「スタートアップワールドカップ2024」世界決勝を現地速報:優勝はEarthgrid(米代表・プラズマでトンネル掘削)

2024年10月4日、世界最大級のビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ(SWC)2024」の世界決勝戦が、米国・シリコンバレーで開催されました。
優勝はEarthgrid(米代表・プラズマでトンネル掘削)が選ばれました。
SWCは、世界中のスタートアップ、投資家、起業家、テック系CEOが一堂に会するグローバルなピッチコンテストカンファレンスです。
6大陸の約50カ国で開催される地域大会を皮切りに、選ばれた数百のスタートアップが、サンフランシスコで開催される世界決勝戦への出場権をかけて競い合います。
投資賞金は100万ドル(約1億4000万円)。投資賞金とはそれ以上の額が投資される権利を得ることを意味しており、代表のアニス・ウッザマン氏によると実際は100万ドルの賞金を超えて5億円投資された例もあるとのことです。ジャッジは男女同数の世界各国の6人の投資家が努めています。
サンフランシスコで開催された現地の模様を創業手帳の代表の大久保が速報、解説します。
日本からは、東京・京都・九州の予選を勝ち抜いた以下の3社が出場しました。

優勝者:アメリカ強し・圧倒的なスケールのEarthgridが優勝・全米、世界をプラズマで縦横無尽にトンネルを掘りまくる

Earthgrid アメリカ(カリフォルニア)優勝!!
「私はこれまでにいくつかの会社を立ち上げこれが8社目で、1度の失敗を除いて、6社を成功させました。そのうち4社はM&Aでの売却に成功し、2社はユニコーン企業になりました。
現在、アメリカで新しい送電線を作るのに長い時間が必要です。
私達はプラズマ技術を使って岩石を砂に変え、送電網を効率的に整備する方法を開発しました。この技術により、送電線の設置コストを10分の1に抑え、さらに時間も大幅に短縮できます。
最近では、18億ドル規模のジョイントベンチャー契約を締結しました。私たちのビジネスモデルは、これらの技術を提供し、インフラ整備のコスト削減を実現することです。この技術は今後、世界中の大規模プロジェクトで採用されるでしょう。
私たちはまた、規制に対応した手続きも進めており、46の州で承認を得ています。さらに、1,500万ドルの資金をクラウドファンディングで調達しました。これからはさらに大きなプロジェクトに取り組む予定で、初のプロジェクトは来年、テキサスで着工します。」

創業者は連続起業家でユニコーン・デカコーン企業を過去に輩出しており、シリコンバレー大会を堂々勝ち抜いた大会の大本命。プラズマでトンネルを掘るスタートアップ。
プラズマ・ボーリング技術で送電網に革命を起こし、光ファイバー、エネルギー、水、 ガス、自動車、歩行者、高速輸送のためのトンネルを作っています。
連続起業家だけあってプレゼンは圧倒的な場馴れ感があり、余裕綽々でいかにもシリコンバレーの起業家というスマートなプレゼンでした。
スケールが大きく事業の可能性を感じました。辛口のジャッジ達が逆に圧倒されていた珍しいプレゼンでした。

日本代表の3社(世界100カ国・地域から各1社選ばれる世界準決勝進出者)

株式会社ヘラルボニー(京都予選代表)決勝進出!
主に知的障害のある国内外作家の2000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスを展開しています。対等なビジネスパートナーとして作家の意思を尊重しながらプロジェクトを展開し、正当なロイヤリティを支払うモデルを構築しています。ライフスタイルブランド「HERALBONY」や、商品・空間プロデュース、アートギャラリーの運営などを展開しています。京都大会ですが、他県からエントリーした岩手県の企業です。圧倒的な製品の美しさとストーリーで聴衆の盛り上がり、拍手喝采の度合いは今大会で最も高かったと思います。

Digital Entertainment Asset Pte. Ltd.(東京予選代表)準決勝進出!
激戦区の東京予選の勝者。ブロックチェーン技術を活用し、ゲームやマンガなどを楽しむことで報酬を得られるプラットフォームを運営しています。ほかにもゲームアイテム・NFTを購入・販売できるマーケットプレイスの運営も行っています。決勝(世界ベスト10)には進めなかったが、観客の反応・ウケは良くかなり健闘していた。

株式会社StapleBio(九州予選代表)準決勝進出!
次世代核酸医薬技術「Staple核酸」を用いた医薬品の研究開発に取り組んでいます。タンパク質発現量の増減やウイルス増殖を抑制することで、治療目的に応じてタンパク質量の適切な制御を実現します。これにより希少疾患や感染症などに対し、迅速に治療薬を提供することを目指しています。熊本の企業です。サンフランシスコに熊本から応援団が駆けつけていました。

世界決勝進出企業(世界トップ10)

前述のEarthgrid、ヘラルボニー以外の上位10社は下記の通り。アメリカ5社、カナダを含め北米が10社中6社を占めた。またスタートアップ大国のイスラエル代表も決勝進出。アジアでは他に香港、ベトナムの代表が進出。

Alterno Pte. Ltd ベトナム代表 準優勝!
環境テック
オルタノは、先駆的な熱電池技術でエネルギーソリューションを再定義しています。ゼロ・エミッションの未来への道を開く、持続可能で効率的なエネルギー貯蔵と暖房ソリューションを提供。唯一途上国から決勝に進出。ITのオフショアリングやエンジニア人材で日本でも存在感のあるIT人材大国ベトナムの人材の厚さを見ました。
また環境系のテーマが多いのも今大会の特徴でした。

IVwatch アメリカ(バージニアビーチ)3位入賞!
メドテック
ivWatch,LLCは、静脈内(IV)治療の安全性と有効性の向上に重点を置く医療機器およびバイオセンサー企業です。
実物を持ち込んでプレゼンし、インパクトがありました。

Fincom イスラエル
ソフトウェア開発
Fincomは、金融業界向けのテクノロジーソリューションを提供する会社である。特に、リスク管理や取引の最適化に役立つツールを開発している。
金融業界の手作業でのミスを無くすソリューションです。創業者の迫力のあるプレゼンでした。金融×AIというテーマもイスラエルという国の特徴が出ているように思いました。

Learnexperts カナダ代表
EdTech LearnExpertsは、オンライン学習プラットフォームを提供する企業である。特に、AIを活用した個別学習を通じて、教育の質を向上させることを目指しています。

PanopticAI Limited 香港代表
AI・ヘルステック 肉眼では見えない情報を捉え、理解するためのAIビジョンソリューションを開発。 最先端の AI、コンピュータービジョン、信号処理技術を活用し、「笑顔で簡単に健康をコントロールする」ことを可能にする。

Galena innovations アメリカ(アイダホ)
医療機器製造
ガレーナ・イノベーションズは、早産を予防するハンナ子宮頸カップを開発。女性起業家のプレゼンが会場の心をつかんでいました。

Nanowear アメリカ(ニューヨーク)
メドテック
Nanowearは、衣類に埋め込まれたナノセンサーを利用し、心肺機能のリモート診断を行う医療技術を提供している。AI技術を活用し、非侵襲的なデータ収集で、患者ケアを向上を目指しています。
実際に現物を装着してプレゼンしており、ビジュアル的なインパクトが有りました。今大会一の早口の弾丸トークのプレゼンがいかにもニューヨーク代表という感があり地域性が出ていました。

概要

日時:準決勝2024年10月2日(水)、決勝10月4日(金)※現地時間
会場:米国サンフランシスコ ユニオンスクエアヒルトンホテル
主催:ペガサス・テックベンチャーズ
予選数:100の国と地域。日本では東京、京都、熊本で開催
優勝の選出方法:世界100の国と地域から代表が選出され世界準決勝が行われ、さらに上位10社が選出され世界決勝戦で優勝が決定する。
決勝戦観客数:約3000人
ジャッジ:6名(世界各国の著名な投資家)
投資賞金:100万ドル

大久保の解説:シリコンバレーの圧倒的な力量・物量。一方で日本のスタートアップも観衆の支持が高かった

今回もハイレベルな戦いが展開されました。今年はテーマとしては環境・宇宙・多様性(女性・障害者)・健康バイオなどが増えた印象です。
決勝の上位10社進出のうちアメリカが5社、カナダ、日本、香港、イスラエル、ベトナムが1社づつとなりました。
優勝はEarthgrid(米シリコンバレー代表・プラズマでトンネル掘削)になりましたが、事業規模で圧倒的な存在感を見せつけました。
シリコンバレーの起業家は、発想力と技術力、資本力で世界を文字通り変えていることを実感しました。
前回に比べアメリカでの同大会の地名度が上がり米国内で予選が多数開催されたことにより、アメリカのスタートアップが半数を占めることになり、スタートアップ大国の本領を発揮した印象です。
この上位10社の中で、日本、しかもスタートアップの多い東京ではなく東北の岩手からエントリーしたヘラルボニーが進出したのは画期的だと思います。
ヘラルボニーのプレゼンの際に、審査員のま後ろのメディア席にいましたが、ヘラルボニーのプロダクトを見た瞬間「ワーオ!」と普段から口な審査員たちがどよめきが起こっていました。
世界の舞台でヘラルボニーは審査員とジャッジの心をつかんでいたのが印象的でした。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。

解説者紹介

大久保幸世 創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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