テックアイエス 植松 洋平|「オンライン化は正直嫌だった」そこから生まれた「5分以内に回答」の仕組みとは。

創業手帳

「プログラミングが書けるだけでなく実社会で通用する力を教える」プログラミングスクール植松社長の想いとは


小中高の教育課程においても導入が進み、ひと昔前とくらべて、話題に上がる機会が圧倒的に増えた「プログラミング」。町なかやテレビCMでプログラミングスクールを見かけることも増えました。

一方で、伸びている業界だということは感じるけれど、プログラミングがどのようなスキルなのか、プログラミングスクールがどのようなところなのか、難しそうというイメージもあってなかなか理解できていないという方も少なくないのでは。

愛媛校からスタートし、関西・中国地方で拡大を進めるテックアイエス・植松洋平社長に、プログラミング教室で身に付くスキルや、社会で通用するスキルはどのようなものか、教育や人への想いと合わせて聞きました。

植松洋平(うえまつ・ようへい)
株式会社テックアイエス 取締役社長
1988年12月30日生まれ。愛媛県松山市出身。愛媛大学卒業。
大学在学中に「自立した人材を育てる」ことを目的に起業し、塾の経営を行う。その後、一般教養を教えるよりも現在のニーズにあったスキルを獲得することが、より自立した人材の育成に貢献できると考え、テックアイエスに入社。プログラミング事業責任者として事業を立ち上げ。2020年12月に取締役社長に就任。

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「超アナログ人間で、オンライン教室は嫌だった」リアル教室の環境をオンラインで実現した手法とは

―テックアイエスの特徴を教えてください。

植松「質問があった際、5分以内に対話形式で答える」ということが一番の特徴であり強みだと考えています。そうしている理由は、「リアル教室の環境をオンラインでも実現したい」という思いにあります。

テックアイエスは、元々、愛媛のリアル教室から始まりました。その後、社会全体の流れと、近年のコロナによる後押しも加わり、プログラミングスクール業界全体でオンライン受講がスタンダードになってきたことから、テックアイエスでも実施することになりました。

ですが、当時の思いを正直に言うと、教室をオンラインに移していくことがすごく嫌だったんです。僕は超が付くほど泥臭いアナログ人間で、生徒が困っていたらいつでもすぐに行くというリアル教室ならでは良さを大切に考えていました。だから、オンライン教室に変えることが、本当に嫌で嫌で仕方がなかった(笑)

ただそうは言っても、時代の流れがオンラインに向かっていることは事実だし、チャレンジしていかないといけないこともたしか。それに、僕の性格として「できない」という言葉を口にするのはもっと嫌でした。「オンラインだからリアル教室の良さを発揮できない」と言うのではなく、逆に何とかしてやろうと思いました。

そうした発想から生まれたのが、サービスの特徴である「5分以内の対話形式の回答」でした。

―どうして「5分以内」「対話形式」としたのですか。

植松:テックアイエスの設立に携わることになったのは30歳のころでしたが、それまで12年間ほど、子どもたちに勉強を教える仕事をしてきました。勉強を教える中で、子どもたちが挫折をしたり教科を嫌いになるのはどうしてなのか、常に考えてきたことから、この「5分以内の対話形式で答える」というサービスのヒントを得ることができました。

塾の生徒たちは教科を好きだ嫌いだと言うのですが、彼らが「嫌いな科目」と呼んでいるものは、大抵「点数が取れない科目」のことだと気が付きました。実は、純粋な好き嫌いとは違っている。その証拠に、点数が取れるようになれば、多くの子が「好き」だと言うんです。

次に、点数が取れないのは、「どこかのタイミングで分からなくなったから」という要因が一番大きいことにも気が付きました。つまり、どこかで「わからない」とつまずいたままいると点数が取れなくなり、点数が取れなくなると嫌いになるというわけです

プログラミングの学習も非常に似ていて、「わからない」と言う、つまずきから立ち直れないままでいると、「嫌いだ。やっぱり自分には無理だった」という挫折につながってしまう。だから「わからない」とつまずいた場面での対応、特に返答時間に関する考え方がすごく重要だと僕は思っています

「分からない」という状況にぶつかって心が折れかけても、「嫌い」というポイントに触れる前にすばやく解決してまた学習の場に戻ってくる。再び折れかけてもまた戻ってくる。学び始めの段階ではその環境がとても重要だと思いました。どのくらいの時間であれば生徒が耐えられるかと考えたとき、5分以内であれば大部分の人が乗り越えられるだろうと考えたんです

―ほかのプログラミング教室では、テキストチャットで質問するといったところもありますが、対話形式で質問/回答するという方法にしているのはなぜですか?

植松学び始めの時点で、わからないことを文字にすることほど難しいことはありません。
疑問を説明できるほどの語彙力も知識もまだない段階ですから、「ここがわからない」としか言いようがないんです。その上、なんとか頑張って送った質問がまたテキストで跳ね返ってきたら、次はそれを頑張って読み解かないといけない。これではなかなか前へ進めません。

学び始めは、「あれこれそれどれ」なんですよ。実際の画面を指して「ここがわからないんです」としか言えないんです。リアル教室では、それが気軽にやれていました。オンライン上ではどうしようかと考えたときに、「対話形式で答える」という形が生まれました。

―どのような方法で質問できるのですか?

植松:教材を進めていただく中で質問があれば、チャットツール上に「ここについて質問したいです」とメッセージを送ります。それを受けて、講師の方がZoomの入室URLを送り返してきてくれるという流れです。

―人件費などの面でデメリットはありませんか?

植松:講師がスタンバイしているあいだはずっと時給が発生しているわけなので、コスト面ではたしかにデメリットとも言えます。他社のスクールがやっているように、チャットテキストで対応したり「分からなくなったらここを見て」とFAQページを作ったりした方がコストはかからないでしょう。それでも当社があえてアナログな方法でやっているのは、リアル教室の環境をオンライン上で実現する考え方にとにかくこだわっているからです。

「5分以内に対話形式で回答」という仕組みは、多くの生徒さんが挫折せずに学びきることができる、僕らの圧倒的な強みです。2021年1月に僕たちが行ったアンケート調査では、実際には「平均2分」で質問に対応できていることがわかりました。回答速度に関しては、多分他社に負けることはないでしょう。

教えているのはコードを書けるためではなく「実社会で通用する力」を付けてもらうため

―テックアイエスでは、具体的にどのようなことが学べますか?

植松:当社のカリキュラムは、コードが書けるスキルだけでなく、「実社会で通用する力」を教えることを方針にしています。問題にぶつかったときに調べて解決していく方法やチーム開発に必要な考え方なども含めた、実際の開発現場で必要なスキルです。

例えば、Web領域のプログラミングに特化した「プロスキルコース」では、最初に基礎課題に取り組みますが、基礎としては少しレベルの高い内容まで詳しく触れています。難しく感じるかもしれませんが、あえてそうしている理由は、つまずいたときの対処法を身につけてもらうためです

実は、プロのエンジニアたちは、コードをカタカタと書くよりも、調べたり検索したりすることに時間を使っています。教材を覚えてスクールを卒業したとしても、つまずいたときの対処方法を知らないと社会で通用しないわけです

基礎課題で分からないことがあれば、講師が自身の検索画面を共有して、解決方法を調べるプロセスを生徒さんにお見せします。プロのエンジニアがどのような手順、キーワードで情報を検索しているのかをはじめのうちに知っておくことは、後の応用カリキュラムではもちろん、卒業した後も役立ちます。

―応用的なカリキュラムでは、どのようなことに取り組みますか?

植松:カリキュラムの一つに、チーム開発があります。実際の開発現場では、エンジニアが1人で作業するという場面は近年では稀です。プログラムが書ける以外にも、チームで作業するための方法を知っておく必要があります。

例えば、作ろうとするサービスにどのような機能などが必要かを考える「要件定義」。サービスをどの層にどのように提供するかを考えるマーケティング手法。誰がどの領域を担当するかを決めるタスクの割り振りや、プロジェクトの進捗管理。実際の開発現場では、コードを書く以外のこのような能力もとても大事で、時間もかかっていたりするんです。

「チーム開発」では、生徒さん3,4名のチームの中に講師が1人入る形で、身近な社会の中で役立ちそうなサービスを考えます。キックオフミーティングから始め、ディスカッションやブレストを繰り返していく。そこで生まれたアイデアを要件定義に落とし込んでいくという工程から、生徒さん自身で作りこんでいくんです。

実は、「チーム開発」をカリキュラムにしているスクールは当社の他にもあります。ただその内容はさまざま。スクール側が作業内容も分担も決めて複数人に振り分ければたしかに「チーム開発」とも呼べますが、実社会でのチーム開発につながる能力を学んだとは言いがたいでしょう。

自分自身の目線でサービスのアイデアを考え、それに必要な条件やスキルを組み立ててチームで作り上げていく。開発現場と同じあり方をテックアイエスでは「チーム開発」としています。

―チーム開発では、最終的にどのようなものが出来上がるのでしょうか。

植松:本当に多種多様なので一例ですが、自転車の窃盗対策を考えたチームがありました。愛媛には、窃盗チャリを略して「セッチャ」という言葉があるくらい自転車の窃盗被害が多くて、警察に相談してもなかなか見つかりません。そのチームは、そんな盗まれて乗り捨てされた自転車を見つけるためのサービスを考えていました。

サービスを利用する際、まず自身の自転車の写真と防犯登録番号を登録しておきます。その後、もし盗まれてしまったら「盗まれた」ボタンを押して、登録会員さん同士、発見したら知らせ合うというような機能です。発見した人には、たとえば金銭的なポイントのようなインセンティブを与えるといった、サービスが広まるための工夫についても話されていました。

あくまで課題としての取組みではありましたが、「警察の人件費を抑える仕組みとして行政にも売れるんじゃない?」みたいなことを言い合ったりしながら、チームがワクワクした雰囲気で取り組んでいました。

―カリキュラムを支える講師はどのような方ですか。

植松:大手企業でエンジニアとして活躍してきた方や、フリーランスでずっとやってこられた方など経歴と得意分野はさまざまですが、僕たちがやりたいプログラミング教育の形は、実力ある講師たちの能力に大きく支えられていると言って間違いありません。

例えば、今のチーム開発の例にしても、生徒たちの現在の能力でどこまで挑戦できるか、どのような技術が必要かの見極めとコントロール力がものすごく重要で、非常に頭を使います。実力のある講師がチームに入るからこそできる形です。

講師のほかにTA(ティーチング アシスタント)もいます。TAは、卒業生を中心に構成されていて、生徒へのヒアリングや比較的簡単な基礎課題など、学び始めに一番つまずきやすいところを見てもらっています。基礎的な範囲は、ベテランの講師の先生が見るよりも、初心者だったときの記憶が新しいTAの方が「わかるよ。難しいよね」と近い距離で相談しやすいんです。

一方、それだけでは、現場力を身につけるにはもちろん不十分です。基礎の後のステップは、数カ月前に学んだ卒業生ではなくて、高度な知識を持った講師でないと教えられません。応用課題から先に関しては、必ず、実務経験を積んだ講師に指導していただいています。

―キャリア支援も行っていますが、どのような特徴がありますか。

植松:卒業後のキャリアは、就職・独立・副業さまざまですが、僕たちがキャリアについてよく言ってることは、「プログラミングを学んだ=エンジニアになる」という話には留まらないということです。

小中高へのプログラミング教育導入を進める文科省も言っていることですが、今後、エンジニアに限らずあらゆる職業においてプログラミングの重要性が高まっていくでしょう。だから僕たちは、プログラミングを学んだ後のキャリアが必ずしもエンジニアであるべきだとは考えていませんし、「未経験からエンジニアに」「未経験でも稼げる」というような訴求も一切していません。

反対に、「エンジニアは簡単に稼げる」というイメージで未経験からエンジニアを目指すという方に対しては、体験会の段階で「正直そんなに甘くありませんよ」という話も正直にお伝えするようにしています。たしかに、ほんの数%を切り取れば「年収120%アップ」という成功例を実績として伝えることもできるでしょう。でも、そんな伝え方をするのは無理なんですよね。今日のインタビューで、僕の性格をちょっとわかっていただいたかもしれませんが(笑)

エンジニアの華々しい部分に憧れる人にとっては不都合な真実かもしれません。だから、取りこぼしてる人たちもたくさんいると思うんです。でも、社員には「それでいい」と言っています。テックアイエスが目指しているキャリア支援は、生徒を社会に出して終わりではなく、生徒が卒業して2年3年と経ったときに「テックアイエスの卒業生はすごくいいよね」という評価を社会から得られることだからです。

僕らがプログラミング教室事業を始めてから、まだ2年7ヶ月ほど。僕たちが求める評価が返ってくるのはこれからですが、絶対に返ってくると自信を持っています。

「人生で何を残すか」19歳の挫折経験でたどり着いた答えは

―塾経営、プログラミングスクール経営と人に教える仕事をされてきた中で、大切にされてきた考え方を教えてください。

植松:僕は教育の中で「自立」という言葉をよく口にしています。なぜ自立を大切に考えるようになったかというのは、19歳のころの挫折経験にさかのぼります。

学生時代に学習塾の経営を始めたのですが、そのきっかけは、学習塾や家庭教師をバイトでするよりも「自分でやった方がよっぽど稼げる」と気づいたことでした。今思うとちょっと天狗になっていたというか若気の至りでもあったのですが(笑)、それでも周囲は「いいじゃん」と言ってくれました。そんな中、最後に父に伝えたんです。

僕の父というのが、今でこそ丸くなりましたが、銀行員で堅く、僕にとってめちゃくちゃ怖い存在でした。高校進学時サッカーの強豪校に進学したいと言ったときにも「絶対駄目だ。絶対にあの高校へ行け」と反対されて、中学3年生ながらに泣いてお願いするということがあったほどです(笑)

父親に対して自分で独立して学習塾を始めたいということはなかなか言い出せず、最後にしていたのですが、ある日、父が運転する車に乗っているとき、意を決して伝えてみたんです。想定としては「お前なんかにできるか。真面目に働け」ときっと反対されるだろうと、覚悟はしていました。ところが意外なことに父は「そう。やってみれば」と。

そのとき僕は、逆に不安になったんです。あの父がやってみればなんて「何か裏があるんじゃないか」と不安に駆られました(笑)「いいじゃん」と言われて絶対できると思っていたことができないことだらけに思えたんです。足も手も止まりました。

19歳から21歳の時期は、僕にとって大暗黒期でした。周りの人には自信満々で「やる」って言っているのにやれていない。それでも友達は普通に接してくれるし、父親も何も言ってこない。「やる」と言っていることと「やれない」という現状のズレの中で、僕のプライドはズタズタでした。悔しいことを誰かに相談もできず、ずっと1人で悶々と悩みました。

―自信が不安に変わったそのとき、どのようなことを考えていましたか?

植松このときから、「自分が本当に何をしたいのか」「何のために生きていくのか」というのを真剣に考えるようになりました。何のために生きていくかを考えたとき、僕にもいずれ確実に訪れる死についても考えました。「自分が死んだときに何を残したいんだろう」と。それに対する僕の答えがコミュニティでした。

さらに、そのコミュニティにどんな人を残していきたいかを考えたとき、「自分で人生を楽しんでる人」という言葉にたどり着きました。「俺はこうやって生きていくんだ」とワクワク生きている人ってかっこいいじゃないですか。そういう人たちが自分のコミュニティに集まってほしいと思うようになりました。

自分の軸をしっかりと歩いていくことができていくことができる人。これが一般的に広く伝わる言葉として、「自立している人」という言葉を使っているというわけです。

―従業員には、日頃どのようなことを伝えていますか?

植松:社内だろうが社外であろうが「目の前の人に本気であれ」ということはずっと言っています。

どんなに組織が大きくなろうが、最小単位は目の前にいる一人なんです。仕事上の関係性だけで向き合おうとすると、結局「仕事としてこなす」という感覚でしかいられない。これはすごくもったいないと思います。一生付き合う仲間になるというのは、人対人として、いま目の前の人に本気で向かっていかないといけません

ほかに、「どんどんチャレンジしろ。チャレンジしないことが一番の失敗だ」ということもよく伝えています。

若かろうが役職がどうだろうが、良いと思うことはまずはやってみる。可能な限り裁量も渡しています。もちろん、良いと思ったもののそのとおりにいかないときもあります。それでもどんどんトライアンドエラーを繰り返し、はやい速度で改善サイクルを回しながら、最終的に、本当に自分たちがいいと思えることを提供する。そういう考え方を大切にしています。

―将来に向けた目標を教えてください。

植松:僕たちは人のキャリアに関わる事業をしていますが、僕らが提供できることは、その人の人生におけるほんの一つのきっかけでしかないと思っています。ただ、その一つのきっかけを受け取った影響は、周囲にも連鎖していきます。

テックアイエス、あるいは植松洋平という人間に出会った人が、次にどこかに行ったときに「なんだかニコニコしてますね。何かいいことでもありましたか」と周囲を明るくする。そうした小さなきっかけ連鎖が広がっていくと、テックアイエスだけ、あるいは僕だけでは到底無理な大きなことだって成し遂げることできると思うんです。

テックアイエスから一つのきっかけを受け取ったことで、その人の世界の中で幸せや笑顔の連鎖が広がっていく。それが僕が叶えたい世界です。

そのためには、目の前の一人に本気になって熱量をぶつけていくことが大事です。だから僕は、どんな人に会ったとしても、僕自身が体調が悪かったとしても、そのとき自分が出せるベストパフォーマンスで人にぶつかっていく。裏ではゼェハァとしているときもあります(笑)

そう生きていくことは、最終的に僕が生きた証としても残って、後世に何かしらのインパクトを与えられるだろうと考えています。

―本日はありがとうございました。
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