IVS厳選セッション「キーエンス流営業」「元DeNA会長の裏話」伝説の証券マン・丸尾さんのIVS案内


IVSではローンチパッドや東大松尾教授の登場、岸田首相のメッセージなど派手なセッションが繰り広げられました。

しかし、ディープなテーマを掘り下げたセッションも魅力です。
そこで、今回は元大和証券の丸尾浩一さんがモデレートしたIVSの2つのセッションをご紹介いたします。
キーエンス元社長の佐々木さんや元DeNA会長・エクサウィザーズ社長の春田さんなど大物が内情を話してくださいました。普段聞けない貴重なセッションの内容を一部お届けいたします。

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おすすめセッションその1「営業を学ぶ」
激レア・キーエンス出身社長セッション「起業するなら営業を学べ」

まず、起業すると営業がテーマになります。営業を掘り下げたのが、キーエンス出身の社長が一同に会するキーエンス出身者セッションです。

キーエンスは社員の平均年収で長らく日本一に君臨しています。時価総額も日本でトップ3に入ることが多いです。時価総額上位のトヨタや東京三菱に比べると、社員数と社歴が驚異的に少ないです。そのキーエンスの高収益・高年収の鍵は営業力と言われていますが、その合理的な営業手法が注目を浴びています。

キーエンスは長らくメディア露出を避けてきたこともあり、情報が少ないです。堅実な経営を目指し、目立つ行いを避け、長らく秘密のベールに包まれてきました。そんなキーエンスのOBが一同に介してセッションするのは珍しいです。「実際に役立つ」おすすめセッションです。

キーエンス元社長・佐々木さん「まずはニッチから」

キーエンス元社長の佐々木さんが登壇したのも注目です。佐々木さんは現在、開発テスト業務で急成長した株式会社シフト(プライム上場)の副社長を務めています。東京エレクトロンの社外取締役も務めています。

まずキーエンスの真髄、思考ですが、社名の通り「キーオブサイエンス」、全てが「科学」的であり、合理的な思考がベースにあります。
キーエンスは今でこそ大企業ですが、製品はニッチで狭い領域でも価値があるものを作り、価格を保つことが大事だと言います。キーエンスでさえもニッチからなので、スタートアップは狭く深い領域から始めることが大事と言えます。

営業は個人差がつきにくい?

キーエンスの合理性は営業にも現れています。営業が強い会社というと「気合」「強烈な個人技」を連想しますが、キーエンスの場合、緻密な合理化、型(カタ)化が貫かれています。再現性の低い個人技よりも組織的な動きを重視します。

キーエンス出身で営業組織を構築するサービスを展開するグランドセントラルの北口拓実さんによると、短期間に300人の社員を抱えるまでに成長しましたが、徹底した型化に驚いたそうです。キーエンスに新卒で入社する際、個人間の差が付くだろうと想像していたが、入社してみて意外だったのは「営業は個人間で差があまりつかない」ということです。

また、営業が強い会社というとインセンティブや接待も多そうですが、キーエンスにはインセンティブや接待は無いと言います。

営業の軸になるのが顧客・商品・ソリューションのデータベースとCRMを徹底して管理しており、そのCRMのデータを見れば引き継ぎは1日で終わるとのことです。

部品と完成品

他にもキーエンス出身の若手起業家でワンアクトの浅野裕亮さんもセッションに参加しました。ワンアクトはAIのソースコードなどの部品に特化したプラットフォームを展開しており、日本・海外でグローバルに展開しています。同社ではAIのソースコードというAIの「部品」を流通させています。実はパーツに特化しているビジネスモデル、発想もキーエンス流だと言います。

完成品になると全体の完成度を担保するのが難しくなり、事業が複雑になります。一方で部品に特化した方が事業をしやすいと言います。完成品の方が派手で、部品メーカーの方が地味にも見えますが、例えば時価総額で世界を席巻するエヌビディアも部品メーカーです。

部品メーカーというと、言われた通りに作り、値段も買い叩かれているイメージがありますが、キーエンスの場合、部品の提供だけでなく顧客の問題解決を行っています。安く作る下請けではなく、ニーズに応えるので価格を維持でき高収益につながっています。

「徹底する」「考え抜く」それがキーエンス流

キーエンスOBの中でも強烈なインパクトを残したのがVALX(バルクス)の只石さんです。VALXはメジャーリーガーも使っているプロテイン飲料で大ヒットを飛ばしています。

キーエンスとは全く畑違いの領域で、他のOBとも違う雰囲気ですが、「徹底して考える」「当たり前のマーケ理論ではない」徹底したゲリラ戦がVALXの成功要因であり、会場に伝えたいメッセージだと言います。当たり前のマーケティング手法などは誰でもやっています。

しかし、顧客のニーズのその先にある驚くような切り口を徹底して考え抜く事が大事であり、それがキーエンスから学んだ皆さんに伝えたいエッセンスとのことでした。

キーエンスOBが語る「営業」ポイント!
・営業も科学
・徹底的なカタ化。ゆえに営業の個人差はそこまでつきにくい
・CRMが命
・インセンも接待も不要
・売上より一人当たり利益を上げる
・セールスがマーケッターになれるかが鍵
・量が大事。量の確保が質につながる
・完成品ではなくパーツに特化するのも手
・徹底して顧客のニーズを考え抜く

モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想

「表に出にくいキーエンス出身者のセッション。特に元社長の佐々木さんが出てきたのは驚きでした。
スタートアップもセールスを無視してなかなか成功しにくいです。キーエンスの思考や営業手法を学んでみると成長の気づきが多くあるかもしれません。個人的には接待不要というのは耳が痛い話でしたね。」

おすすめセッションその2「スタートアップの裏側を学ぶ」
DeNA元会長・エクサウィザーズ社長春田さんの裏話セッション「黒子の流儀」

続いて紹介するのは、DeNA元会長で連続してIPOを経験している春田さんのセッションです。

銀行マンから創業間もないDeNAに飛び込んだのが春田さんです。著作『黒子の流儀』にも生々しい話が書かれており、スタートアップにおすすめの本です。
春田さんは元々三井住友銀行出身ですが、途中からスタートアップ、DeNAに飛び込むことになります。まだ怪しいマンションの一室でやっていた時期です。今でこそDeNAはゲームの会社として認知されていますが、ビッダーズのようなオークション・ECサイトの時代です。

そんなDeNAの転機になったのが横浜ベイスターズの買収です。当時の親会社であったTBSが売りたがっていました。今なら買い手が殺到していたことでしょうが、当時はそういう時代ではありませんでした。球団を買うという意味と同時に、広告費を100億円程度使っていたのでそちらでもペイできると踏んでいたそうです。また、意外にも先行していた同じIT企業の楽天の反対にあったそうです。球団を持つということがそれだけインパクトがあり特別なものだということでしょう。
球団買収は何度も流れましたが、三度目の正直で実現しました。当時は20億円の赤字でしたが、今では黒字を稼ぎ出しています。当初はIT系の会社の利益をスピードを持って追うという風土と、球団で職員の性質に違いがあり戸惑ったといいます。

DeNA創業者の南場さんの夫ががんになり看病のために社長の座を降ります。あわせて守安さんへバトンタッチしました。その後、春田さんは守安元社長をサポートしていました。
その後、春田さんは会長退任後、米国に渡り起業します。医療系のスタートアップを創業し、メドピアに売却します。その後、エクサウィザーズを創業しIPOに至ります。エクサウィザーズはエンジニアと営業が半々だといいます。ビジネスとテクノロジーのバランスが取れています。連続してスケールするビジネスを手掛けている春田さんから学べることは多いです。

春田さんから学ぶポイント!
・銀行を辞める選択をする人が少ないが無い時代に、スタートアップに飛び込んだ
・面白いという直観を大切に
・球団の買収は何度も流れた。諦めない
・成功に満足せず、新しいチャレンジをし続けよう
・ビジネスだけ、テックだけではなく両方揃ってビジネスはスケールする

モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想

「ゲーム課金はこれ以上ないといえるビジネスモデルです。継続性と従量、ファンの拡大などビジネスの成功要素が詰まっています。
ゲームの考え方は他の分野の起業家にも参考になるかもしれません。
春田さんは畑違いでも当て続けています。違うステージでも成功できる本物の起業家ですね。」

創業手帳代表・大久保の解説

IVSのディープなトークセッションを2つ選んで紹介しました。両方とも「一見、地味だが本質」に迫った秀逸なセッションでした。
実際に生で聞くことで、より深く情報を浴びることができます。こうした場でヒントとネットワークを得ていきましょう。

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
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