「元祖ベンチャー」に聞く成功の秘訣。株式会社エイチ・アイ・エス 澤田秀雄氏インタビュー

創業手帳

旅行業界の元祖ベンチャー、エイチ・アイ・エス成功の秘訣を、澤田秀雄会長に聴く

「元祖ベンチャー」企業・株式会社エイチ・アイ・エスの創設者であり、日本を代表する経営者のひとりである澤田秀雄会長。

赤字続きのハウステンボスを半年で黒字に転換させるなど、数々の事業を手がけ成功を生み出している澤田会長だが、創業期は決して順風満帆ではなかったと言う。ヒトもモノもない、身一つと少しの軍資金ではじめたエイチ・アイ・エスが、なぜ日本最大級の旅行会社に成り得たのか。その軌跡と成功の秘訣を伺った。

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夢と現実のギャップを目の当たりにした創業期

澤田:私は高校を卒業した後ドイツへと留学し、帰国後に東京でビジネスを始めました。留学中に、日本人旅行客向けのツアーを自分で企画したりしながら結構稼ぐことができたので、それを開業資金に充てて事務所を構えたのです。

当時の事務所も現在の本社と同じ新宿でした。もちろん規模は比較にもならないくらい小さな一室で、机と電話一本しかない無骨な事務所ですけどね。

そこで最初は毛皮の輸入販売を始めようと思っていたのですが、ちょうどその頃にワシントン条約への日本の参加が決まり、断念せざるを得なくなってしまった。さあはじめよう、と思った途端の頓挫で、目の前が真っ暗になりましたね。そこで始めたのが格安航空券の販売です。



― 格安航空券販売の事業は、順調に進んでいかれたのですか?

澤田:それが、最初は全然ダメでしたね。私は元々旅行が趣味で、留学時代もお金を貯めては旅に出る、というのを繰り返していました。ヨーロッパではすでに格安航空券が普及してましたが、日本では旅好きしか知らない裏技のようなもので、一般的にはまだまだ「外国に行くにはバカ高いお金がかかるのが当たり前」という感覚でした。

だから、絶対に売れると楽観的に考えていました。当時の相場価格の半値で売ってましたから「高いより安い方がいいに決まってる」と決めつけていたのです。

だけど実際は、半値とはいえ高い買い物ですから、出来たての無名会社をなかなか信用してもらえない。「料金先払い・チケットは空港渡しで」なんてお願いすると、悪徳商法かなにかと勘違いされたりもしました(笑)。

だからといって宣伝にかけるお金もないし、特別なコネもなければ知り合いすらいない。なので最初の半年はお客さんもほとんど来なくて、全然儲かりませんでした。途中、何度か諦めそうにもなりましたね。



― そんな苦難の時期を乗り越えた、ターニングポイントとは?

澤田:時間だけはあったので、たまにお客さんが来たら嬉しくて、旅行の話を長々と話し込んだりしていました。そんな事を繰り返しているうちに旅好きが自然と集まるようになって、「面白い旅行情報を教えてもらえる」という口コミでお客さんが徐々に増えていったのです。それが、事業の見通しが立つようになったターニングポイントと言えます。

その後も旅の経験を活かし、時代のニーズにあった企画をたてたり、旅の細かな部分をコンサルティングするなどを続けていき、顧客がどんどん増えてきました。
そして売上も組織もどんどん大きくなっていき、今に繋がっています。


継続なくして成功無し

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― エイチ・アイ・エスが成功した最も大きな理由は何だとお考えですか?

澤田:一番はやはり商品のニーズがあったからだと思います。当時、日本人の海外旅行者数は年間約3%程度でしたが、欧米各国は10%以上の人が当たり前のように海外へ行ってました。それなら、日本もそのうち10%の人が海外旅行する時代が必ず来ると信じていました。

だからあとは、諦めずに努力し、継続するだけです。事業を継続する上で、「時期」はとても重要なファクターです。その時は解決できない難題でも、時期がくれば解決できることもある。だけど諦めて投げ出してしまえば、そこで終わってしまいます。

先ほど申し上げた日本の海外旅行時代は、事業が軌道に乗ってまもなくやってきました。バブル景気に突入したからです。それをきっかけに海外旅行市場が一気に拡大し、エイチ・アイ・エスの売上も飛躍的に伸びました。その後のバブル崩壊も、エイチ・アイ・エスにとっては逆に追い風になりました。「旅行は行きたい。だけど費用は出来るだけ押さえたい」という需要が高まったため、超格安ツアーを目玉として打ち出し、顧客層を拡げることができたからです。

すべては創業期のつらい時期でも、事業の成功を信じ、自分を信じ、努力してきたからこそだと思っています。


志なくして成功無し

― 澤田会長の考える、 経営者にとって最も大事なことを教えて下さい。

澤田:まずは「志」を持つことです。経営者が高い志を持ち、それを成し遂げたいという強い気持ちが会社を成長させる何よりの原動力です。志のない経営者に、部下も顧客もついてきてはくれません。自らの志をもとに会社のビジョンを描くことで、そこに求心力が発揮されるのです。

そういった意味で、設定した目標を必ず達成する遂行能力も同時に必要です。事業をやっていれば、思い通りにいかないことや障害が必ず起こります。創業時は特にそうでしょう。私も当時は毎日が不安や焦りとの葛藤でした。そういった壁を乗り越えることが出来るのも、強い志があればこそです。それがないと、事業が儲かるまで継続する事は難しいでしょう。

実務的な面で言うと、財務諸表を読む力も重要です。財務諸表には、会社の問題点や課題がはっきりとあらわれます。お金があれば、とりあえず会社が潰れる事はありませんから、そのお金をきちんと管理する為にも、財務諸表を的確に読み解く力は経営者に必須ですね。


痛みなくして成功無し

― 最後に創業者の方へメッセージをお願いします。

澤田:まず、最初は誰でも大変だということを知ってほしい。最初から名経営者なんて人は、ほとんどいないからです。みんな迷って、困って、時には失敗します。思い描いていた夢と現実のギャップに、挫折しそうになることもあります。

だけど、いつかは成功するという強いビジョン持ち志を失わなければ、失敗の中からもノウハウやスキルを学び取り、起業家から「経営者」になることができます。

「石の上にも3年」と言いますが、3年間必死で頑張ったにも関わらず展望がひらけなければ、商品そのものやビジネスモデルを見直す事も考える必要があるでしょう。

それまでは強い志を持ち、継続して頑張って欲しいと思います。


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【プロフィール】 澤田 秀雄(さわだ ひでお)

1951年、大阪府生まれ。73年に旧西ドイツ・マインツ大学経済学部に留学。在学中にアルバイトで稼いだ資金を元手に、ヨーロッパ、中東、アフリカ、南米、アジアなど50か国以上を旅行する。

帰国後の80年に上京し、新宿にて旅行会社(現:株式会社エイチ・アイ・エス)を開業し、事業を成長させる。95年3月店頭公開。96年、オーストラリアに「The Watermark Hotel Gold Coast」をオープン、会長に就任。また同年、35年ぶりの定期旅客輸送の新規参入航空会社となるスカイマークエアラインズ株式会社(現:スカイマーク株式会社)を設立し、98年に国内航空業界への新規参入を果たす。99年、協立証券株式会社の株式を取得し、エイチ・アイ・エス協立証券株式会社現:エイチ・エス証券株式会社)の代表取締役社長に就任。03年にはモンゴルAG銀行(現:ハーン銀行)の取締役会長に就任。同年、株式会社エイチ・アイ・エスは東証一部に上場。

現在は澤田ホールディングス株式会社の代表取締役社長、株式会社エイチ・アイ・エスの取締役会長の他、経団連理事、経済同友会幹事、アジア経営者連合会理事長も務め、10年4月ハウステンボス株式会社代表取締役社長に就任。

(創業手帳編集部)

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