能なことがポイントです。

Slackなどのコミュニケーションツールや電子締結サービスとも連携し、バージョン管理や差分チェックなどの契約業務を効率化。契約書締結までの共同作業を、飛躍的にスピードアップさせることができます。

また、締結後の期限管理や検索機能も充実していますので、契約データベースとしても便利なんですね。契約に関わる業務を一本化し、強力にサポートするツールとして活用できます。

月額4万円からご利用いただけますので、まずは法務部門のみ導入といったことも可能です。徐々に営業や新規事業部門など、アカウントを増やしていくことができるビジネスモデルになっています。

大久保:これまでメールとWordファイルでやりとりしていたため、契約進捗が混乱しがちだったのが、「Hubble」ならシームレスに一元管理できるんですね。

早川:はい。契約書のやりとりをする方は皆さん経験されていると思いますが、Wordファイルを添付して先方に送信し、返信のファイルをダウンロードして編集。編集後、名前をつけて保存して添付。この作業が何回も続くんですね。

そして無数のファイルがデスクトップに溜まっていきます。「【これが本当の最終】〇〇契約書_20230216のコピー.docx」みたいなファイル名が増えていくので、最新バージョンがわからなくなってしまうんです。

そこで「弁護士や法務の担当者だけでなく、ビジネスサイドの人間でも簡単に操作ができ、Wordが使えるGitHubのような仕組みが作れないかな」と。

エンジニアはGitHubでソースコードを管理していますので、「最終」と「これが本当の最終」ではどこが変わったのか?という差分がわかりやすいんですね。

この仕組みを活かせば、契約書管理業務で頻発している混乱を防げるのではないか?と着想しました。

クラウドとローカルがシームレス!投資契約に関するやりとりもスムーズに

大久保:ベンチャーやスタートアップが、顧問弁護士やベンチャーキャピタルと投資契約に関するやりとりをする際にも活用できると伺っています。詳しくお聞かせください。

早川:たとえば顧問弁護士とはSlackなどでやりとりしますが、ベンチャーキャピタルとはFacebook Messengerやメールが多いため、なおさらどこで誰がなにを言ったのかわからなくなってしまいます。

「Hubble」をご利用いただくと、「Hubble」内にCEOやCFO、顧問弁護士などの属性を追加して、このなかで契約に関するやりとりや編集を行うことができるんですね。

Wordファイルを編集し保存して閉じた瞬間、自動的にバージョンが変わっていき、その差分まで表示されます。差分表示画面では「CEOが13時50分にこの部分を変更した」というのがひと目でわかるようになっているんです。

ほかにもCFOがSlackの通知に返信などを行うと、自動的に「Hubble」にも反映されるようになっています。

大久保:企業に欠かせないあらゆる契約書の管理に利用できるんですね。契約書管理クラウドということはブラウザで動作するのでしょうか?

早川:はい。クラウドサービスでありながら、ローカルでWordの編集ができることも「Hubble」の強みです。

SNSでバズる!プロダクトローンチ前のティザーサイトで勝機が見えた瞬間

大久保:「Hubble」は試行錯誤の末、ローンチされたと伺っています。軌道修正しながら本格的な開発に移ったのでしょうか?

早川:はい。最初から素晴らしいアイデアが生まれたわけではなく、ピボットを3回ほど行っています。

ただし契約書管理の課題を解決する必要性を強く感じていましたので、リーガルのなかでも契約書という軸からは一度もずらしていません。

大久保:ローンチすればいける!という手応えをつかめたタイミングはありましたか?

早川:プロダクトの開発を始める前に、「こういうコンセプトのプロダクトを作ります」と事前申し込みを兼ねたティザーサイトを公開したんです。

これがSNSでリツイートが止まらないような状態になりまして。Twitterをご活用されている法務界隈の皆様からは「待ってました」感が非常に大きかったですね。

「しっかりと開発してローンチしたら、必ず世の中に受け入れてもらえる」という勝機が見えた瞬間でした。開発前に検証ができて良かったです。

大久保:SNSでバズって、自然な形で広がっていったんですね。

早川:弊社にとって大きな支えになりました。「コンセプトが世の中で受けるかどうか?」が大事だと考えていたからです。

プロダクト開発では、社内で「こういうものが作りたい」という構想から実際にローンチするまでに少なくとも1年くらいかかります。

その過程でぶれずに続けるためには、自分たちで「この道は正しい」と信じる力と、周りから応援される力、この2つがバランスよく存在しないと難しいと思うんですね。どれだけ熱いパッションを持っていても、市場の応援がないとなかなか続きません。

「Hubble」の場合は、私たち自身が「良いプロダクトだ」と信じていたことに加え、ターゲット層の弁護士や法務部門の方々からSNSで素晴らしい反応をいただくことができました。おかげで開発期間も根気よく集中できましたね。

開発当初のコンセプトを変更!契約締結前から締結後まですべて一元管理が可能に

大久保:「Hubble」の開発開始からローンチ後までの軌道修正について、さらに詳しくお聞かせください。

早川:開発当初は、クラウドサインをはじめとした電子契約サービスの前段階で必要な業務の課題を解決するためのプロダクトを目指していました。

そのため、最初の開発アイデアでは契約書のWordファイルのバージョン管理に関する機能に特化していました。

ところが実際にプロダクトとして提供してみると、お客様から「電子契約サービスごとに契約書が分散してしまい、うまく管理できない」というお声をよくいただくようになったんです。

そこでこれらの問題も「Hubble」でカバーするようにしたんですね。

その結果、一気に売れ始めました。電子契約サービスの前段階を管理できるだけでなく、締結後の契約書管理も可能にしたことで評価をいただいたんです。

大久保:契約書管理のマーケットで認識されたということなんですね。

早川:おっしゃる通りです。当初は契約締結までの業務を効率化するドキュメントツールでしたが、電子契約サービス内の機能を追加してからは、契約締結前から締結後の契約書まですべて一元管理できるという領域で展開しています。

諦めないために大切にしたい、世の中のセグメントや顧客のニーズへのアジャスト

大久保:今後の展望についてお教えください。

早川契約書は、起業してから常に隣り合わせに存在する書類です。弊社ではその重要性を深く理解したうえで、今後はさらに業界や業種、企業規模を問わず幅広く導入していただけるプロダクトを目指していきたいと考えています。

クラウド会計分野の著名ソフトのように、「どの企業でも利用している」というポジションを狙っていきたいです。

多くの企業に広く活用される、親しみ深いツールとして育てていきたいですね。

大久保:最後に、起業家に向けてのメッセージをいただけますか。

早川:私は起業当初から「長く続けてきた人間や、諦めない人間が勝つ」と信じて、事業を継続してきました。

描いている世界観やコンセプトが市場やお客様に受け入れられなくても、少しずつ世の中のセグメントや顧客のニーズにアジャストしていけば、いつか必ず売れるのは間違いないと思っているんです。

だから心が折れない限りは、成功するまで続けることが大事なんじゃないかなと。

道半ばにいたり、成功するかわからないとき、こういう考えを持っていると心の安定につながるんですね。まずはきちんと、こうした想いや在り方を認識しておくことが重要だと思います。

大久保:確かに成功が見えず、答えがわからない状態だと、不安で諦めがちになってしまいますよね。

早川:はい。「諦めなければ物事は好転する」という考え方を大切にしたほうがいいと思います。

答えはお客様が持っています。当たり前のことではありますが、意識しておきたいポイントです。

壁にぶち当たった瞬間、「ネットに答えがある」とデジタル頼みで延々探し続ける方が多いですが、デジタルには答えなんてありません。

だからこそ、お客様に聞きに行く。これを愚直に繰り返していれば、時間はかかるかもしれませんが、必ず成功すると思います。

大久保の感想

大久保写真
早川さんは最初に会計事務所でキャリアを始めた。

事業計画の作成を手伝うような仕事もしたそうだが、経営者にとっては重要なスキルだ。社長が自分の身を切る事業とコンサルなど支援では、多少感覚は違うものではあるが、経営の視点が付くのは間違い無い。特にVCからの調達を目指す場合、ロジカルに説明できる事が大事だ。

その後プログラミングスクールに通って、プロのエンジニアを目指すわけではないが、プログラミングをある程度使いこなせるようにしている。事業計画など経営・ファイナンスの視点と、開発は、起業で大変重要な武器になる。早川さんは、この2つの武器を手に入れて起業した。

起業は保証が無い、リスクだという人もいる。しかし、この2つの武器があれば特に若いうちは仕事に困ることもない。会社を辞めたら終わりと錯覚しているようなサラリーマンもいるが、スキルと起業経験と少々の人のつながりがあれば、まず食いっぱぐれない。

だから、起業したい人でリスクに悩んでいるような人は何か一つ(早川さんは2つ)でも武器を身につけてみよう。起業の攻めと守り、両方での準備になるからだ。実地で重要なスキルを学んでいった早川さんの起業へのキャリアパスは、起業したい人が学べるものが多そうだ。

また、Hubble自体はワードベースで管理する仕組みになっている。現実的に契約書はマイクロソフトオフィスのワードから何か別のサービスにするのは時間がかかるだろう。自社だけならともかく相手も弁護士もワードであれば、最も普及しているワードに揃える力が働くからだ。その「契約書は今のところ結局ワード」という変えにくい現実を踏まえた上で、使いやすくしようとしている。

会社や業界で残っている慣習などは変えにくかったりするが、それはこの「相手も使っているから」という引力だったりする。そうした現実を少しでも改善するようなツールへの需要は起業家にとってはチャンスなので探してみるのも面白いだろう。

特にこうした「無駄な作業削減系」は、少子化で人が減り、残業が抑制される時流の中で益々求められ、かつ会社によっては事情が違ったりもするので、大企業では対応しきれない様々な仕事に特化したニーズが有る。

つまり「契約書のファイル管理」という法務ではよくある仕事でも、ワードは汎用的なツールであるがゆえにGAFAMの一角のマイクロソフトでさえ対応できていないということだ。特殊な用途に対応していくと全体が使いにくくなっていくからだ。

汎用的なグローバルなツールでは対応できない、しかし意外に巨大なニーズというものは結構ある。そうした細かい領域こそ小回りが効き、ユーザーペインと近いところにいる起業家のチャンスだ。

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(取材協力: 株式会社Hubble CEO 早川 晋平
(編集: 創業手帳編集部)



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