社会保険料がまた上がる!2026年4月以降の社会保険・年金制度の主な変更点

4月以降の保険料・年金の負担増加に備えよう


2026年4月から「子ども・子育て支援金制度」が始まり、健康保険料などとあわせて支援金が徴収されるようになりました。被用者保険では原則として企業と従業員が折半で負担するため、給与計算や人件費への影響を確認する必要があります。

また、2026年10月には社会保険の加入要件である月額8.8万円の賃金要件が撤廃されました。企業規模要件も2027年10月以降、段階的に縮小される予定です。

この記事では、2026年度の社会保険料・年金制度の主な変更点と、企業への影響、実務対応で押さえておきたいポイントを解説します。

【2026年4月以降】社会保険・年金制度の変更点まとめ


2026年4月以降の社会保険・年金制度の主な変更点は以下のとおりです。

制度・変更項目 主な変更点
子ども・子育て支援金制度 2026年4月開始。被用者保険の支援金率は0.23%で、原則として労使折半。給与からの天引きは原則5月から開始
年収106万円の壁の撤廃 2026年10月に月額8.8万円の賃金要件を撤廃。企業規模要件は2027年10月以降に段階的に縮小
年金額・国民年金保険料の改定 2026年度の老齢基礎年金額は1.9%引き上げ。国民年金保険料は月額17,920円(前年度比410円増)
在職老齢年金制度の見直し 2026年4月から年金の支給停止基準額を月51万円から65万円に引き上げ
協会けんぽの介護保険料率改定 2026年度の介護保険料率は1.62%(前年度比0.03ポイント増)
2026年度の介護報酬改定 2026年6月から介護職員等処遇改善加算を拡充
介護サービスの2割負担対象者の見直し 対象拡大について検討中。対象者や実施時期は未確定

参考:日本年金機構・2026年度の年金額、協会けんぽ・2026年度保険料率、厚生労働省・介護保険部会

制度改正によって従業員の負担や企業の人件費が変わる場合があります。ただし、改正内容によって対象者や施行時期が異なるため、それぞれの要件を確認することが重要です。

【4月】子ども・子育て支援金の開始


4月からは、子ども・子育て支援金が開始されます。ここでは、子ども・子育て支援金がどのような制度なのか、用途や負担額、企業への影響も含めて解説します。

子ども・子育て支援金とは?

子ども・子育て支援金とは、子育て支援施策の拡充に必要な財源を確保するため、2026年4月から始まった制度です。

公的医療保険の仕組みを活用して支援金を徴収するもので、独身者や子育て世帯など、家族構成にかかわらず負担する仕組みとなっています。一般に「独身税」と呼ばれることもありますが、独身者だけを対象とした税金ではありません。

会社員などが加入する被用者保険では、2026年度の支援金率は0.23%で、原則として企業と従業員が折半して負担します。2026年4月分の保険料から徴収が始まり、給与からの天引きは原則として5月から開始されています。

なお、健康保険の被扶養者には個別の支援金負担は発生しません。国民健康保険や後期高齢者医療制度では、それぞれの保険者が定める方法で支援金が算定されます。

支援金の用途

子ども・子育て支援金は、2023年12月に策定された「こども未来戦略」の「加速化プラン」に基づく子育て支援施策の拡充に使われます。

「加速化プラン」では、児童手当の拡充や「こども誰でも通園制度」、妊婦のための支援給付、出生後休業支援給付、育児時短就業給付、育児期間中の国民年金保険料免除など、総額3.6兆円規模の子育て支援の拡充が進められています。

子ども・子育て支援金は、このうち6つの施策の財源に充てられるもので、「加速化プラン」全体の費用を賄うわけではありません。国は、若年人口が急激に減少するとされる2030年代に入るまでに、少子化傾向を反転させることを目指しています。

負担額はいくら?

月額の負担額は、加入している公的医療保険によって異なりますが、以下のとおりになっています。

公的医療保険 年収別の被保険者1人あたりの負担額(月額)
被用者保険 200万円:192円
400万円:384円
600万円:575円
800万円:767円
1,000万円:959円
協会けんぽ
健保組合
共済組合
国民健康保険 80万円:50円
100万円:50円
150万円:250円
200万円:400円
250万円:550円
300万円:650円
後期高齢者医療保険 80万円:50円
100万円:50円
125万円:50円
150万円:50円
175万円:100円
200万円:200円

上記は、こども家庭庁が公表している2026年度の年収別負担額の試算です。実際の負担額は、加入している医療保険や所得などによって異なります。

被用者保険では、標準報酬月額に支援金率0.23%を掛けた額を、原則として従業員と事業主が折半します。賞与も支援金の対象です。

企業への影響

子ども・子育て支援金が施行されると、企業も従業員と同額を負担しなければならないため、従業員数が多ければ多いほど人件費が増加することになります。
従業員も負担が増えるため、手取り額が減少することへの不満や疑問が起こらないよう、制度趣旨を説明しておかなければなりません。
また、給与計算を行う際には、システムの設定変更を行い、賞与からの徴収対応なども行っておく必要があります。

【10月】「年収106万円の壁」の撤廃

2026年10月1日、社会保険の加入要件の一つである月額8.8万円の賃金要件が撤廃されました。ここでは、改正内容や社会保険に加入するメリット、従業員の手取り額、企業への影響を解説します。

年収106万円の壁とは?

年収106万円の壁とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金保険に加入する際の、月額8.8万円(年収換算で約106万円)という賃金要件を指します。

2026年10月1日から、この賃金要件は撤廃されました。ただし、すべての企業で週20時間以上働く従業員が加入対象になるわけではありません。

2026年10月時点では、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などで、週の所定労働時間が20時間以上、2カ月を超えて雇用される見込みがあり、学生ではないことなどが加入要件となります。

企業規模要件については、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上へと段階的に縮小され、2035年10月に撤廃される予定です。

なお、106万円の壁が撤廃されても、社会保険上の「130万円の壁」や税金に関する年収の壁がなくなるわけではありません。

106万円の壁が撤廃されるメリット

賃金要件の撤廃により、短時間労働者が年収約106万円という基準を意識せずに働きやすくなることが期待されます。

また、社会保険の加入対象となった場合には、将来受け取る厚生年金が増えるほか、一定の要件を満たせば傷病手当金や出産手当金などの保障も受けられます。

企業側にとっても、従業員の就業調整が緩和されれば、人手不足の改善につながる可能性があります。ただし、勤務先の企業規模などの加入要件は引き続き適用されます。

手取り額はどれくらい減少する?

新たに健康保険・厚生年金保険へ加入すると、従業員本人にも社会保険料の負担が生じるため、給与の手取り額が減少する場合があります。

ただし、負担額は標準報酬月額や加入する健康保険、年齢などによって異なります。年収106万円を基準に、一律で年間15万~16万円の負担が発生するわけではありません。

また、社会保険上の扶養から外れることと、所得税・住民税の扶養控除や配偶者控除の対象から外れることは別の問題です。

従業員が新たに加入する場合は、社会保険料の負担額と将来の年金・医療保障をあわせて確認することが大切です。

企業への影響

社会保険の加入対象者が増えると、企業にも健康保険料・厚生年金保険料の事業主負担が発生します。

一方、2026年10月からは、一定の要件を満たす事業所を対象に「保険料調整制度」が始まりました。

この制度は、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者について、標準報酬月額が12万6,000円以下などの要件を満たす場合に、通算3年間、本人の健康保険料・厚生年金保険料を軽減できる仕組みです。

軽減割合は標準報酬月額や制度利用年数によって異なり、最大25%です。事業主が一時的に追加負担した保険料は後から還付されるため、最終的な事業主の保険料負担が増える仕組みではありません。

ただし、すべての企業や新規加入者が対象になるわけではありません。適用拡大によって新たに対象となる事業所など、制度の利用条件を確認する必要があります。

【2026年度】年金・介護保険制度の主な変更点


2026年度は、年金受給額や国民年金保険料、介護保険料率などが改定されました。また、介護報酬の臨時改定も実施されています。

ここでは、2026年度の年金・介護保険制度の主な変更点と、企業への影響について解説します。

年金額・年金保険料の引き上げ

2026年度の年金受給額は、2025年度と比べて老齢基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%引き上げられました。

老齢基礎年金の満額は、2025年度の月額69,308円から2026年度は70,608円となっています。また、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金額は、月額232,784円から237,279円へ引き上げられました。

一方、2026年度の国民年金保険料は、月額17,510円から17,920円へ410円引き上げられています。

なお、厚生年金保険料率は18.3%で据え置かれており、年金受給額の引き上げによって保険料率が上昇するわけではありません。

在職老齢年金についても、2026年4月から制度が見直され、老齢厚生年金の支給停止を判断する基準額が月51万円から65万円に引き上げられました。

協会けんぽの介護保険料率が上昇

協会けんぽの2026年度の介護保険料率は、前年度の1.59%から1.62%に引き上げられました。対象となるのは原則として40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者です。

一方、協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なり、2026年度の全国平均は9.90%と前年度から引き下げられています。

なお、65歳以上の第1号被保険者が支払う介護保険料は、市区町村ごとに設定され、原則3年ごとに見直されます。2024年度から2026年度の全国平均の基準額は月額6,225円です。

このように、介護保険料は年齢や加入制度によって負担の仕組みが異なります。

臨時の介護報酬改定

2026年度は、介護現場の人材確保や職員の処遇改善を目的として、臨時の介護報酬改定が実施されました。

2026年6月からは介護職員等処遇改善加算が拡充され、介護職員に加えて、一定の要件のもとで幅広い職種の処遇改善にも活用できる仕組みとなっています。

ただし、すべての介護従事者の給与が一律に月額1万円増えるわけではありません。実際の賃金改善額は、事業所が取得する加算や配分方法などによって異なります。

介護事業を営む企業では、加算の算定要件や届出手続きなどを確認することが重要です。

介護保険の2割負担対象者が拡大される可能性も

介護保険制度では、一定以上の所得がある人を対象に、介護サービス利用時の自己負担割合を2割とする仕組みがあります。

現在、この2割負担の対象者を拡大することが検討されています。所得基準の引き下げなどが議論されていますが、2026年10月時点では具体的な改正内容や実施時期は確定していません。

なお、ここでいう1割・2割・3割の負担は、介護保険料ではなく、介護サービスを利用した際の自己負担割合です。

今後の制度改正によって介護サービス利用者の負担が変わる可能性があるため、厚生労働省の発表を確認することが重要です。

企業への影響

2026年度の制度変更では、協会けんぽの介護保険料率の引き上げや、子ども・子育て支援金の導入などによって、企業の社会保険料負担が変化しています。

一方、国民年金保険料の引き上げは、主に自営業者などの第1号被保険者に関係するもので、企業が負担する厚生年金保険料率の引き上げを意味するものではありません。

企業では、加入している健康保険の保険料率や従業員の年齢構成、社会保険の加入対象者を確認し、人件費への影響を試算しておくことが重要です。

企業の実務対応で準備すべきこと


社会保険料の引き上げを受け、企業では何ができるのか模索している人も多いかもしれません。ここでは、企業の実務対応で準備すべきことを解説します。

現状を把握し、負担の変化をシミュレーションする

社会保険の適用拡大に備えるためには、自社の従業員数や労働時間、賃金などを確認し、今後の制度変更による影響を把握しておくことが大切です。

2026年10月には年収106万円の壁に相当する賃金要件が撤廃されましたが、企業規模要件は段階的に縮小されます。2027年10月からは36人以上、2029年10月からは21人以上、2032年10月からは11人以上の企業が対象となり、2035年10月には企業規模要件が撤廃される予定です。

企業では、今後新たに社会保険の加入対象となる従業員を確認し、保険料の事業主負担がどのくらい増えるのか試算しておきましょう。あらかじめ人件費の増加を把握しておくことで、予算計画や人員配置の見直しに役立てられます。

従業員に周知させる

社会保険制度の変更にともなって、従業員本人の保険料負担や給与の手取り額が変わる場合があります。

企業では、制度改正の内容や加入要件、保険料負担の変化について、従業員にわかりやすく説明することが大切です。

なお、社会保険は原則として加入要件を満たす場合に加入する必要があり、本人の希望だけで加入の有無を選べるわけではありません。

従業員の働き方や今後の希望を確認しながら、必要な社会保険の加入手続きや給与計算の見直しを進めましょう。

支援措置・助成金を活用する

社会保険の適用拡大に対応する企業は、国の支援制度や助成金の活用も検討しましょう。

主な制度には、以下のものがあります。

  • 保険料調整制度
  • キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)

保険料調整制度は、一定の要件を満たす事業所で新たに社会保険の加入対象となった短時間労働者について、通算3年間、本人の健康保険料・厚生年金保険料を軽減できる制度です。

また、キャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長支援コースでは、短時間労働者を新たに社会保険に加入させ、労働時間の延長や賃金の増額などに取り組んだ事業主を支援しています。

助成額は企業規模や取組内容などによって異なり、一定の条件を満たす小規模企業では労働者1人あたり最大75万円となります。

いずれも対象要件や必要な手続きが定められているため、制度の利用前に最新の公募・申請情報を確認しましょう。

まとめ・社会保険制度の変更に合わせて対応しよう

2026年は子ども・子育て支援金制度の開始や年収106万円の壁の撤廃など、社会保険に関する制度変更が行われました。

また、2027年10月以降は社会保険の適用対象となる企業規模も段階的に拡大される予定です。

企業では、社会保険の加入対象者や保険料負担の変化を把握し、給与計算や人件費計画を見直しておくことが大切です。

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(編集:創業手帳編集部)